こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

46話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 緊急事態③
「なんだか少し変だったんです。最初に会ったときは、家門から一人だけ認められていないって感じで話していたのに、突然態度が変わったんですよ。」
貴族の娘たちはそう語った。
「この容器は偽物です。工芸家様の技術をまったく再現できていない粗悪な模造品ですよ。」
偽物の容器を見た工芸家たちも、揃って偽物だと判断した。
そしてリリカの依頼を受けた偽の工芸家も、自らの罪を認めた。
「依頼されて作ったのは事実ですが、それを本物だと偽って贈り物に使うとは思いませんでした。実際、深く悩んで訪ねてきた方には、限定品を手に入れられなかった貴族令嬢が、気を紛らわせるために個人的に使うものだと聞いていました。」
しかし、それを本物だと偽って中身まで偽物にして贈るとは予想もできなかったと、頭を抱えた。
「私たちはただ依頼通りに工芸家を紹介し、仕上がった品を渡しただけです。まさかこんなことになるなんて思いもしませんでした。リリカ令嬢が使った注文書や製品は一切見ておりません!」
控室のスタッフも同様に証言した。
彼らがリリカに賄賂を渡された見返りとして、贈り物を受け取っていたことが発覚したのだ。
逃れようのない証拠だった。
偽の化粧品の話を聞いたプリムローズ公爵令嬢は、驚きを隠せなかった。
「リリカ、これは本当なの?」
「……」
「公爵令嬢になってすることがなくて、偽物を作ったの?何なの、これは?」
こんなことは家門の恥さらしだ。
「リリカ、正気でそんなことをしたの?」
「それは……」
「はっきり言いなさい!本当にどうした?お前らしくないじゃないか!」
それでも妹だからと、最後までかばおうとしたジキセンでさえ声を荒げた。
どんなことがあっても自分を守ると、母にすら敵意を向けていた彼が…今は狼狽している姿に、リリカは混乱を覚えた。
しかし一番気に障ったのは、プリムローズ公爵夫人だった。
「最近私が外出続きだったから、あなたがそんなことになっていたとは気づかなかったわね…。言ってくれれば、どうにかして手に入れてあげたのに。」
リリカが偽物の化粧品を手に入れたのは、自分が頼れないからだというような公爵夫人の言いぐさが癪に障った。
「能力もなく、馬鹿だから偽物を手に入れたのね」とでも言いたげだった。
感情を爆発させる二人の男性とは対照的に、公爵夫人はただ静かにため息をついていたが、リリカはその様子が一番嫌いだった。
これまで一度も会ってもくれなかったのに、なぜ今さら…。
それは、自分の本心をさらけ出したということだろうか?
「リリカ。まさか、ちょっと我慢できなかったからって、そんなことしたの? うん?」
問い詰めても、もうこれ以上逃げ場はなかった。
結局、リリカは真実を語ることにした。
涙がポロポロとこぼれ落ちた。
今の自分の状況の中で、何かがこみ上げてきて、抑えきれなかったのだ。
「私は… ただ、令嬢たちと仲良くなりたかっただけなんです。」
「え?」
「お母様はずっと私に会ってくれませんし、公爵家にも、社交界にも私は必要とされていない気がして… 化粧品を手に入れられなかったなんて言えなかったんです…。」
そうして、偽の化粧品を作るという過ちまで犯してしまったと語ったのだ。
これまで会おうともしなかった公爵夫人の態度や、控えめな葬式用の花すらも誤解だったのに、公爵夫人はまるで察していたかのように穏やかに微笑んだ。
「も、すべて誤解です。私は…決してパキラ嬢に害を与えようなんて思っていませんでした。」
「……」
「容器を替えれば済むと思っていたんです。その過程で化粧品が傷んでしまったのは…本当に私にも分からないんです。たぶん、あの方が保管を間違えて、私に罪をなすりつけようとしたのかも。もしかして最初から私を気に入らなかったのかも…。私も、それすら知らずに。」
すべてパキラ嬢のせいだという主張。
陰謀だった。
リリカはむしろ自分があまりに純粋だったから被害を受けたのだと言わんばかりに嘆いた。
プリムローズ公爵は、その様子を見てしばらく沈黙していた。
「…わかった。私が皇太子殿下にうまく話してみる。」
最近よくない姿を見せてしまったけれど、それでもやはり自分が一番愛する娘だった。
話を聞いてみると、一時の過ちだったようだ。
訴訟だの何だのと大事にするのも、子どもを追い詰めるようで心苦しかった。
「でも、反省している姿は見せなければならない。わかった?」
「はい…。」
「こんな幼い子が問題を起こして、どれだけ辛かったことでしょう。」
「ごめんなさい…私、いつも足りなくて。」
大きなため息をついたものの、最終的にプリムローズ公爵は、小さな涙をぽろぽろと流すリリカを抱きしめるのを拒めなかった。
「だから、私にはお父様が必要なんです…。」
「……」
「他の人はともかく、お父様は私のこと、愛してくださいますよね?」
「はあ…そうだな。」
ジキセンも最初の怒りが少し和らいだのか、それ以上怒りをあらわにしなかった。
そしてリリカの頭を一度撫でて、そのまま外に出ていった。
しばらくして、プリムローズ公爵は工房に訪ねてきた予備皇太子を公爵夫人とリリカと共に迎えた。
「本当に、ごめんなさい……しくしく……私はただ、子どもたちと仲良くなりたくて……」
そしてリリカはさきほどと同じように、もう一度なぜそんなことをしたのか説明しながら涙を流した。
「皇太子殿下、幼い子がこんな気持ちになるなんて……リリカが今回失敗はしましたが、素直で幼い子どもです。」
「……」
「どうか一度だけ、大目に見てあげてください。」
寛容に、寛容に。
リリカは今回、意図的ではなかったが、プリムローズ公爵は明らかに大きな衝撃を受けたようだった。
やはりこういう形でも、自分の有能さを感じさせてくれる、自分を必要としてくれる存在にはとても弱かった。
数か月前までは、自分など見向きもしなかった、同じ年頃の令嬢たちと親しくなりたいからといって動機を起こしたことは、非常に恥ずかしいことだった。
それでも、この状況では正直に話すのがやはり正解だった。
「とても反省しています。ですから、どうか…」
「……。」
家門の体面を何よりも重んじるプリムローズ公爵は私の味方になった。
この様子では、皇太子も同様だ。
しかし、リリカの予想は見事に外れた。
「令嬢の動機などは尋ねなかった。知りたくもない。」
「えっ?」
皇太子はまったく動じなかった。
むしろ、見守っている彼の目はあまりに冷淡だった。
「つまり、無知だからこんなことが起きるとは思わずに行動して、被害を与えるということだろう。どちらにせよ、令嬢が未熟だったという点では同じではないか?」
「……それは!」
真っ白な顔に、涙がぽろぽろとあふれた。
か弱く美しい少女の前で、どうしてこれほど冷酷になれるだろうか。
プリムローズ公爵はあまりの衝撃に答えることができなかった。
リリカもまた、皇太子がここまで冷静に自分を突き放すとは思っていなかった。
「リリカ・プリムローズ令嬢の、ただの“過ち”ひとつで本当に多くの人々が被害を受けたようだね。」
「過ち」という言葉に、鋭く刺さるものがあった。
「最初は偽の化粧品を作ったという話を、あっさりと否定して嘘をついたのに、“善良な子”という言葉が出てくるとは、正義の意味がずいぶん違うようだ。」
「……」
「その化粧品を本当にユネットで買ったという証拠もないし、むしろ被害者はユネットの方だ。」
美しくか弱い少女の前で、これほど冷酷になれるものか。
プリムローズ公爵は動揺して返答できなかった。
リリカもまた、予備皇太子がここまで冷淡に自分を突き放すとは思っていなかった。
「リリカ、プリムローズ令嬢のその些細とはいえ“過失”で本当に多くの人々が被害を受けたようだね。」
「過失」という言葉に、リリカは胸を刺された。
「最初は偽の化粧品を作ったという話を、強く否定するどころか、嘘までついたね。“善良だ”という言葉が聞こえてくるけど、君の正義感は少し違うようだ。」
「……。」
「その化粧品を本当にユネットで買ったという証拠もなく、むしろユネットが被害者だったのにね。」
エノク皇太子は、リリカの過去を聞いて鼻で笑った。
「善良で幼い?でも多くの人に被害を与えておきながら、それを認めも謝罪もせずに、最後まで“自分はそういうつもりじゃなかった”って言い張るのか?」
「それは……」
「プリムローズ公爵はそれを“善良”だと言うのか?結局、自分の保身のための弁明じゃないのか?自分が間違ったことを、最後まで“過ち”だったとだけ言うなんて。どう見ても、反省する人の態度じゃないよな?」
エノク皇太子は冷ややかだった。
普段は温厚で理知的な印象だったが、その端正な顔に冷徹な表情さえもよく似合っていた。
「謝るなら、自分が何を間違えたのかを分かっておくべきだった。被害者に対して、どこまで「過失」だと言い張るつもりなのか?」
すべて理にかなっていた。
予備皇太子の鋭い指摘に、リリカに対してかばっていたプリムローズ公爵の表情が初めて曇った。
「リリカ・プリムローズ令嬢。この件について本当にもう言うことはないのか?」
「……」
「本当に過失だったのか?」
もう何も言うことがなかった。
ただ、令嬢たちと仲良くなりたいという思いだけで真実を隠していた忍耐だった。
感情をぶつけること以外に、もうできることはなかった。
ここで何をもっと言えというのか?
『もう終わりだ。』
こうなってしまった以上、最後の手段だった。
リリカは、先ほどから力が抜けていた体から、完全に力が抜けてしまった。
「リリカ!」
叫ぶような声だった。
ふらついていたリリカの細い体が床に倒れ込んだ。
この状況は、見過ごすにはあまりに衝撃的だった。
しかし…エノク皇太子は、その様子を見ても全く動揺しなかった。
プリムローズ公爵は、彼の冷たい様子を見て歯を食いしばった。
「幼い子どもがこんなにも苦しんでいるのに、果たしてこの訴訟の話を続けていいのでしょうか?」
ありふれた訴訟であれば、公爵が前もって整理することもできただろう。
リリカが人を殺したわけでもないのだから。
だが、その相手が皇室である以上、簡単にはいかないのだった。
問題はそこだった。
プリムローズ公爵は被害を受けた貴族の令嬢たちに補償金を出し、王室の相談役やユネット側とも何とか交渉しようとした。
だが……ここまで話が進んでしまえば、感情を抑えることはできなかった。
「この子が最初からそんなつもりだったわけでもなく、何も考えずにやっただけなのに!」
「公爵は娘に“何も考えずに行動してもいい”と教えたのですか?」
その「何も考えない行動」によって、ユネットは“あなたのための化粧品”、“健康的な化粧品”というイメージに致命的な損害を被った。
もしリリカの行動が明らかになっていなかったら、ユネットは本当に破滅していたかもしれない。
今まで築いてきた良いイメージが、かえって足かせになったという話である。
「その貴族の令嬢は、女の子なら誰でも騙されるほど目がくらんだって?」
「まさか化粧品ひとつ塗っただけでそうだと?リリカが美貌を持っているせいで、貴族令嬢たちが嫉妬してやったことですよ。感情に流されただけです。本当におわかりにならないんですか?」
「訴訟にまでしたくなければ、リリカ・プリムローズ令嬢が自分が偽の化粧品を作ったと公に認め、謝罪するべきでした。でも、ずっと開き直っているのはそちらでは?」
エノク皇太子の言葉に、プリムローズ公爵の顔は赤くなった。
「ここまで言っても、少しも意味を汲もうとされないとは。陛下は本当にプリムローズ公爵家を…」
「おやめください!」
そして、そのときまで黙っていたプリムローズ公爵夫人が口を開いた。
「あなたも、もうやめてください。」
「なぜ止める!」
「ずっとあなたがそんなに感情的に怒っていたら、リリカは自分の過ちに気づかず、反省もしない子になってしまいます。」
「それは…!」
プリムローズ公爵夫人は一歩前に出た。
そしてエノク皇太子に向かって頭を下げた。
「……!」
「申し訳ありません。母である私が娘を間違って育てたせいです。」
公爵夫人には重みがあった。
これまで一度も自分に非があったと認めたことがない彼女だった。
「私が責任を取り、リリカが自分の過ちを認めて謝罪できるようにします。」
「……」
「ですから、私のことはさておき、せめて訴訟だけは取り下げてください。」
プリムローズ公爵は目の前の女性の姿に目を奪われた。
いつもはぶつぶつ文句を言い、面倒がるふりばかりしていたが、実は優しいふりをしていた女性だった。
しかし…この状況で自分の妻まで騙すとは。
「では、公爵夫人のために今回は見逃しましょう。」
エノク皇太子は公爵夫人に優しく微笑みながらそう言った。
「プリムローズ公爵、こうして許されるのはすべて公爵夫人の功績だということをお忘れなく。」
プリムローズ公爵の口元がきゅっと引き結ばれた。
最後まで善人ぶるあの顔が気に入らなかった。
聞く耳を持たなかった。
帝国で最も高い地位にある公爵であり、プリムローズ家の当主である自分が、なぜこのような侮辱を受けなければならないのか。
『兄が死んだから皇太子になれたくせに…青臭いお説教が主題か。』
妻が出てこなかったら、恥じる気すらなかったと言わんばかりだ。
とはいえ、それでも背を向けて出ていくエノク皇太子を引き止めて再び声を荒げることもできなかった。
すべては…。
「リリカ、あの子のせいなのか。」
リリカは自分が退席して後に何が起きたのか知らなかった。
ただ健康な体に少しの関心を向けられ、神聖な力を授かったときも、自分が軽んじられ哀れだという考えにばかりとらわれていた。
『皇太子にあんな目で見られるなんて。』
皇太子妃になることを目標にしていた。
だからビビアン皇女のような子にも親しげに接していた時期があったのに……
もう全部が台無しだ。
評価はこれ以上下がる一方だ。
すべてはユリア、あの家門のせいだという思いが拭えなかった。
どんどん立場が狭くなっていく。
けれど、それ以上に腹が立つのは――
「うまく収まってよかったわ。あやうく私が使えない物を他の人に紹介してしまったかもしれないって、ちょっとヒヤヒヤしたわ。」
社交の集まりで、皇太子に続いて、その妹であるビビアン皇女にまで会わなければならないということだった。
さまざまな噂の後、リリカは社交の集まりにまったく顔を出せなかった。
せいぜい格式ある家門の令嬢たちが集まるティーパーティー程度が限界だった。
このような大規模な場に、特別な招待状なしで参加するのは建国祭以来初めてだった。
だが…そんな格式高い集まりに、
他でもなく、自分の過ちが原因で来ることになるとは?
『はあ…ビビアン皇女…。』
馬車に揺られながら、自分を軽蔑の目で見ていたエノク皇太子を思い出した。
あの冷静で理知的で、微動だにしない表情。
自分を見て少しも揺るがないあの顔。
なんなのよ、私を責めてるっていうわけ?
「プリムローズ令嬢にここでお会いするとは思いませんでした。私なら来なかったと思いますけど。」
「申し訳ありません、皇女殿下。」
「まあ、公爵夫人がご一緒だったんですね? 手を引いて連れて来てくれたお母様がいてよかったですね。」
ビビアン皇女を中心に、周囲にいた人々までもがリリカに視線を向けてざわつき始めた。
騒がしさに他のところを見ていた貴族たちも、こちらに注目しはじめたのは言うまでもなかった。
「何ごと? どうしたの?」
「それがさ…ユネットの化粧品。目が見えなくなるとか、いろいろ噂になってたでしょ? あれ全部プリムローズ令嬢の仕業なんだって。」
「フリムローズ令嬢といえば……」
「そう、リリカ令嬢のことよ。外から連れてきた妹のほう。」
「ああ。」
人々は、ユネットの化粧品に問題があったのではなく、リリカが偽物の化粧品を作って配ったことが騒動の原因だったという事実を積極的に知っていた。
自分はすでに十分つらいのに、一体どこまで自分を追い込む気なのか?
だが、最悪は別にあった。
「リリカ、行きましょう。」
「お母様?」
公爵夫人はリリカを連れて行き… 難病を患う貴族令嬢にまで深く頭を下げて謝罪したのだった。
「私の育て方が悪かったのです。本当に申し訳ありません。」
「……!」
その瞬間、宴会場にいたすべての人が沈黙に包まれた。
皆が見ている前で、プリムローズ公爵夫人が頭を下げたその謝罪は、百年経っても再び見ることはないであろう出来事だった。
しかし、誰一人として当事者であるリリカほどに衝撃を受けた者はいなかった。
『この女、今何をしてるの?』
訴訟を起こさない代わりに、公の場で謝罪をするとは言っていた。
だが、まさかここまでやる必要があっただろうか?
予想外の展開に、リリカの表情が真っ青になった。
「い、いいえ。公爵夫人が謝罪されるようなことでは……。」
「いいえ、私の育て方が悪かったのです。この子が社交界で最近はやりの令嬢たちと仲良くしていたもので……。」
「やりたくて、注目されたくてやったと言っているのに、母である私がそれにすら気づけなかったのでしょうか。」
リリカが隠したがっていた恥まで、すべて暴かれていた。
ぶるぶると、足が震えた。
『これは……』
まさか、公爵夫人が謝罪までするとは。
ユネット代表と親しいという話題に、リリカに化粧品を渡さなかったからこんな罪を犯したのだ。
リリカの口からは、一言も弁明が出てこなかった。
『ここまでして、皆の前で謝らなきゃいけないなんて!』
血のつながった実子の問題で、実母でもない公爵夫人に謝罪をさせた子になってしまった。
『さっきビビアン皇女が母の手を握って謝りに来たと笑っていたのに、このままだと本当に公爵夫人にまで謝らせる人になってしまうじゃない!』
しかし今の状況で、どうすべきか分からなかった。
人々がざわついていることは分かったが、混乱した頭ではその内容を理解できなかった。
それでも……何を言っているのかはうすうす察しがついた。
-あらまあ、お葬式にも飾るような花まで差し出して……
-娘じゃないでしょ?夫が外から連れてきた子よ。
こんなことを言われているに違いない。
公爵夫人は血のつながりもない子をあれほど愛情を持って育てているのに、リリカはどうして何度も問題を起こしては恥をかかせるのか!
「公爵家が責任を取り、損害賠償をいたします。」
「い、いえ! 謝罪を受けましたので、もう大丈夫です。」
「リリカが渡した偽の化粧品のせいで目が腫れたと聞きましたが、それがどうして大丈夫なんですか。」
結局、貴族令嬢は損害賠償を受けるしかなかった。
プリムローズ公爵夫人はそれだけで終わらせず、社交界に騒動を起こしたことについても謝罪の意を示した。
「皇女殿下がご恩をくださった場所で、私の娘がご迷惑をおかけすることになり、大変申し訳ございません。」
「いえ。実際、公爵夫人に何の非があるというのでしょう。」
非があるのはリリカ令嬢でしょう…という言葉が暗に込められていた。
周囲の人々の雰囲気も、それに同調しているようだった。
一歩間違えれば「公爵夫人が娘を間違って育てた」と言われかねなかったが、公爵夫人が先に近づいて頭を下げた行動が強い印象を残していた。
そこへビビアンが、場の空気を読まずに口を開いた。
「リリカ・フリムローズ令嬢がこのような公爵夫人の愛を見て、感じることがたくさんあったらいいですね。」
おかげで「公爵夫人が娘を間違って育てた」というよりも、血のつながらないリリカを大らかに受け入れて育てたのに、その娘が意地悪で未熟だったため失敗してしまった、というふうに思わせた。
フリムローズ公爵夫人はリリカの過ちまで自分のせいにしようとしている気がした。
「リリカ・プリムローズ令嬢は、実母に似ているようですね。」
もちろん、エノク皇太子も黙ってはいなかった。
別の社交の場に出席した際、自分を心配する人々にさりげなく話を漏らしたのだ。
「リリカ・プリムローズ令嬢……そんなふうには見えませんでした。実際に会って話してみたら、明らかな証拠があるのに不服そうに泣いて言い訳ばかりしていました。」
プリムローズ公爵は父親として、過ちを認めさせるのが役割であるにもかかわらず、それをせずにただ状況を収めることにばかり気を取られていた。
そうしてプリムローズ公爵は、リリカを間違った人間に育ててしまった人として認識された。
公爵夫人は不憫に思われたが、それも簡単ではないという風に見られていた。
「フリムローズ公爵夫人でなかったら、本当に訴訟沙汰になっていたでしょう。」
リリカがか弱そうにしているから、同情心が湧いただけだ。
人々はやはり、これまでの令嬢としての姿を思い出し、出自がどうであれという雰囲気でささやき合っていた。
最悪だと思われていたリリカの評価は、その下へとさらに落ち込んだ。
そうでなくても、リリカはかつて「天使のような令嬢」と称賛されていたが、それは全くの嘘だったと、口々に言われる始末で、これまでの行動すべてが偽りだったと烙印を押されてしまった。
「…このままじゃだめ。」
このまま転落して、どこまでも堕ちていくわけにはいかない。
ただ、高貴な人になりたかっただけなのに。
彼女はただ、自分がもともといた場所に戻ろうとしただけだった。
生まれながらの貴族である彼女たちは、驚いた様子でリリカの前に現れた。
そしていつものように、上品で気品あふれる態度でリリカの前に立ちはだかった。
まるで「あなたの行ける場所はここまで」と言わんばかりに。
『立派だわね。プリムローズ公爵夫人、プリムローズ令嬢。』
この状況を面白がる貴族の婦人たち。
『母も娘も、まったく人としてどうかしてるわ。』
どう考えても、リリカに非はひとつもなかった。
ただただ悔しくて、また悔しいだけだった。
他人の目が冷たかろうと、家門の名誉が傷つこうと……リリカにとってこの瞬間、自分ほど哀れな存在はいなかった。
「はぁ。はぁ……」
だんだんと荒くなる息遣いが耳に聞こえるほどだった。いや、心臓の音だったのか?
この状況に圧倒された相手たちは凍りついた。重苦しかった。
いや、「圧倒された」や「重苦しい」という言葉では、今の感情を説明できない。
燃え上がるように煮えたぎる感情を表すにはあまりに足りず、また足りなかった。
そんなことはどうでもよかった。
『あなたたちがこの世から消えてほしい。』
その瞬間、リリカは自分の深いところで何かがうごめいているのを感じた。
長い時間、燃え上がり、今や残ったのは焦げついた何かのような。
ごくわずかにチリチリと残る感情。
心の片隅から始まったその小さなものは…彼女を一瞬で気絶させた。
『あっ。』
しかし同時に、平穏でもあった。
リリカは、かすかな殺意や嫌悪、あらゆる否定的な感情を自分の中に受け入れた。
長く目を閉じた後、目を開けた彼女には分かった。
自分の中で、何かが目覚めたことを。

i-only-helped-by-chance-so-i-take-no-responsibility-matome





