こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

97話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- お出かけ②
三人は活動しやすい服装に着替えて再び集まった。
街に出かけるため、目立たないようできるだけ普通の服を選んだが、双子の存在感は隠せなかった。
『やっぱりお兄さんたちだわ。』
エスターは新鮮な気持ちで双子のお兄さんたちを見つめた。
整った顔立ちは隠しようがなかった。
「ビクター、今日は少し距離をとって護衛をお願いしてもいい?」
「もちろんです。」
馬車に乗る前に、エスターの頼みにビクターが微笑を浮かべた。
人が多い場所では、自由に動けるようにすることが明らかに必要だ。
今日は最低限の護衛だけにし、その護衛も適度な距離を保ちながら気付かれないようについてくることにした。
馬車に乗り城を出て、中心地ではなく郊外の静かな地域へ向かう。
彼らは南側の外れに向かった。
それはテレシアで最も孤立した場所だとデニスが提案したのだ。
中心部の端に着くと、馬車を降りてゆっくり歩き始めた。
境界線があるわけではないのに、不思議なことに中心部を離れるとすぐに街の雰囲気が大きく変わった。
荒廃した建物と閑散とした通りには活気が感じられなかった。
通りには物乞いたちが何もせず横たわっていた。
「テレシアにもこんな場所があるんですね。」
「うん。僕も実際に見るのは初めてだけど、想像以上にひどいね。」
いつも大きな道や領地の中心部だけを歩いていた双子にとっても、この光景はかなり衝撃的だった。
道の状況を見て、ジュディとデニスはさらに警戒心を強め、エスターを挟むようにして守った。
両側からぴったり寄り添い、護衛するような態勢をとりながら歩いていった。
しかし、エスターの目に映ったのは、生気を失いかけた人々だった。
骨が浮き出るほどに痩せ細ったその姿は、栄養失調と身体の衰えが明らかだ。
「これを渡しても意味がないかもしれない。」
出発前に家からしっかり用意して持ってきたダイヤを分けても、争いになるだけだとエスターは思った。
久しぶりに幼い頃の記憶が蘇った。
神殿に売られる前、幼いエスターは毎日物乞いをするために通りに出ていた。
だが、お金や食べ物を手にしても、用心棒に渡さなければならなかった。
「デニスお兄ちゃん、この人たちを助ける方法はないかな?」
「そうだね。助けようと思っても、この人たちが生き延びようという意志を持たなければ意味がないけど……もうすでに諦めたような顔ばかりだよ。」
「倉庫にたくさんのダイヤがあるから、それを全部一度に放出すれば……。」
エスターが真剣に考えている表情を見て、ジュディが慌てて驚きながら、「それはダメだよ!」と言った。
「なんでここでそれをばらまくんだよ。お父さんが君に使えって渡したものじゃないか。」
「だからこそ。どうせダイヤを使うなら、一人で使うより何人かで分けて使う方がいいんじゃないの?」
「もし俺だったら、とりあえず貯めておいて、毎日一生懸命使うよ。どれだけ買いたいものがあるか! 惜しいよ、本当に。お父さんが俺に鉱山を譲ってくれたら、俺ならもっと上手く使えるのに。」
「だから君に渡さないでエスターに渡したんだよ。バカ。」
いつもデニスに言い負かされるジュディを見て、クスクス笑っていたが、そのとき突然、7歳くらいの小汚れた服を着た少年が走り寄ってきた。
「助けてください。お願いです、助けてください。」
ジュディが驚いてエスターに飛びつくように少年を押しのけようとしたが、エスターは大丈夫だと微笑みながら少年を受け入れた。
エスターは身をかがめて子どもと目線を合わせた。
「何が必要なの?お金?それとも何か食べるもの?」
「いえ……母がとても具合が悪いんです。」
持っていたお金を渡そうとしていたエスターは、泣きそうな子どもの声を聞いて動きを止めた。
「具合が悪いならそのままにしておかずに、神殿や医者に連れていかないといけないわ。」
何も知らずに純粋に助けようとするジュディが、純朴な気持ちで答えた。
「神殿ですか?何度も行って助けてほしいと頼みましたが、入口で追い返されました。」
子どもの目には絶望が宿っていた。
「それにお金もありません。治療を受けるにはお金を払わないといけないのに……」
必死に堪えていた涙がとうとう溢れ出し、音もなく流れ落ちた。
幼い子どもが泣かないように唇を噛む姿が余計に胸を締め付けた。
神殿の現実を誰よりも知っているエスターの心が痛んだ。
エスターは寂しげな微笑みを浮かべ、子どもの手を握った。
「家はどこ?行こう。助けてあげるから。」
助けてくれるという言葉に信じられない様子で子どもの口が開いた。
「本当ですか?あっちです!」
気が変わるのではと恐れてか、子どもは涙を拭い、慌ててエスターを自分の家へと案内した。
子どもを追ってたどり着いた場所は「家」と呼ぶにはあまりにも粗末な小屋だ。
強い風を防ぐことも難しいほどボロボロで荒れ果てていた。
子どもの母親は冷たい床に薄い布一枚だけをかぶって横たわり、死んだように動かずにいた。
「お母さんです。もう何日も一言も話していません……。」
その間、子どもが一人で母親を助けようとした必死の努力の跡が周りにあふれていた。
どこからか手に入れてきたのか、粗末な食べ物の残りが置かれていた。
ガラクタが周りに積み重なっているのを見て、ため息をついた。
「本当にこんな暮らしをしているの?神殿はこんな状況を見過ごしているだけなのか?」
荒れ果てた家を見回したジュディが、これでは話にならないと憤った。
「父はテレシアの中央神殿に毎年多額の寄付金を送っているはずだが……。」
デニスまでが落ち着きを失い、声を低く荒げた。
「神殿は本当に助けを必要としている人たちには何もしないんだな。」
こうした事態を予想していたのか、エスターは黙々と女性のそばに座り、その状態を確認した。
何の病気かははっきりしないが、命が危険にさらされていることだけは明らかだ。
このまま数日も経てば、本当に命を落としていただろう。
彼女に会えたのはまさに間一髪だった。
エスターは時間を無駄にせず、すぐに能力を使い、少年の母親を治療し始めた。
おびえて後ろに下がっていた少年は、その能力の光を見て驚き、目を見開いていた。
どれほど驚いたのか、自分の目をこすりながら、信じられないというように呟いた。
「お姉さん……天から遣わされた天使ですか?」
いつも冷たい扱いを受けていた少年には、自分を助け、手から柔らかな光を放つエスターが天使のように見えた。
その言葉にジュディは笑みを漏らし、少年の頭を撫でながら言った。
「うん、そうだよ。」
「わぁ……。」
少年は目をきらきら輝かせ、両手をしっかりと組み、エスターの治療がうまくいくように祈った。
しばらくして、女性の青ざめていた顔色が元の健康的な色に戻った。
平穏な様子が以前とは大きく違っているのがはっきりと分かった。
エスターは柔らかく笑みを浮かべ、少年に近づき手招きした。
「もう大丈夫よ。しっかり寝て起きれば元気になるわ。」
「お母さん、もう痛くないんですか?」
「うん。」
その返事を聞くと、少年の目には再び涙があふれ、涙が頬を伝いながらぽろぽろと落ち始めた。
見ている人が胸を締め付けられるほど大粒の涙だ。
「ほ、本当にありがとうございます。ありがとう、お姉さん。ひっ……僕……お母さんしかいなくて……お母さんが死んじゃうかと思って、どれだけ怖かったか……うぅ……。」
その間、どれほど少年が心を痛めていたのかが伝わる。
デニスは少年を慰めるように肩をそっと抱いてあげた。
泣き続ける中でも少年の背中ではくすくすと音が聞こえ続けていた。
家の中を見回しても原因がわからず、みな少し戸惑った。
食べ物が見当たらないことに気づいたエスターは、少年にそっと尋ねた。
「最後に何を食べたの?」
「昨日の夜……少しのジャガイモです。」
こんな状況に慣れているかのように淡々と答える少年を見て、エスターも思わずため息をついた。
「お父さんはいないの?」
「はい。お父さんは僕が嫌いで、僕が小さい頃に家を出ていきました。」
横で話を聞いていたジュディは我慢できず、歯をぎゅっと噛みしめながら怒りを露わにした。
路上で生活している子供たちには珍しくない話だが、温かい家庭で育ったジュディにとっては耐え難い衝撃だった。
「まったく、そんな状況だと知っていたら食べ物くらい持ってきたのに。これじゃ駄目だ。今から何か買ってくる。」
ジュディはそう言い残し、すぐに行動に移す準備を始めた。
今日の外出は予定外の短時間のものだったため、食べ物を持参していなかったのだ。





