こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

35話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 社交界の華②
そして、しばらく使用人のもとへ行っていたユリアが戻ってくると、ビビアンは満足げに微笑んだ。
「子どもでも知っている賢者の名前を知っているからといって、それを根拠に大げさに語るなんて、ただの詐欺ですよ。」
「まあ。」
「でも、あの人たちはちゃんと知らなかったのかもしれませんね。オライナフェン賢者の息子が海に落ちて死んだこと。生涯を水と共にした人物なのに、なぜ島に関心を持つのでしょう。」
ビビアン皇女はさらに、ジェネラルス賢者もギャンブル狂だったと言って呆れた。
人々はその賢者たちが若い頃に偉業を成したという記憶しかないことをいいことに、詐欺を働こうとしていたのだった。
見え透いた詐欺。
「だから、私が“ユネット”の名前を出された時には、きっぱりと拒否したのです。」
「まあ。」
ユリアはその言葉にクスッと笑い、手にしていたジュースのグラスを差し出した。
「お疲れのところ恐れ入ります、殿下。まずこのジュースを一杯お召し上がりになってから、お話をなさってください。」
「えっ、私の声がかすれているって、気づいてたの?」
不純な目的の貴族たちは慌てて逃げ出し、ビビアン皇女とユリアが親しげにしている様子を見た数人が、まるで何かを密告するようにニヤリと笑った。
「プリムローズ公爵夫人が皇女殿下の後見人を引き受けたのは、身分よりも娘の友人という関係の方が強かったからでしょう……」
「そんな簡単なことも見抜けずに軽率な真似をしたから、あんな目に遭うんだよ。」
その言葉は、逃げ出した貴族たちの耳にも届いた。
「えっ、二人っていつからそんなに仲がよかったの!?」
自分たちが言った言葉を思い出して、冷や汗が流れた。
ほんの少し会話が長引いていたら、危うく一線を越えていたかもしれなかった。
彼らは呆然としながらも、もう一度体勢を立て直すしかなかった。
ユリアとビビアン皇女がぴったりと寄り添って話している姿を見て、自然とプリムローズ公爵とビビアン皇女の親交が話題に上がった。
ビビアン皇女が入場した瞬間や、他の人々に挨拶しに行ったときには近くにいなかったにもかかわらず、ユリアには最も親しげな態度を見せていたからだった。
「ユリア・プリムローズ嬢が皇女宮に招待されたって?本当?」
「私の知人が皇宮の騎士として働いているんだけど、そこから聞いたんだ。」
「ユリア・プリムローズ嬢、昔は見かけるだけで事件が起きるって言われてたのに……最近はずいぶん落ち着いた姿ですね。」
「そうですね。皇女殿下のそばに付き従うために参席したのなら、信頼に値します。人々の推測どおり、母上に後見人を依頼したのなら、普通に考えても親しい間柄でないと難しいのでは?」
そしてユリアの姿は、特に男性貴族たちに大きな波紋を起こしていた。
女性貴族たちはユリアと多少は言葉を交わした経験があり、リリカの件で誤解があったとしても、自ら話しかけることにはさほど抵抗がなかった。
しかし未婚の貴族令息たちは、ユリアとほとんど関わったことがなかった。
以前は、彼女がただ婚約者だけを見ていたからである。
「ユリア令嬢は、ビエイラ令息と婚約してるんだろ?」
「じゃあ隣にいるのは、公爵令息?」
見るからに目立たない新参貴族であるビエイラに対して、それほどまでに冷淡だったユリア。
貴族の令息たちの間には、微妙な緊張感が漂った。
「他の令嬢を長く好いていたのは気になるが、この令嬢、この令嬢とスキャンダルを起こすよりはマシじゃないか?」
「こういうタイプが意外と奥ゆかしいのかもな。冷たそうに見えるからだが…もっと笑えば今よりずっと人気が出るだろうに。」
ユリアに関心を見せながら話すチャンスを伺う令息たちを見て、ジキセンは思わず眉をひそめた。
「こいつら……?」
以前とはまったく違う空気。
あの頃は、未婚の貴族令息たちでさえ、ユリアが何をしようと無条件に悪女扱いして非難し、全く関心を持とうとしなかったのに。
社交界の花、リリカには近づきたかったし、兄であるジキセンがうまく話をつけてくれるようにと、もじもじしていた男たちも多かった。
ジキセンは公爵家の嫡男であったが、粗暴な性格ゆえに評判は良くなかった。
それでもリリカの存在のおかげで、彼はユリアのように酷評されることはなかった。
『あの子がシンデレラになるって?この空気は何だよ』
かつてならリリカの周囲を取り巻いていた男たちも、今は皆ビビアン皇女とユリアを見ていた。
ジキセンは普段からリリカに関心があり、兄としてリリカにいい印象を与えたいと考えていた者たちに近づいていった。
そして一度咳払いをして、自分の存在をアピールした。
「おや、プリムローズ小公爵、お越しでしたか。」
しかし、それだけだった。
『あれ?』
自分が登場すれば、自然に会話が続くだろうと思っていた相手がすぐに視線をそらした。
『機嫌を損ねたのか?』
おかげでジキセンは初めて、会話を続ける努力をしなければならなかった。
「そ、その…リリカの様子、気になりませんでしたか? 直接聞いてみたらどうです?」
彼は気まずさから、すぐにリリカを呼んでしまった。
唐突に会話に巻き込まれて戸惑うはずなのに、突然呼ばれたにもかかわらず、リリカはにこやかに微笑んだ。
彼女を“社交界の百合”と呼ぶ理由が分かる微笑みだ。
「こんにちは。」
「おお、プリムローズ令嬢。お元気そうで何よりです。」
しかし、これまでのように用件を伝えてくれと頼んでいた相手と、直接会話を交わせる状況になったことは、彼にとって不便だった。
「令息。先日ネミナート島に降りられたと聞きました。」
「お気遣いいただきありがとうございます。」
「長旅でしたが、お疲れではありませんでしたか?」
「大丈夫でした。」
会話はうまく続かず、たびたび途切れた。
「……」
「……」
空気の読めないジキセンでさえ気づくほど、相手の令息は全く乗り気でない様子で、リリカに対してのみ礼儀正しく接していた。
一言で言えば、全く関心がなかったということだ。
「えっ?」
リリカは気後れすることなく、隣にいた別の令息にも挨拶をした。
「フィリアン令息もご同行されたと聞きました。」
リリカ特有の話術が惜しみなく発揮された。
他人に起きた出来事を細かく覚えていて、あたかも称えるかのように相手を持ち上げるそのやり方…。
「ネミナート島といえば、都からはるか遠い場所なのに、怖くはなかったのですか? どうしてそんな勇気が…。」
「ああ。」
ジキセンは気を紛らわせるように気まずさを誤魔化そうとした。
あの坊やは何か変なものでも食べたのか、今日は体調が悪いのだろう。
他の連中はリリカと対面する今この瞬間をありがたく思うはずだ。
…ところが。
「長旅だったと聞くと、なんだかドキドキします。女性の私にとっては難しいことだからでしょうか?」
「ははは。」
「荒波を乗り越えて船に身を任せる男性のたくましさに興味があるんです!」
火照った頬、胸元にそっと手を添えながら返事を待つ、百合の花のように可憐な少女。
それほど美しい令嬢がこれほどまでにアピールの機会をくれているというのに、相手の令息は先ほどのように無愛想なままだった。
男なら話を作ってでも引き延ばしたいような場面なのに。
「次にお話しできる機会があるといいですね。」
「えっ?」
やっと認めることができた。
以前はリリカの名前が出ると、感嘆の声が上がったものだが——興味を示していた令息も、他の話題へと関心が移っていた。
「プリムローズ小公爵様、妹さんがもう一人いらっしゃるとか。そちらの方は紹介してくださらないのですか?」
「私も気になりますね。今日はユリア令嬢とはお話しされないのですか?」
そしてその違和感の正体は、ユリアだった。
本来は無視しようとしていたはずの、今日の建国祭の中心に立っているもう一人のプリムローズ令嬢。
その名を聞いたリリカとジキセンは、思わず口をつぐんだ。
『ああ、今ユリア・プリムローズ令嬢の話題を持ち出されたことで、気を悪くしたのか?』
しかし、それは貴族の令息たちにとっては当然の反応だった。
初めから庶子であるリリカよりも、ユリアの方が好まれていたのだ。
それでもリリカが社交界で頭角を現せたのは、それだけ公爵家が彼女を手厚く支えていたから。
そのため「庶子」という欠点は、むしろ彼女の勲章のように作用した。
「それでも不遇だ」と言われていたが……
以前のようにプリムローズ公爵はどこに行ってもリリカについては一言も言及しなかった。
母親が違うという理由で露骨に嫉妬するという異母姉・ユリアとの関係にも疑念が投げかけられていた。
「お姉さんの婚約者だってそうだったのに、私たちだって遊んでたら捨てられるんじゃない?」
「以前みたいにおとなしい令嬢には見えないし。家庭教師にも逆らって大騒ぎしたって言うし、私だって被害に遭わないとは限らない。公爵家でももう以前のように大事にされてないみたいだし。」
今もプリムローズ公爵夫人と一緒にいるユリアとは違い、リリカはまるで中心に近づけず、ただうろうろしているだけだった。
二人に拒絶されたというよりは、リリカが余計な噂を立てられたくなくて近づかなかったのだが――
リリカは今の状況が二人のせいだと感じて、唇を強く噛みしめた。
『お母様とユリアは、なぜここにいるの?』
どう見ても、人前に出るようなタイプではなかった二人。
『それより……隣の皇女は何なのよ。』
エノック皇太子が隣にいる以上、妹であるビビアン皇女は否が応でも目立つ存在だった。
本人が望んでいなくても。
ビビアン皇女がいつ復帰するのかは、常に皆の関心事だった。
『高貴な身分の花嫁候補を品定めでもしてるわけ?』
シャンデリアの灯りに、ユリアがつけていたルビーのネックレスがきらめいた。
この前プリムローズ公爵からもらった品だった。
「どうせ父親からもらったって自慢してるんでしょうね?」
ホールで人々に囲まれている姿は、庶子のリリカとは対照的だった。
父親からもらったネックレスはつけて来なかったのは正解だった。
席に残されたその品は、間違いなく似たデザインだったため、むしろユリアのものと比べられてしまうだろう。
まばゆく輝いていたリリカと、暗い噂ばかりつきまとうユリアの立場が入れ替わっていた!
プリムローズ公爵が庶子に情を寄せていることが明らかになったのだ。
「やっぱり公爵令嬢ともなれば、皇女殿下と親しいんですね。」
何気なく人々が交わす言葉も、リリカには痛烈に刺さった。
『私だって、公爵令嬢なのに!』
結局、それは嫡出か庶出かの違いに過ぎなかった。
彼女の身分は、結局みんなに愛されない時には弱点でしかなかった。
『庶子だとしても、愛されなければ大事にされない公爵令嬢……それが私だったのに。』
リリカのコンプレックスが次々と刺激されるようだった。
彼女の顔は赤く染まり、母親が属していた一族と過ごした忌まわしい過去が脳裏をよぎり、思考が混乱した。
そして――
「まあ、本当ですか?」
ホールの中心から歓声が上がった。
「えっ、何事?」
普段は近寄ることもなく、さほど興味も示さなかった最後の貴族たちまでもが、ついに話題の中心へと向かった。
それは、リリカとジキセンを相手にしていた貴族たちも含まれている、という意味だった。
「今……」
リリカは呆然と口を開けたまま言葉を失っていた。
彼女の兄であるジキセンも同様だった。
『私たちって今、捨てられた負け組なの?』
このような歓声が上がったのには理由があった。
「今日こうして皆さまの前に顔を出すことができたのは、恥ずかしながら、以前まであまり調子がよくなかった私の肌がとても改善されたおかげです。」
ビビアン皇女がその場の沈黙を打ち破って説明したのだ。
「ユネットの化粧品のおかげで、たくさんの効果を得られました。」
公爵夫人に続き、ビビアン皇女までもがユネットを言及し、大きな効果を見たという発言が続くとは驚きだった。
「まあ!それではプリムローズ公爵夫人が使ったものと同じ製品なのですか?」
「いえ、私と夫人の肌質は大きく異なるそうです。ですが、その違いまでも考慮して全員に合った化粧品を設計してくれたというのが、ユネットのすごいところですね。」
ユネットはすでに成功街道を走っていた。
貴族たちの集まりでは、どこでも話題になるほどに。
そして今日の出来事は、さらに急速な成長の糧となるだろう。
『ビビアン皇女殿下』
隣でその話を静かに聞いていたユリアは、胸が温かくなるのを感じた。
幼い頃以来、久しぶりの社交の集まりに参加することになって緊張していたビビアンの頼みを受け、一緒に参加したとはいえ――
本当に自分が役に立つのか、半信半疑だった。
―「実際にはお母様もいらっしゃるし、エノック皇太子殿下もいらっしゃるでしょう。私は役に立ちません」
―「もし令嬢が参加するのを嫌がるなら仕方ありませんが……令嬢が役に立たないからといって、それを否定することはできません」
―「でも、私は皇女殿下にご紹介できるほど親しい令嬢もいませんし、言葉も……」
―「ただ、令嬢がいてくれるだけで私にとっては力になるんです!」
そして……実際、ビビアン皇女はどこか緊張していたようだったが、ユリアを見るとその表情をほぐして穏やかになった。
それが少し不思議だった。
『私が誰かのそばにいるだけで助けになるなんて?』
ビビアン皇女は大人になってから初めて社交界に姿を現し、見事にその存在感を示した。
ときに危機があり、周囲の助けを受けることもあったが、彼女が自ら立派にやり遂げたという事実に変わりはなかった。
人々が押し寄せ、しばしの休息が訪れた短い時間。
ユリアはビビアンの指先がかすかに震えているのを見た。
「とてもお疲れでしょう? 一人になりたいですか?もし私のせいでご迷惑をかけていたら……」
「いいえ、ユリア令嬢は大丈夫ですよ。」
ビビアン皇女は、欄干にもたれながらも手をひらひらと振った。
ユリアはしばらくの沈黙のあと、口を開いた。
「…ありがとう。さっきもそうだったし、今日ユネットの話題を出してくれて。」
「はぁ、その程度のことは令嬢から受けた助けに比べれば何でもないですよ。それでも“ありがとう”って言ってもらえると嬉しいですね!」
「応援します。でも、あまり無理はしないでください。」
ビビアンは、ふるえていた自分の手をぎゅっと握った。
「まあ、そうですね。大変でなければ嘘じゃないですし。貴族の名前を覚えたり顔を覚えたりするのも、誰が誰の息子で娘かとか、仲が良いとか――多くの貴族たちが誰なのか。」
「……」
「これまで外で話せなかったこともたくさんあります。礼儀作法ももしかして緩んだかもしれないので、もう一度教えを受けました。」
以前は人と会うのも大変だったと。
ベールで顔を隠さないと不安だったと。
そんな時期があったのだろうと、まるで他人事のような口ぶりだった。
ユリアは小さく笑った。
だが、ビビアンには一つ知らないことがあった。
「でも、皇女殿下……」
「はい?」
「社交界では、“馴染む人”も大事なんですよ。」
ユリアはまるで予想していたかのように言葉を続けた。
最大限に感情を排したように。
「前ほどではありませんが、それでも私の評価はまあまあです。これからは今日のような日には、他の貴族の令嬢たちと一緒に過ごされるのがいいでしょう。」
ビビアン皇女はもともと消極的な性格ではなかった。
ただ肌の問題で自信を失っていただけだった。
しばらくは社交界に久しぶりに戻ってきたために、ぎこちなく振る舞うしかなかったが、すぐに堂々と適応していくだろう。
『それに比べて私は違う。』
今日のように、少しだけ平気なふりをすることはできる。ほんの少しの間だけ。
しかしユリアには、今までずっとつきまとってきた悪夢があった。
プリムローズの悪女、妹を食らう怪物——
今ではもう起こっていない出来事だとしても、激しく非難された記憶は今でも鮮明だった。
血の繋がった家族の手で死んだ記憶までも。
『社交界で一度ついた悪評は、簡単には消えない』
リリカが起こした数々の出来事が明らかになったのだから、ユリアの無実を人々はわかってくれるだろうか?
まさか。
人間は、自分が間違っていたことを簡単に認める存在ではない。
今は以前より静かにしているから静かなだけで、ほんの少しでも注目を浴びることをすれば、再び新たな噂が舞い戻ってくるに違いない。
「もちろん、打算的な貴族たちもいます。けれど——」
しかし、かえって彼らの助けを受けることで社交界に適応する助けになるかもしれない……。

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