残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【59話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

59話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 皇女の誕生日④

その夜、私に布団をかけてくれたユリお姉ちゃんは、隣でそわそわしていた。

「どうしたの?」

「ごめんなさい。皇女様が私のことを友達のように思ってくださることに浮かれて、とても大きな間違いをしてしまったようです。」

「……」

しょんぼりしているユリ姉さんの姿を見ると、胸が痛んだ。

『本当に友達のように接しても構わないのに。』

子どもの頃に形成されたものが一生続くという。

私のアイデンティティはすべて日本で作られた。

だから、私に気軽に接して私の前で言い争うくらいは実はなんでもない。

ユリ姉さんは私に最高のデザートを作ってあげたくてそうしただけだし、ナロモルお兄さんは私に物理的な助けになれればと思ってそうしただけだ。

私はその二人の気持ちをよく分かっていたから、大して怒っていたわけではなかった。

二人が喧嘩をやめてくれたらそれでよかっただけなのに、効果が予想以上にすごかった。

『ただ私も慌てていただけ……でも私が何ともないって言ったら、ユリお姉ちゃんが余計に不安になるでしょ?』

私もこの世界にだいぶ慣れてきた。

ここは日本じゃないし、それに応じて文化も違えば、人々の考え方も違う。

この世界では、ただ堂々と皇女らしく振る舞うことが、ユリお姉ちゃんを安心させてあげる方法だった。

「じゃあ、全力で頑張って見せて。実は私も、みんなにお姉ちゃんのデザートを味わってもらいたいと思ってたんだ。」

私は軽く笑った。

「お姉ちゃんは、私が知ってる中で最高のパティシエだから。」

ユリお姉ちゃんは私の言葉に顔を赤らめ、控えめに笑った。

「私はもう全部許したから、にっこり笑ってもいいのよ。」

そして数分後、ナロモルお兄さんも私の部屋にやって来た。

ユリ姉さんが少し不快そうな表情で言った。

「今何時だと思って皇女様の部屋に来たの?」

「11時2分。」

「知らなくて聞いたわけじゃないでしょう。」

「じゃあ、あなたは?」

「私は侍女じゃない。」

「じゃあ私も侍女になりたい。」

「……それって、無礼じゃないですか?強引すぎますよ?」

ユリ姉さんは声を荒げず、できる限り落ち着いて言った。

昼間のことをまだ気にしているようだ。

「いったいどうしてそんなに暗い顔をしてるんですか?」

私も体を起こして、ナロモルお兄ちゃんを見た。

ナロモルお兄ちゃんから、誰か別の人のような印象を受けた。

いつも罪悪感を抱えたような顔をしていた、私の四番目の兄・ミハエルの姿が重なって見えた。

「ナロモルお兄ちゃん、どうしてそんなに顔色が悪いの?」

「それは……」

ナロモルは、私にそろりそろりと近づいてきた。

背中の後ろに何かを隠していて、しばらくの間もじもじしていた。

「その……だから……」

ナロモルが私に何かを差し出した。

それは、丁寧に作られた花冠だった。

「前に見たとき、花冠が好きそうだったのでプレゼントに持ってきました。」

私はハチミツと一緒に花畑へ行き、花冠を作るのが好きだった。

ハチミツの頭に花冠をかぶせると、それがとても可愛くてたまらなかった。

ハチミツが花冠を作っている姿をうっとりと眺めるのも、私の趣味のひとつだった。

それをいつか一度見たことがあるようだ。

「私が欲張りすぎたせいで、つい……」

花冠は少し粗削りで不器用だったけれど、それでも彼女の気持ちは伝わってきた。

「お姫様ごっこが、お姫様ごっこを超える成長痛のようなものだと思うわ。」

「……」

「だから、二人とも心を楽にして、しっかり食べてね。私は二人とも許したから。」

「じゃあ、私のこと嫌いじゃないんですか?」

「お兄ちゃんの気持ちは全部わかってるのに、どうして嫌いになれるの?」

ふと見ると、ユリも驚いたように身体をピクっと動かした。

ユリも私に嫌われることを恐れていたようだった。

「お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、どちらも嫌いじゃないよ。2人とも私の大切な友達だもん。」

私は今日、改めて実感した。

皇女が放つたった一言、その一言の重みがどれほどのものかを。

『私の言葉ひとつひとつが、本当に大きな重みを持っていたんだ。』

だからこそ、話すときはもっと慎重に、もっとよく考えてから話さなきゃと心に決めた。

私の一言が、誰かに大きな影響を与えるかもしれないから。

その後、ナロモルは自分の部屋へ戻っていき、ユリはドアを閉めながら小さな声で言った。

「嫌わないでいてくれて、ありがとう。」

その言葉が、なぜか胸に響いた。

憎まないなんて、ありがたいことだ。

「まさか、そんなことで感謝しちゃいけないよ。」

憎まないから感謝するのではなく、好きになってくれて感謝の気持ちを持ってもらえるようにしなければと思った。

「明日からはもう少し優しくしてあげよう。」

そして、2ヶ月が過ぎた。

ちょうど2ヶ月後、ユリとナロモロが共同でオープンした『ユリモロ製菓店』は驚異的な人気を集めた。

初回販売分は限定販売。

この戦略が非常に効果的に作用した。

「大陸にはなかった、新しいメニューを披露していますね?ダルゴナ?クロッフル?そんな感じでした。」

「その味がまるで天国の味だって言うんですよ?」

「1日にたった20セットしか売らないんですって。」

「どうして? 商売をしたくないってこと?」

「最初からお金を稼ぐつもりじゃなかったみたいです。」

「お金を稼ぐつもりがないなら、どうして店を開いたの?」

「皇女様が本当に幸せそうに召し上がるデザートを、他の人たちにも分かち合いたいっていうのが目的なんでしょうね。皇女様はどうやらデザートに本当に誠実な方みたいですよ。」

貴族たちは人を雇ってテントを張って待機していた。

1日20名限定。

その20名に入るために、多くの人々が努力していた。

そんなある日、ユリモルの製菓店に告知がひとつ貼り出された。

【身分証明の確認手続きを実施いたします。】

ユリは「皇女様が召し上がるデザートなのに、召使いを雇うわけにはいかない」とのスローガンを掲げた。

「貴族たちに自ら列に並べということですか?」

「そんなの、あり得ません!」

貴族たちの反応は芳しくなかった。

「たかがデザートをもらうために?」

「プライドが傷つくから私は並ばない。」

しかし、ユリは信念を曲げなかった。

その後1週間ほど客足は鈍ったが、それも束の間だった。

それでもかまわず並ぶ貴族が現れ始め、やがて多くの貴族たちが自ら列に並ぶという光景が繰り広げられたのだ。

ユリモル製菓店の前は、まるで騒動の中心地のようだった。

「デザートの前では万人が平等だなんて、そんなことある?」

「皇女様は普通の皇族とはちょっと違うって聞いたけど、確かにそうみたいですね。」

「でもなんだか、妙に涼しくないですか?」

時刻は午後2時。

一日の中で一番暑い時間帯なのに、ここは全く暑さを感じなかった。

「本当ですね。どうしてこんなことが?」

その理由は、そう時間が経たずして明らかになった。

「新しい概念の魔道工学装置だそうです。」

「“エアコンディショナー”と呼ばれてるんですって。」

「それが“エアコンディショナー”ってこと?」

多くの貴族たちは“エアコンディショナー”という言葉に目を輝かせていた。

そこで「エアコン」を見つけた。

現代式のエアコンとは違い、壁に取り付けられた形の魔晶石だった。

「この魔晶石が周囲の熱を吸収した後、冷気に変えて風を送るようですね。」

「あり得ません!」

中には魔法を修練する貴族たちもいた。

彼らの概念からすると、それは到底信じられないことだった。

「基本的に効率がとても悪いってことですよ。あれを維持するには、本当に高レベルの魔法使いを何人も雇わなければなりません。」

これは常識的に全く合わない話だった。

そもそも、たかが製菓店のためにあんな上級魔法と高度な魔道文明を使うなんて、ありえるのか?

しかし、誰かが言った。

「いえいえ、そうではありません、皆さん。」

彼はとてもハンサムだったため、たった一言でも多くの人々の視線を集めた。

彼はさわやかな笑みを浮かべながら言葉を続けた。

「ここにはテイサベル移動関門に適用されたインバーターシステムが入っているんですよ。おかげで最小限のエネルギーで、非常に効率的な冷風魔法を実現できたんです。今までになかった新しい概念ですよ。」

この“エアコン”にはインバーターシステムが含まれていた。

テイソロンとイサベルが一緒に作り出した逆作品だった。

しかしほとんどの人はその言葉を信じなかった。

「7歳の皇女様がこんなものを考案なさったっていうんですか?」

常識的に考えて、あり得ない話だ。

7歳でこんなものが作れるなら、ミロテル魔法連邦や魔塔の魔法使いたち、そして多くの名門大学の教授たちがまず作ったに違いない。

「そうなんですよ。皇女様が作られたものを、優秀な魔法使いの皆さんが作れなかったなんて。本当に不思議なことですよね?」

そのとき、誰かがその人に気づいた。

「まさかあなたは?第1首席補佐官のビアトン様?」

ビアトンも3日目の列に並んで待っていた。

その日以降、列に並ぶことへの貴族たちの不満はすっかり消えた。

皇帝に仕える第1首席補佐官ですら、3日間も列に並んだのだから。

 



 

 

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