こんにちは、ちゃむです。
「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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155話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 原初の存在③
ナビアはやるべきことが山積みで、ここでカオスと話をしている時間が惜しいと思い始めていた。
そこで遠回しに、会話を切り上げるための口実を考える。
「カオス様は始祖の神でいらっしゃるし、多忙を極めていると思うのですが、私のためにこんなに時間を割いてくださっても本当に大丈夫なのでしょうか?」
顔を見ただけでも、もう人間界に送り返していただいても構わないのですが。
カオスは笑みを浮かべながら答えた。
「うん、大丈夫だよ。特にやることもないし。」
「……そうですか。」
カオスは気楽な態度で背もたれにもたれかかり、脚を組んだまま穏やかに言った。
「始祖の神っていうのは、本当に退屈な役目だよ。他の奴らみたいに簡単に化身を作ることもできないし。」
「どうしてですか?」
「格が違うからだよ。」
ナビアは、なんとなく言葉の意図を察したが、神々の間での格の違いや、どんな神が存在しているのかについては全く情報を持っていなかった。
そのため、少し困惑したように目を閉じると、カオスは片方の口角を上げた。
「君の父親なら、もう少し話が通じただろうね。」
『話が通じる相手として、私が父に比べられるなんて……。』
もちろん、ラルクが立派な存在であることは間違いないが、どこかしら気分の問題が絡んでいるのは明らかだった。
ナビアが少し呆然としていると、カオスは大声で笑い出した。
「君、本当に可愛いね。本当に結婚したくなるよ。」
ナビアは確実に疲れ果てていた。
このような答えようのない会話を続けるには、相当な精神力が必要だ。
さらに、相手は自分ではどうにもならない存在ではないか?
「神が人間とどうやって結婚するんですか?それに、私は結婚するって約束した人がいます。」
「そんなの別に構わないさ。君にも夫が二人いれば、もっといいんじゃない?」
「それって何がいいんでしょう……?」
ナビアは髪をかき乱しそうになりながら、少し苛立った様子で質問を続けた。
「私はいつまでここにいなければならないんですか?」
『早く仕事を片付けて、夜にはクリードを探しに行かなくちゃ。』
カオスはじっとした表情で、手のひらに顔を乗せてこちらを見つめた。
「ふむ。だが、目の前にいる私を置いて、他の男のことを考えるとは、あまり気分が良くないな。気分が晴れるまで、ここにいてもらう。」
「……」
「冗談だよ。」
ナビアは少し間を取ってから、心の奥から湧き出る疑念を口にした。
「……もしかして、からかわれているんですか?」
カオスは驚いた表情を見せた。
「今さら気づくとは。君、こういうことには本当に鈍いんだな。」
原初の神とも言える存在が、こんな冗談を言うとは。
むしろ、それを信じる方が難しいだろう。
ナビアは何かを言うべきかと一瞬考えたが、結局口を閉ざした。
その反応がカオスにはさらに面白く映ったようで、彼は笑いながら言った。
「君のそういうところが愛らしくて、ますます気に入ったよ。」
「そうですか。」
「だから、プレゼントをあげたくなったんだ。」
カオスは手のひらを広げて差し出した。
「手を。」
「……?」
「右手を。」
ナビアは彼の意図を理解しようとするのを諦め、素直にその要求に従った。
カオスは慎重な様子で彼女の右手を取りながら、ゆっくりと微笑んだ。
その上に何かを描くように指を動かした。
痺れるような感覚に、ナビアが腕をそっと引き戻そうと動くと、カオスが手に力を込めてそれを止めた。
「そのまま。」
その瞬間、薄青い光がカオスの手の跡を辿ってゆっくりと浮かび上がった。
「え……?」
ナビアは驚いて手を引こうとしたが、既にその手の甲には何の痕跡もなく、ただ空っぽになっていた。
彼女は慌てた表情で手を眺め、そして再びカオスを見上げた。
カオスは彼女と視線を合わせ、穏やかに微笑んだ。
「その表情、面白いね。まるで僕を罵ってるみたいだ。」
正確だ。
「……本当に冗談で済まされることではないですよね?」
「それがどうした?」
はぁ……。
ナビアは怒りを抑え込むように深く息を吐いた。
ガドクや自分を犠牲として扱うだなんて、アグニスが人間界での位置を確保するために後援を失ったということまで加えられるとは、これではさすがに度を越えているのではないか!
カオスは怒るなと言わんばかりの微笑みを浮かべ、軽く眉を上げてナビアをじっと見つめた。
「まさか僕が君に害を及ぼすとでも思うの?言ったじゃないか。僕は君が気に入ったんだ。」
その言葉が終わると同時に、彼はナビアの手首に軽くキスをした。
ビクッ!
「ちょっと、何をなさって……!」
そして彼の唇が離れた場所に光が差し込み、新たな月が描かれた。
それは黒い三日月だった。
ドクン。ドクン。
ナビアは三日月を見つめながら、無意識に拳を握りしめた。
元々の標識とは異なる、新しい力が全身に流れ込んできた。
かつて不完全だった力が、無理なく満ちていく感覚。
それは始まったばかりの新月ではなく、すべてを覆う影の段階と意味が絶妙に調和しているようだった。
『今の自分には、この方がよく合う力のような気がする。』
自分がすべての巡り合わせが終わった、最後の人生を生きているからかもしれない。
カオスはナビアへの返答を静かに待った。
「さあ、私を信じると言ってごらん。」
「私が好きだと答えてごらん。」
考えが透けて見えるような表情に、ナビアは思わず笑ってしまった。
「ええ、そうみたいですね。あらかじめ説明してくださっていれば、もっと信じやすかったと思いますけど。」
「君をからかうのが面白くてね、それだけさ。」
その言葉に、ナビアは少し間を置いてから表情を曇らせた。
「私をからかうのが楽しいなんて……。自分が特別な反応を見せた覚えはないんですけど。」
いや、それはカオスだけに限ったことではなかった。
ほかの人たちも、どこかしらナビアを面白がっている節があった。
ラルクもまた、たびたび彼女をからかって遊んでいた。
「私は別に面白い人間でもないのに……理解できませんね。」
カオスは彼女の眉間を軽く押さえながら、クスクスと笑った。
「そういうところも面白い部分なんだ。」
ナビアは早く人間界に戻りたいと切に願った。
カオスは月の力について説明を始めた。
「ニクスが君に授けた力はかなり優れたものだけど、明確な制約がある。」
「必ず接触するか、相手が魔法を使った場合にのみ、その魔力を吸収できるという制約ですよね?」
「その通りだ。月は元々の力にカフィを追加したものだ。」
「カフィって……?」
「これで、接触なしでも本当にカフィキャットの魔法のように相手の能力をコピーできるということだ。」
説明を聞いたナビアの表情は明るく輝いた。
カオスは彼女の表情がこれまでで一番生き生きとしているのを満足げに見つめた。
「気に入った?」
「ええ、すごく気に入りました。ありがとうございます、カオス様。」
子どものように純粋に感謝を述べるナビアに、カオスは彼女の頭を撫でて応えた。
ナビアは首を少し下げて応じたが、ふとアグニスのことが頭をよぎった。
「人間界に万神殿(パンサイオン)を繋げようとしている人たちが……それについて、何かご存じですか?」
「そうか、なるほどな。」
「そのまま放置しても大丈夫でしょうか?」
「人間界の問題だ。私がいちいち干渉することはできない。」
ナビアは自分の力を確かめてみた。
『こんなにも完全に自分が強いと感じるのは初めてだわ。』
この力があれば、何だってできそうな気がした。まるで、父親のように。
「私が解決できるでしょうか?」
そう言って、自分が彼らを止められるか尋ねた。
いや、この力を得る前でさえも、すでにクリードの力を合わせれば、そんな問題は簡単に解決できると思ったのだ。
『父がそう言ったんだから。』
ナビアはラルクの言葉を無条件に信じた。
カオスはナビアの決意に満ちた瞳に視線を合わせると、軽く鼻を触りながら言った。
「君が望む通りになるよ。」
その答えに、ナビアの表情が明るく輝いた。
その素直な反応が可愛らしく愛おしく感じられ、カオスはナビアにさらに心惹かれていった。
側に置いておくとどれほど楽しいだろう?
だが、人間を神界に永遠に留めておくことはできなかった。
「そろそろ君を人間界に戻さなければいけないな。最近、ここを侵略しようとする者がいるからね。」
ナビアは目をくるくると動かしていた。
『侵入だなんて、まさか敵なの?』
しかし、その一方でカオスの態度はあまりにも穏やかだった。
彼は手を軽く振りながら言った。
「さあ、お行き、愛しい子よ。」
パッ!
そうしてナビアはカオスの空間から強制的に送り出された。
人間界に戻されたのだ。
そして。
ドカーン!
一角の空間が爆発するかのように壊れ、巨大な体を持つ獅子が威圧的に現れた。
「私の娘はどこだ?」
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