公爵邸の囚われ王女様

公爵邸の囚われ王女様【145話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【公爵邸の囚われ王女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

145話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 舞踏会の始まり②

バレンタインは、地獄へと引きずり込まれるかのように、ついにセリデンへ到着した。

――俺は人間ですらない。

その自虐的な考えは、彼が魔法使いの城を訪れて以来、すでに百回以上も繰り返してきたものだった。

――それを、どうして……どうして言ってしまったんだ!

以前、クラリスに衝動的に告白してしまったときから、彼の内面が少しも成長していないことは明らかだった。

そんなことをせずに、どうして……!

「クラリスが“成人”によって死ぬかもしれないって、分かってるのか?」

そんな話を、軽々しく口にしていいはずがない。

自分が取り返しのつかない失敗を犯したのだと、彼はすぐに悟った。

当時のバレンタインは、凍りついたまま微動だにしないノアを見つめながら、この状況をどう収拾すべきか必死に考えたが――

……結局、どうにも収拾できないという結論に至るしかなかった。

『……クソったれ。』

バレンタインは、また苛立つように自分の頭を掻いた。

そんな言葉が思わず零れてしまった理由を考えれば考えるほど、情けなさが募るばかりだった。

バレンタインが「自分はクラリスを大切にしているつもりだ」そう口にしたとき、彼はノアが少しでも緊張や危機感を覚えてくれればと、内心では期待していた。

だが現実はどうだ。

ノアはただ、あっさりと頷いただけだった。

――「クラリスのためになるなら」

そんな一言まで添えて。

バレンタインの目には、その姿が、まるで一種の自慢のように映った。

たとえ彼が、持てるすべてを差し出してクラリスに捧げたとしても、ノア・シネットという男は、微塵も危機感など抱かない――そんな確信があった。

実際、クラリスはノアのことを、バレンタインよりもずっと好いている。

そして厄介なことに、バレンタイン自身も、その事実をある程度は認めてしまっているのだ。

クラリスは幼い頃から、バレンタインよりもノアに対して、よりいっそう優しく接していた。

それを理性的に判断していたのかどうかは分からないが、クラリスが何よりもノアを選ぶだろうということだけは間違いなかった。

そんなふうに、胸の内でぐつぐつと煮えたぎる思いをどうにもできずにいたとき――

「それに、何が起きているのかは分からないけれど、焦れば焦るほど、うまくいくはずのことまで台無しにしてしまうものですよ」

ノアが落ち着いた口調で、諭すようにかけた言葉は、彼から理性をすっかり奪ってしまった。

正直なところ、それはバレンタインが怒るような内容ではなかった。

ノアは何も知らないまま、誰もが口にするような一般論を述べただけだったのだから。

だが、怒りでいっぱいになった彼の頭の中には、囚人服を着せられ、処刑台へと引き立てられるクラリスの姿が鮮明に浮かんでいた。

そして、はっと我に返ったときには――彼は、取り返しのつかない言葉を口にしてしまっていた。

その言葉に衝撃を受けたノアは、何も言えないまま、その場に立ち尽くした。

言い訳も、弁解も、何一つなかった。

彼はただ、門の向こうからバレンタインの顔を静かに見つめ、ゆっくりと瞬きをしただけだった。

それから一日が過ぎ、バレンタインのもとに魔法師団から正式な書簡が届いた。

内容は、ノアを含む魔法使い五名を、セリデンへ派遣するというものだ。

同行していた貴族や騎士たちは、魔法師たちが思いのほかあっさりと派遣を決めたことを不思議がっていたが、バレンタインの胸中は、むしろ重く沈んでいた。

――ノアが、どんな思いでこの任務を引き受けたのか。

それを想像することすら、彼にはできなかったからだ。

そして時が流れ、今日。

セリデン北部城壁に到着したその日。

彼は、かねてより一度は目にしたいと願っていた、

果てしなく長く、巨大な北の城壁を前にしても、何の感動も覚えなかった。

ここにクラリスが来ている――それだけは、誰に聞かずとも分かっていた。

『王子殿下には、私がいつも応援していると伝えてください。それから……バレンタイン王子殿下も、どうか私を応援していると――』

その言葉が、胸の奥で、静かに、しかし確かに、燻り続けていた。

「彼が何を望んでいるのか、その事実を、誰よりもよく分かっている――そう言っていました。」

そんな意味深な言葉を残して去ったクラリスが、彼のもとを一度も訪れないはずがなかった。

何より、ノアがここまで足を運んでいる以上、彼女がセリデンの邸宅に留まっている可能性はない。

――クラリスに……どうやって話せばいい?

気づけば、ノアにすべてを打ち明けてしまっていた。

もし魔法師であるクラリスがその話を聞いたら、どれほど激しく泣くだろうか――想像すらできなかった。

――まさか、ノアがすでにクラリスに話してしまったのでは……?

もしそうなら、深く傷ついたクラリスと向き合うことになるだろう。

そのとき、彼女の前で何をどう口にすればいいのか、まったく思い浮かばなかった。

それでも彼にとって、せめてもの救いは、まだ慰めの言葉を考える時間が残されているという点だった。

彼と騎士団は到着するとすぐに簡単に荷を解き、直ちに公爵とバレンタインが共同で主催する舞踏会に、彼も出席する予定だった。

この公式な日程に、クラリスが来るとは思っていなかった。

これまで公爵夫妻は、彼女をどこへも連れ出してこなかったし、ましてここは若い騎士の多い舞踏会場だ。

大切に育てられたクラリスを、わざわざ人目に晒す理由などない――彼は、そう信じていた。

……そのはずだった。

正門から舞踏会ホールへと人々が流れ込んでくる、その瞬間。

彼の視界に、ふいに淡い桃色が差し込んだ。

あの愛らしい色の髪を持つ令嬢を、彼は一人しか知らない。

「あ……」

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。

動揺のあまり、最初はクラリスの立つ位置をきちんと見ることすらできなかった。

だが次の瞬間、甘く柔らかな何かに引き寄せられるように、気づけば彼の視線は彼女へと戻っていた。

「……」

彼はその場で、ぴたりと足を止めた。

正直に言えば、彼はこれまで、女性のドレスや装身具に対して、かなり懐疑的な目を向けていた。

実用性がまるでない題材に、無駄に高価な宝石をじゃらじゃらと付けて、値段だけをつり上げた服――そういう認識だったからだ。

だが、それは違った。

実用性がないと思っていたその意匠は、クラリスの白い肩と細くしなやかな指先を、はっきりと際立たせていた。

しかも、少し動くだけでかすかに音を立てるレースは、まるで妖精の羽のようで……。

考えが一変するほどの衝撃を受け、彼は自分がぼんやり立っていてはいけない場にいるのだと悟った。

幸いだったのは、クラリスが小さくうなずいてくれたことだ。

重要な場で失敗でもしないかと気遣う、そんな表情だった。

「……あ。」

バレンタインは小さく唇を噛みしめ、再び公爵のもとへと向かっていった。

――俺なんかが……きれいだなんて、口にする資格があるのか。

それに、クラリスのあの反応を見る限り、彼女はまだノアから何も聞かされていない――そう考えて間違いなかった。

その事実が、かえって胸を重くする。

バレンタインは、これからセリデンで過ごす日々が、ひどく息苦しいものになる予感だけを覚えていた。

 



 

マクシミリアンの歓迎の辞に続き、楽団が演奏を始めた。

本来ならば、舞踏会の主であるマクシミリアンが最初に踊るのが慣例だ。

だが彼は、その栄誉ある役目を、あっさりと弟に譲った。

貴族たちはざわめいた。

新たな注目の的となったバレンタインが、誰を最初の相手に選ぶのか――誰もが興味津々といった様子だった。

しかし彼が、兄の妻――すなわちクノー侯爵夫人の前に進み、恭しく一礼して手を差し出した瞬間。

会場のあちこちから、隠しきれない失望の気配が漏れ出した。

あの美貌の王子の心を射止めたのは、若く可憐な令嬢ではなく、すでに貴婦人となった女性だったのだから。

バレンタインは、そんな視線や噂を意に介することなく、静かに音楽に身を委ねた。

だが――その視線だけは、どうしても、自然と、会場の奥へと引き寄せられてしまう。

淡い桃色の髪。

人混みの中にあっても、ひと目でわかる存在。

クラリスは、少し緊張した面持ちで、それでも背筋を伸ばし、決して逃げることなく、その場に立っていた。

視線が、また、絡む。

ほんの一瞬。

けれど確かに、彼女もこちらを見た。

胸の奥が、鈍く痛んだ。

――まずいな。

バレンタインは、そう思いながら、ゆっくりと、視線を逸らした。

彼にはまだ、その覚悟がないようだった。

クラリスは柱の近くに半身を隠し、人々が一定の距離を保ちながら近づいたり離れたりして踊る様子を、静かに眺めていた。

「教えてあげられるよ。今からでも。」

いつの間にか隣へ来ていたマクシミリアンがそう声をかけると、クラリスははっとして彼の方へ向き直り、首を横に振った。

「いいえ。こうして近くで見ていられるだけで、十分に楽しいです。」

「実際にやってみたら、もっと楽しい。」

彼は両手を差し出した。こちらへおいで、という仕草だ。

「でも、人目が……」

クラリスは不安そうに視線を巡らせ、周囲を見回した。

「誰もこちらを気にしていないよ。」

マクシミリアンの言葉どおり、貴族たちの視線の多くはバレンタインの方へ向いていた。

しかも今は、大きな柱が二人の姿をすっかり遮っていた。

彼女の腕を引いてはいたものの、だからといって、あのマクシミリアンがここまで近くに寄ってこない姿を見ることになるとは思ってもいなかった。

「たとえそうだとしても、別に大した問題じゃないけどね」

彼が再び手を差し出したため、クラリスは両手を取って応じた。

「公爵様がダンスをお好きだなんて、知りませんでした」

「正直に言えば……そうでもなかった。特に君くらいの年頃の頃は、できるだけ避けていたし」

「それでも、今はお好きになったんですね?」

少しからかうような口調だった。

おそらくクラリスも、彼がここまで変わった理由について、ある程度察しているのだろう。

「愛は、人を簡単に変えてしまう」

彼は息を弾ませながらも楽しそうに、満面の笑みを浮かべるブリエルを見るのが好きで、以前とは違い、ダンスを好きになるようになったのだった。

「僕は君にも……そんな奇跡が訪れてほしいと思っている。」

そう言って、彼は一歩後ろへ下がった。自然と引かれるその動きにつられるように、クラリスもぎこちなく最初の一歩を踏み出した。

「これは、そんなに難しいことじゃない。必要なのは、相手としっかりつながろうとする気持ちだけだ。」

「つながる……ですか?」

「形も雰囲気もいろいろあるけれど、結局は社交のためのものだからね。こうして向かい合っている間は、できる限り相手に意識を向けるんだ。」

クラリスは「よく分かりません」と答えつつも、マクシミリアンに導かれるまま、さらに二歩後ろへ下がった。

「とても上手だよ、クラリス。」

彼は左右へと方向を変えた。何度か床を見下ろしていたクラリスも、やがて足元に気を取られなくなり、マクシミリアンをきちんと見上げながら動けるようになっていった。

ゆったりとした拍子に合わせ、二人は向かい合ったまま静かに身体を動かし始めた。

派手さはなくとも、確かな一体感から生まれる楽しさがそこにはあった。

「すぐについてくるようになるな」

「きっと、お相手が公爵様だからですよ」

クラリスは少し上気した顔で、正直に微笑んだ。

「私は公爵様のことが、本当に大好きですから」

「それはとても嬉しい言葉だ。ありがとう」

彼は一瞬動きを止め、クラリスの頭にそっと手を置いた。

そこには、惜しみなく注がれる愛情があった。

「だが……本当に君を変えることができるのは、きっと別の誰かだろう。クラリス」

「……え?」

ゆっくりと手を離したマクシミリアンは、すぐにある一点を見つめていた。

新しく誰かが到着したのだろうか。そう思い、クラリスも彼の視線を追って顔を上げる。

音楽に合わせて踊る人々の向こうに、見慣れた猫の仮面が見えた。

すぐ前まで近づいてきたノアがマクシミリアンに挨拶をすると、彼も感謝の意を示した。

「王室の要請を公式に受け入れてくれて、ありがとう」

ノアはしばらく公爵をじっと見つめてから、少し間を置いてゆっくりと答えた。

「確認……する必要があっただけです」

軽くうなずいたマクシミリアンは、用事があると言って詫びを入れ、その場を離れた。

どうやら本当に別の用があるというより、クラリスのために気を利かせてくれたようだった。

彼女がノアとどれほど会いたがっているかを、よく分かっていたからだ。

「ノア」

クラリスは急いで両手を取り、その前へ歩み寄った。

「元気だった?」

彼は答えなかった。

その代わり、仮面の向こうに見える紫色の瞳がわずかに震えていたため、クラリスは思わず心配になった。

「もしかして……何かあったの?どこか具合でも悪いんじゃ……?」

その問いかけに、彼はようやく小さく笑った。

「いや、大丈夫だ。君は元気にしていたか?」

いつもと変わらないノアの様子に、クラリスの胸にあったわずかな不安は、一気にほどけて消えていった。

「ノアの近況も分からないまま、私が平気でいられるわけないでしょ。どれだけ心配してたと思ってるの?」

「心配させたなら、ごめん。……手紙は、書いてはいたんだけど」

彼はそこで一瞬、言葉を切った。

「……送れなかった」

「そこまで忙しかったってこと!?」

「ああ」

クラリスの返事に、彼は少し驚いたような声を漏らしたが、すぐに小さくうなずいた。

「うん、忙しかったよ」

「それでも、ちゃんと食事は取ってた?」

「もちろん、時間がある時には食べてた。君は……」

彼は一瞬、クラリスの服装に視線を走らせた。

クラリスは、この服装がどこかぎこちないことは分かっていたが、それでもノアなら「きれいだね」くらいは言ってくれるのではないか、と思ってしまった。

いや、正直に言えば、そう言ってほしかった。

期待に満ちた目で見つめてくる彼女を前にして、彼が口にした感想はこれだった。

「元気そうでよかった」

「そ、そ、そう?あ、そうだ。今夜……少しだけ、別に会えたりするかな?」

まるでデートに誘っているような言葉だったので、クラリスは少し頬を赤らめてしまった。

なぜか落ち着かない気持ちになり、彼女は彼が断りづらくならないよう、慌てて言い添えた。

「べ、別にそういう意味じゃなくて、ノアと静かに話したかっただけで……。……だめ?」

ノアは彼女の言葉に従うように、無意識に自分の仮面に触れ、それから小さくうなずいた。

「分かった」

「じゃあ、私がノアの客用の部屋に行くわね」

「いや、庭で会おう。そのほうがいい」

クラリスは、ノアから“魔法使いの城”の話が聞けるなら、場所はどこでも構わなかったため、すぐにうなずいた。

 



 

 

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