こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

239話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- エピローグ②
ラエルの直感通り、犯人はヨハネフ3世だった。
マリは呆然とした表情で目を見開いた。
「これは一体どういうことですか?」
彼女は国境を越える前、事前に準備された宿で休息を取っていた。
早くラエルに会いたい一心で急いで旅をしていたが、気づかぬうちに眠り込んでしまい、目を覚ますと全く知らない場所にいたのだった。
「ぐっすりお休みになられましたか?お会いしたかったですよ、マイレディ。」
「……。」
漆黒の髪に冷たい雰囲気をまとった美男子。
その姿がヨハネフ3世だと分かると、マリは茫然とした表情で考え込んだ。
「なぜヨハネフ3世が?まだ夢なの?それともランの夢ではなく、どうしてヨハネフ3世が出てくる夢なの?」
マリは呆然と考えた。
夢の中でも会いたくない人物がヨハネフ3世である。
もしこれが夢なら、嘲りで満ちた執拗な悪夢に違いなかった。
「とてもお疲れのようですね。もう少しお休みになってください。到着するまでまだ時間がありますから。」
「……!」
その冷静な声を聞いた瞬間、マリは完全に目を覚ました。
これが夢ではないと気づいたのだ。
彼女は驚き、声を荒げた。
「これ、一体どういうことですか?あなたがなぜここに?」
「ここは私の馬車です。ですから、私がここにいるのは当然でしょう。」
「いや、どうして私があなたの馬車に……!」
ヨハネフ3世は薄く笑った。
以前と同じように嘲るような笑顔で、思わず一発殴りたくなる表情だった。
「それは私が誘拐したからですよ。モリナ国王、あなたは今、私に誘拐されている最中です。」
「……。」
「今は文句の一つもおっしゃらず、お静かにしていただけませんか?」と彼が続けた言葉に、マリは一瞬その意味が理解できなかった。
しかし、それも一瞬のことだった。
「私を誘拐したですって?一体これはどういうことですか?」
西帝国とクローアンはすでに平和条約を結んでいた。
それなのに彼女を誘拐するなんて?
「早く降ろしてください!」
ヨハネフ3世は微笑みながら肩をすくめた。
「残念ながら、それはできません。もちろんこれが大きな誤解を招くのは承知していますが、私にもどうしようもない事情があるのです。」
「それはどういうことですか?」
ヨハネフ3世は言った。
「死ぬほど会いたかったんですよ。」
「……。」
マリは呆然として口を開けた。
今、何を言っているの?
彼がそんなことを言うなんて。
ヨハネフ3世はため息をつき、わざとらしい口調で話を続けた。
「あまりにもひどくないですか?戦争が終わってから一度も連絡がないなんて。このままでは心臓の病気が再発しそうで、どうしようもなく誘拐したんですよ。」
彼の話を黙って聞いていると、次第にイライラしてきたマリは、ついに彼の言葉を遮った。
「もう聞きたくありません。それよりも、一体どうしてこんなことをしたんですか?」
「元々、私の得意分野は誘拐、脅迫、詐欺、賭博などじゃありませんか?愛のためなら、自分を誘拐するくらい簡単なことですよ。」
マリはため息をついた。
「とにかく、降ろしてください。」
「降ろすつもりはありませんよ?」
ヨハネフ3世は微笑みながら答えた。
「このまま貴女を解放すれば、私は死んでしまいます。ですから、私もどうすることもできないのです。」
「そんな馬鹿なことが……!」
堪えきれず、ついにマリが怒りをぶつけようとした瞬間だった。
「少しだけ。ほんの少しだけ、私に時間をください。」
マリは口を閉じた。
ヨハネフ3世の声はこれまでと違い、冗談めいた調子が消え、真剣さが滲んでいた。
「実は、貴女に伝えたいことがあります。その話をしたら、すぐに解放しますので、ほんの少しだけ待ってください。」
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「分岐路です、陛下。」
ヨハネフ3世を追跡していたラエルは険しい顔をした。
「分岐路だと?」
「はい、陛下。どちらにも通過した痕跡があります。どちらへ向かったのか把握するのが難しい状況です。」
ヨハネフ3世はまるで追跡するよう挑発するかのように、あちこちに痕跡を残していた。
そのため、追跡はしていたものの、混乱を引き起こされている状態だった。
分岐した道のどちらにも痕跡があり、明らかに追跡隊を混乱させるための策だ。
「この卑怯者め。捕まえたら絶対に許さない。」
ラエルは歯ぎしりした。
手紙の内容やあえて残した痕跡を考えると、彼が彼女に危害を加えるつもりではなさそうだ。
しかし、どのような意図であれ許されることではない。
「半年ぶりに再会できるというのに、それを邪魔するとは。」
ラエルはヨハネフ3世の不敵な笑みを思い浮かべた。
彼が意図的に自分と彼女の再会を妨害しているように思えてならなかった。
「どうされますか、陛下?」
アルモンドの問いかけに、ラエルは深く考え込んだ。
正確に言えば、追跡隊を分けるべきだった。
しかし、追跡隊を分けるには十分な人員がいないため悩んでいた。
その時、遠くから馬蹄の音が聞こえてきた。
驚いて振り返ると、銀髪の青年が一団の兵士と馬に乗って駆け寄ってくるのが見えた。
「キエルハン副将!」
驚いたことに、その青年はマリの騎士団で見覚えのあるキエルハンだった。
「陛下にお目通り申し上げます。」
キエルハンは馬から降りて皇帝に礼を取った。
「どうしてここに?」
「国境でモリナ殿下を迎える途中、変事の報を聞き駆けつけました。」
そう言いながら、キエルハンは毅然とした声で言った。
「追跡は私にお任せください。私は殿下の騎士ですので、どんなことがあろうともヨハネフ3世の手から殿下を救い出して参ります。」
ラエルはキエルハンを見て納得の表情を浮かべた。
彼の「騎士」という言葉が非常に耳に心地よかった。
戦争当時、モリナ国王を助けたキエルハンの行動については多くの議論があった。
帝国の大貴族としてクローアン王国を助けたことが多くの者から非難されたのだ。
しかし、キエルハンが援助を行ったのは西帝国との戦争中のことであり、その結果としてキエルハンがモリナと共に西帝国の首都を陥落させたことで、東帝国は危機を脱することができた。
その功績によりキエルハンは処罰を免れ、現在は帝国内で親クローアン派の貴族として影響力を発揮していた。
『それでも彼女の騎士だなんて、気に入らないな。』
帝国の大貴族が他国の王を騎士として仕えるなんて、これもまた議論の余地が多い事柄だが、結局モリナ国王が帝国の皇后になる以上、その事実も大衆に受け入れられたのだった。
ラエルがどうしても気に入らないのは、彼が彼女の騎士だということだけでなく、なぜかさらに特別な障壁のように感じられるからだ。
もちろん、マリの心の中には自分だけがいることを知っているが、それでも嫉妬心が湧くのをどうしようもできなかった。
「分岐点ですね。私が片方の方向を担当します。」
状況を把握したキエルハンが話した。
ラエルは落ち着かない心を押さえつけながら悩んでいた。
『どちらの道を選べばいいのだろう?』
分岐した二つの道のどちらかに、ヨハネフ3世と彼女がいるはずだ。
問題は、どちらの方向に彼女がいるかを確信できないことだった。
当然ながら両方向を追跡するつもりではあったが、キエルハンよりも自分が彼女を救いたいと思った。
『どちらかが完全に反対方向だ。道を間違えて選べば、彼女に会うのがまた何日も遅れるだろう。』
今でも彼女に会いたい気持ちで焦れているのに、さらに時間がかかると本当に我慢できなくなりそうだった。
『捕まえさえすれば覚悟しろ、ヨハネフ3世!』
ラエルはこの状況を作り出したヨハネフ3世に向けて、再び歯を食いしばりながら言った。
「北側の道に行く。」
「北側とおっしゃいますか?その方向は私が向かいます。」
「いや、私が行く。」
二人の男は自分が北側の方向へ行くと主張した。
北側の険しい道は西帝国へと続いており、そのほかにも身を隠せる場所が多かった。
一方、南側の道は平原が続くだけで、途中に広い湖が広がっていた。
北側に向かった可能性がはるかに高いので、どちらが行くかで争ったのだ。
「分かった。お前は南側の道を行け。」
ラエルは冷静な声で命令した。
軽々しく命じるべき事案ではなかったようだが、それだけ彼の心は焦っていた。
キエルハンは何も言えずにうなずき、南側の道へ自分が連れてきた騎士たちを引き連れて出発した。
「我々は北側に行く。すぐに出発だ。」
「はい、陛下。」
キエルハンとラエルの言い争いをそばで見守っていたアルモンドが敬礼をしながら返事をした。
『マリ、もう少しだけ待っていてくれ。すぐに向かうから。』
ラエルは拳を握りしめながら言葉を吐き出した。







