こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
205話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 圧倒的戦力差②
一方、その頃西部地方では。数え切れないほどの兵士と軍勢が陣を敷いていた。
ちょうど西帝国の20万の大軍がその軍勢であり、見渡す限りの人々と野営が広がる山地に、まるで人間らしからぬ美しい姿をした人物が微笑んで立っていた。
「モリナ女王がクロネ山脈で防衛戦を展開すると決めたのですか?」
「はい、閣下。」
落ち着いた雰囲気の中年騎士が髭を撫でた。
彼はヘリアン伯爵であり、原城軍の副司令官の役職についていえう。
「王国軍はわずか2万の兵力しか残っていませんが、クロネ山脈は非常に険しい地形です。守りを固めれば持ちこたえられる可能性が高いです。」
ヘリアン伯爵は難しい顔つきで語った。
するとストーン伯爵が髭を撫でながら言葉を続けた。
「確かにクロネ山脈を拠点にすれば、いくら兵力が多くても突破するのは難しいでしょう。しかし、素晴らしい。いや、とても素晴らしい。」
「・・・何ですって?」
副司令官ヘリアン伯爵は訝しげな表情を浮かべた。
困難な状況なのに、むしろ「良い」とはどういうことだ?
「私が最も望んでいた状況です。」
「どういう意味ですか?」
ストーン伯爵は不敵な笑みを浮かべながら問いかけた。
「チェスはお好きですか、伯爵?」
「・・・それなりに楽しみます。」
淡々としたチェスの話にヘリアン伯爵は少し困惑しながら顎を撫でる。
「チェスで勝つためには、王を捕まえれば良いのです。王さえ捕らえれば、他の駒は必要ありません。」
「それはそうですが・・・どうして?」
「私はモリナ女王を捕まえるつもりです。そのために、クローヤン王国を一撃で崩壊させる計画です。」
ヘリアン伯爵は驚いて息を飲んだ。
「もちろん、彼女を捕まえればクローヤン王国は終わりですが、それは不可能ではありませんか?」
「いいえ、可能です。」
ストーン伯爵は不敵な笑みを浮かべながら続けた。
「彼女が自ら私の手に落ちるように仕向けるのです。」
そう言いながら、ストーン伯爵は自らの計画を語り始めた。
その話を聞いたヘリアン伯爵の顔には驚愕の色が浮かんだ。
「そ、それは・・・確かにその方法を使えば、モリナ女王を捕らえることができそうですね。」
しかし、ヘリアン伯爵は険しい表情で反論する。
「私はこの作戦には同意できません。」
「どうしてです?」
「あまりにも非人道的です。従うことはできません。」
そうだ、ストーン伯爵が提案した計画は、あまりにも冷酷で計算高かった。
倫理観を重んじるヘリアン伯爵にとって、その計画を受け入れることは不可能だった。
しかし、ストーン伯爵は肩をすくめながら言った。
「これは戦争です。あまり感傷的すぎますよ、伯爵。」
「・・・」
「いずれにせよ、勝利が最優先であり、敵国の民のことなど考える必要はありません。たかが死が、どのような死に方をしようが、一体何の問題があると言うのですか?」
ストーン伯爵の目を見たヘリアン伯爵は、背筋が凍る思いだった。
数多くの命が失われる話をしているにもかかわらず、ストーン伯爵の目には一切の感情がなかった。
それはまるで、アリの巣を壊すときに、そこにいるアリが何匹死ぬか気にもしないような無関心さ。
彼にとって他者の死など、全く動揺を引き起こさないものであった。
「いずれにせよ、女王陛下の全権を掌握するのは私ではありません。ただ、西帝国のための行いなのですから、伯爵はただ従えば良いだけのこと。」
ヘリアン伯爵は拳を握りしめ、剣の柄を強く掴んだ。
しかし、それ以上言葉を交わすことなく、その場を去って行く。
その姿を見送りながら、ストーン伯爵は口元に薄い笑みを浮かべ、呟いた。
「楽しみだ。彼女がこの知らせを聞いたとき、一体どんな反応を見せるのか。」
先ほどまで感情を見せなかったストーン伯爵の瞳には、不気味な感情が宿っていた。
それは、明らかに狂気の色を帯びていた。
「楽しみだ、実に。これから彼女が見せる表情がね。」
幼子が玩具を壊すように彼女を追い詰める――それが、彼の歪んだ喜びであった。
彼女の足を一本ずつ、鋭い刃でじわじわと苦しめる。
そしてその苦痛を楽しむのだ。
ストーン伯爵もまた、彼女にそうした痛みを与えようと考えていた。
彼は、一歩一歩苦痛に落ちていく彼女の顔を眺めながら、その表情を鑑賞したかったのだ。
そうして彼女を追い詰めたかった。
・
・
・
一方その頃、マリは夜通し西帝国軍に対する対策を考えていた。
しかし、考え続けるうちにいつの間にか眠りに落ちてしまった。
そして眠りについたマリは夢の中で急に目覚めた。
「あの夢だ!」
それは能力を授ける神秘的な夢だったのだ。
夢の中の背景は正確には把握できなかった。
まるで東方の雰囲気を持つ場所のようで、霧のような質感に包まれていた。
そこでは、一人の女性が川辺に立ち、流れる川の水を見つめていた。
その女性は、目が覚めるほどの美しさを持ちながら、簡単には触れることのできない神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「・・・」
激しく流れる川の水を見つめながら、何を考えているのだろう?
夢の中の女性の澄んだ眼差しに、マリは知らずに息を飲んでしまった。
その時、女性はゆっくりと踊り始める。
それはまるで人々の魂を掴むような、美しい踊りだった。
官能的でありながらも透明感があり、あまりにも美しく、まるで幻想(夢幻)の中を漂っているように見えた。
特に、目を引いたのはその瞳の動きだった。
どこか悲しげで、見る者の魂を引き込むような視線だった。
美しい踊りの中で見せたその澄んだ眼差しは、まるで観る者の霊魂を捕まえるかのようだった。
その時、遠くから女性の踊りを眺めていた一人の男性が近づいてきた。
どこか儚げな雰囲気をまとった女性は、優雅な手つきでその男性に手を差し出した。
男性がその手を掴むと、夢はそこで終わった。
マリはぼんやりと目を覚ました。
「これ・・・何の夢なの?」
いつものことだが、戦いの前に見る夢は妙に生々しかった。
「どうして舞踊の夢なんだろう?踊るのも何かの能力なのか?」
彼女は小さく微笑みながらベッドから降り、踊り始めてみた。
すると驚くべきことに、まるで熟練した舞踏家が踊るかのように美しい動きが自然と体から流れ出てきた。
「私、本当に踊る能力を手に入れたの?本当に?」
マリは戸惑いながらも驚愕した。
「戦争を前にして一体なんで踊りの能力なの?」
それはただの踊りではなかった。
まるで夢の中の女性が踊っていたかのように、蝶が舞うような滑らかで魅惑的な踊りだった。
その美しさは誰もが目を奪われるほどで、踊ることでどんな男性でも誘惑できるような自信さえ湧いてきた。
(なぜこんな能力が・・・?)
マリは困惑した表情を浮かべた。
(分からない。とりあえず西帝国軍をどう迎え撃つか考えないと・・・)
しかし、その考えを最後までまとめることはできなかった。
部屋の外から緊迫したノックの音が聞こえたのだ。
「陛下!申し訳ありません!急報です!」
「何事ですか?」
「西帝国のストーン伯爵から使者が参りました!」
「・・・!」