大公家に転がり込んできた聖女様

大公家に転がり込んできた聖女様【85話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

85話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 偽りの聖女

一週間後、セスピアの葬儀の手続きがすべて終了した。

神殿を埋め尽くしていた訪問客たちもみな去り、神殿はその後一週間の間、哀悼の意を表すため、内側から鍵をかけて静寂に包まれていた。

静まり返った神殿を振り返りながら、ラビエンヌは聖女宮へと向かった。

その隣には大司祭のルーカスが共にいた。

彼は聖女の次に高い地位を持つ司祭であった。

「今日はゆっくり休んで、明日から始めたほうが良いのではないでしょうか?」

「いや、葬儀の間にどれだけ気が張ったか知っていますか。」

「そうですね。ところで、昨日デイモン皇子が独占の場を設けてお会いしたそうですね。」

デイモンの名前が出るや否や、ラビエンヌは耳をぴんと立てた。

「なんと言っていたのですか?」

「来月には皇太子選定会議を主催するのがどうかと尋ねられました。今回の件でさらに後押しがあるのではと。」

デイモンが神殿を頻繁に訪れる理由が、支持を得るための票集めであるとは、まだ誰も気づいていない。

分かっていながらも、神殿は彼が皇太子となることを支持することにした。

政治的に利用するためた。

「私の任命式が来月ですから、その後に進めればいいでしょう。」

「ええ。もちろんデイモン皇子が皇太子になり、物事が着実に進んでいると感じられるのは非常に良いことです。」

話をしながら、彼らは資料室が五重の錠で固く閉ざされている扉の前に到着した。

その静まり返った部屋の鍵は、もともと聖女に託されていたものだった。

セスピアが亡くなったことで、一時的にルーカスが預かっていたが、今ではラビエンヌに引き渡された。

「私がこれを受け取る日が来るとは。」

「思ったより遅くなりましたね。」

ラビエンヌは深い溜息をつきながら、鍵を一つずつ慎重に開け、錠前を外した。

眠っていた資料室を一つ一つ解き明かし始める準備を整える。

狭く湿った暗い通路の中を松明の光で照らしながら奥へと進むと、さらにもう一つ小さな扉が現れた。

「ついに。」

感情を抑えきれず、ラビエンヌの表情は明るく輝いた。

扉を開けると、まばゆい光があふれ出した。

目がくらむほど明るく眩しい光だった。

ラビエンヌはためらうことなく、その扉の中へと足を踏み入れた。

小さな部屋のように整えられた空間の中央には、大きな水晶球が設置されていた。

光はすべてそこから放たれている。

しかし、その水晶球をじっと見つめていたラビエンヌの表情は、徐々に硬直していった。

「……ひびが入っていますね?」

「かなり弱っています。いくつかの境界地帯にまで影響が及んでいます。すでに均衡についての報告は聞いています。」

水晶球はまさに帝国の境界を守る力の源。

中央神殿が位置する領地は帝国の心臓部。

そこでも中心となる位置に水晶球が置かれていた。

水晶球は精霊の力を吸収し、境界を維持していたが、特にその中心となる力が精霊の力だった。

「セスピアが死んだせいですね。」

「その通りです。」

ラビエンヌは緊張に満ちた表情で水晶球にそっと手を伸ばした。

水晶球に触れられるのは、主に継承される精霊だけ。

ついに自分が精霊であるかどうかを確かめる時が訪れた。

「どうか……。」

しかし水晶球に触れた瞬間、手のひらが焼けるような激しい痛みが走り、ラビエンヌは思わず叫び声をあげた。

「ぎゃっ!!」

「大丈夫ですか?」

手のひらから白い煙が立ち上がった。

もう少しでも長く触れていたら、手のひらが焼け焦げていたかもしれない。

苦しみながら床に倒れ込んでいたラビエンヌは、実に虚しい笑みを浮かべながら震える手で立ち上がった。

「今……拒絶されたんですよね?」

「それは……。」

「私は違うんですね。この日をどれほど待ち望んでいたことか。セスピアさえ死ねば、次は自分の番だと思っていたのに、拒絶されるなんて。」

「問題ありません。既に神殿は次の聖女をラビエンヌ様と決定していますから。」

ルーカスの言葉は、ラビエンヌには全く慰めにならなかった。

誰だかわからない次の聖女に向けた怒りと憤りが、ラビエンヌの胸に大きく渦巻いた。

セスピアが亡くなって数日が経ったにもかかわらず、ラビエンヌの手はそれでも震えていた。

儀式中に聖女の証が現れなかったことで、ラビエンヌは心の中に抱いていた不安が現実となった。

そして、この結果を目の当たりにした彼は、到底受け入れることができなかった。

「一体どうして私じゃないんですか?生まれてからこれまで、すべてを聖女のために捧げてきたんです。それなのにどうして!どうして私じゃないんですか!!」

ラビエンヌは怒りに任せて修正具を力強く叩きつけた。

「ラビエンヌ様、まずは冷静になって、もう一度試してみてはいかがでしょうか?」

一瞬我を忘れていたラビエンヌは、ルーカスの落ち着いた声に正気を取り戻した。

ただ、結果が変わることはないことを知っている彼は、深い息を吸いながらルーカスに視線を戻した。

「すみません。少し取り乱してしまいました。」

まるで怒りが初めからなかったかのように微笑んだラビエンヌ見て、ルーカスは彼の突然の態度の変化に一瞬戸惑った。

『誰が16年間も生きられると思ったんだ。』

セスピアに続き、2人目となる聖女を迎え入れる準備が進む中、ラビエンヌの性格と気質は、セスピアとは大きく異なっていた。

彼女は欲しいもののためなら悪行であれ手段を問わず行動する性格で、その野心の強さが神殿側からも警戒されていた。

神殿は彼を管理しきれないと考えつつも、利益を優先して彼を見守るしかなかった。

「ルーカス大司祭の言う通りです。いずれにしても次の聖女は私ですから、任命式も滞りなく進むでしょう。」

「その通りです。多少の問題があったとしても、大きな支障にはならないでしょう。」

ラビエンヌは修正具を眺めながら、ルカスの言葉に頷いた。

「当面の間、大司祭の皆様には祈祷に専念していただきたい。聖女の力を持つ者が誰なのか、一刻も早く明らかにしなければなりません。」

修正具は自らある程度の力を吸収しているようだった。

均衡が崩れることがあっても、完全に破壊されることはない。

しかし、セスピアの力が弱まるにつれて、徐々に乱れ始めた均衡が明らかになりつつある。

今後、この均衡がさらに悪化した場合、帝国にどのような脅威が迫るのか、誰にも予測できなかった。

これは帝国の安定を担保するために、神殿が存在する理由を揺るがしかねない事態。

そして、この均衡を保つためには、ただ精霊の力のみが必要とされていた。

「はい、聖女任命式までに最大限対応します。」

ルーカスが冷静に答える。

ルーカスの他にも、祈りを通じて聖女の啓示を受け取ることができる大司祭が3名いたが、現在のところ、ラビエンヌが聖女ではないことを知っているのはルーカスただ一人だけ。

しかし、彼らは神殿に利益があるよう行動しているため、真実を知ったとしても態度が変わることはなかった。

ラビエンヌが啓示を託せるのも、大司祭たちが自分を支持しているという自信があったからだった。

「そして、皇帝側からの接触がありました。」

「皇太子選定会議が開かれる日に面会の機会を得ればいいですね。」

「承知しました。」

これで、ラビエンヌが聖女として任命されるだけとなった。

今はただ静かに待つのみで、一か月後には聖女となる。

これほど望んでいた聖女の地位だが、名前だけの聖女になるという事実を今、確認してしまったラビエンヌは微笑むことができなかった。

修正球を見つめる瞳にも、もはやかつてのような高揚感は残っていなかった。

ラビエンヌの表情が変わるのを見たルーカスが急いで言葉を切り出した。

「……そろそろ出ましょうか?」

「ええ、行きましょう。」

ラビエンヌは短く、冷たい声で答える。

その声にはかつての熱意の痕跡すら残っていなかった。

 



 

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