こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

47話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 伝説の薬
時間が経ち、ユリアが支援していた研究はついに具体的な成果を出し始めた。
「麻酔薬に必要な機能だけを分離して、鎮痛剤を作るのに成功しました!」
「残っていた記録をいくつか見つけました。民間療法から発展させた鎮痛薬です。」
一人を皮切りに、みんなが自分の研究の完了を報告し始めた。
「いやあ、最後に詰まっていた部分がプリムローズ令嬢のおかげで解決しました!設備が良いのはもちろん、令嬢が来てからは、以前と比べて正確に、1日に平均10.5倍も実験ができているんです。」
「私も、材料が届くスピードが5倍になりました!」
「材料費を気にしない生活なんて……毎日が感動です。」
「年金生活でこんな日が来るとは。ぐすん。」
最も不足していたものを解決してくれたおかげで、自然な流れが生まれていた。
もちろん、すべての研究が思い通りに成功したわけではなかったが。
「脱毛に効く薬を作ろうとしたのに……染髪薬ができてしまいました!」
「どうして脱毛から染髪になるの?」
「それが、研究中にミスをして……」
偉大な発明は失敗から生まれるというが、思いもよらなかったものまで生まれていた。
「ギルド長が交代してから、成果がすごく早く出てますね。」
「もともと私たちには技術力がありました。資金が足りなくてできなかったんです。」
「そうですね……もちろんまだ人前に出す段階ではないですが。」
副作用をもっと調べて、臨床試験も行わなければならない。
だが、これまで支援すら受けられなかった研究が、こうも進むとは思いもよらなかった。
臨床試験だなんて。
何かがあってこそ臨床実験ができるのだ。
「この段階まで来るのに、どれくらいかかったんだ?」
「前に麻酔薬を作ったって話以来、初めてだよ…はっ。」
「ああ。」
「そう…だったな。」
だが、話していたことも束の間……沈黙が降りた。
誰がそうしろと言ったわけではないが、いつの間にか気まずくなっていた名前が彼らの間で飛び交ったのだ。
「なんだよ、今俺たちが言っちゃいけないこと言ったか?」
その中で一人の中年のギルド員が、ぽつりと口を開いた。
短く脚を組みながら、表情がどこか複雑だった。
「クリス・ギルド長。」
「薬を作るのはいいわ。いいことよ。でもまた人前に立つっていうの?」
「え?」
「じゃあ神殿で静かに過ごす?ウケネのギルド長、あなたはどう思う?」
錬金術師たちの間に、さっきよりもさらに重苦しい沈黙が流れた。
錬金術師タンアップ…。
麻酔薬を作った錬金術師が、ある日突然行方不明になった後――錬金術への支援は急激に止まった。
人々はその背後に神殿が関係しているのではと疑い始めた。
だが誰一人として、直接イバフネ教に逆らうことはできなかった。
異端とみなされることを恐れたからだ。
「私は関係ないよ。どうせ家族も友達もいない身なんだ。」
クリス・ギルド員は毅然とした様子で器具を持ち上げた。
そして腕に力を込めた。
「でも、ウケネのギルド員。君には家族がいるじゃないか。今、薬を作ってるけど大丈夫なのか?」
「イバフネ教の教えは“愛”です!錬金術師様の行方不明は単なる事故かもしれません……。」
「ははっ、そうか。君はイバフネ教徒だったね。だけどその神は君を救ってくれたか?一度も会えないまま熱病で死んだ末娘のために研究を始めたんじゃないのか?」
「クリス・ギルド員、やめてください!」
「現実逃避するなよ。それが単なる事故じゃなくて、本物の神託の仕業だったとでも言いたいのか?どうする?そのときは?末娘だけじゃなくて、残りの家族みんな失うかもしれないよ。」
「……」
「君も後ろめたさがあるから、資金が足りないのに支援者を公に募らなかったんだろ。あの酒場の地下でこっそりやってて!」
「ク、クリス!ちょっと言いすぎじゃないか。もうやめたまえ。ウケネもそれくらいで理解しただろう…」
「理解って何を理解だよ!」
雰囲気が険悪になると、眼鏡をかけた司祭が仲裁に入った。
だが、まったく効果はなかった。
クリス・ギルド長は声をさらに張り上げた。
「みんな備えるべきなんじゃない?そんなのが怖いなら薬なんてやめて逃げればいい。君の成果なんて全部盗んで発表してやるから!」
「……」
「鎮痛剤を作って、子どもたちが熱病で死なないようにしたいって?いいだろう、素晴らしいさ。でも、その前に神託によって死ぬ可能性があることも覚悟しなければならないぞ。」
「聞いてると本当に…!」
メガネをかけた司書が立ち上がりかけたウケネのギルド員の肩をつかんだ。
「ウケネのギルド員。あなたの気持ちはわかります。」
「でも、不確かな言葉で成果を上げた人々に不安を与えるなんて…!」
「よく考えてください。」
クリス・ギルド員はわざとらしく椅子を引きずる音を立て、足を引きずりながら出て行った。
彼がドアを閉めて出て行ったのを確認して、メガネをかけた司書が言った。
「クリス・ギルド員が片足を引きずっているのは、子どもの頃にかかった熱病のせいなんです。」
「え?じゃあなぜ今まで何も言わなかったんですか?」
「…私は新入りでよくわかりませんが、あの友達は麻酔薬を作っていた人と親戚なんです。」
「…ああ…」
ウケネは気まずそうに口をつぐんだ。
「彼女を責めたいんじゃないんです。誰も教えてくれなかったら、何も分からないでしょう。」
出資者を失ったことを確認したメガネの司祭は、諦めたように静かに言った。
「ただ、あの子にとって家族が大切なら、今は離れていた方がいいってことです。成果はどうあれ、発表はするつもりですから。」
「……」
やがてウケネのギルド長も静かになり、声を張り上げていたクリス・ギルド長さえも部屋を後にした。
錬金術ギルドは、先ほどの活気がまったく戻っていなかった。
皆、思い詰めたような顔つきだった。
どれほどの沈黙が流れたのだろうか。
一人の青年が前に出て核心を突いた。
「…もしプリムローズ公爵家に害を及ぼすとしたら、どうしますか?」
「えっ?」
「つまり、そういうことです。」
巻物を手にした若いギルド員は目を伏せながらつぶやいた。
研究に取り憑かれた隠遁者のように、この錬金術士たちは人間関係や世の中の物事に興味を持つことがめったになかったが…。
「これはあくまで私の考えですが、もし間違えば、プリムローズ公爵家も神託に巻き込まれるかもしれません。」
「そうね。正直、私もこういうのは嫌いなの。錬金術ギルドとか神殿の私情なんて、素直には受け入れられない。他の人もそうだし。ウケネのギルド員が純粋だからああしてるのよ。」
「そうなんですか?」
「でも、完成が近づいて…事情を知ってる私たちもなんだか怖くて、躊躇してしまってるのよね…」
「だって、プリムローズ家は公爵家でしょ。失うものも多いし……」
ギルドは公爵夫人が支援していたと言う。
では、その娘であるプリムローズ令嬢はどう思っていたのか?
いろんな事情を知った上で飛び込んできたのだろうか?
「錬金術ギルドを支援するとき、こんな薬ができるとは予想してたのかな?」
「それは予想してたでしょう。報告書も提出していたし。」
「でも、まだ幼いじゃない。昔、錬金術師が消えた話なんて知ってるのかな?」
「ギルド長はプリムローズ公爵夫人でしょ。」
「でもその方は一度も顔を見たことがないよ。実務的なことはすべてあの子がやっているじゃない。」
支援を受けて成果を出した。
皆の情熱と熱意、そして感謝の気持ちで休む間もなく駆け抜けてきた。
いくら過去に研究したものがあったとはいえ、短期間で言葉にならない成果を出した。
堂々と胸を張るべきことではあったが。
「……実は、他の誰よりもギルド長であるプリムローズ家の側が、私たちの成果を最も嫌がるかもしれません。」
沈みかけていた錬金術ギルドの空気が、再び明るくなるとは思わなかった。
「こんなふうになったのも、ギルド長の座を譲った私のせいだ。私が解決しなければ。」
錬金術ギルドに深刻な緊張感が漂っていたある日。
元ギルド長で、今は副ギルド長となった彼は、ひそかにユリアに会いに行くことにした。
「ある程度ご存じかと思いますが、もう一度ご報告いたします。研究者たちが少しずつ成果を出しており、他の研究チームもまもなく臨床実験に入ると思われます。実験に失敗しても、思いがけず収入が出た例もありました。」
「そうですか?思ったより早いですね。」
ユリアは以前、研究日誌などを見て、支援の是非を自らまとめたことがあった。
副ギルド長は、まるで世間話でもするような口調で話していた。
「ご存じですか?育毛剤を作ろうとしたのに、染色薬ができてしまったんです。髪が生えることを期待していたのに、残っていた髪の毛がピンク色に染まったそうです。」
「そうですか?皆さん楽しんだでしょうね。」
「いつも真っ黒な服ばかり着ているあの方ですから、皆その姿を見て笑ったとか。」
「でも、すべての人が何らかの成果を出したわけじゃないですよね?」
「うん……。」
副ギルド長が来るかもしれないという思いに、ふと話すのを止めた瞬間。
ユリアは優しい言葉で穏やかに続けた。
「失敗は成功の母でしょう?研究で失敗した研究員たちにも、あまり落ち込まないようにと声をかけていましたよ。力を貸してください。それが大きな支えになるでしょう。」
「ええ……そうさせていただきます。」
思いがけない返答だった。
全く予想もしていなかった。
研究費を出した人からこんな言葉を聞くと、副ギルド長は思わず力が抜けた。
実際、失敗したからといって努力しなかったとは言えないということを、どうユリアに納得させればいいか、それも彼の悩みの一つだった。
「今も研究員たちが思ったより良い結果を出してくれていて驚いています。もっと時間がかかるか、多くが失敗するかと思っていたんです。」
だがユリアはまずその状況を理解し、穏やかに話してくれた。
「本当に…素晴らしい方だ。」
そのおかげで、勇気を出すのも思ったほど難しくはなかった。
最近急激に冷え込んでいたギルドの空気を思い出しながら、彼はずっと言いたかった話を口にした。
「もしこの薬を人々の前に出したら、どんなことが起きるか……考えたことはありますか?」
ある日、彼に近づいてきて「錬金術ギルドを支援したい」と言ってきたプリムローズ公爵。
どこかしら見事で、必要な支援は惜しまないと約束されたため、彼はつい同意してしまった。
そもそも支援がなければ、ギルドはすぐにも解体される危機だった。
あるいは、崩れかけたまま流されるしかなかったかもしれない。
だが、その提案を受け入れた彼自身も、プリムローズ公爵がどこからどこまで考えていたのかは分からなかった。
ただ、その神殿に対して密かに敵対的な意図を抱いているという噂を信じて、ギルド長にまで渡してしまったのだった。
『どうせ支援が受けられず研究できないか、神殿から追放されて研究を妨害されるか、どちらかじゃないか。』
いずれにせよ、崖っぷちの状況だと考えれば――ほとんど賭けに近い判断だった。
『それに、前に研究日誌を見ながら薬を作っているのを心配していた様子もなかったし。』
神殿を怖がっていないわけではない、無邪気な無知からくるものでもない――と副ギルド長は感じた。
他の人々は何の根拠もなかったが、彼はかつてギルド長候補に推された人物でもあった。
『神殿のスパイでさえなければ、錬金術ギルドにあれだけの資金を投じる理由があるはずがない。』
さらに――スパイだとしても、このやり方はあまりにも手が込んでいる。
プリムローズ公爵は、それほど軽く受け流せる相手ではないのだから。
「ご心配なさらないでください。」
果たして、副ギルド長の言葉を聞いたユリアは、穏やかに微笑んだ。
「副ギルド長とギルドの皆さんが心配される理由も分かる気がします。少しだけお話ししようと思っていたのですが……先にこのようにお話しいただけてありがたいです。」
そう言ってユリアは「少し待っていてください」と言った。
百の言葉よりも、実際に見せるほうがいいとしながら。
『ギルドの皆を一気に安心させるって? それって一体…?』
副ギルド長は、ユリアの言葉を信じ、沈んだギルドの仲間たちを励ました。
「ギルド長、いや、ギルド長代理であるプリムローズ令嬢にお考えがあるようですね。」
そしてとうとう、ユリアが言っていたその日が来た。
「エノク皇太子殿下がご到着されました。」
「えっ……!」
夢にも思わなかった光景を見て、副ギルド長の足元から力が抜けた。
大きくよろめきながら床に崩れ落ちそうになるのを、周囲の人々が慌てて支えた。
「ギ、ギルド長!」
「いや……今は副ギルド長だ。それよりあのお方がなぜここに……?」
副ギルド長はなんとか体勢を立て直し、正面を見つめた。
少しの曇りもないほど輝く金髪、穏やかでありながらも厳かな性格を思わせるその顔――。
古びた場所──いや、今ではユリアが隣の建物を丸ごと買い取ってくれたおかげで、清潔で広々とした場所になったが!
まさか年金術ギルドにやってくるとは夢にも思わなかった人物の登場だった!
誰もがあんぐりと口を開けた。
しかし同時に、礼儀を尽くす余裕もなく、慌てて身なりを整え、目をこすり始めた。
「生まれて初めて皇太子殿下を拝見するなんて。」
「私の目が間違ってるわけじゃないですよね?」
「皇太子殿下で間違いない…ですよね?」
「あの顔を見てよ。“皇太子殿下”って書いてあるような顔じゃん。」
「はあ…。」
聞いていた通り、ものすごいイケメンだというざわめきが広がり始めた。
その騒ぎの中で、ユリアは手を振って隣の人物が本物の皇太子であると認めてくれた。
「みんな、礼を尽くそう。」
「いいえ、大丈夫です。私が突然現れたせいでしょうから。」
幸いにもユリアの言葉を聞いたギルドのメンバーたちは、ようやく落ち着きを取り戻した。
皇太子の前であまりにも無作法な態度を見せてしまったと気づいたのだったが……。
『どうすればいいんだ?』
『ギルド員さん、分かりますか?』
『俺に分かるわけないだろ?』
落ち着きを取り戻したとはいえ、王族に対してどう礼儀を尽くせばよいのかは誰にも分からなかった。
互いに目配せしながらもそわそわして、気まずい雰囲気が続いた。
「突然訪ねた私が悪いのです。気にしないでください。」
そんな空気を察したエノク皇太子は立っているだけでいいから気楽にしてくれと言ってくれた。
どうせ形式ばる必要はないと言われたのだから、かえってその方が気まずくないと思ったのだ。
「ふむ、ふふん。」
ユリアはその様子をじっと見つめていたが、場が静まると口を開いた。
「私が皇太子殿下をお連れした理由をお話ししたいの。」
本題に入ると、みな息をひそめてユリアの次の言葉を待った。
あまりにも集中していたため、呼吸の音すら聞こえるほどだった。
「皆が最近何を心配しているのかは分かっているわ。みんな、この薬を人々の前に披露したときに、異端だと誤解されるのではないかと怖がっているのね。」
そう言って、エノク皇太子がこの件には直接関わると述べた。
明るい表情の裏に隠れて見えなかった彼の真剣な態度が垣間見えた瞬間だった。
「プリムローズ嬢から、あなたたちがどれほど人々のために大変なことをしているかを聞きました。私にできることがあれば力になりたいと思って来ました。」
「……」
「皇室の商会ではユニネットと共に化粧品事業を行っています。化粧品から始まり、錬金、薬品。それらがすべての人に行き届くように、価格を下げようとしています。」
エノク皇太子は、ユリアが自分を訪ねてきたことに感動したと言った。
彼は自ら先頭に立って、ユリアを立派だと讃えた。
「私もまた帝国民の健康に大いに関心があります。あなたたちが決して異端に陥らないように、そして研究成果が多くの人々の模範となるよう、最善を尽くすつもりです。」
「おおお!」
「皇太子殿下、万歳!」
「プリムローズ公爵、万歳!」
錬金術師たちは誰からともなく手を挙げた。
そして以前言い争っていたウケネギルド員とクリスギルド員も一緒に抱き合った。
「よ、よかったです!」
「ごめんなさい。私もついあんなことを言ってしまって……」
「いや、私も分かってます。私のことを心配して言ったことですよね!」
争っていた人たちも互いに和解を交わした。
もう心配することは何もないように見えた。
研究費も、足りなかった設備も、材料も…人々の視線も。
すべてが解決されたのだから。
そして……その中で静かに、一人の錬金術師だけが口を固く閉ざしていた。
その晩。
一人の人物が静かにユリアを訪ねてきた。
「お伝えしたいことがあります。」
「ダニエル錬金術師。」
「レシピを工夫して、おそらくこれは大きな効果があるかと……考えてはいましたが、まだ試してはいませんでした。」
前世でもユリアを訪ねてきたあの錬金術師だった。
決意を固くして頭を下げながら、
「それでお願いしたいことがあるのです。」
「それは何?」
「珍しい薬草も育ててくださるとおっしゃっていましたよね。プリムローズ殿、いや、ギルド長殿。エレデニアを咲かせてください。」
見つけるのも難しく、扱うのも難しいという伝説の薬草。
彼はそのレシピを温めておきながらも、神殿で作られたものだと知られたらどうしようか、人々の前で披露してもいいのか悩んでいたという。
「これまで私は安心していました。どうせ今も研究中だし、エリクサーをすぐに作る必要はない。どうせ材料もないし……そうやって逃げていました。」
「……」
「でも殿の元に来てから錬金術ギルドでずっと悩んできました。これは運命じゃないかと。」
眼鏡をかけた彼の目に一筋の光が射した。
さっきのクリスギルド員とウケネギルド員の戦いを止めた錬金術師だった。
「みんなが苦しんでいるのに……自分だけ逃げるわけにはいきませんから。」
「じゃあ、エレデニアだけ私が手に入れればいいのか?」
「はい。私にエレデニアさえくだされば、エリクサーを作ってみせます。」
エリクサー。
上位の神官ですら作れない。
予言書に出てくる聖女だけができるとされるその働きを可能にする秘薬。
切断された足ですら再生できるとも言われる、伝説の中で語られる錬金術師の薬だった。

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