こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

80話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 夏祭り④
メロディは水から上がるとすぐにクロードの手を離し、少年の前へ走って靴を差し出した。
少年はなくしたものを取り戻したのに、なぜかすぐに履こうとはせず、ただそれをじっと見つめている。
「……そうだね。」
メロディは少年の靴を裏返してみた。すると水がポタポタと落ちた。
なぜか笑いがこみ上げてくる。
どんなに慌てていたとはいえ、こんな状態の靴を履こうとしていたなんて。
「乾かさないと履けないよね?」
メロディは日当たりのいい石の上に少年の靴をそっと置いた。
そして、少し腰をかがめて少年と視線を合わせた。
「こんにちは、私はメロディ。」
短い自己紹介にも、少年は特に反応を示さなかった。
ただ、メロディの白い足を不安そうに見つめるだけだ。
彼女が片方の靴をなくしていることが気になっているようだった。
「大丈夫。ブリクス邸には私の靴があるから。」
メロディはできるだけ軽い口調で答えながら、肩をすくめた。
少年は目をゆっくり瞬きし、軽く握った両手をぎゅっと握り直した。
「……僕のせいで、ごめん、ごめんなさい。」
「君のせいじゃないよ。私はこうしたかっただけだから。」
メロディは少年の乱れた帽子をきれいに直してあげながら、微笑んだ。
「最近、毎日見てたのに、知らないふりはできないよね。私を覚えてるでしょ?橋で会ったじゃない。」
少年はメロディの顔をじっと見つめた後、小さく慎重に顎を引いた。
「覚えてくれたんだね。嬉しいな。でも、息を止めて橋を渡るのは成功……」
メロディは話の途中で言葉を止めた。
少年の沈んだ表情を見ると、無理に答えを求める必要はないと思ったから。
「ごめん、大変だった?」
「……」
「失敗、私も一度したことあるけど、すごく大変だったな。」
慰めるようにかけた言葉だったが、少年の心には響かなかったようだ。
ただ、静かにスプーンをいじるばかりだった。
『そういえば、村の子供たちにそんなことをされたこともあったな……。すごく悔しかった。』
捨てられた子供とか、嘘つきとか、そんな言葉はメロディ自身も幼い頃に何度も言われたものだった。
だからだろうか。今こうしてスプーンを握りしめる少年を見て、なぜか胸が締めつけられるような気持ちになった。
彼が男主人公であるとか、ロレッタにとって必要な人物であるとか、そんなことは関係なく、ただ……。
「ねえ。」
メロディが少年を呼ぼうとしたそのとき、橋の上から男性の叫び声が聞こえてきた。
誰かを必死に探しているようだった。
少年の顎がすぐにその方向を向いた。
一瞬、両目が期待に輝いた。
しかしすぐに少年は落胆し、顎を落とした。
おそらく、それが自分を呼ぶ声ではないと悟ったのだろう。
「あ。」
その瞬間、メロディにある気づきが訪れた。
少年が毎日のように橋を渡りながら落胆していた理由。
「……待って。」
メロディはゆっくりと口を開いた。
しかし、少年の視線は今回もまた別の場所を向いていた。
「ああ、坊や!」
こちらに向かって走ってくる老婦人に。
彼女は青ざめた顔で少年に駆け寄り、その肩を急いで抱き寄せた。
そしてメロディとクロードを警戒するように見つめ、凍りついたように震えながら言った。
「うちの子が、こ、高貴な方々にご迷惑を……」
「いいえ、そうではありません。」
メロディが説明しようとしたが、夫人は何度も頭を下げながら、繰り返し謝罪し始めた。
「子供が分別もなく、無礼を働いたので、どうかお許しください……。さあ、茶をお出しして。」
メロディは「違う」と言おうとしたが、クロードが先に出てきて彼女の言葉を遮った。
「ご迷惑をおかけしたわけではありません。ただ、子供が驚いたようですので、家へ連れて帰るのがよろしいかと存じます、夫人。」
彼の言葉に、老婦人は感激したように驚きながら、凍りついたような少年の肩をつかんで家へ戻ろうとした。
老婦人に引かれながらも、少年は何度もメロディのほうを振り返った。
そして、ある瞬間、少年は老婦人の手を振りほどき、メロディの前へと戻ってきた。
「……あ、ありがとうございます。」
少年はそう言いながら、ぎこちなく顎を引いた。
まるで、その言葉を口にしなければならないことを今になって思い出したかのように。
「そう言ってくれてありがとう。」
メロディは月明かりの下に置いていた靴を少年の足元にそっと置いた。
まだ完全には乾いていないが、裸足のまま帰って怪我をしたら大変だから。
靴を履いた少年は少し戸惑いながらも静かに口を開いた。
まるで、とても重大な秘密を打ち明けるかのように慎重に。
「僕……オーガストです。」
「え?」
突然聞こえた名前に、メロディは思わず驚いて問い返した。
しかし少年は、自分の声が小さすぎてメロディが聞き取れなかったのだと思ったのかもしれない。
ぎゅっと力を込めたぎこちない声で、再び答えた。
「お、おーガスト……。はい! 私の、私の名前は……。」
オーガスト。
それは……特徴的な髪の色を見て、何となくそうかもしれないとは思っていたが、実際に少年の口から名前を聞くと、妙な気分になった。
『……この子、本当に。ロゼッタと特別な縁で結ばれる子なのか。』
メロディは感激する気持ちを抑え、できる限り堂々と答えた。
「うん、会えて嬉しいよ、オーガスト。」
少年は一瞬、私の腕をぎゅっと握りしめたが、再び老婦人の後を追って一生懸命走り始めた。










