こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

102話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 隠し部屋②
外に出たルイーゼは倉庫の外観を再び確認する。
崖の端に鋭くそびえ立つ尖塔の形をした木造の建物である村の会館の倉庫は、非常に高い位置にあった。
「内側から見たときは、確かに平らな天井だったのに。」
つまり、天井と屋根の間には隠し部屋のような空間があるということだ。
周囲を見回すと、村長は村の会館の中にいるようだった。
倉庫は窓が高い位置にあり、登るには適していない建物だった。
ルイーゼは軽く体をほぐし、倉庫から勢いよく飛び降りる。
「確かに高いけれど……。」
彼女は素早く走り、倉庫の壁を蹴って高く跳び上がった。
一瞬のうちに3階の高さにある窓にぶら下がり、そのまま窓の縁に登り、斜め上にある屋根裏部屋の窓まで軽やかに到達した。
「フェリルスの木に比べたら、こんなの何でもないわ。」
ルイーゼは覚悟を決め、窓をこじ開けるために剣の鞘をしっかりと握った。
トクッ、キィィーッ。
その瞬間、肘が窓に触れた拍子に、気を引き締めていた彼女が拍子抜けするほど、屋根裏部屋の窓は小さな音を立てながら開いた。
どうやら、最初から完全には閉じられていなかったようだ。
ルイーゼは慎重に屋根裏部屋の床に足を踏み入れる。
部屋の中には埃が積もっていた。
長い間、誰も入っていなかったのか、床には乾いた埃が厚く積もっていた。
その時、外から人の気配が聞こえてきた。
誰かが村の会館に向かって来るようだ。
ルイーゼは素早く部屋の中に入り、窓を閉めて鍵をかけた。
「村長、いらっしゃいますか?妻が村の会館への道を忘れたと言うので、今日の供え物は私が代わりに持ってきました!」
「誰だ!武器商人の……ではないのか?」
小さく聞こえる声を背に、ルイーゼは慎重に屋根裏部屋の奥へと身を潜めた。
倉庫が高いため、身をかがめる必要はなかったが——倉庫自体が広いため、屋根裏もまたかなり広かった。
両端の窓を除けば、家具や物品もないがらんとした空間だった。
できるだけ音を立てないように入ったが、足を踏みしめるたびに埃が舞い上がり、宙に漂った。
「……あれは……」
そして、倉庫の中央でルイーゼは手のひらほどの大きさの黒い供え物と向かい合った。
彼女はそっと忍び足で近づき、供え物に向かって手を伸ばした。
その瞬間、
スッ……。
供え物が素早くルイーゼの手の動きを避け、遠くへと移動した。
「……避けた?」
ルイーゼは震える表情で、がらんとした手のひらと先ほどより遠くに、まるで最初からそこにあったかのように静かに置かれている黒い供物を交互に見つめた。
彼女は再び供物へ向かって歩み寄った。
スッ。
供物がまた彼女の手を避けた。
「そういうことね。」
今回は床を蹴って跳び上がり、両手で供物を押さえ込もうとした。
しかし、供物は目にも留まらぬ速さで彼女の身体を避け、壁際へと移動した。
天井が細かい木片のつなぎ目で、床と壁の間にはわずかな隙間があったため、供物が隠れるには都合がよかった。
ルイーゼは床に座り込み、膝歩きで供物に近づいた。
「そこにあるのに、捕まえられないと思う?」
彼女が手を伸ばすと、供物は横にゴロリと転がった。
そして、転がる方向に彼女の手が素早くついていくと、供物は怯えたように宙へと跳び上がった。
トン、トン、トン。
準備運動でもするかのように跳び上がっていた供物は、すぐに再び自分へ向かってくるルイーゼを撒こうとするかのように、素早い速度で倉庫のあちこちへ飛び跳ねた。
パパパッ!
最初は供物の形が目で追えたが、次第に速度を上げた供物は、もはや供物というより倉庫内に飛び散る影のように見えた。
素早いルイーゼでも、目で追うのが精一杯だった。
「……本当にこれ、どうやって捕まえろっていうの!?」
ルイーゼが苛立つように拳をぎゅっと握ると、供物は一瞬、宙に浮かび、彼女をからかうようにゆらゆらと揺れた。
そして、ルイーゼが腕を伸ばすと、供物は再び倉庫の中を慌ただしく飛び回った。
「どうせ破壊するんだから、斬るほうが早いわ。」
供物をじっと見つめていたルイーゼは、剣の柄に手をかけ、目を閉じた。
視覚は最も怠惰な感覚だった。
視線で追うことはできず、音は肉体の感覚に邪魔される。
ルイーゼは大きく息を吸い込み、剣を握って一気に振り下ろした。
チャン!
トク、ゴロゴロ……ゴロゴロ……
「……痛そうね。」
供物は正確にルイーゼの剣に当たった。
剣の広い刀身にしっかりぶつかった供物は、下へトンと落ち、痛そうに身をよじった。
「本当に生きているみたいね。あなた、大丈夫?」
ルイーゼは剣の先で供物を軽く突いた。
供物はブルブル震えた後、ゴロゴロと石のように転がって床に落ちた。
なぜか罪悪感を覚えたルイーゼは、気まずそうな表情で供物を見つめ、顎を軽く上げた。
「気をしっかり持たなきゃ。騙されちゃだめ。供物が可愛く見えるなんて、それはおかしいわ。」
ゴロゴロ……
トク、トク。
供物が静かにルイーゼの方へ転がってきて、床に肘をついている彼女の手首に慎重に触れる。
「……騙されないわよ。」
トク。
一度ぶつかって少し離れて止まっていたが、再びトクっと彼女の手首を叩き、彼女の様子を伺うように見つめていた供物が、不安そうに彼女の手のひらの中に転がり込んできた。
「……」
自ら彼女の手の中に収まった供物を見て、ルイーゼは困惑した表情を浮かべた。
供物はまだブルブルと震えていた。
「騙されないってば……」
まるで彼女の体温が心地いいかのように、手のひらの上でピクピクしていた供物は、やがて静かになった。
「……もう治った?もう痛くない?」
どりどり。
供物が震えるように小さく左右に動いた。
「まだ痛いの?」
くるくる。
今度は上下に動いた。
「ごめんね。一部わざとやったわけじゃないの。ただ痛みを最小限にしようとしただけなのに、あなたが来たから当たっちゃったんだ……」
ぶるぶる。
供物が恐怖を感じているように、また体を震わせた。
ルイーゼは供物を手に持ったまま立ち上がった。
「とにかく探し物は見つかったし、そろそろ戻らなきゃ。あなたを解放する方法がないか、一度調べてみるね。どう見ても感情があるようだし、ただ倒して終わりにはできないよね。」
彼女が近くの窓へ向かおうと足を踏み出した瞬間だった。
ぐらっ。
「……?」
床が崩れ、一瞬のうちに彼女の体が下へ落ちた。
そこは、供物の埋まっていた場所だった。
どうにか安全に着地しようと下を確認していると、エドワードが彼女に向かって両腕を伸ばしていた。
普通の人間なら、人を受け止めるつもりが逆に巻き込まれて大変なことになりかねない距離だったが、なぜかエドワードなら無理なく彼女を受け止められそうな気がした。
彼女は彼を信じ、体の力を抜いた。
ルイーゼの予想通り、エドワードの両腕はしっかりと彼女を抱き支えた。
彼の腕の中で、ルイーゼは誇らしげな表情で手に持っていた黒い供物を差し出した。
「じゃん!見つけましたよ!」
「よくやりました。ルイーゼさんならやってくれると思っていました。」
エドワードはルイーゼに向かって温かい目で微笑んだ。
二人の視線が至近距離で交差する。
時間が止まったかのように、二人の間には微妙な緊張感が流れた。
ちらつく焦点を見つめながら、彼女はそっと息を飲み込んだ。
本当に、いつ見ても眩しいほど整った顔立ちだった。
「いやはや、別れの痛みに沈んでいる人の前で、あまりにも無神経すぎませんか?」
カーロが二人の間にそっと剣の鞘を押し出した。
冷えた赤い瞳が鋭くカーロを見据えた。
カーロは驚いて思わず後ずさった。
幻のようにエドワードの周囲で黒い気配が揺らいだ。
「不満でもあるのですか?」
「い、いえ!そんなことはありません。すみません。」
ようやくルイーゼが周囲を見渡した。
マクシオンとエイヴンは、初めから二人を見ないようにするかのように、そっぽを向いていた。
「降ろしてください。」
「もっと抱いていてもいいですよ。」
ルイーゼに視線を向け、再び柔らかな微笑みを浮かべながら、彼は穏やかな声で答えた。
「恥ずかしいからです。」
「……残念ですね。」
エドワードは素直に彼女を床に降ろした。
ルイーゼは赤くなった顔で、エドワードの腕から抜け出した。
「あ、それと、遺物を見つけたので約束の報酬をお渡しします。今夜、契約書を持ってくる際に残金をお支払いします。」
エドワードはそれを受け取ると、興味なさそうな無表情のまま、懐から財布を取り出してカーロに投げた。
カーロは無言で財布を受け取り、中身をざっと確認した。
金貨の量を見たところ、80ゴールドほどありそうだった。
「ふぅ、こんな大金をどうやって目立たずに懐に隠していたんだ。」
彼は喜びのため息をついた。
ルイーゼは黒い遺物をエドワードに差し出した。
「えっと、これはどうすればいいですか?」
「遺物はエイヴンに渡してください。」
「エリオットじゃないんですか?」
「今の私は彼を信じられる状態じゃありませんから。」
「そうだね。遺物とつながっているし。」
エイヴンがルイーゼのもとへ歩み寄り、手を差し出した。
ルイーゼは素直にエイヴンへ遺物を渡そうとしたが、ふと動きを止めた。
「もしかして、この遺物を壊さずに魔法を解く方法はありませんか?」
「……なぜそんなことを?」
「遺物が生きているように感じたんです。私の剣にぶつかったとき、まるで痛がるように床を転がり、遺物の表面が震えながら震えていました。」
「……。」
「それに、私の手を軽く叩いてきたので、安全だと思ったのか自ら手の中に入ってきたんです。痛いのかと聞いてみたら、小さく動いて意思を示しました。もしこれが生きているのなら……このまま壊すのはかわいそうじゃないですか?」
「……それを排除しなければ、村の人々が最終的に命を落とすことになります。」
エイヴンの言葉にルイーゼの表情が沈んだ。
「でも……感情を持っていて、言葉が通じるなら、説得することもできるのでは?」
「不可能です。」
マクシオンがルイーゼのもとへ歩み寄った。
「ルイーゼ、早くそれをエイヴンに渡せ。」
彼の簡潔な口調に、ルイーゼはしょんぼりした表情で遺物を見つめた。
遺物は相変わらずルイジェの手の中でぶるぶると震えていた。
「もし本当に生きていたら、どうするの?」
「……それこそ、黒魔法の最も邪悪な部分なのです。」
押し殺したような感情がこもる声はエイヴンのものだった。
いつも無表情だった彼の顔に、怒りが滲んでいた。
初めて見る彼の様子に、ルイーゼは大きく目を見開いた。
「人間の記憶を吸収し、まるで人間であるかのように振る舞うのです。ルイーゼ嬢が情に流されれば、それこそが弱点になります。実際、黒魔法には生存への欲求を除けば、どんな感情も意志もありません。」
「これですか?」
「ええ。気になるなら、魔法を解いてくれと頼んでみてください。」
じっと遺物を見つめていた彼女が口を開いた。
「生きたいなら、村の人たちにかけられた魔法をすべて解いて。」
ブルブル……。
「さあ、みんなの記憶を戻して。」
ブルブル……。
「……ここにいる遺物をすべて消して。」
ブルブル……。
「半分でも、それ以下でもいいから、少しずつでも、ね?」
しかし、遺物はただ震えるばかりで、黒い液体の一部がこぼれることもなく、下に落ちた遺物も消えなかった。






