悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す

悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す【31話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。 ネタバレ...

 




 

31話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 温室④

「私たちのユリアが本当にやってのけたのね……」

その後、公爵夫人が視察に訪れて作業の進行状況を見ていき、いくつかのアドバイスを残した。

「最近、シワを気にしてる奥様方が多いのね。あなたが数日前に作ってくれたアイジングクリーム、もう少し作ってみてはどう?」

「それなら、材料をもっと増やさないといけませんね。」

「…!?」

そしてその言葉を聞いてサッと凍り付いたのはフローレンスだった。

再生する作物が変われば、その土地に気を配るのはまさに自分の役目だからだ。

彼はもっと注意を払わなければならない風通しや日照りに気を取られて、パニックに陥ってしまった。

「あ、あの…。」

その時、プリムローズ公爵夫人がフローレンスに興味深そうな顔で近づいてきた。

「そう、この子がここを管理している精霊使いなの?」

「は、はい。」

フローレンスは公爵夫人を見てさらに凍り付いたが、幸いにも彼女は娘のユリアのような意地悪な性格ではない。

幼いのに立派な仕事をしているからと、褒めながらお菓子を渡して去っていったのだった。

生クリームがたっぷりのチェリーパイやチョコレートのかかったエクレア…。

どれも高級なデザートだ。

公爵夫人の心遣いによるおやつに、フローレンスはすっかり気分が晴れ、再び働く意欲を取り戻した。

「うん、あの方はいい人みたい。」

「……」

だがセリアンはそのおやつを口にしなかった。

ユリアが割って入り、「セリアンは食べない方がいい」と言ったからだ。

「精霊術を扱うのに害になるんです。」

「まあ、そんなつもりじゃなかったのに!ごめんね、ユリア。」

「大丈夫ですよ。ただ、セリアンが強くなろうとする意志が素晴らしいからです。フローレンスはまだ食べても平気ですよ。まだ幼いですし。」

「私がいつ強くなるって言った?」

セリアンは慌てたが、公爵夫人の前でユリアに向かって問い詰めようとした。

― セリアン、あなたはどんなことにも屈しないって言ったじゃない。

― …。

―でしょ?

きっとユリアに奴隷として売られてきた時も、「魂まで屈服はしない」と言った言葉をなぞっているのだろう。

『私、見抜かれたのかな?』

セリアンはちらりと公爵夫人がフローレンスに「食べてね」と言い残して置いていったバスケットを見た。

中にあるのは一つも食べたことのない高級デザートばかり。

どんな味なんだろう。

これほど甘い香りがするところを見ると、きっと天上の味に違いない。

セリアンはフローレンスに向かってぽつりと言った。

「君も大人になったら、それ食べられなくなるよ。」

「えっ?」

「前に“兄さんの役に立ちたい”って言ったじゃん?だったら、精霊術を強くするには努力しないといけないんじゃない?」

「で、でも……」

「え、その言葉って本気じゃなかったの?弟として兄さんに期待ばっかりするつもりだったの?そっか、兄さんだけ頑張ればいいんだ。」

「違うよ兄さん!僕だって、大人になったら食べない!」

「無理しなくていいよ。兄さんは本当に大丈夫だから……」

「僕は大丈夫じゃない!」

エクレアを口にしていたフローレンスの顔が涙でにじんだ。

胸に冷たい罪悪感がこみ上げてきた。

突然、夢中でデザートを飲み込んでいた胸が苦しくなってきた。

『胸焼けしそう…。』

フローレンスはじわじわと湧き上がる罪悪感にソワソワした。

確かに、野菜じゃない他の食べ物を食べると精霊との親和性が少し落ちる気もした。

でも、でも!

生まれて初めて食べるおやつはとても美味しくて…。

ユリアがくれる食べ物もみんな美味しかった。

『お兄ちゃんが「お父さんが悪くてお前は美味しいものを食べられなかったんだ」って言ってたな?昔は私が食べてると、頭もなでてくれて…。』

そう思えば、最近セリアンも私の頭をなでてくれるようになったな。

彼は拗ねて返さなかった。

「かわいい」なんて言われたこと、いつだったかも覚えていない。

それよりなにより、さっきの態度は何なんだ?

『僕に自慢してるの?自分はお菓子食べられないって?』

フローレンスの、わずかに滲んだ眼差しはセリアンに届いていなかった。

彼は背を向け、食べられなかったデザートを見つめながら、辛くて、しばし思考に沈んでいたのだった。

『公爵令嬢に、公爵夫人まで出会うなんて。人生、思いがけないことが起こるもんだな。』

奴隷として売られに行くだけだと思っていた時も、すべてが終わりだと思っていた。

それなのに、彼は思いがけず精霊術の訓練を始めることになり、守ってあげなきゃと思っていたフローレンスも、少しだけ逞しくなっていた。(ちょっとだけだけど)

『もう何が起きても驚かない自信がある。』

しかしその日の午後、ユリアはセリアンを驚かせるニュースを持ってきた。

「今日、エノック皇太子殿下がいらっしゃることになったよ。」

「えっ?」

「お姉ちゃん、そ、その方がここに何しに来るんですか?」

「私のビジネスパートナーだから。」

「……。」

フローレンスは驚きで口をぎゅっと閉じた。

セリアンはこれまで想像を超える出来事が続いていたので、もう考えることを放棄した。

そして間もなく、エノック太子は本当にやって来た。

「実際に作物が育っているのを見ると、やっぱりすごいですね。」

高温多湿の環境では枯れてしまうアロエと、その環境で逆に元気に育つココナッツが同時に育つ光景。

ユリアはそれを可能にした兄弟を、エノック皇太子に紹介した。

「作物に合った環境は、精霊師が整えているんです。」

「精霊師……」

「殿下、最初に思っていたより、化粧品店を開ける可能性があると思いませんか?」

フローレンスは目をうるませながら、唇を噛みしめた。

エノック皇太子はその挨拶を受け取りながらユリアに尋ねた。

「では、材料の再生産すべてが精霊師にかかっているということですか?」

「若くても実力があるから心配しないでください。」

二人の精霊士を見渡していたエノック皇太子が口を開いた。

「でも、私も魔法使いですので、少しくらいはお力になれたかと……。」

「もちろん殿下も実力ある魔法使いですから温度調節もできたでしょう。でもこの遠く離れた場所に毎回お越しになるのは無理があります。」

作物の再栽培の状況はその都度変わるし、どの作物を追加で植えるかによっても環境を調整しなければならない。

特に、何かが育つ領域に関わる気運なら、自然と親和的な精霊が魔法よりも優れている。

「さまざまな区域をきめ細かく管理して、変化が起きた時すぐに対応できる管理者が必要です。ここに滞在してください。」

ユリアの言う通りだ。

精霊師が継続してここにいる方がよいだろう。

「……」

しかし、そうだとしても少し寂しい気もした。

思考を続けていたエノック皇太子は、そんな自分自身に驚いた。

『自分がどうしてこうなんだ?』

ありがとうございます。私の言葉に気を配ってくださって。そして……今日、私の夢を現実にしてくださって。

吸熱壁を魔法で築いたとき、ユリアが喜び、感動していた姿はとても印象的だった。

あの感動していた様子は今でも鮮やかに思い出されるほどだ。

『……そうだな、認めるべきことは認めよう。』

実のところ、彼はユリアの事業を一番円滑に助けられるのは自分だと考えていた。

ところが今日は、ユリアが大きな信頼を寄せる精霊士二人に出会ったのだった。

「信頼できる人ですか?」

「私が教育しましたが、ちゃんと従ってくれました。誠実な子です。」

皇太子の問いにもユリアは揺るがなかった。

ユリアがフローレンスに向ける信頼が、皇太子自身を自然と安心させたのだ。

一方、皇太子のいる方向を見ていたセリアンはふと、ユリアの髪の毛が首に絡んでいるのを見つけ、無意識にそれを取った。

「うん、ありがとう。」

ユリアは特に気にせず、そのままエノック皇太子に向けて話を続けた。

そしてセリアンは、今の自分の行動をすぐに後悔した。

『身分の高い方と話している最中なのに、出過ぎたことをしてしまった。』

いろいろあっても、相手は公爵家の令嬢。

しかし訓練を受けながら気楽に過ごすうちに、フローレンスを気にかけていた理由が薄れてしまった。

幸いその後、ユリアはあまり気にしていないようだったが……。

『皇太子が私を見る目つきが、なんだか変な感じがする。』

そして、それは正しかった。

エノック皇太子はセリアンの持つ能力ではなく、別の側面にも注目するようになったのだ。

『精霊師が惜しげもなく好意を示している。』

淡い青緑色の髪はみずみずしく、ただでさえ目立つ容姿だが、笑顔を見せると驚くほど華やかだった。

独特の荒い線を持ってはいるが、美しいとされる部類に入る顔立ちだった。

しかも精霊術は非常に希少な能力であると知っていた。

ユリアが連れてきたからには、それ相応の価値があるはずだと。

しかし…その相手の中に、やけに落ち着いた成人男性が混じっていたのが問題だったのかもしれない。

『無駄に意識してしまったかも…。』

どうにもこの空気感が気に入らないと考えていたエノック皇太子は、そんな自分に苛立ちを感じた。

自分はこれまで外見で褒められることは多かったが、人生で他人の好意を気に留めたことはなかったのに…今は一体何をしているのか。

 



 

 

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