こんにちは、ちゃむです。
「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

192話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最強キャラが私に執着する②
しばらくして、ペステローズ邸は久しぶりに客人を迎えた。
「久しぶりだな、ダリア。」
「まあ、なんてこと!?」
ダリアも驚きと嬉しさを隠せず、彼女と軽く抱擁を交わした。
願いを一つだけ残して、その後ぱったりと消息が途絶えていたので、彼女が首都から姿を消したのだと思っていたのだ。
ベオルドは歳を取らないせいか、本当に変わらない。
彼女はずっと同じ姿のままなのに、ダリアが成長したことで、いつの間にか姉妹というより友人のように見えた。
もちろん、一言でも会話を交わせば、決して友人として釣り合う相手ではないとすぐに分かるのだが。
久しぶりに彼女の姿を見た途端、ある光景が脳裏をよぎった。
アセラスとの最後の戦いで、彼と共に亜空間へ入ったセドリック。
そして、その亜空間を閉じることで解決したベオルド。
だが、冷静にその時のことを思い返してみると何か引っかかるものがあった。
何かがおかしい。
ベオルドの能力は無効化だ。
しかし、他の超越者たちの特殊能力は無効化できないと言われていた。
それなのに、どうしてセドリックが作り出した亜空間を解除できたのか?
ルウェインに尋ねると、彼は飄々とした口調で答えた。
「魔法陣も私が作り、構造も私が設計したので、著作権は私にあります。ただし、魔力を提供することは契約外ですね。」
「ああ……。」
そんなことも知らず、ダリアはただベオルドを呼んだだけだった。
結果が良かったからまだしも、もし失敗していたら、大惨事になっていたかもしれない。
少し腹立たしくなってきた。
顔がほんのり赤くなってしまう。
ルウェインは彼女を見て、優しく微笑んだ。
もし他の人が見たら、とんでもない誤解を生むような光景だったが、彼にとっては、ただのいつものやり取りにすぎなかった。
「いずれにせよ、あなたの計画がこの地にそぐわないならば、それを聞いた皇太子殿下が喜ぶはずがありませんね。」
数々の偶然が重なり、何とか事態はうまく収束した。
彼女は眩暈から目覚め、目の前の光景を見つめた。
ベオルドは頬杖をつきながら、長くあくびをした。
「しばらく首都に滞在することにしたよ。うちの末っ子が、ついに遅めの結婚をするからね。」
「あ、それ、私も聞きました!」
ダリアは口元を押さえた。
ベオルドが家督を剥奪されて以来、彼の弟が現在のメルセイン公爵家を支えていた。
彼は30代後半に差し掛かってもなお独身を貫いていたが、なぜ突然結婚を決意したのか?
「さあな。運命的な相手に出会ったとか?」
「わあ……。」
ダリアは驚いて目を瞬かせた。
ベオルドはその反応に感動し、目に涙を浮かべた。
「まあ、そういうのは新婦が聞くと喜ぶって話さ。ずっと裏でこそこそ生きてきたけど、
最近はちょっと退屈になってきてさ。だから少しは騒ぎを起こそうかと思ってね。」
「ああ……。」
一瞬、場の雰囲気が静まった。
ベオルドは本来の目的であるお茶を楽しむことに戻り、そのお茶に添えられた角砂糖をつまみ、口に運びながら話した。
「それより、お前も結婚するんだって?皇太子と?」
ダリアはちょうどお茶を飲んでいたが、その言葉に驚いてむせてしまった。
ベオルドは、慌てる侍女の代わりに無言でトングを差し出し、ダリアの背中を軽くさすった。
彼女は息を整えながら必死に否定した。
「あ、まだ決まってません!」
「その反応はどうした?もしかしてケンカでもしたのか?」
ベオルドの勘は鋭かった。
ダリアは言い訳しようとしたが、途中で諦め、肩をすくめて苦笑した。
ベオルドは片目を細めたが、特に気にしている様子はなかった。
「本当にケンカしたみたいだな。まあ、どうせ結婚するんだろ?それなら、頼みがあるんだけど、俺の弟の結婚式で、ちょっと付き合ってくれないか?」パートナーとして来てくれ。結婚式が明日なのは知ってるよな?」
相変わらずベオルドの会話の進め方は、ダリアの頭を混乱させる。
まるで当然のように「女性のパートナーを連れて行く」と話すが、その過程をすっ飛ばしすぎている。
AからZへ一気に話が飛ぶような展開には、思わず唖然としてしまう。
「……私が、ですか?」
「お前を連れて行った方が面白くなりそうだからな。」
「………。」
ダリアは反射的に喉の渇きを感じた。
ベオルドは彼女の反応を観察し、やや親しげな口調で続けた。
「俺も最後の願いを叶えないといけないからな。」
「それと、私がパートナーとして行くことと何か関係があるんですか?」
ベオルドは言葉に詰まったのか、あるいは話すのが面倒なのか、ただ空を見上げながら無言でいた。
そして、あっさりと言った。
「お前らケンカしたんだろ?皇室の外戚の結婚式だぞ。セドリックも来るから、お前も来い。これ以上何も言わない。」
「……。」
ダリアは唇を引き結んだ。
『どうせお兄様と一緒に行くつもりだったのに。』
この国では、結婚を控えた二人が他の結婚式にパートナーとして出席するのは、あまり適切ではない行動とされていた。
伝統的な理由はよく分からないが、そのおかげで彼女も今回の婚礼の晩餐会にはヒーカンと共に正式に参加することができるようになった。
「あいつがお前と俺のいとこが会うのを、ただ大人しく見守るだけか、よく見てろよ。」
「……。」
ダリアは何も言えなかった。
ベオルドはメルセイン公爵の姉だった。
メルセイン公爵の結婚式だから、ヒーカンもそれなりに妥協する可能性が高い。
それに、ダリアの話によれば、ヒーカンと一緒に行くよりもベオルドと行く方が、セドリックとの和解がしやすいだろう。
すぐに和解するつもりではなかったが、彼女のプライドのせいで、わざわざ自分からセドリックを訪ねていく気にはなれなかった。
セドリックもまた、ダリアを探しに来ることはなかった。
『今回の機会に、ちゃんと話せればいいのに……。』
彼女は素直にうなずいた。
ベオルドは彼女らしくない仕草で手のひらを重ねながら喜んだ。
同じ時刻。
セドリックは、灯りがすべて消えた部屋で食事を片付け、天井を見つめていた。
しばらく考えた後、表情を引き締め、席を立った。
しかめっ面をすると顔が傷つく。信じられるのは表情だけだった。
『ダリアはなぜあんなことをしたのか?』
彼はじっくりと考えた。
彼女が理由もなくそんなことをするはずがない。
彼がこれまで犯した間違いが多すぎて、もう自分を見たくないということなのか?
それとも、彼女を傷つけないために、他の誰かを選んだ方が良いと考えたのか?
彼の瞳に寂しさが宿った。
『分からない。とにかく、まずあの男を殺してから考えよう。』
彼はこれ以上迷わず、冷静な判断と理性的な決断を下した。
今でもダリアを疑う気持ちは一切なかった。
罪があるとすれば、すべて自分にあった。
しかし、罪のない者の名簿にあの男が入ることは決してなかった。
一体何の資格があって、彼女の体に触れるというのか?
あの腕をすべて切り落とすべきだった。
さらに、ダリアが別の男を選ぶたびにその都度、すべてを処理して、最後には自分だけが残るようにしなければならなかった。
彼は、自分が狂っているとは思わなかった。
極めて正常だった。
苦悩に近い妄想が進んでいた彼の思考は、ある瞬間でぴたりと止まった。
『だが、もしダリアが本当にあの男を愛していたらどうする?』
それを考えただけで息が詰まった。
彼は自分を理解していた。
そうなれば、本当に彼女を解放してあげなければならないだろう。
だがその時、彼はその人生を耐え抜くことができるのか?
眩暈を感じた彼は、ベッドの木製の柱を掴み、身震いした。
『まず、あの男を見つけ出さなければ。』
『そして、殺さなければならない。』
『ああ、殺さずに静かに話をするだけにしよう。』
『その次に、一番残酷な方法で……』
「はは……」
セドリックは嘆息するように笑った。
握っていた木の破片が、彼の手の中で塵となって崩れ落ちた。
『ダリアは、そんな人間じゃない。』
彼女はセドリックを置いて、簡単に他の人に心を奪われるような人ではなかった。
もし別の状況だったら、セドリックはここで、
自分がした最初の誤解を正そうとしただろう。
しかし、すでに彼女と口論した後で、混乱した彼の精神は、すべての思考を極端に押しやることしかできなかった。
ダリアには何の罪もない。
彼女はセドリックを置いて、他の男と会うような人ではない。
したがって、すべての原因はあの男にあった。
何の関係もない結論を導き出した彼は、満足そうに微笑みながら考えた。
『まずは、あの男を見つけ出さなければ。』
明日、メルセイン公爵の舞踏会で、あの男はダリアと一緒に現れるのだろうか?
また腕を組むつもりなのか……。
『それなら、必ず殺さなければ。』
彼はカーテンを開けて、外を見渡した。
彼の気分のように、一点の曇りもない美しい晴天だった。
ついに長い憂鬱を振り払い、明るく美しい未来へ進む日が来たのだ。
誰が見ても正気ではない表情で、彼は幸福そうに笑った。
その外で、メルドンが静かにその一部始終を見守っていることも知らずに……。
「おい、これはダメだ。止めよう。」
メルドンはすぐにアドリシャを探し出し、告げた。
彼女は翌日、メルセインの結婚式の日にセドリックの暴走を止めるつもりで準備を進めていた。
礼服だの、何だのと慎重に用意を進めていたが、「すべて放棄しよう」 というメルドンの言葉は唐突だった。
アドリシャは目を大きく見開いた、まだ何も理解していないまま。
「突然、それはどういう意味?」
メルドンもその美しい外見に感嘆したが、その整った顔立ちとは裏腹に、彼女と彼の運命を揺るがす言葉を放ったのだった。
彼は深刻な表情で言った。
「本当に俺たち、死ぬ可能性があるかもしれない。」
メルドンは冷静に、彼が見た場面を説明した。
すると、少し戸惑ったようではあったが、アドリシャも状況がかなり深刻であることを悟った。
「………」
「お前、今の身分は何だ?」
「ウェリスビーの私生児。」
「お前が消えたら、その家門も終わるってことだな。」
「それほど?」
「セドリック様が狂ってるのは知ってたが、こんな体系的に狂ったのは初めて見たな。これはダメだ、止めないと。」
「それでも、ちゃんと事情を説明しないとな。私が消えたら、ウェリスビーはなくなるの?」
メルドンも、この私生児の家門が歴史から消えてしまうのを見たくはなかった。
悩んでいると、彼はアドリシャを見つめた。
「お前、明日のメルセイン公爵家の結婚式に行くよな?」
アドリシャは深刻な表情で、静かにスプーンを持ち上げた。
「それを諦めずに行け。その後に裏切れ。それが唯一の生き残る道だ。」
アドリシャがセドリックに命乞いをするなんて考えもしなかった。
しかし……彼女も自分の失敗を認めざるを得なかった。
セドリックがダリアに向ける狂気じみた愛が、どれほどのものだったのか、完全には理解しきれていなかったのだ。
当然、愛するダリアを呼び寄せて、涙を流しながら愛を叫ぶものだと思っていたが……
「表向きは善人ぶって、平気なふりをしていたのに……。」
「平気」なわけがない。
アドリシャはため息をついた。
いや、むしろダリアひとりだけ助かればいいと考えるなら、彼女が国を売り払おうとも、「とても高く売れたな」と褒め称えれば、怒ることもなかっただろう。
問題は、ダリアひとりだけ助かって、周りの人間は死んでしまうということだった。
ダリアの前では平静を装っていたが、彼が内心震えているのは分かっていた……。
「こんな人間の元にダリアを送り出して、本当に大丈夫なのか?」
アドリシャはこめかみを押さえた。
どうせこの顔も、しばらくすれば寿命を迎えるだろう。
それならセドリックを少し煽って、からかうのにちょうどいいタイミングだと思っていたのに、彼の忍耐はたった一日も持たなかった。
「君の言う通りにするよ。明日、正直に全部話す。」
メルドンは、それを聞くと満足したようにコップを傾けた。
「鉱山は無効だ。」
「そうだな。この状況で鉱山なんて何の意味があるんだ?」
二人は乾杯して笑った。
しかし、明日何が彼らを待ち受けているのか、全く想像もつかないままだった。
メルセイン公爵の遅れた結婚式は、皆の祝福の中で行われた。
新婦はメルセイン公爵の従姉妹のようだった。
ベオルドは新婦にまるで興味がなく、ダリアも彼女がどんな人なのかよく知らなかった。
とにかく、二人は幸せそうに見えた。
だが、客たちの祝福の言葉の意味は半分だった。
半分は結婚を祝う純粋な気持ちで、もう半分は多くの祝福の言葉が飛び交い、そのうち半分はようやく公爵がベオルドの影から抜け出せたことへの祝福だった。
すべての人々の好奇心に満ちた祝福の中で、その好奇心を引き起こした張本人であるベオルドは、ダリアの手を引いて堂々と舞踏会場に姿を現した。
『今度はターゲットがあっちに移ったのか。』
というまた別の好奇心混じりの視線がダリアに向けられた。
つい彼女は弁明したくなった。
『ベオルド様はもちろん型破りではあるけど、そこまでではないのに!』
彼女が何度考えても意味が分からず、言葉を発しても好奇心の視線がさらに強まる気がして、結局何も言わずに口を閉ざした。
とにかく、人は非常に多かった。
新郎は皇后の弟で、四大公爵家の一つの公爵であるため、有名な貴族たちも結婚式に駆けつけていた。
ヒーカンはベオルドに素直にダリアを引き渡した後、一人で来ており、メルドンはメリダと一緒に来ていた。
彼らと視線を交わし終えた彼女は、周囲を見渡した。
『アドリシャは来ていないの?』
ハンサムな男性版アドリシャを見つける絶好の機会だった。
しかし、どこを見渡しても長身の黒靴の未練の影は見つからなかった。
ああ、メルドンも黒髪で少し近い雰囲気はあったが、アドリシャのように鋭い雰囲気はなかった。
本当に彼女はロマンス小説の主人公のようだった。
もしここにいたら、すでに多くの注目を集めていたことだろう。
だからこそ現れなかったのかもしれない。
やはりどれだけ探してもアドリシャは見つからなかった。
結局、彼女は最後まで見送っていた人物を見つけた。
遠くからでも輝く金髪と華やかな外見のおかげで、セドリックはどこにいても目立っていた。
彼は忙しい皇帝の代わりに皇后と共に無道会場に出席していた。
皇后はセドリックだけでなく、皇后付きの侍女の一人を伴ってきており、その侍女と主に話していた。
ダリアは彼が少しでも落ち込んでいるように見えればいいのにと思っていたが、彼はいつも以上に輝いて美しく見えた。
ダリアは大したことでもないのに無駄に怒ってしまった気がして申し訳なくなり、気にして少し眠れなかったのだが、彼の目の下にはかすかな影があった。
しかし、他の人々を見る彼の目には、妙に普段とは違う雰囲気があった。
何か違うと断言することはできないが、なんとなく落ち着かない感じがした。
彼女があまりにもじっと彼を見つめていたせいか、セドリックが彼女を見返した。
遠く離れたところで視線が合った。
少し嫌な気分になったが、視線をそらすとセドリックが傷つくことを知っていたので、そうもしなかった。
気まずい雰囲気の中、二人は互いを見つめた。
セドリックが先に穏やかに微笑んだ。
「大丈夫だよ」と言うかのように優しく。
まるで「仲直りしよう」という合図のように感じられて、ダリアも自然と微笑んだ。
「……あ、セドリック?」
彼女がどこを見ているのか察したベオルドが、彼女の背中を軽く叩いた。
ダリアは驚いて振り返った。
「二人で話してるといいよ。私は別の用事があるから。」
「用事ですか?」
「話すと長くなるよ。なあ、これが終わったら、お前がいいことをしたって認めろよ。今回が最後だってわかってるよな?」
『ついに?』
最後は特別に記念すべきものにしようと、まだ善行を一つ残していた。
そういう彼女がついに決心したのだから、何かものすごいことを考えているようだった。
いったい何だろう?
ダリアは不安と期待を入り混ぜながらベオルドを見つめた。
ベオルドは何の心配もないかのように明るく笑っていた。
彼女はセドリックの方へ体を預けた。
ダリアもセドリックの方へと向かおうとした。
素直にそちらへ足を運ぼうとしたその瞬間、とても深刻な表情のメルドンがセドリックに向かって歩いていた。
ダリアは思わず歩みを止めた。







