こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

109話ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 集結④
「きゃっ!」
私は悲鳴とともに、カミーラから吹き飛ばされた。
しっかりとした胸に背中を預けたとき、振り返るとカッシュが私を支えていた。
私は前を見る。
カミーラの悲鳴のような声が聞こえた。
「な、何これ……!」
ものすごい風が吹き荒れていた。
「お前……いったい何をしたの!!」
カミーラの指先が灰となって崩れ落ちていた。
強風が吹き荒れるたびに、その灰は風に舞い上がっていった。
『ベラトリクスが……ついに気づいたのか。』
カミーラが自分の本当の娘ではないということに。
胸が締めつけられた。
ベラトリクスのもとへ行くために、数えきれないほど努力してきた。
その結実がこれだったのだ。
ドレイブ教授の書物から呪文を得て、サレリウムでリタと出会い、そして黒魔法によってリタの魂を呼び出し、神々の感応を受けてベラトリクスの世界へと渡ることができた。
ついに真実が伝わった。
これはベラトリクスが、レドと共に自分を欺いた邪悪な魔族に下す罰だった。
「いやああっ!お母さま!私の話をもっと聞いてください!これは全部、あの残酷な者たちの罠なんです!」
カミーラは自分の体が灰になっていくのを見て叫び声を上げたが、暴風はますます激しくなった。
ベラトリクスはもはや惑わされなかった。
「最期か。」
後ろからカイルの声が聞こえた。
レイハスもまた険しい表情で、カミーラの最期を見つめていた。
「死んでもお前たちを呪ってやる!」
凄まじかった彼女の声も、やがて出なくなった。
「つまらない人間ごときが私を……」
まるで砂が崩れるように、彼女の体は強い風の中に消えていった。
レドが作った邪悪な魂、偽物のカミーラ。
彼女はこれで完全に終わった。
かつて「主人公」だった彼女の、哀れな最期であった。
しばらくしてカミーラがいた場所には、何も残っていなかった。
もともと空いていた場所のように感じられた。
すべてが終わったという安堵とともに、さまざまな感情が押し寄せた。
「しかし、風が止まらないな。」
「むしろ……強くなっています。」
カイルとレイハスの声が聞こえた。
彼らの言う通り、空は濃い雲に覆われ、嵐はさらに激しくなっていた。
さらに、土砂降りの雨まで降り始めた。
本当に台風が来るのかというほどだ。
ドオォンッ!
その瞬間、雷鳴が轟いた。
神殿の木の一本に火がつくのが見えた。
ドオォンッ!
続いて雷が神殿の外に落ちるのが見えた。
私は険しい表情でその光景を見つめた。
[知識の神ヘセドは、ベラトリクスの神格がほとんど残っていないと言っています。]
[正義の神ヘトゥスは、ベラトリクスが自らを消滅させようとしているようだと言っています。]
[愛の神オディセイは、ベラトリクスの深い絶望を感じています。]
空に重く立ち込めていた黒雲が渦を巻き始め、トルネードのような形を作り出していた。
『これから……どうすればいいの?』
カミーラはすでに灰となって消えていた。
今、ベラトリクスをどう止めればいいのか、その方法がなかった。
ベラトリクスがなぜ自らを滅ぼそうとするのかは理解できた。
ただ一人、愛していた存在である娘が偽物であり、本当の娘はすでにレドによって地下に落とされていた。
裏切られ、また裏切られ、さらに裏切られてきた。
ベラトリクスにとっては、正気を失いそうな絶望を味わっているはずだ。
「神々よ、方法はないのですか?」
[芸術の神モンドは、対話を拒否する神を呼び出すのは困難だと語ります。]
私は慎重に唇をかみしめた。
このまま消えてしまってはダメ。
こんなふうにでは……。
「木の火を消せ!」
「東側の礼拝堂が落雷で崩壊しました!聖騎士たちを派遣してください!」
「都市に次々と落雷が発生しているそうです!」
後方から神官たちの慌てふためいた声が聞こえてきた。
「災害だ!災害が迫ってきている!」
「急ぎ、王宮から兵士たちが出動しました!」
しばらく黙って立っていた私は、視線をそらして自分の真後ろで私を支えていたカッシュと目を合わせた。
「……兆しが見えますね。」
ディエゴの言葉がこの意味だったのか、ようやく理解できた気がした。
「あなたがなぜその身体に入っているのかは分かりませんが。」
[神々は沈黙しています。]
カッシュはいつもと変わらない落ち着いた表情で私を見つめていた。
「それはどういう意味だ?」
「聖女様、ご無事ですか?」
カイルとレイハスが警戒した表情でこちらを見ていた。
近づこうとしたが、私は手を挙げてさらに近づくのを止め、走らないよう合図を送った。
そしてカッシュに言葉をかけた。
「今、助けをお願いできる唯一の方があなたであることを知っています。」
[神々が険しい顔でカッシュを見つめます。]
強い風が吹き、また吹き荒れた。
私はしっかりとカッシュの目を見つめた。
しばらくして、カッシュの口元に小さな微笑みが浮かんだ。
「今来てよかった。」
そして私の肩を軽く叩いたあと、前へと進んでいった。
「すべては秩序どおりに戻るだろう。」
私は息をひそめ、カッシュの足取りを見守った。
鳴と嵐が絶え間なく押し寄せるこの場所は、まるで大災害の現場のようだった。
しかし、そのすべてがカッシュを避けていた。
そして彼がかつてカミーラが立っていた場所に立った瞬間、空が開け、まばゆい光の光条がカッシュを貫いた。
「私の不完全な彫刻よ。」
あまりの閃光に驚いた私は身をすくめ、カイルが私を抱き寄せて守ってくれた。
爆発が起きたかのように、目を開けるのもつらかった。
「お前の試練はこの世界をより健全にするだろう。」
目を閉じている間にも、対話ウィンドウは鮮やかに浮かび上がっていた。
[太初の存在が、行方不明になっていた自分の娘を抱きしめます。]
[偽りの神ベラトリクスは絶叫しています。]
[太初の存在が偽りの神ベラトリクスをその胸に抱き寄せます。]
[偽りの神ベラトリクスの傷を、神聖な気運が包み込み癒しています。]
神殿に入ってきた神ではなかったが、彼らの行動は会話ウィンドウを通じて中継されていた。
「太初の存在」とは、太初の神を指す言葉だろう。
彼はすべての神の起源であり根源である。
[偽りの神ベラトリクスは、太初の存在にひざまずきます。]
[太初の存在が、偽りの神ベラトリクスに新たな階位を与えます。]
その瞬間、何かが爆発するような轟音とともに光の束が弾け飛んだ。
「副官様!」
私はカッシュの身を案じてその方向を振り返って叫んだが、
目には焼きつくような強烈な光しか映らなかった。
太初の神。
すべての神々の最高位にして、世界の創造主。
現在は神々と管理者たちにすべてを委ね、自らは「摂理」という無の存在となっていると言われた。
「おそらく滅びの危機に瀕した均衡のために、摂理が遣わした存在なのだ。」
返ってきたその言葉がまだ耳に残っていた。
今、彼はカッシュの体を借りて現れた。
裏切りの神によって失われた神々を受け入れるためかもしれない。
それもまた世界の均衡のための行いだとしたら。
すべての神々の父であり、世界の根源である彼が、今私たちの目の前にいた。
「お願いだ……」
カイルのうなるような声が聞こえた。
「どうなっているのか、さっぱり分からないな。」
確かなのは、今この目の前で起きていることは、もはや人間の領域ではないということだった。
私は初めて目を閉じて、神に心から祈った。
『みんなが無事でありますように。』
というのも、今自分にできることはそれしかなかったからだ。
その瞬間、メッセージウィンドウに光が走った。
[「偽りの神ベラトリクス」は新たな階位を授かり、「運命の神ベラトリクス」となりました。]
そして、さまざまな情報が私の頭の中に流れ込んできた。
「啓示だ!神の啓示だ!」
「おお!神よ!」
神力を持つ神官たちがその場にひれ伏した。
彼らの頭の中にも情報が流れ込んでいるようだった。
「これは……!」
今や手のひらをおさえたレイハスの声が聞こえた。
私は流れ込んでくる情報を整理した。
タイミングよく、対話ウィンドウにも要約文が表示された。
【太初の存在は、ベラトリクスの霊魂を人間のもろさと見事に融合させた。それは人間に似た神を創り出すためであった。】
[「偽りの神ベラトリクス」は人間の犠牲を代価に人間の運命を観察する資格を得ました。]
[「偽りの神ベラトリクス」は運命の神として人間の運命に関与することになります。善き者たちよ、喜びなさい。悪しき者たちよ、嘆きなさい。不幸に苦しむ者たちよ、あなた方の人生の重荷を神と共に背負いなさい。]
[世界の人間たちは運命の神を通じて新たに適応されることになります。]
[新たな神が誕生しました。]
その瞬間、強烈な閃光が空を突き抜けて上空へと昇っていった。
『運命の神……。』
神々は人間を完全には理解できないだろう。
人間がどれほど無力で、どんな苦痛を抱えて生きているのか。
それを観察するのと、直接経験するのとでは違いがある。
ベラトリクスはさまざまな試練を通じて人間の人生を経験してきた。
愛し、裏切られ、野望を抱き、再び裏切られた。
そして真の絶望に陥り、自らを消そうとした。
「運命の神」――ベラトリクスにはぴったりの称号だと感じた。
しばらくの間、空に向かって打ち上げられていた閃光が消えると、周囲には静寂だけが残った。
そして目の前には、金色の対話ウィンドウが輝き、成功を知らせていた。
[『神託LV.6』がオープンします。]
[神託の最高レベルに到達しました。]
[運命の神ベラトリクスがあなたの神託に入ります。]
【庭園 8/8】
[あなたは最終ミッションを完了しました。最終ミッションの報酬は寺院を出た後、自動的に支給されます。]
カイルのそばにいた私は、ぼんやりと会話ウィンドウを見たあと、前に歩き出した。
終わった。ついにすべてが終わった。
体が震えた。
「おお!慈悲深き神よ!」
「ありがとうございます……!」
「早く木の火を消せ!」
「大神官様と聖女様をお呼びしろ!」
「皇太子殿下にご報告を!」
後ろでは人々のざわめく声が聞こえてきた。
しかし、私の視線はある一点に集中していた。
光があったその場所に、カッシュが倒れていた。
「副官……。」
駆け寄る私は、今にも崩れ落ちそうな気持ちで声をかけた。
声が震えた。
あの激しい光の中心にいた彼が無事であるはずがない。
そう思わざるを得なかった。
「副官!副官!」
彼のもとにたどり着いた私は、慌てて膝をつき、カッシュの状態を確認した。
彼の頬に手を当ててみると、かすかな体温が感じられた。
目は閉じていたが、微かに呼吸の音が聞こえた。
涙があふれてきた。
「副官……!カッシュ……!」
私のそばに近づいてきたカイルがカッシュの状態を見ながら言った。
「奇跡のようだ。」
さっきカッシュが現れたときに感じた神の気配は感じられなかった。
太初の神が一時的にカッシュの体に宿って、また抜け出した形だと推測した。
あるいは、私にはまったく感じ取れないほど、彼の背後に再び隠れたのかもしれない。
幸い、ぼんやりとした彼の様子に絶えず頬をつたって涙が流れた。
私を見つめるカイルが一瞬視線をそらしてからカッシュを優しく抱き上げた。
そのとき、デイジーが駆け寄ってくる音が聞こえた。
「聖女様!大丈夫ですか?さっき吹き飛ばされて風に流されてしまいました。」
デイジーは力なく倒れているカッシュを見て驚き、私を見た。
そして涙でいっぱいになった私の目を見て、私を抱きしめた。
「聖女様、ううっ……。副官様はきっと良いところへ行かれます。」
強いエネルギーの爆発に近づけずにいたが、ようやく駆けつけた神官たちに続き、カイル、レイハスがカッシュの遺体を見て声を上げた。
「聖女様が悪しき魔族を完全に退けられました。」
「なんてことだ、ロイド副官……。こんな形で逝ってしまわれるとは……。」
『死んで……なかったんだ。』
「副官様を私の部屋に連れていってください。」
「むしろ皇宮に連れていく。」
カイルは私の言葉を聞かずに眉をしかめた。
「ロイド副官は休まなければならないでしょう。」
なぜか声が少し荒くなったカイルに、レイハスが低い声で言った。
「他の場所に寝かせます。聖女様の部屋ではありません。」
その言葉を聞いて、カイルが眉をぴくりと動かし顎をぐっと引き締めた。
「えっ、生きていらっしゃったんですか?」
デイジーの声が遅れて耳の後ろから聞こえてきた。
続いてカイルの声が聞こえた。
「さっき……ロイド副官が……合ってたのか?」
彼の視線は非常に鋭かった。
「違いました。」
私はカイルの言葉に素直に答えた。私でも気づくほどだったので、繊細な気配を読み取るソードマスターであるカイルも察していただろう。
「すべては副官様が目覚めてこそ分かるでしょう。」
いつの間にか夜が明けていた。
神官たちの中にはひざまずいて礼拝する者も数人いた。
私は自分の首にかけられたリタのペンダントを握りしめて言った。
「すべてが終わったなんて……信じられません。」
邪神レドが消滅し、そして彼が操っていた邪悪な魂、カミーラも消滅した。
彼らに騙され、裏切られたベラトリクスは『運命の神』として再誕したということだ。
『神託も……静かになったのね。』
神託の窓はまるで死んだかのように静まり、ミッション報酬のウィンドウだけが光っていた。
まるで嵐が去った後のようだった。
「アリエル。」
カイルの低い声が聞こえた。
そして彼の手が私の肩を包んだ。
彼の体が触れてはいなかったが、ぴったりと寄り添うように向き合った。
私の肩の方へ少しだけ身体を傾けた彼の声が聞こえてきた。
「僕が見た以外にも知るべきことはたくさんあるけど……今は……無事でよかった。」
溢れ出る感情を抑えているような穏やかな声だった。
私は彼に微笑みかけた。彼はしばらく私を見つめた。
そして手を伸ばして私の髪にそっと手を添え、撫でた。
まるで大切なものを見るように――。
少し遅れて神殿に到着したディエゴは硬い表情で神殿の中に入っていった。
天地が震動し、空から光の柱が降り注ぎ、地面に閃光が降り注いでいるのを見た。
「こんにちは、ベステレ殿下。」
「八柱の神のご加護がありますように。」
あいさつを交わす神官たちの背後で、強大な気配を感じる場所へと向かうと、騒然とした痕跡が目に入った。
木々は何本も引き抜かれ、地面は隕石でも落ちたかのように至る所に大きな穴があいていた。
「災いを起こそうとしていた魔族カミーラの野望が明らかになり、我らの聖女様がその邪悪な魂を消滅させたとのことです。」
「聖女様に八柱の神の栄光を!」
神官たちが来て、アリエルを称えた。
「まさかこんなことが起こるなんて。」
昨日会って、首飾りに黒魔法をかけておいたのが本当に幸いだった。
いずれにせよ、カミーラは完全に消滅した。
それはディエゴにとっても胸のすくことだった。
「朝、誰がここにいましたか?」
「聖女様と大神官様、そして皇太子殿下も突然現れました。あ、カッシュ・ロイド副爵様もです。」
あちこちに砕け散った彫像を見れば、ソードマスターである皇太子がここにいたのは当然であり、大司祭が神殿にいたのも当然のことだった。
「やはり、昨日の気配……神だったのか。」
ディエゴは目を細めた。
この程度の神力、聖力、いやそれ以上に強烈で比類ないほどの気配がまだ残っているとしたら、神自らが姿を現したに違いない。
人間界の均衡を崩してはならない神がこれほどの力を行使するには、二つに一つしかない。
召喚を誤ったか、それともそのものが均衡そのものか。
『まさか太初の神だったりして。はぁ……』
「本日の件により聖会は中止され、これより臨時の礼拝が行われます。もしお祈りをご希望でしたら、あちらの祈祷堂に信徒様方がおられますので……」
「結構です。」
ディエゴは震えている神官の言葉を遮った。
さらに調査を進めねばならないが、強大な神格であるベラトリクスが結局は消滅しなかったことは確かだ。
莫大な力を持つ神の抑圧的な力によって、ということだ。
「でも、私は……」
思わずディエゴが足を止めた。彼の眉がぴくりと動いた。
「なぜここに来た?」
ふとアリエルのことが思い浮かんだ。
「そうか。これは神々の仕業だな。」
サレリウムまで自らの足で踏み入ってきた彼女が今回はどんな危険を冒したのか。
それを思って神々も気にしていたようだ。
この痕跡を見ると、アリエルがまた無謀な行動をとらなかったとは断言できない。
「はあ、まったく。」
ディエゴはため息をついた。
いくら聖女とはいえ、ただの人間の女の後をこっそり追って、何を考えていたのだろうか。
『好奇心も過ぎれば足を鈍らせるものだな。』
とりあえず魔界に戻らなければならないと思った。
人間たちの間にいるのが面白くなってしまったせいか、よくない癖がついたようだ。
再び足を向けようとしたその瞬間、どこからか感じる視線に目を細めながら、彼は右上を見上げた。
『……錯覚か?』
バスケットを抱えた慈愛の神の銅像があった。
『私を見ていた気がするのだが。』
バスケットの中には、人々に惜しげもなく分け与えようとしているかのように、卵がいっぱい入っていた。
ディエゴは自分の神の銅像を眺めていたが、再び歩みを進めた。









