こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

109話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 慈善活動
数日間の努力で、アイリーンの部屋はきれいに清掃された。
古くなったカーペットを新しいものに替え、家具も新しいものを揃えた。
最後に閉ざされていた窓を開け、アイリーンが気に入っていた白いカーテンを取り付け、見違えるように整えた。
部屋でシュールをいじっていたエステルは、作業員たちが出ていく音を聞いて急いで廊下に出た。
「ついに終わったみたいね。」
期待に胸を膨らませ、廊下を急ぎ足で進み、アイリーンの部屋の前にたどり着いた。
そこには、エステルより先に訪れていた来客がいた。
「お兄ちゃん?」
中に入ろうとしたエステルは、がらんとした部屋の中で、蝋燭の火をじっと見つめているデニスを見つけた。
まるで泣き出しそうな表情だった。
初めて見る兄の顔に、エステルは部屋に入るのをためらった。
「どうしてそうしているの?」
だが、ちょうどそのとき、興奮して駆け込んできたジュディが背中を押すようにして部屋の中に入り、気まずさを感じる暇もなく足を踏み入れた。
「わあ、部屋が本当にきれいになった!」
ジュディは完全に新しくなった部屋を探検するのに夢中で、周囲の空気を全く気にしなかった。
その無神経さのせいで、デニスの目元が赤くなっていることに気づくこともなかった。
「僕もさっき見て驚いたよ。母さんも喜んでいるはずだ。」
「うん。これで安心して見守ることができるよ。毎日来て見なくちゃ。」
デニスが蝋燭の明かりを見つめていた視線が和らぎ、その雰囲気に感化されたのか、ジュディもすぐに優しい目つきになった。
「そんなに毎日見たいの?」
そのような感情をよく知らないエステルが尋ねた。
「当然じゃない。お母さんだもの。」
ジュディは当然のように答え、意味ありげな表情を浮かべながら蝋燭をじっと見つめた。
いたずら好きなジュディですら、羊のようにおとなしくなっている姿を見て、エステルは少し考え込んだ。
「私は会いたくないけど。」
昔、母に捨てられたことを恨んでいた時期もあったが、今ではそんな感情さえも忘れて久しかった。
「エステルはお母さんに会いたくないの?」
「はい。誰なのかも知らないし、生まれてすぐ捨てられたんです。」
以前、孤児院にいたとき、そこの院長がしきりに口にしていた言葉だった。
「親が生まれてすぐに捨てた子供を引き取ったのだから、ちゃんと感謝して恩を返しなさい。」
「情がなかったから捨てられたのでしょう?」
エステルの瞳が潤んだ。
生まれてすぐから愛されなかったという事実に、少しだけ悲しさを感じたのだ。
「そんなことないよ。お母さんにもきっと愛情があったはずだよ。」
慰めようとするジュディは、迷いなくエステルをぎゅっと抱きしめ、まるで傷口に薬を塗るかのように優しく包み込んだ。
「そうなんでしょうか。」
エステルはその言葉を信じてはいなかったが、ジュディが困らないように、そのまま抱かれることにした。
「まあ、どっちでもいいじゃない。だって、そのおかげで私たちはこうして出会えたんだから。」
二人が抱き合うのを見かねたデニスが間に入り込んだ。
そのおかげでエステルは左右両方から同時に抱きしめられる形になり、息が詰まって咳き込んだ。
「お兄ちゃん、苦しい……!」
「ジュディ、早くエステルの首を解放してあげて! 君のせいだよ!」
「ごめんね。僕が強く抱きすぎたかな?でも、まだ離さないよ。」
それでも腕が緩んだおかげで、エステルは少し息がしやすくなった。
二人に抱きしめられたエステルの唇に微笑みが浮かんだ。
部屋を点検しようと3階まで上がってきたドフィンは、外からその様子をじっと見守った。
「中に入って一緒に抱きしめてあげないのですか?」
普段から感受性豊かなデルバートが、手近にあったハンカチで涙を拭いながらドフィンに冗談めかして問いかけた。
「ただ……自分があまりにも不甲斐ない父親だと感じるだけだ。」
幼い頃から双子が母親の話を持ち出すと、いつも厳しく叱ってしまっていた。
無駄に戻らない母親への期待を抱かせたくなくて、外面を保つことが最善だと思っていた。そうするしかなかった。
彼らがこんなにも喜ぶとは思わなかった。
もっと早く部屋を開けるべきだったと考え、申し訳なくて心が痛んだ。
「殿下にとっても初めてのことでしたから、とてもよくやられたと思います。」
デルバートは自責しないようにと、ドフィンに優しく声をかけた。
「お子様たちはとても立派に成長されました。」
ジュディとデニスはどちらもドフィンに似て、頑固で意志が強そうに見えるが、内面はとても優しかった。
「今回の件を見てもそうですね。殿下がアガシと一緒に外界に出かけられた話を聞いて、どれだけ驚いたかわかりません。」
「私も驚いたよ。子供たちがそんな考えをするなんて、大人の私よりも賢い。」
ドフィンは部屋の中にいる子供たちを、まるで宝石を見るような優しい目で見つめた。
まるで、目に入れても痛くないと思えるほどだった。
その時、ちょうど3階に駆け上がってきたベンが、息を切らせながらドフィンに耳打ちした。
「殿下、先ほどルシファーの動向を掴んだとの報告がありました。」
「そうか?」
待ち望んでいた知らせだったため、ドフィンは喜びながらベンに視線を向けた。
「驚いたことに……彼が我々の領地内にいるようです。」
「テレシアに?」
ドフィンの眉間に深い皺が刻まれた。
「はい。偶然の一致ですが、逃亡の末、二日前にテレシアに入ったことを、彼を追っていた情報屋が確認しました。」
ベンはこうした方面ではかなり信頼のおける秘書だったので、彼の言葉に間違いがある場合はほとんどなかった。
「それならルシファーを見つけるのも、もう時間の問題だな。」
「ええ。そこで、騎士団を少し動員しようかと思うのですが、いかがでしょうか?」
他の案件であれば慎重に検討し、決定しただろうが、今回ばかりはドフィンも即座に賛成した。
「どれだけ手を尽くしてもいい。ただし、必ずデレオのところに連れて行き、その人物に確認すべきことがある。」
「承知しました。」
ドフィンはまだ双子に抱きつかれているエステルをちらりと見ながら、ベンに追加の指示を出した。
「それと、邸宅周辺の警戒をさらに強化させろ。特にエステルをしっかり守るように伝えろ。」
ルシファーがテレシアにいることがエステルと関係しているようには思えなかったが、万が一を考えて防衛をさらに固めておくべきだと感じた。





