こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

94話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 村の異変③
ルイーゼは一週間の間、彼が起きている間ずっとエドワードの護衛を続け、彼は毎日のように暗殺者の襲撃を受けていた。
ルイーゼが静かに暗殺者を捕らえ、別の部屋に閉じ込めたその日、眠りから覚めたエドワードは複雑な表情を浮かべた。
「本当に深く眠っていたようですね。暗殺者が来たことすら知らずに眠るなんて。」
「でしょう? 誰が運んでいったのかも知りませんし。」
「ルイーゼさん、もしかして黒魔法でも使っているのですか?」
「そんなこと気にするなら、エイヴンにでも検査してもらいます?」
エドワードはじっとルイーゼを見つめると、そっと顎を撫でた。
「いや、結構です。何も出てこないでしょうし。」
「……ああ、そうでしたね。ご本人が魔法使いでしたっけ。」
厳重に縛られた暗殺者を一瞥したエドワードは、尋問の必要すら感じない様子で手首を鳴らし、暗殺者に近づいて処理する。
その瞬間、かすかに香るバラの香りがルイーゼの鼻先をくすぐった。
『また、この香り……』
一日中そばにいたからこそ、すぐにわかった。
エドワードは決して香水をつける人ではなかった。
ならば、この香りはどこから来るのだろう?
「前から気になっていたのですが、この暗殺者たちはどこへ送られるのですか?」
「送り主のもとへ、丁重に送り返しています。」
「さっきの人はまだ生きていましたよね? もし戻って報告されたら大変なことになりませんか?」
「道中で、この世の者ではなくなってしまいましたので、ご心配には及びませんよ。」
エドワードは意味ありげな笑みを浮かべた。
一瞬、ルイーゼは彼の周囲に生臭い血の匂いが漂っているような錯覚に陥った。
『よかった……』
「……まぶしい。」
「え?」
彼の疑問に満ちた声を聞いて、ルイーゼは自分の言葉が思考とは裏腹に口をついて出てしまったことに気づいた。
彼女の顔が一瞬で赤く染まる。
「あ、違います!なんでこんなに暑いの? もうすぐ冬なのに。」
ルイーゼはそわそわとしながらエドワードの前を通り過ぎ、足早に歩き出した。
聞こえないふりをしたものの、彼女の言葉の意味を理解していたエドワードは、満足げな笑みを浮かべた。
「その顔が気に入った。しっかり覚えておこう。」
彼はルイーゼの後を追い、礼服をまとって歩いた。
こうして時間が過ぎ、ついに月の昇らない夜が訪れた。
騎士団が得た情報は、初日以降まったく進展がなかった。
新たな手がかりを得る機会は今夜しかないと考えた彼らは、総力を挙げて祝福を受ける場へと向かった。
夜更けにもかかわらず、月の恩恵を受けようと集まった村人たちで道は賑わっていた。
「大公殿下!いらっしゃいませ!」
「お招きいただきありがとうございます。」
礼服姿のエドワードが村長のもとへ歩み寄った。
挨拶を交わした村長の視線が、彼の隣へと向かった。
「隣におられる方は……?」
「団員のエイヴンと申します。今回の祝福をぜひ見学したいとのことで連れてきましたが、ご迷惑でしたでしょうか?」
「いえいえ!お会いできて光栄です。はは!」
「……はい。」
エイヴンは無表情のまま、軽く顎を引いて挨拶をした。
村の中心部には、七色に輝く数多くの燭台が山のように積み上げられていた。
「これらの燭台はすべて、この村で作られたものなのですか?」
「その通りです! 村の人々が毎月少しずつ持ち寄り、儀式のために蓄えてきたのです。」
「なるほど、それではまだ多くの燭台が残っているということですね。燭台はどのように保管しているのですか?」
「とりあえず、取引先が見つかるまでは、村の会館の倉庫に保管しています。」
エドワードがさらに質問を続けようとする前に、村長が言葉を継いだ。
「まあ、すぐに役に立つことでしょう! 伝え聞く限り、祝福が現れる様子をご覧になれば、きっと驚かれるはずです。」
「……楽しみですね。」
エドワードの隣に立っていたエイヴンが、周囲を見回した。
村の人々の間には、平服を着た団員たちが紛れ込んで彼らを監視していた。
騎士団は、いざというときに即座に攻撃できるように、万全の準備を整えた上で村人たちを警戒している。
夜になれば、気温がぐっと下がり、冷たい空気が身を包むだろう。
荒れた土地を歩いても不自然ではない天候のおかげで、姿を隠していた団員たちは自然に人々の中へと溶け込むことができた。
その中には、ルイーゼとマクシオンもいた。
「マクシオン、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
「何が気になるんだ?」
「作戦の内容とは関係ないんだけど……。」
「じゃあ、終わってから話せよ。」
「最近、あなたの様子を見るのが難しいのよ。この機会を逃したら、また何か理由を見つけて忙しく動き回り、私を避けるんでしょう?」
「……。」
「まずは誤解を解いておく。あなたの疑い深い目つきのせいだろうが、もう一度言うけど、村に着いた初日の夜、エドワードの部屋では何も起こっていない。ただ本当に寝ただけ。」
「わかった。」
ルイーゼは疑わしげな目でマクシオンの横顔をじっと見つめた。
嘘ではなさそうなマクシオンの表情は、どこか淡々としていた。
「それなら良かったけど、じゃあ、あの日なんであんなに動揺してたの?」
マクシオンの視線がゆっくりとルイーゼへと向かった。
彼の黒い瞳に、彼女の姿がくっきりと映し出された。
「お前は、そういうことに関しては本当に鈍いよな。」
「何のこと?」
「私的なことには、二人の関係に干渉したくないんだ。ただの二人の問題だからな。とはいえ、エドワード様が7年間の記憶を失っているっていうのは、やっぱり少し気になるけど。」
「……そうね。」
「まるで家族が恋愛している場面を見てしまったような気分だよ。」
ルイーゼは顔を赤らめながら叫んだ。
「恋愛だなんて、そんな関係じゃない!」
「そうだな。」
声を荒げた割に、あまりにあっさりとした返事に戸惑ったルイーゼは、再び口を開いた。
「あの、私的な理由ならともかく、何か積極的な理由もあるの?」
「……それはお前が気にすることじゃない。」
マクシオンは無表情のまま答え、再び前を向いた。
普段は表情の変化が少ない彼だったが、その一瞬だけは誰が見ても分かるほどの微妙な緊張感があった。
エドワードとの会話を通じて、彼と騎士団が何を懸念しているのか、ルイーゼはなんとなく察してはいたが、それ以上踏み込むことをためらった。
マクシオンはルイーゼに、その話題については触れたくないようだった。
「でも、もし助けが必要なら、必ず私に言ってね。」
「わかった。」
返事を聞いたルイーゼの視線は、自然と正面へと向かった。
いつの間にか、エドワードとエイヴンは積まれた穀物の近くまで歩み寄っていた。
ヒューオォォォ……。
時刻が夕方に近づくと、山のように積み上げられた穀物の周囲で黒い旋風が巻き起こる。
しばらくの間、穀物を包み込んでいた風が消えると、その場に残ったのは、黒く光を帯びた穀物だった。
村長が明るい声で宣言した。
「これこそが、月の祝福です!」
「わああああ!」
村の住民たちは大きな歓声を上げた。
エドワードの隣へと静かに歩み寄ったエイヴンが、低い声で口を開いた。
「……黒魔法ですね。具体的にどのような魔法かを分析するには時間がかかりますが、あれこそが本体でしょう。あれを破壊すれば、この村にかけられた魔法は消えるはずです。」
「それなら難しくないな。もう少し近くで見てみたい。」
彼の言葉を聞くや否や、村長がエドワードを呼んだ。
「殿下、こちらへいらして祝福をお受けください。」
「どうすればいいのですか?」
「月の祝福に体の一部を触れさせるだけでよいのです。」
「簡単ですね。」
エドワードがグスルに触れようと手を伸ばした。
どんなに強力な魔法であっても、外部からこれを上回るほどの圧倒的なマナを一瞬で注ぎ込めば、耐えられずに砕け散るはずだった。
一方、エドワードの隣で考え込んでいたエイヴンが、ふとつぶやいた。
「……黒く染まった部分が半分しかないということは、まだ半分の余地が残されているということか。」
グスルの半分が黒く染まっているのが、もしこの村の住民全員の魂を示しているのだとしたら、このグスルには少なくとも、この村と同じ規模の人間をさらに吸収できる余地があることになる。
そして、エドワードは魔法使いだ。
彼は物理的な方法ではなく、魔法でそのグスルを破壊しようとしていた。
黒魔法ではマナの代わりに生贄が用いられるが、生贄とマナの価値は同じである。
つまり、あの黒魔法に使われた魂の大きさと同じくらいの膨大なマナが、あのグスルに収められるということを意味していた。
エイヴンの顔に驚愕の色が浮かんだ。
「殿下、グスルから離れてください!」
しかし、すでにエドワードの指先はグスルに触れていた。
しばしの静寂が広場に降りた後、奇妙な歓声が巻き起こった。
誰もが手を叩き、声を上げた。
「祝福を受けたことをお祝い申し上げます!」
グスルは瞬く間に黒く染まり、わずかな時間のうちに体から抜けていくマナを感じた。
エドワードは驚いた顔で目を大きく見開いた。
魔法は破壊されていなかった。
むしろ、待ち構えていたかのように彼のマナを吸い込むだけだった。
エドワードはすぐにグスルから手を引いたが、すでに吸い取られたマナは戻ってこなかった。
「物理的な方法で処理すべきなのか。」
彼は剣を抜くために腰の鞘へと手を伸ばした。
その瞬間、彼の動きが止まった。
「祝福を受けた瞬間、私たちは月と一つになるのです。」
村長が奇妙な笑みを浮かべた。
彼はまるで見えない縄で縛られたかのように、体を動かせないまま、再び巨大なグスルを見つめた。
旋風が巻き起こった。
風が止むと同時に、グスルがあった場所には何も残っていなかった。
「今日は一人だけに祝福を与えるだけで満足されたのですか? こんなに早く消え去るのは初めて見ました!」
エドワードは、グスルが消えた場所を冷静な目で見つめていた。
グスルは彼のマナを吸い込み、あっという間に消滅してしまった。
拘束されていた体が解放されると、エドワードは何事もなかったかのように顔を整え、剣を鞘から外した手を静かに戻した。
「次の祝福はいつですか?」
「一か月後、月の昇らぬ夜です。」
「他の団員たちも祝福を受けることは可能でしょうか? この感覚を、大切な仲間たちと共に味わいたいのですが。」
「もちろん可能です!ははは!」
村長は大声で笑った。







