大公家に転がり込んできた聖女様

大公家に転がり込んできた聖女様【125話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

125話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 崩壊③

「どうなったのかしら。」

心が落ち着かないエステルは部屋にじっとしていられず、なんとなく外へ出て庭を歩き回っていた。

朝、ノアと父が一緒に神殿へ行ったのは見たが、その後の様子がどうしても気になって仕方なかったのだ。

神殿の後は予定がないと聞いていたので、ドフィンが戻ってくるのを待っていたところ、地面を震わせるような馬の蹄の音が耳に届いた。

馬に乗って駆けてくるドフィンの姿が見えた。

荒々しい姿ではあったが、少しも怖くはなかった。

「お父さま!」

エステルはぱっと笑みを浮かべ、馬を止めたドフィンのもとへ駆け寄った。

エステルが自分を待っていたことに気づいたドフィンの顔が、一瞬うるんだかと思うと、やがて優しくほころんだ。

それは今日、初めて見せた微笑みだった。

ドフィンは両腕を大きく広げ、駆け寄ってきたエスターを軽く抱きしめた。

「待っていたのか?」

「はい。結果が気になって……。」

「中へ入ろう。ちょうど皆を呼ぶつもりだった。」

エスターを大事そうに抱きかかえたドフィンは、自然にその小さな手を握りしめながら屋敷の中へ入っていった。

「ベン、お前はあの姿を毎日見ているのだろう?」

「もう慣れました。」

「そうか。だが私が慣れてしまうのは少し怖いな。」

神官たちをどう処理したのかを報告するため、大公子に同行してきた騎士団長は、羨ましげに腕をさすった。

自分たちに向ける態度とはまるで違う、柔らかいドフィン姿を見たせいか、腕に鳥肌が立っていた。

「慣れてしまえば楽になります。」

ベンはそう言って団長を励まし、屋敷の中へと入っていった。

ドフィンはエステルを連れて居間へ向かった。

ソファに腰を下ろすと、図書館にいたデニスや、運動場を走っていたジュディも呼び寄せられた。

「ちょうど運動して汗をかいていたところなんですけど……何かあったんですか?」

運動の途中で呼び出されたジュディは、まだ終えられなかったことを残念に思うように、少し肩をすくめながらぐるりと回した。

一方、ドフィンの武装を見たデニスは、昨日の会話を思い返しながら状況を察しようと考え込んだ。

「神殿に行ってこられたのですか?」

まったく反応が違うジュディとデニスを見比べながら、ドフィンは苦笑した。

「そうだ。神殿を破却して戻ってきたところだ。だからお前たちに聞きたいことがある。」

ソファにゆったりと座ったエスターと双子を順に見つめながら、ドフィンは真剣に声を落とした。

「これから、神殿のあった場所でいくつか救護活動を行おうと考えている。お前たちも一緒にどうだ?」

「私たちが何をすればいいんですか?」

何でもやってみるのが好きなジュディが、真っ先に興味を示した。

「自分にできそうなことを話してみなさい。」

「うーん……お金を渡すことです。」

家にはお金がたくさんあると知っているジュディは、こういう時に使えばいいと無邪気に笑った。

「それは駄目だ。」

ドフィンはきっぱりと首を振った。

エスターは一瞬、ジェロムにダイヤを渡した時のことを思い出し、恥ずかしさから指をもじもじと動かした。

「お金を渡すのは一時的で単純な方法にすぎない。いや、それでは長期的な助けにはならない。それに、貧しい人からお金を奪うのは簡単なことだ。」

黙って聞いていたエステルが、しょんぼりした声でドフィンに言った。

「お父さん、実は……この前、貧しい家の子どもにダイヤをあげたことがあるんです。」

すでに知っていたドフィンは、落ち着いた口調でエステルを諭した。

「いいんだ。君はまだ幼いから、失敗することもある。善意はどんな場合でも間違いではない。」

普段はあまり褒めないドフィンだが、子どもたちの気持ちを傷つけまいと、今回は特に言葉を惜しまなかった。

「ただ、本当に助けたいのなら、物質的なものを与えるよりも、彼らが生きていく上で必要なことを教えてあげなければならない。」

「それって、本のことですよね?教育こそが、あの子たちに一番必要なものに見えました。」

ドフィンの思いを察したデニスが、目を輝かせて応えた。

ドフィンは静かに言った。

「そうだ。一番難しいが、最も必要な方法だ。」

「じゃあ、これからは貧民の子供たちも授業を受けられるんですか?」

エスターが恐る恐る尋ねた。

「貧民の子供たちだけでなく、基礎教育を受けられなかった子供なら誰でも通える初等教室を開くといいだろう。」

「お父さん、無料の給食所もどうですか?時間を決めて、毎日一食ぐらい食事を分け与えるんです。」

楽しそうに次々と意見を出す子供たちを見て、ドフィンのまなざしはこれまでにないほど柔らかく変わった。

冷徹だった自分に似てしまうのではと恐れていたが、子供たちは誰よりも温かく育っていた。

「お父さん、私が集めたダイヤを寄付したいんです。いいですか?」

もちろん神殿に使う予算は十分にあったが、何か支援したいというエステルの気持ちを理解したドフィンは、軽くうなずいた。

「そうだな。寄付も受けるつもりだし、お前の名前もそこに載せようじゃないか。」

「はい、えへへ。」

エステルは神殿の廃止にとどまらず、もっと良い結果につながるようで嬉しかった。

「それに、神殿がなくなれば治療を受けたい人々は混乱するだろう。医師を配置するつもりだが、医術と神力は別物だからな……。」

ドフィンの澄んだ瞳がエステルに向けられた。

その意味を察したエステルは、にっこり笑った。

「私がお手伝いできます!聖水を作れるので、それでよろしいですか?」

しかし「聖水を作れる」という言葉に、その場の三人の表情は一瞬ぎょっとした。

「聖水が作りたいといって、そんなに簡単に作れるものなの?」

「いや、僕が本で読んだところによると、大神官の許可を得てようやく建てられるのが聖水で、ものすごく難しいと書かれていたよ。」

エスターは大したことではないという表情をしながら、気恥ずかしそうに頬を赤らめた。

「実は、私たちの屋敷の噴水台……あれも全部聖水なんです。」

「それ、本当なの?」

「えっ……お父さん、ちょっと庭に行ってきてもいいですか?なんだか飲んできた方がいい気がして。」

「ジュディ、行くなら私も一緒に行こう。」

普段あまり驚かないドフィンでさえ動揺し、双子はなおさら大きな衝撃を受けた。

その後ろにいたベンも、ようやく疑問が解けたといって手を打った。

「なるほど! だからそうだったんですね!」

「どういうことだ?」

「噴水の水を庭に再利用しているのではありませんか?」

そう言って、興奮気味に声を上げた。

「どうりで庭の植物がやけに育ちが良いと使用人たちが不思議がっていたのですが、ようやく理由がわかりました。」

エステルが噴水の水を聖水に変えたあと、その水で育つ庭の花や草は異常なほどの速さで成長していたのだ。

皆がただ不思議に思っていた出来事の裏にあった秘密が、ついに明らかになった瞬間だった。

「そんな貴重な聖水を、贅沢にも草花を育てるために使っていただなんて……。」

「えへへ。」

水が庭で再利用されているとは気づかなかったエステルは、笑いながら口をつぐんだ。

――庭のあちこちに聖なる花まで咲いていたことに、今さら気づいたのだった。

「知ったらみんな驚くだろうな。」

噴水のことだけでも十分に衝撃的だったので、聖花についてはまた後で話すことにした。

そのとき、すごいと感嘆していたジュディが、そわそわと席から飛び出した。

「じゃあ、もう終わりですよね?もう1時間も経ってるんです!」

運動だけは決まった時間に欠かさないジュディは、早く行かなきゃと慌てて身支度をした。

「待ちなさい。」

だが、まだ話を終えていなかったドフィンがジュディを呼び止めた。

「お前たち三人に、一緒に渡したいものがある。見てから行きなさい。」

「なんですか?新しい剣ですか?」

「もしかして、今回出たばかりの限定版の本ですか?」

「くれるものがある」と聞いて、ジュディとデニスの目が一気にきらきらと輝いた。

最近欲しがっていた物がもらえるのでは、と反応したのだ。

「ん? 違うよ。」

一瞬、戸惑ったドフィンの瞳が揺れたことに気づいた者はいなかった。

(……先に知られてしまったから、一緒に買ってやろうと思ったのか。)

実のところ、彼が用意していた贈り物はエステルのためのもので、双子の好みは考慮していなかったのだ。

「とにかく……ついてきなさい。」

ドフィンは双子のための贈り物をすぐに用意しなければと考え、立ち上がって子どもたちを1階の部屋へと案内した。

「ここ、もともと空き部屋だったじゃないですか。」

「開けてごらん。」

好奇心旺盛なデニスが一番にドアノブを握り、扉を開けた。

そして目にしたのは――部屋いっぱいに詰め込まれたベム人形を見て驚いた目を細めた。

「えっ?これ全部なんですか?」

「わあ、全部ベム人形じゃない?」

一方ジュディは、これ以上ないほど嬉しそうに満面の笑みを浮かべて部屋の中へ駆け込んでいった。

ドフィンが一番気になっていたエステルも、返事もせずに部屋へ入っていき、わあっと感嘆の声をあげた。

「すごい!」

「こんなにたくさんのベム人形を見るのは初めてで、なんだか不思議です。」

部屋の中には赤、橙、黄色、緑、青、紺、紫といった色とりどりのベム人形がいて、大きさもさまざま、姿かたちも多様だった。

「お?あれはベムベムみたい。」

大きな緑色の人形を見つけたエステルが嬉しそうに笑いながら部屋へ走っていった。

ベムにそっくりの人形に、とても親しみを感じたのだ。

「どうだい、気に入ったかい?」

「ええ。でも、お嬢様よりはジュディ令嬢のほうをお好きなようで……。」

「デニスも満足していないようですね。」

双子の反応には、戸惑いを隠せないほどだ。

人形には興味がないと思っていたが、それは誤った考えだった。

ジュディは部屋に入るとすぐに、クマの人形に飛びついて夢中になっていた。

人形遊びというよりは、クマの人形を相手に取っ組み合いをしているようだった。

一方デニスは、いろいろな種類の人形が本物のクマそっくりに作られているか、一つひとつじっくり確認していた。

「ふむ、これも悪くないな。」

ドフィンは「なんてことだ」と思いながらも、楽しそうに遊ぶ子どもたちを見て思わず笑みをこぼした。

そして彼もまた部屋に入っていき、大きなクマの人形に椅子のように腰を下ろし、落ち着いた声で口を開いた。

「7月にエステルの誕生日パーティーを開く予定だ。」

「わあ、それは楽しみですね。」

シュラにそっくりなベムはいなかったが、あちこちを見回していたエステルが目を丸くして声を上げた。

「去年もそうおっしゃってましたよね。でも今回は本当に盛大に開くつもりですから、断らないでください。」

「……はい、お父さま。」

エステルはベム人形を触りながら、胸の奥がむず痒いような気分になった。

『私の誕生日……。』

一度も誕生日を祝ってもらったことがないせいか、誕生日パーティーは自分には似合わないと思っていた。

しかし、必ず祝ってくれるという言葉を聞いて、自然と口元がほころんだ。

心のどこかで、自分も他の人のように誕生日を祝われてみたいという気持ちが隠れていたのだ。

「でも、どうして7月に決めたんですか?7月って毎年中央神殿で大きな行事がありますよね。重なってしまうのでは?」

7月という言葉に、神殿の行事を思い出したデニスが、口元を緩めながら尋ねた。

「偶然でもかまいません。7月こそ、本当のエステルの誕生日なのです。」

「本当の誕生日」という言葉に、エステルの唇がわずかに開いた。

「え?エステルの誕生日は分からないっておっしゃっていませんでしたか?」

「今回、記録を見つけたのだ。」

エステルは、ドフィンが母について調べる過程で、自分が生まれた月を知ったのだと気づいた。

繰り返される人生の中で、初めて知った自分の生まれ月。

エステルは不思議な気持ちで、7月という月を心の中でそっと繰り返してみた。

「よかった。じゃあ、我らのエステルは7月に生まれたのですね?7月の誕生石はなんでしたか……」

「これからは、12か月のうちで7月が一番好きになると思います。」

ジュディとデニスは、まるで自分たちの誕生日を当てられたかのように、喜びを抑えきれなかった。

「じゃあ私は数字の7!誰かに好きな数字を聞かれたら、7って答えるんだ!」

ドフィンはデニスに負けまいと声を張り上げるジュディを見てにっこり笑い、再び優しいまなざしをエステルに向けた。

「欲しいものを考えておきなさい。何でも買ってあげるから。」

けれど、ここに来てからエステルに不足したものは何もなかった。

屋敷の中には何もかもが溢れていたのだ。

それでも――。

考え込むようにしたエステルの首が横に傾いた。

長い睫毛の奥の瞳がしっとりと潤み、かすかに震えた。

「何かあるんだな?」

気づくのが早いデニスが、その変化を察してにっこり笑った。

「その……」

エステルが望むものなら何でも用意する覚悟のドフィンは、組んでいた足をほどき、じっと耳を傾けた。

これまで何かを欲しいと口にしたことのないエステルは、言おうかどうか迷い続け、ついに大きな勇気を出して口を開いた。

「……あのケーキです。」

「ケーキ?」

双子とドフィンは、思わず拍子抜けしたような顔をした。

しかしエステルは、ただ想像しただけで胸が高鳴り、表情までいつもより生き生きとして見えた。

「ただのケーキじゃなくて、大きな三段チョコレートケーキです。私より大きな……お兄さまたちの誕生日で見た、あのケーキみたいな。」

ジュディとデニスの誕生日に、三段ケーキを一緒に切る姿を羨ましく眺めていたことを、エステルは忘れてはいなかった。

「もちろんだよ。全部君たちのものだから。」

エステルは山のように積まれた人形の中から、慎重に選びに選んでバムベムにそっくりな人形を見つけ出した。

『シューラがきっと喜ぶわ。』

長い間母親と離れて過ごしてきたシューラに、早く持って帰ってあげたいと思った。

その人形を抱いたシューラがどれほど可愛いだろうと想像した瞬間、自然と微笑みがこぼれた。

 



 

 

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