こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

113話ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 分岐点③
しばらくして、私はルータスに気になることを尋ねた。
「それよりも、上団主様は今後のことをどのようにお考えですか?ご快癒されたということは、何かご計画があるのではと思いまして。」
その言葉にルータスは目を細め、真剣な表情を浮かべた。
「ああ…… まずは息子がこれまで上団をしっかりと率いてきたかどうかを見直さなければなりませんし…… 貿易網も確認しなければなりません。変化する時代に合わせて…そして人材採用の面でも手を打たなければと考えているところです。」
その言葉を聞いた私は、思わず口を開いた。
「出て行ってみるのはどうですか?」
私の一言にルタスがぴたりと動きを止めた。
カッシュもまた、やや戸惑った様子を見せた。
ルータスはしばらく私を見つめると、少し困ったような表情を浮かべ、慎重に言った。
「これまではカッシュが商団を支えてきましたが、それでもこれはロイド内部のことです。」
[知識の神ヘセドは、「継承は円滑に済んでおり、商団は今やあなたのものです」と
ルータスに対して明快な宣言を下します。]
[正義の神ヘトゥスは、ヘセドの鋭さに対して文句も言わず黙認しています。]
私はここにカッシュの恋人として招待されたので、もしかすると出しゃばりすぎたと思われるかもしれない。
だから、はっきりと言葉を添えた。
「私は旅行についてお話ししているんです。」
そして私の言葉にルータスの目尻がかすかに動いた。
「これまで多くの感情を感じることもなく生きてこられたじゃないですか。その分、大変なことだったと思います。」
カッシュの視線が私に向けられているのを感じた。
「こんなにさまざまで貴重な料理がたくさん並んでいても、味を感じられなかったらどれほど辛い仕事でしょう。だから……傭兵として諦めてきた多くのことを、これからは楽しめる機会にしていただけたら、という意味なんです。」
ルータスの目が大きく見開かれた。
「この時計も、団長様のこれからの貴重な時間が祝福されるようにと贈り物にしたんですよ。」
[愛の神オディセイが、あなたの温かな心に拍手を送ります。]
彼はしばらく考えにふけっていた。
そしてひと呼吸おいて、少し笑みを含んだ声で言った。
「私の息子が、こんなにも女性を見る目があったとは思いませんでした。あなたのような方を恋人に選ぶとは。」
私は軽く微笑みながら肩をすくめた。
ルータスが言葉を続けた。
「呪縛が解けても、これまで生きてきた人生の習慣通り、義務となることにばかり時間を使わなければならないという強迫観念が私をとらえていたのです。」
彼は懐中時計を見ながら言った。
「そうですね。死の縁から脱しても、仕事のことばかり考えていたのですね。」
[芸術の神モンドは退職記念として、芸術の神殿に現金と芸術品を惜しみなく寄付する予定です。]
私はルータスを見ながら言った。
「時間って、誰にとっても大切なものですよね。だから……これまで団長様が失ってきたたくさんの時間を、今度は取り戻すような時間を過ごしていただけたらと思うんです。」
夜通し起きて美しい星を眺めること。
走り回る幼い子どもたちを見守ること。
昼間の風景に心を奪われること。
新しい人々と出会い、打ち解けていくこと。
どれも非生産的だけど、心を満たしてくれる行動だ。
ようやく傭兵生活から抜け出し、世界の美しさを知った彼には、いろんな味を知ってほしいと思った。
いつも習慣的に食べていたクリームスープだけじゃ物足りないから。
「これは後輩の恋人としてではなく、ただの聖女として差し出すささやかな提案だと思ってください。」
私の言葉に、彼は少し感動したように、しばらく沈黙していた。
そしてしばらくして口を開いた。
「幼い頃、父がこんな話をしてくれたことがあります。カッシュ、おそらく君は聞いたことがない話だろう。」
ルータスは少し寂しげに微笑みながら言った。
[すべての神々がルータスの言葉に耳を傾けます。]
「黄金の王国が徐々に堕落し、王族たちが言葉では言い表せないほど残酷になったとき、
太初の神が王族たちを悔い改めさせるために、美しい魂を持った少女を遣わしたといいます。」
初めて聞く話だ。
「少女は神の言葉を伝え、悔い改めるよう王に説きました。しかし王は酒に酔い、少女の首を城壁の外に吊るしたのです。そして……神の怒りが下りました。黄金の王国は滅び、人々は奴隷となり、王族は呪いを受けました。」
その話を聞いているうちに、なぜか心臓がドキドキと早鐘を打つように高鳴った。
「“この呪いはいつ終わるの?”と父に尋ねたことがあります。父はこうおっしゃいました。
“太初の神が許すときまで。そして……かつて殺された少女が私たちを許すときまで終わらない。”」
ルータスは私を見つめながら、少し潤んだ目で寂しそうに微笑んだ。
「“死んだ人間が許すまで呪いは解けない”。それはつまり、“永遠に呪いは解けない”という意味で受け止められて、この話が語り継がれてきたのです。・・・だが、あなたがこうしてここにいるのを見ると……」
彼の言葉は胸の奥深くに染み渡った。
「もしかすると、その少女は私たちを許してくれたのかもしれません。」
果てしなく長い歳月を越えて――その言葉を思いながら、彼は言葉を飲み込んだ。
[神々が過去の出来事を思い返してしんみりしています。]
[神々が互いに視線を交わしながらため息をついています。]
[神々があなたを温かい目で見つめています。]
私は何とも言えない感情で胸がいっぱいになりながら、彼らにこう言った。
「ロイドにも、もう神の赦しと祝福がありますように。」
ルータスと別れの挨拶を交わした私は、カッシュと一緒に邸宅を出た。
私たちは広い庭園の小道を歩きながら、共に散策を楽しんだ。
やや食べ過ぎたせいか、身体が重たく感じられた。
「素敵な方ですね。」
私の言葉に、カッシュはやわらかな笑みを浮かべた。
「父が気に入ってくれたなら幸いです。」
その言葉はなぜか気まずかった。
舅が嫁を気に入ったというのではなく、嫁が舅を気に入ったという話でよかったと……。
『ちょっと待って、私は何を考えてるの。』
私は自分の考えに驚いて、ふぅとため息をついた。
「でも……」
カッシュがそっと体を寄せて、私の額に自分の胸を当ててきた。
彼のたくましい胸におでこが触れ、私は少し戸惑いながらも彼を見上げた。
深い瞳が私を見つめていた。
「呪いが解けたのは、私も同じです。」
その言葉に、私は彼を不思議そうに見つめた。
「ですから……私のことも考えてください。」
私はその言葉に目を見開いた。なぜか彼の頬が少し赤く見えた。
[知識の神ヘセドが、愛の神オディセイの胸を小突きます。]
[破壊の神シエルが、ヘセドの肩を掴んで引き離します。]
[知識の神ヘセドは全身に鳥肌が立ち、「きゃっ」と声を上げます。]
彼の表情がやけに可愛く見えた。
だから思わずクスッと笑ってしまった。
「まさか、上団主様に嫉妬してるわけじゃないですよね?」
私の言葉に、彼は私の手を引き、自分の腕の中に抱き寄せた。
もう彼の顔は見えなかった。
「父が旅立てば、僕が引き続き仕事をしなければなりません。そうすると、聖女様と会う時間が減ってしまいますよね。」
少し不器用なその声が愛おしくて、私は思わず微笑みを浮かべてしまった。
「私も旅に出たいです。あなたと一緒に。」
胸がずっとドキドキしていた。
「じゃあ、今度は僕たちも旅行に行きましょう。今から少しずつ計画を立てて……」
アレスに行った時のことを思い出した。
同じ馬車で一緒にいたとき、眠っていて目が覚めると、私は彼の肩に頭を預けていたのだった。
「次はお断りします。」
「後継者様?」
カッシュは動じることなく言った。
「先手を打つつもりです。父が先に手を打つ前に。」
彼の声が聞こえた。
「明日の朝、神殿へ行きます。」
「えっ?えぇ?」
[愛の神オディセイがカッシュの決意を称えます。]
[慈愛の神オマンは、今夜が最後でないことを惜しんでいます。]
「全ての準備を整えます。」
私はカッシュの表情から気迫を感じた。
もう揺るがない目つきだった。
[信仰の神ルティナがカッシュの前に現れます。]
[カッシュの決意に心打たれた神々は、静かに見守っています。]
「明日、私は私自身の信仰と責任をもって神殿へ赴きます。それが私の選択であり、運命です。」
私は何も言えなかった。
ただ彼を見つめることしかできなかった。
私は彼の腕の中から離れて、もう一度彼を見て尋ねた。
「急ぎの予定はないのですか?」
「そうなんだけど……」
彼は手を伸ばして、私の頬を優しく撫でた。
「毎日一緒にいたくて、気が狂いそうなんです。」
その率直な告白に、私は心臓がドキドキと高鳴った。
「でも、大長老様が……」
「今回だけは親不孝者になりましょう。」
彼の力強い声に、私は思わず笑ってしまった。
頬はまだ熱く、胸はときめきでいっぱいだった。
「好きです。」
彼が再び私を引き寄せて、私を抱きしめた。
「私のほうがもっと好きです。」
そして私も彼の腰に腕を回そうとした瞬間、彼の声が聞こえた。
「そのまま手を置いていてください。」
そして低い声で、まるで囁くようにもう一度言った。
「あなたが我慢できなくなる前に、すぐに連れて行きたくなりますから。」
[破壊の神シエルが歓喜して雄叫びをあげます。]
[慈愛の神オーマンが、カッシュにはもう忍耐は不要だと抱きしめたがっています。]
心臓がドキドキと高鳴っていた。









