残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【67話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

67話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 氷の世界

ビアトンは空高く跳び上がった。

「こっちだよ、友よ。」

ビアトンの動きは空でも自由だった。

彼は魔剣士であり、魔力を自在に操って空中を移動していた。

まるで空中に地面があるかのように。

イザベルは驚いて目を見開いた。

『わっ、めっちゃ速い。』

残像が残るほどのスピードだった。

イザベルの目にはビアトンの動きがまったく追えなかった。

さすがは剣術帝国の首席補佐官らしい身のこなし。

彼の身体は光のように素早く動き、目の端にかろうじて残像が見えるほどだった。

『私も集中しなきゃ。』

イザベルがやるべきことは、自分のすべての魔力を引き出し、冷たい属性のマナを具現化することだった。

上級の魔法使いであれば、雪嵐を巻き起こすような大規模魔法も使えるかもしれないが、それは無理だ。

『私一人でもここに来ようと決めたんだから。』

しかし今はビアトンと一緒だった。

相変わらず怖かったが、それでも不安や恐怖は少し和らいだ。

『すごく大きな冷蔵庫を思い浮かべるんだ。』

いや、冷蔵庫では足りなかった。

『冷凍庫?』

冷凍庫を思い浮かべてみたが、どれだけ大きな冷凍庫を想像しても、あの城壁のように巨大な外皮を持つ巨人を収めるには足りなかった。

どんなにイメージしようとしても、イメージの中の冷凍庫よりも、あの1級魔物の冷気の方がはるかに冷たかった。

想像の中の冷凍庫が粉々に砕けた。

『冷凍庫では到底無理だ。』

そうなると、何か他のものを考えなければならなかった。

あの恐ろしい1級魔物の動きを感じながら。

『北極!』

北極には実際に行ったことはないが、ドキュメンタリーでたくさん見た。

氷で覆われた世界。

水平線の彼方まで氷山がぷかぷか浮かんでいる場所。

しかしテレビでしか見たことのない北極を具現化するのも、そう簡単ではなかった。

『あれ?』

ずっと昔、忘れていた記憶がふと蘇ってきた。

『そうだ。』

前世の幼い頃。

彼女には小さな願いがあった。

北極のような、とても大きな氷の城があればいいなと思っていた。

食べても食べてもなくならない巨大なかき氷。

北極のように広がる、想像の中の氷の世界には巨大なシロクマの友達も一緒だった。

シロクマの友達と一緒に北極の氷の世界を探検する想像。

病室に寝たきりだった彼女にとって、それはとても幸せな夢だった。

そのときはその想像に没頭して、3日間ずっとかき氷、かき氷、おいしい北極のかき氷を口にしている夢に浸っていた。

『あのとき、かき氷が食べたいって駄々をこねて、先生たちをずいぶん困らせたわね。』

魔法とはイメージを現実にすること。

イメージが鮮明で確固たるほど、魔法の成功率は上がる。

『北極のかき氷を思い浮かべるのよ!』

そう想像しながら目を閉じた。

魔力を引き上げながらイメージを思い描いた。

そのイメージを現実に引き出すには、さまざまな魔法知識と直感が必要だ。

そして北極の氷の城は、幼い頃にとても具体的でしっかりと想像していたものだった。

幼い頃に刻まれたものは、なかなか忘れないものだ。

『食べても食べてもなくならない氷の世界!』

冷気を帯びた風が吹き始めた。

 



 

ビアトンは、やはり帝国の首席補佐官らしい実力で、片目の巨人と互角に戦っていた。

しかし、少しおかしかった。

『私の知っている片目の巨人よりずっと弱い――』

「え?」

ドン!

巨大な棍棒がビアトンのいた地面に振り下ろされ、土煙が激しく巻き上がった。

『そこまでじゃなかったのに。』

この白目の巨人は、他の存在たちとはかなり異なっていた。

左肩に奇妙な模様が刻まれているのも特徴的だった。

『あの模様、一体何?』

それはドクロのような模様だった。

『どこかで見た気がするけど……うわっ!』

白目の巨人は疲れることなく、ひたすら棍棒を振り回し続けた。

時間が経つにつれて疲れるどころか、むしろますます力強くなっていった。

一方で、ビアトンは徐々に疲れを見せはじめた。

「陛下はいつお越しになる?」

しかしその時、突然冷たい風が吹き始めた。

暑さを吹き飛ばすほどの強い風。

その風には強烈な冷気が含まれていた。

ピリッ——

地面が凍り始めた。

まるで災害が近づいてくるようだった。

「これ……何?」

思わず視線を巡らせると、驚くような光景が広がっていた。

「城壁が凍った?」

城壁全体が氷でできているようだった。

まるで物語の本に出てきそうな伝説の「氷の城」のようだ。

青白い冷気がこちらへと猛スピードで吹きつけてきた。

『私も危ないかも。』

ビアトンは素早く身を引いて冷気の直撃を避けた。

しかし白目の巨人はそうはいかなかった。

巨人の足元が凍りはじめた。

ギシッ、ギシッ——

足の指先が凍り、足首が凍り、膝が凍り、腰まで凍りついた。

ビアトンは宙に浮いたまま下を見下ろした。

『まるで氷の彫刻になったみたいだ……?』

氷で彫られたような姿に変わり、完全に凍ってしまった。

『うわ、今度は何だ?』

茶色なのか黒なのか。

その中間くらいの大きさのウリのようなものが落ちてきた。

ほんのり甘い匂いがしたが、威力を無視できず皆避けなければならなかった。

「豆……?」

豆と呼ぶには殻が厚くてしっかりしていたが、どう見ても豆に似ていた。

「ふう。やっと涼しくなったね。」

ビアトンは周囲を見回した。

「ここって何、エルベ山脈なの?」

雪原、いや、氷原が広がっていた。

茶色の豆のようなウリがあちこちに刺さっており、黄色がかったモコモコした形の何かが所々に生えていた。

不思議だったのは、甘い香りがずっと漂ってきていることだ。

はっきりしないが、燃料のような匂いだった。

ビアトンは魔法を扱う魔剣士なので、これがどれほど非常識なことかを知っていた。

『これほど大規模な広域魔法は……一人じゃ無理だ。』

ビアトンはイサベルの方を見た。

イサベルは目をぎゅっと閉じて、魔法の詠唱を続けていた。

その詠唱は少し変だった。

「かき氷、かき氷、美味しいかき氷、トッピングはきな粉、練乳はスープだよ。北極グマの友だちと一緒に食べる北極かき氷。」

ビアトンは宙をまるで階段でもあるかのようにゆっくりと降りていたが、突然慌てて駆けだした。

「お嬢様!」

イサベルが倒れたからだ。

ビアトンは急いで駆け寄り、イサベルを抱きかかえた。

「大丈夫ですか?」

まず脈を確認してから、イサベルの様子を見守った。

イサベルの顔には血の気がまったくなかった。

「お嬢様?」

一級魔物を相手にするときでさえ比較的余裕を見せていたビアトンの表情から、余裕が完全に消えた。

ビアトンは心臓が止まるかと思った。

イサベルの体は冷たくなっていた。

『引き出した魔力があまりにも強すぎた。』

イサベルの幼い肉体が耐えきれないほど、魔力が強すぎたのだ。

その魔力の副作用で、体から活力が抜けてしまった。

『まずは体を温めないと。』

ビアトンはイサベルをしっかりと抱きしめた。

今は何も見えなかった。

彼の頭の中には「イサベルを守らなければ」という考えしかなかった。

『体温を上げてあげないと。』

再び魔力を呼び起こした。

もともと彼は魔剣士で、剣術のために魔法を補助的に使ってきた。

しかし彼の主な魔法は破壊と戦闘用であり、回復や安定のものではなかった。

そのため、どんなイメージを思い浮かべればイサベルを温かくできるか分からず混乱した。

焦る気持ちが募っていった。

ビアトンが生まれてから一度も感じたことのなかった焦燥だった。

『太陽だ。そうだ、太陽の光だ。』

そしてビアトンにとっての陽だまりはイサベルだった。

ビアトンは静かに目を閉じた。

背後には凍りついた1級魔物がいるが、いつ氷結魔法が解けて暴れるか分からないものの、それでも今のビアトンの世界にはイサベルしか存在しなかった。

『お嬢様を蘇らせるんだ。』

イサベルの周囲はいつも暖かく明るかった。

イサベルはいつも陽の光のようにまばゆかった。

ビアトンにとってはそうだった。

イサベルを蘇らせようと想像すると、魔力がすでにイメージを具現化し始めた。

暖かな温気が溢れ出し、イサベルの体を包み込んだ。

ビアトンが一度も使ったことのない、暖かい属性の魔力がイサベルの体を温め始めた。

『脈拍が……回復した。』

まるで消えかけていたかのようなかすかな脈拍が、徐々に力強くなってきた。

呼吸も戻ってきた。

まだ意識ははっきりしていなかったが、命に別状はないようだった。

『よかった……。』

ビアトンは一瞬、殺気を感じた。

馴染みのある気配だ。

すでに何度も被害を受けたあの化け物の気配だ。

凍りついていた外目の巨人が魔法を解き、城壁の上に飛び乗ったのだった。

もともと外目の巨人が城壁の上に登ってくることはなかった。

そのわずかな間に、なかったはずの知性すら備わったかのようだった。

『チッ。』

ビアトンが一人だったら避けていただろう。

しかし今はイサベルを抱えていた。

この状況でイサベルまで抱えて避けることはできなかった。

二人で一緒に避けようとすれば、二人とも死ぬ。

彼はすぐに決断した。

『俺の体で受け止める。』

避けるために魔力を使う代わりに、防御魔法と体の一部に魔力を集中させて防ぐことにした。

かなりの重傷を負う覚悟は必要だったが、急所さえ避ければ何とか持ちこたえられそうだった。

彼は腕の中のイサベルを傷つけるわけにはいかなかった。

その時、金色の蜂蜜のような何かがビアトンの頭を軽く叩いてひょいと跳ね上がった。

[強靭なキムボルクが出てくる。]

キムボルクの小さな体が空中に舞い上がった。

敵に比べて明らかに小柄だったが、キムボルクは勇敢だった。

外目の巨人の巨大なモンドゥンイがキムボルクの体を攻撃しようとしたその瞬間——

バシッ!

キムボルクは何かに当たって吹き飛ばされた。

キムボルクは訳も分からず悲鳴もあげられず、地面に倒れた。

「まったく……」

声が聞こえてきた。

「誤解するな、弟子よ。私は約束のせいで動かざるを得なかったのだ。」

「……師匠?」

ロベナ大公だった。

ロベナ大公の右手には青く輝く剣が握られていた。

大陸の七大名剣の一つ。

冷気を放っているその剣の名は「ソリ」だった。

「この子は自分の命の代わりに、私に5年を差し出すことになってるの。だけどここで死んじゃったらダメじゃない?」

「可愛い弟子が傷つくのを見るのが嫌だったんじゃないですか?」

「少し余裕が出てきたみたいね?」

「師匠はちょっとイライラするタイプではありますが、口先だけで言う人ではないでしょう?」

少なくともこの瞬間、この瞬間だけは安全を確保できた。

ロベナ大公がここに来た以上、あの巨人を簡単に撃退できるはずだった。

ロベナが言った。

「止まれ。」

その言葉に、外目の巨人の体がピタリと止まった。

一級魔物調教師のロベナの命令を拒めなかったのだ。

ロベナは余裕たっぷりに尋ねた。

「ところでさっきの広域魔法、君が使ったの?」

「僕が使えるわけないじゃないですか?こんな魔法、僕には無理です。師匠の方がご存じでしょう?」

「じゃあ?」

「皇女様が使ったんですよ。」

「皇女がこんな魔法をどうやって使えるの?」

ロベナがここにすぐ来られたのも、イサベルが強大な魔力を放出したからだ。

「姫様はなんでもできますよ。」

「ふむ……」

ロベナは城壁に近づいて、指先でそっと触れた。

氷の結晶が手に触れた。

「ただの氷じゃなくて、氷を細かく削ったようね。」

彼女はその氷を味わってみた。

それを通じて、イサベルの魔法を解析して読み取った。

彼女の体がびくっと反応した。

「どうしたの?」

「この子がいったいどんなイメージを思い浮かべて魔法を具現化したのか分からないけど……」

ロベナは氷の塊を手でかき集めながら雪玉のように作って、それをビアトンに投げた。

ビアトンは思わず氷の塊を受け取った。

「食べてみろ。」

「なぜですか?」

「師匠が言ったら、一度で聞け。」

「食べたら500ディルンくれるんですか?」

「500ディルンなんて、あるわけないだろ。」

「ディルン」は500年前に帝国で使われていた通貨単位だった。

今では使われていない単位だが、ロベナは妙に自然に返答していた。

「私の機嫌をこれ以上損ねた上で、イサベルを連れて逃げようなんて考えない方がいいぞ。どうせ5年間は俺のものなんだから。」

「昔も今も、無駄に勘が鋭いですね。」

ビアトンはまだ隙をうかがい、逃げるチャンスを狙っていた。

イサベルの5年をロベナに渡すわけにはいかないからだ。

ひとまず氷のかけらの味を確かめた。

「ん?」

「わかる?」

「師匠の魔法と似た味がしますね。もしかして姫様に魔法を教えたことありますか?」

「そうかもな?」

「………」

ビアトンはしばらく口を閉じた。

そしてやがて、にっこりと笑った。

「姫様は、姫様も気づかないうちに師匠の魔法をコピーしていたんですね。」

イサベルはロベナが何かに気づいたことを感じ取った。

目で見たものを自分でも知らずに把握したようだ。

ロベナが顔をしかめた。

「なぜ驚かない?お前も魔法を扱う人間だろう?これがどれほどすごいことかわかっているはずだ。」

「私はこういうことで驚かないって決めたんです。そうじゃないと父さんに勝てませんから。」

その間に、ロベナの呪縛から解かれた1級巨人が再びビアトンを振り回した。

ロベナの愛剣『ソリ』が冷気を放った。

一閃の軌跡を残し、1級巨人の体がぐらりと倒れた。

「天才」と呼ばれる1級魔物操作士であっても、ロベナの前では何の意味もなかった。

ロベナは剣をおさめて、再び尋ねた。

「父に勝てるって、どういう意味だ?」

多少の余裕を取り戻したビアトンはにやりと笑って答えた。

「教えないよ。」

 



 

 

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