こんにちは、ちゃむです。
「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

193話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最強キャラが私に執着する③
メルドンは気が狂いそうだった。
こんなに絡み合うとは思わなかった。
どうすることもできなかった。
正直に謝罪して許しを請おうと思ったのに、祈祷会場に到着した途端、アドリシャはどこかへ消えてしまった。
こうなってしまうと、一人で謝罪してもただの独り言になってしまう。
しかし、ずっと来ない人をただ待つだけでは仕方がないので、少なくとも一人でもその行方を探るべきだった。
自分にはまるで歓迎されていないように感じる祝福の笑みを浮かべるセドリックの元へと向かった。
そして、彼に向かってそっと囁いた。
「セドリック様、お伝えしたいことがございますが……。」
「早く言って、消えろ。」
笑顔でそう言う彼の様子は、とても理性を保っているようには見えなかった。
今にも理性の糸が切れそうなことは明らかだった。
「お前のせいで、ダリアが俺のところに来れないんだ。」
あの目の中で煌めく狂気を見ろ――。
メルドンは無意識に喉を鳴らした。
ダリアは何も知らずに彼を見つめながら微笑んでいたが、この裏の顔を見てもなお笑っていられるのか、疑問だった。
「……それが……」
「……」
「そ、その……セドリック様が昨日ご覧になったことです。ダリアお嬢様と他の男性が……」
セドリックの瞳孔がゆっくりと開かれた。
メルドンはそのたった一言だけで、セドリックの理性が一気に崩壊したことを悟った。
『それは誤解です。』
そう言うには、途方もない勇気が必要だった。
思わず言葉を詰まらせ、どうにか言おうとしたその瞬間、誰かが彼の襟元をぐいっと掴んだ。
「ぐっ……!」
振り返ると、ベオルドだった。
彼女はセドリックとメルドンを交互に見つめた後、セドリックに言った。
「私に用事があるので、少し付き合ってもらえますか? ダリアはあそこにいるので。」
ダリア――。
その名前を聞いた瞬間、セドリックの殺気がゆっくりと薄れていった。
そして、微笑を浮かべながら答えた。
「わかりました、お義母様。」
「ちょ、ちょっと待ってください!まだ言いたいことが……!」
メルドンの叫びは空気の中に消えた。
セドリックはいつの間にか彼に背を向け、ダリアだけを見つめ、呆然とした目をしていた。
『終わったな……』
メルドンは目を固く閉じた。
すでに彼の未来が恐ろしく思えた。
ダリアは、メルドンがベオルドに連れ去られるのを見ていた。
彼女がなぜメルドンに用があるのかは分からなかったが、それは重要ではなかった。
それよりも、遠くから自分を見つめるセドリックと仲直りすることの方がはるかに重要だ。
今日はどうしていいか分からないほど美しい日だった。
ダリアは無駄に悩んでいたことが申し訳なく思えた。
彼女はセドリックに近づくと、すぐに彼の両手を取り、そっと持ち上げた。
「ごめんなさい。昨日、私がバカみたいなことで怒っちゃいましたよね?」
「………」
「セドリック様がそうおっしゃったのなら、理由があったのでしょうね……」
その言葉に、セドリックはなぜか目を潤ませながらダリアを見つめた。
まるで願うように、切実なまなざしで彼女の手を取って自分の手のひらにそっとのせ、言った。
「もう俺のこと、嫌いじゃない?」
ダリアは驚いて、すぐに首を横に振った。
「一度も嫌いになったことなんてありません。絶対に。」
「そうか……。」
セドリックはその言葉に、なぜか本当に安堵したような表情を見せた。
ダリアが少し冷たく接したからといって、そんなに悪いことまで考えてしまったのだろうか?
彼は疲れたように微笑んだ。
「それなら、いいんだ。」
いつも感じていたことだが、セドリックは彼女がどれだけ愛していると言っても、その半分も信じていないようで、どこか悲しげだった。
ダリアはそっと周囲を見回した。
セドリックはその動きを察して、一度手を離した。
周囲には人々が集まりつつあった。
周囲の人々は二人を見ていなかったし、見ていても気づいていなかった。
彼女はその隙をついて彼の頬をつかみ、ぎゅっと目を閉じたまま、唇を彼の唇に重ねた。
ダリアにとっては相当な勇気を振り絞った行動だった。
そして、そっと片方の目を開けた。
セドリックの目が暗く揺らいでいた。
その中に宿る感情は、測り知れないほど深いものだった。
ダリアの胸が高鳴った。
彼はすぐに彼女の腰を抱き寄せ、深く口づけた。
しばらくして唇が離れた。
ダリアは閉じていた目を開け、彼の頬をそっと撫でた。
「怒ってごめんなさい。もうしません。」
「いや、俺が悪かった。」
「………」
「俺は、お前が俺を愛してくれるなら、何が起こっても構わない。」
その不吉な雰囲気に、ダリアは何かが間違っていることに気づいた。
彼女は真剣に彼の目を見つめた。
セドリックは視線をそらした。
それでようやく、彼女はゆっくりと距離を取った。
「……セドリック様、大丈夫ですか?」
「………」
「本当に本当に大丈夫なんですか?」
「いや、心がすごく痛い。」
セドリックはついに吐露した。
彼はダリアの手を取って自分の左胸の上に置いた。
そして、いつも彼女の心をさりげなく掴むような微妙な表情を浮かべた。
「こんなに苦しくなるなら、何の約束もするべきじゃなかった。」
別の状況なら、また策略を考えただろう。
しかし、彼の唇の隙間からこぼれ出たこの言葉は、息をのむほどに真剣で深い感情が込められていた。
ダリアは呆然と彼を見上げた。
「わ、私が怒ったこと、そんなに衝撃でしたか?」
しかし、セドリックは答える代わりに、さらに目を細めた。
彼の顎がゆっくりと下がり、いつの間にか彼の顔が彼女の首筋に触れるほど近づいていた。
そして、そのまま深い息をついた。
「やっぱりダメだ。俺が取り乱しても、理解してくれ、ダリア……すべてを投げ打っても……これを話さなければ、きっと後悔する。」
「大丈夫です、何があったのか話してください。」
ダリアは彼の背中を撫でながら優しく言った。
セドリックは唇を強く噛み、血が滲むほどだったが、再びそれを解いた。
「ダリア、お前は……」
彼は言葉を詰まらせた。
その瞬間、彼の感情が大きく揺れ動き、魔力障壁が不安定になった。
「ダリア!どこにいるんだ?」
その間に、ベオルドの声が鋭く響いた。
「……伯母様?」
セドリックは疲れた表情で顎を上げた。
彼はダリアから距離を取り、一度顔をしかめた後、手を軽く振って魔力障壁を静かに解除した。
すると、少し遅れてダリアとセドリックを見つけたベオルドがこちらへと向かってきた。
セドリックはゆっくりと言った。
「何かご用でしょうか、伯母様?」
「ああ、皇太子殿下。ちょうど二人が揃っているところですね。せっかくですから、こちらへ来てください。」
ベオルドは非常に余裕のある態度を見せた。
腰に手を当て、まるで改善将軍のように堂々とした表情でダリアを見た。
「私の最後の善行を、とても素晴らしく飾りました。」
「それは何ですか?」
「私の弟の結婚式を妨害しようとした不届き者二人を発見し、拘束しました。」
「……それとセドリック様が何の関係が……?」
「見ればわかります。」
ダリアはセドリックを見た。
彼はゆっくりと顎を上げた。
その様子を見て安心したダリアは、彼の手をそっと握りながら、ベオルドの後ろについて行った。
ベオルドが止まったのは、メルセイン邸の結婚式場の裏手にある倉庫のような場所だった。
そこで彼女は誇らしげに自分の「戦利品」を見せた。
縄でぐるぐる巻きにされたメルドンとアドリシャが、体を動かすこともできないまま無言で座らされていた。
アドリシャはまだ魔法の効果が完全に解けていないのか、男の姿のままだった。
ワイシャツ姿で縄で縛られたアドリシャは、かなり屈辱的な印象を与えていた。
その姿に一瞬見惚れたダリアだったが、すぐにハッとしてセドリックを意識し、表情を改めた。
しかし、その小さな仕草を見逃さなかったセドリックの顔は、瞬く間に冷たくなった。
「ダリア。」
「えっ、はい?」
「俺、この男を見たことがある。」
「……え?」
「昨日、お前と腕を組んで歩いていた。」
ダリアは一瞬、言葉を失った。
そして、全てを理解した。
セドリックがなぜこんなに怒っていたのか、昨日の彼の様子がなぜあんなにおかしかったのか、すべてが繋がった。
セドリックがなぜ苛立ち、彼女を抱え上げたり、意味不明な言葉を投げかけたりしていたのか。
ダリアはショックを受けた表情で、アドリシャとセドリックを交互に見比べた。
アドリシャは申し訳なさそうに深く項垂れていた。
その時、結婚式が始まった。
祈りの前にベオルドによって拘束され、控え室に連れて行かれた。
おかげで彼女は自分の罪を弁明する機会すらなく、セドリックの様子を見ることもできなかった。
彼が顔を上げることもできない姿を見て、ダリアは確信した。
『アドリシャ、全部知ってたんだ!』
男の姿のまま、平然と腕を組んでいたアドリシャ。
彼が男でも女でも変わらないと思って気にしなかったが、まさか別の理由だったなんて!
ダリアは衝撃の中で喉を鳴らした。
今度こそ本当に後ろに倒れそうだった。
彼女はむっとした表情のベオルドに縋るように言った。
「こ、これは良い行いですね。ベオルド様、私を解放してくれることを祈ります。」
その瞬間、ダリアは自分が座ってもいない椅子の布が破れるような音を聞いた。
彼女が以前、酒の勢いでベオルドと結んだ契約が、本当に効力を発揮する瞬間だった。
ベオルドも同じ音を聞いたようで、険しい表情のまま、自分の心臓の上を撫でていた。
「……思ったよりも空っぽだね。」
「そうですね。」
「うーん……。」
彼女はそわそわした様子で、この場の重苦しい雰囲気を見回した。
なぜか自分がいるべき場所ではないと感じたのか、彼女はぎこちない態度で手を引っ込めた。
「じゃあ、友達と楽しい時間を過ごしてね。じゃあね。」
そして、ベオルドは言葉をかける間もなく、さっと消えてしまった。
残されたのはダリアとセドリック、そして罪人二人。
彼女はしばらく言葉を失っていたが、ようやく口を開いた。
「……これは一体どういうことですか?」
「お嬢様、申し訳ありません。」
「すみません……。」
セドリックだけが事情を知らず、裏切られた気持ちと怒りに震えてダリアを見つめていた。
ダリアはそんなセドリックに気まずさを感じ、胸をどきどきさせながら、ついに耐えられずアドリシャを指し示して言った。
「こ、この男、誰かに似てませんか?」
「……うん?」
セドリックはようやくアドリシャを見つめた。
そしてしばらくすると、彼の唇から新しい神を見つけたかのようなため息が漏れた。
「あ。」
「………。」
「………。」
「そういうことか。」
セドリックは沈んだ声で言った。
感情を必死に押し殺しているようで、それでも今にも張り詰めた糸が切れそうな声だった。
ダリアも驚いた様子でアドリシャを見つめた。
「アドリシャ、どうしてあなたが私にこんなことを!」
「私はただ……。」
ここで「姉妹」と言っても誰も理解できないだろう。
怒ったダリアを見たアドリシャは、まるで心が崩れ落ちるように感じた。
自分の過ちだとわかっていたが、それでもひどく申し訳なくて苦しかった。
「ごめんなさい。だから諦めて、全部話そうと思ったんだけど……。」
彼女のぎゅっと結ばれた目から、涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
美男の涙が持つ威力は絶大だった。
しかも、その涙の主が自分の一番親しい友人だというのなら、なおさらだった。ダリアは一瞬、言葉を失った。
「これからはこんなこと絶対にしません……。」
「……アドリシャ……。」
ダリアの心は激しく揺れた。
隣にいたメルダンもその様子を見て、自分も涙を流しそうになったが、なんとかこらえた。
理性を取り戻したセドリックも、彼女の変化をすぐに察知した。
彼は冷静な理性をもって、ダリアの目の前で縄に縛られた美男が哀れにも涙を流す姿を見せたところで、まったく助けにはならないと結論づけた。
彼は手を軽く弾いた。
すると、メルダンとアドリシャを縛っていた縄が解けた。
「二人とも、もう行け。」
セドリックは低い声で言った。
そしてアドリシャを鋭く見つめながら続けた。
「お前は後で俺と、もっと深く話をしよう。」
「……はい。」
すべてのエネルギーを失ったアドリシャは、力なくよろめきながら立ち上がった。
メルダンは素早く気を利かせて彼女を支え、腕を回して彼女を抱えたまま、二人で壁の陰に素早く姿を消した。
こうして、地下牢に残ったのはダリアとセドリックだけだった。
「ごめん、ダリア。俺が誤解してた。」
彼は乾いた声で言った。
「……本当に、どうしてそんなありえない考えをしたんですか?」
ダリアは呆然と彼を見つめた。
いろいろな思いが交錯して、頭が混乱していた。
セドリックに対して怒りをぶつけようとしたが、彼があまりにも絶望しきった様子だったので、こらえることにした。
よく考えてみれば、自分もあの場面を目の当たりにしていたら、きっと彼と同じ反応をしただろう。
怒りが収まると、今度は気の毒な気持ちがこみ上げてきた。
彼はどれほど長い間、何も言えずに心を痛めていたのだろうか?
それを思うと、彼に一度も怒りをぶつけることなく、ただ責めるような言葉を浴びせてしまったことが心に引っかかった。
「えっと、とりあえず場所を移しませんか?」
「……うん。」
二人は無言のまま庭園へと歩いていった。
中央の噴水の前にたどり着いたとき、彼女は足を止め、何も言わずにその場に座り込んだ。
そしてセドリックを見上げた。
「セドリック様。」
「うん。」
「私、いますよね。セドリック様が将来どんな間違いを犯したとしても、絶対にセドリック様以外の人とは会いません。なぜなら、私はセドリック様のことが大好きだから。だから、そうするんです。」
恥ずかしい言葉を口にしたせいで、彼女の頬は少し赤くなった。
それでも彼女は諦めずに続けた。
「………。」
「会っても大丈夫なんて言わないでください。見ていたら、全然平静じゃなかったのに、何が大丈夫なんですか?」
彼女は唇を噛みしめた。
セドリックはどうしたらいいのかわからない様子で、そっと微笑んだ。
その笑顔を見て、ダリアも安心した。
そして、その瞬間、彼の目からぽろりと涙がこぼれ落ちた。
ダリアは自分の目を疑った。
長い時間を共に過ごし、さまざまな出来事を経験してきたが、彼が泣く姿を見たことは一度もなかった。
だが、セドリックは本当に泣いていた。
彼自身も少し戸惑っているようだった。
それでも、表情はいつもと変わらず無表情のままだったが、目元には宝石のように輝く涙がぽろぽろと落ち続けた。
それも、一粒や二粒ではなく、絶え間なく。
セドリックは無言のまま、手で目元を拭い、涙を拭った後、少し呆然とした表情で彼女を見つめた。
しかし、しばらくするとまた涙がこぼれ落ちた。
それでも、彼は決して声を上げて泣くことも、表情を大きく崩すこともしなかった。
「……ごめん。なんでこんなことになってるんだろう?」
彼の声にはわずかに涙の気配があったが、必死に堪えようとしているのが伝わってきた。
「俺、お前のことがすごく好きなんだ。それで、こうなったんだと思う。」
「……。」
「バカみたいだろ?」
セドリックは力なく笑った。
その笑顔を見て、ダリアは驚いて思わず手を握りしめた。
彼女はそっと彼の涙を拭った。
彼は彼女の手に顔をうずめたまま、少し呟くように話し始めた。
「ただ……俺は、お前が望むことを全部叶えてあげたいんだけど……。」
「……。」
「うまくできなくて、もどかしい。ごめん、誤解してた。」
涙が持つ破壊力がどれほど大きく、圧倒的なものなのか、ダリアは身をもって実感した。
そうでなくても、目の前の彼がこれほど愛おしく、そして同時に切なく思えたことはなかった。
「……セドリック様!」
ダリアはあふれる気持ちを抑えきれず、彼の名前を呼んだ。
しかし、何を言えばいいのかわからず、ただ唇を噛んだ。
でも、こんなときに思いつく言葉、そして言いたい言葉は、たった一つしかなかった。
「愛してる」という言葉は、もう何度も交わしてきた。
「好き」「愛おしい」だけでは足りない。
だから、彼女は勇気を出して言った。
「私たち、早く……早く結婚しましょう!」
「……。」
「そして、お互いを永遠に愛し合うんですよね!」
彼女の大胆な宣言に、セドリックは再び笑みを浮かべた。
今度の笑顔はさらに明るく、赤くなった瞳が映えるほど美しかった。
その後、彼はダリアを抱き起こし、そのまま腕の中へ引き寄せた。
彼女の肩に顔をうずめ、しばらくの間何も言わずにじっとしていた。
そして、穏やかな声でようやく言葉を紡いだ。
「……そうしよう。」







