家族ごっこはもうやめます

家族ごっこはもうやめます【176話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【家族ごっこはもうやめます】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介とな...

 




 

176話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 初めての休暇

当時、クリードは11歳、ナビアは12歳の11月。

クリードは神聖帝国アカデミーでまじめに学びながら、初めての休暇を指折り数えて待っていた。

『早くお姉ちゃんに会いたい。』

初恋の熱病は少年を切なく熱くさせた。

そうして待ちに待った休暇がやってくると、クリードは急いでエデン帝国へと戻る。

まずは皇宮へ行かなくてはならなかった。

礼儀として皇帝に挨拶をし、皇室の大人たちに顔を見せなければならなかった。

しかし、彼はまずナビアを探しに行った。

そうしなければ、渇望のあまり死んでしまいそうだったから。

「ハァ……ハァ……」

クリードはエセルレッド公爵邸まで息を切らしながら駆け込んだ。

真冬特有の冷たい空気に肌が凍りつくかのようだったが、全速力で走ってきたせいで体から熱気が立ち上っていた。

彼は息を整えながら後門を通り過ぎる。

よく知る使用人に会うと、3階に向かって上がって行った。

「ハァ……」

クリードは自分でも知らずに感嘆なのか、ため息なのかわからない息を吐いた。

窓がぱっと開け放たれていた。

ナビアが窓を開けて待っていると言っていたその言葉を本当に守ったのだ。

ナビアが自分を待っていた。

いつでも入れるように窓をぱっと開けておいて自分を待っていたのだ。

その事実に胸が締めつけられるような気持ちになった。

心臓がドキドキと早鐘のように鳴り、息が荒くなり、意識が朦朧とするほどだった。

クリードはしばらく激しく呼吸した。

するとすぐに窓枠に足をかけて飛び上がり、ぴたっと両足で窓に着地し、膝を曲げて静かに座り込んだ。

そのとき、柔らかな感触が彼を包み込んだ。

「クリード!」

ナビアが分厚いマントを着たまま、彼をぎゅっと抱きしめたのだ。

クリードは彼女の手に引かれるまま、なすすべもなく部屋の中へと連れて行かれた。

唇が震えた。

「来たよ、姉さん。」と一言でも言おうとしたが、声がつかえて出なかった。

いつの間にか自分よりも小さくなっていた姉が、何かを懐かしむかのように彼を包み込むその腕が、あまりにも温かくて、かえって胸が締めつけられた。

久しぶりに見るナビアは、想像よりもずっと…

「よく来たわ。」

「……うん。」

クリードはどうしていいかわからない表情で手をそっと持ち上げたが、すぐに彼女を抱くことができずに体を引いた。

自分の顔が明らかに真っ赤になっていると確信した。

だから背を向けたのだ。

「クリード?」

ナビアが不思議そうに名前を呼んだが、クリードは決して振り返らなかった。

代わりに、開け放たれていた窓を閉めた。

カチャッ。

部屋の中は静かだった。

壁の炉には火がパチパチと燃えていたが、窓を長く開けておいたせいで外と変わらなかった。

それがくすぐったくて、うれしかった。

「……ずるいよ、姉さん。」

彼は鼻をすすりながら後ろを振り返った。

鼻先が赤くなったナビアが幸せそうな表情でこちらを見つめている姿が、正面に見えた。

クリードはまるで武装を解除された人のように、ぼんやりとナビアを見つめた。

ナビアはクリードの手をぎゅっと握って、庭の塀のほうへと向かった。

「大丈夫よ。こっちのほうがあたたかいから。」

クリードは震える手をぎこちなく下ろし、そっと指を閉じて彼女の手をしっかり握る。

なぜか悪いことをしてしまったような気がして、心臓がどきどきしたが、その手だけは決して放さなかった。

ナビアは彼と手をしっかり握りながら、屋敷の中を歩いて行った。

幼い頃の時代をはっきりと覚えていたので、特に別の考えはなかった。

また、クリードはとても幼かった。

彼女は自分を大人だと思っていた。

実際にそれなりに大人らしく振る舞ってもいた。

だからクリードを当然のように弟のように思っていた。

さらにクリードもまた、自分をしばらく年上の姉だと思っているのだろうと勘違いしていた。

お互いに持っている記憶が違っていたために生じた差異だ。

ナビアとクリードはソファに並んで座っていた。

彼女が尋ねた。

「アカデミーはどう?」

「……悪くないよ。」

ナビアは気になることが多かった。

手紙のやり取りはしていたが、クリードはアカデミーについて詳しく話すことはなかった。

だからエドワード先生に連絡して、クリードが元気にしているのか――別に特別扱いを受けていたわけではなかった。

「クリード様は、交友関係を築くことにあまり関心がありません。」

丁寧に書かれてはいたが、簡単に言えば「友達がいない」という意味だ。

ナビアは、こんなにも整った顔立ちで愛らしいクリードに友達がいないという事実が、にわかには信じられなかった。

『私だったら、誰よりも先にクリドに近づいて「友達になろう」って言ってたのに。』

もっとも、そんなナビア自身も友達を作ることにはそれほど関心のないタイプだった。

とはいえ、それはあくまで自分のこと。

クリードに関することは別問題だった。

「疲れてない? お腹は空いてない?」

「大丈夫。」

クリードはもともとおしゃべりな性格ではない。

言葉よりも行動するタイプだった。

しかし今日は普段よりさらに無口だった。

『まさか久しぶりに会ったから私に気後れしてるの?』

ナビアは無口にしているクリードにさらに親しげに接した。

「会わないうちにもっとカッコよくなったね、クリード。」

「……。」

クリードの表情は相変わらず無表情で固かった。

ただ、頬が少し赤くなっていた。

クリードが恥ずかしがっていることに気づいたナビアは、安心と嬉しさを同時に感じた。

やはり自分が知っているクリードだった。

彼女は褒め言葉の効果がいいと感じた。

そう思いながら、ナビアはクリードの自慢できる点を次々と思い浮かべた。

「こんなにかっこよくて、背も高くて、頭も良くて、性格もいいんだから、アカデミーでは告白もたくさんされたでしょ?」

クリードは少し眉をひそめた。

『告白?そんなのされたことあったっけ?』

誰かに呼び出されて、立たされたり、どこかに連れて行かれそうになった記憶はうっすらとある。

そういう人が一人や二人ではなかったので、クリードはすべて意図的に無視していた。

「全然。」

結局、告白を受けた記憶はなかった。

ナビアは「そんなはずない」と思った。

だって、クリードは普通に考えても“よくできすぎてる”のだから!

「不思議だな。私なら君を見た瞬間に告白してただろうに。」

その言葉にクリードはナビアをちらりと見た。

アカデミーでナビアに出会っていたらどうだっただろう?

エリート中のエリートだけが集まるその場所でも、ナビアは間違いなくひときわ輝く存在だっただろう。

実力でも容姿でもだ。

彼女は壁を作る自分とは違って、誰とでも親しく過ごすだろう。

エセルレッドのみんなが彼女を愛するように、アカデミーのみんなも彼女を愛することになるに違いない。

ぎゅっと、クリードは思わず拳を強く握りしめた。

自分はナビアのそばにいるにはあまりにも平凡な存在だった。

持っているものは何一つなく、世界にはナビアしかいなかった。

アカデミーにはさまざまな生徒がいた。

彼らはほとんどが良い家柄に生まれ、裕福に育っていた。

一目で愛されて育ったのが分かるような雰囲気だった。

自分とはまるで正反対だ。

『僕は、汚れている。』

クリードには、自分の身体に流れる血に対して強いコンプレックスがあった。

『見かけ上は立派でも、ユリシ皇帝の血が自分にも流れているんだ。』

ナビアには分からないだろうが、クリードは彼女の過去についてかなり多くの断片を得ていた。

彼が冷宮から逃げ出してきてからほぼ1年の間、ナビアと一緒に眠り、夢を見ていたときに、こうした場面が断続的に現れた。

場面は連続しておらず、すべて断片的で、まるでバラバラに壊れたガラスのように全体像をつかむのは難しかった。

けれど、それだけでも、ナビアがどれほど過酷な過去を乗り越えてここに戻ってきたのかがわかった。

皇室が彼女をどれほどひどく苦しめたのか、皇帝がどれほど卑劣にナビアを欲しがったのかも見てきた。

それが幼いクリードの心に深い傷を残した。

少年にとって、自分の血筋がどれほど汚れているのかを知ることは、非常に衝撃的なことだった。

それも、自分の元の主人である人に害を与えた者の血筋なのだから。

そんな私たちがアカデミーの学生として出会っていたらどうだっただろう?

ナビアがよりによって皇帝の息子である自分を好きになっていただろうか?

「そんなはずがない。」

クリードは断定するように低くつぶやいた。

今のナビアが自分を愛しているのは、守るべき存在に対する責任感と変わらない。

それだけでもありがたく思わなければならない。

分をわきまえず、それ以上を望んではいけないのだ。

ナビアは落ち着いたまなざしでクリードを見つめていたが、ふと近づいて、彼をぎゅっと抱きしめた。

「……姉さん?」

クリードが戸惑ったとき、ナビアが口を開いた。

「これ、秘密だけどね。私はクリードのことがこの世で一番好きよ。パパには言っちゃだめよ?わかった?」

クリードはそれがただの慰めだと思おうとしたが、それでも心臓が高鳴るのを抑えることができなかった。

優しくて温かい抱擁、自分のことを好きだと言ってくれる声、頭をなでてくれる手の感触──そのどれもが、手放せなかった。

クリードも彼女をしっかり抱き返した。全身がじんわりと痺れるような気がした。

「……僕もだよ。」

僕も、姉さんが好きだよ。一生あなたのことだけを好きでいる。あなたが僕を見てくれなくても構わない。

僕が愛しているから。

そう正直に告白したら、ナビアは驚いた目を瞬かせた後、笑ってしまうだろう。

「私もあなたが好き。」

そう言いながら、子供のいたずらや冗談として片付けるだろう。

だから言えなかった。

ナビアが自分の本心を子供の戯れや勘違いだと片付けずに受け止められるようになるまで、我慢して待つつもりだった。

大人になったら告白しよう。

僕はあなたをずっと愛してきた。永遠に愛していると。

「姉さんが一番好き。僕だけを好きでいて。」

クリードは彼女の胸元に顔をうずめた。

額をすり寄せて甘えるような声を出しながら、ナビアの気を引こうとしていた。

そのような自分が少し未熟に感じられたが、気にならなかった。

「……クリード」

ナビアは感動したような表情を浮かべた。

クリードはまだ幼い少年でありながら、どこか大人びた雰囲気を漂わせる美しい容姿をしていた。

そのため、見た目だけなら生意気で近寄りがたそうにも見えるが、心を開いた相手にはとことん甘える姿があった。

それがまるで特権のように感じられた。

ナビアは、雨に濡れても決して近づいてこなかった寂しげな子オオカミが、ふいに自分のところへそっと寄ってきて頭をこすりつけてくるような感覚を覚えた。

『かわいすぎて、どうしよう……』

「私だけを好きでいろだなんて、どうしてこんな可愛いことが言えるの!」

ナビアは込み上げる気持ちを抑えきれず、クリードの両頬をぎゅっとつまんだ。

「?」

クリドのぼんやりとした瞳がかすかに揺れたとき、ナビアがその頬にキスをぴったりとした。

「ぬ、姉さん?」

「かわいいクリード!」

クリードは突然降り注ぐ愛情の攻撃に頭がいっぱいになった。

『心臓が破裂しそう……!』

恥ずかしさに顔も真っ赤になっていた。

彼はどうしていいか分からず、ついに席を立ち上がった。

「ぼ、僕、もう行くね!」

「もう?来てまだ30分も経ってないのに……」

「皇宮に行かないといけなくて。」

クリードは顔を伏せたままだったが、耳から首元まで真っ赤になっていた。

ナビアも遅れて彼の顔が真っ赤になっていることに気づき、少し戸惑った。

「そっか……そうだよね……。じゃあ、次はいつ来るの?」

クリードは視線を窓のほうに向けながら答えた。

「……あとで来るよ。」

そう言って、ぎこちない足取りで窓の方へ歩いていき、そっと扉を開いた。

冷たい風が彼の頬をかすめたが、赤くなった顔は少しも冷めなかった。

彼は唇をきゅっと噛んで、今にも窓の外に飛び出そうとしたとき、背後からナビアの声が聞こえた。

「必ず来て!いつまでも待ってるから。」

ぴたり。

クリードは動きを止め、複雑な表情で振り返った。

言いたいことはたくさんあった。

だけど、言えることはほとんどなかった。

彼は慎重に一言を吐き出した。

「待ってて。」

僕がすぐに大人になるから。

彼は今までで一番真剣な表情だった。

ナビアはなぜか軽い気持ちで答えてはいけないと感じた。

「うん。」

するとそのとき、クリードの顔に今日初めて笑みが浮かんだ。

夕焼け色に染まった頬、眩しく光る青い瞳に、清々しい香りがふわりと混じってくるようだった。

クリードはそのまま窓から飛び降り、すっと姿を消した。

ナビアは遅れて我に返り、窓に駆け寄って、しっかりと窓を閉めた。

「……うぅん。」

なぜか、見てはいけない何かを盗み見てしまったような気がして、心がくすぐったくなった。

ナビアは独り言のようにつぶやいた。

「塀から飛び降りるには勢いが強すぎた?」

ちょっと変だな。

彼女は塀の方へ歩いていこうとしたが、ふと足を止めて、もう一度後ろを振り返った。

「……すぐ来るよね?」

少しの間来ては消えたのに、彼のいなくなった空間が大きく感じられて心が寂しくなった。

「早く来て、クリード。」

私はもう待っているんだから。

 



 

 

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