こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

98話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 嬉しい報告
ノアが灰色のローブを着た魔法使いと遭遇する。
クラリスも意外な人物と、第三の城壁でばったり出くわした。
「……ベルビルさん?」
「ひっ……!」
用事を済ませて戻る途中なのか、エイビントン・ベルビルは城壁の入り口で侍従と一緒にいた。
クラリスが振り返り、彼の名を呼んだだけで、まるで道端で血まみれの遺体でも見つけたかのように、ベルビルは狼狽した表情を浮かべた。
「ちょっと、あんまりじゃないですか? いくらなんでも、会うなり『ひっ』って……。」
彼らの出会いはぎこちなかったが、今では夜明けを共にする掃除仲間ではないか。
もっとも、掃除をしながら仲良くなったわけではないが。
彼はクラリスと会うたび、露骨に顔をしかめるどころか、「お前みたいな奴は今すぐ首都から出て行け」と言わんばかりの態度を隠そうともしなかった。
だから、きっと今も何か言い損ねたことを飲み込んでいるのだろう。
おそらく、王妃様にクラリスの悪口でも言ったのだろうから、あとは追放される準備をしておけ、という感じで。
「おお、愛しきグレジェカイアの羊よ。」
「……?」
しかし、期待した言葉とはまるで違うものが返ってきたせいで、クラリスは思わず彼の顔をじっと観察してしまった。
「どこか……具合が悪いのですか?」
そうでなくても、いつも「黙れ」とばかりに冷たい言葉を投げつけてくる人間が、こんなにも突然、礼儀正しい挨拶をしてくるなんてあり得るのだろうか。
「うげっ!」
彼女の反応に対し、彼はまるで日常の一部であるかのように冷静な表情を保っていた。
クラリスは、とうとう彼が皮肉の一つでも言うのかと身構えた。
「今日も、う!美しいですね。」
「……?!」
一瞬、クラリスの口から皮肉の一言が飛び出しかけた。
一体これはどういう奇妙な台詞なのか?
何とか親しげな会話をしようとしている努力のようにも見えたが、まるで誰かに命じられて無理やり言わされているようで、ぎこちなさだけが際立っていた。
「もしかして、何か罰でも受けているのですか?」
クラリスは、近くにいる従者たちに聞こえないように、静かに問いかけた。
彼は喉を鳴らして言葉を濁した。
「そんなはずが!ただ、友情を育むだけですよ。」
しかし、「友達」と口にしたとき、彼の顔にはまるで苦い薬でも飲み込んだかのような表情が浮かんでいた。
そこまで嫌なら、別に友達にならなくてもいいのに。
誰かが後ろでナイフを突きつけて「友達になれ」と脅しているわけでもあるまいし。
クラリスは彼を疑わしげに見つめながらも、そっと一歩後ろへと下がった。
「うん、えっと……とりあえず、わかったわ。あとでね。」
「何ですか?人が友達になりたいと言いながら手を差し出したのに……ああ、違います。後日お会いして、楽しい交流の時間を持ちましょう。」
その光景があまりにも本来の彼の性格と合わないため、違和感を抱いたままクラリスは城へと戻った。
もちろん、侯爵夫人から贈り物としてもらったブローチを手に持ちながら。
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「戻ったのね、クラリス?」
最初に彼女を出迎えたのは、ロザリーだった。
その時、ブローチに付いていた宝石も一緒に声を発した。
【わあ、ロザリだー!】
「ロザリーを……知ってるの?」
その疑問が頭に浮かんだ瞬間、クラリスの古い記憶がふいに呼び覚まされた。
幼い頃、ロザリーが幼い貴族の子供の悲劇的な失踪事件について話してくれたことがあった。
『クノー侯爵家の話だったのね……。』
【ロザリー、ロザリー!まだシシィに会えないの?】
ブローチはずっと話しかけていたが、それを聞くことのできないロザリーは、ただ優しく微笑んでクラリスの外套を受け取った。
「クノー侯爵家に行ってきたんでしょ?」
「聞いたの?」
「ええ、ご主人様がとても心配なさっていたわ。礼儀正しく無事に帰ってこなきゃいけないのに……って。」
「ロザリーが話してくれればよかったのに。クノー侯爵夫人はとても優しい方だから、私の失礼も大目に見てくださると思うわ。」
【それは当然のことだ。】
「以前、お前が失敗をするような子ではないと思っていた。」
うん、どう考えても、あそこで嘘をついて養女のふりをしたことは口にしない方がいいだろう。
「奥様は……いかがでしたか?」
「とても大変そうでした。何しろもうすぐお嬢様のお誕生日ですからね。私に何かできることがあればいいのですが。」
【それなら、クラリスもシシィ親衛隊に入隊しよう!】
「でも、その時までにお嬢様を……見つけられるかどうか……。」
【うん、きっと見つかる!ロザリー捜索隊長!シシィーがなくした帽子と手袋も見つけたよ!】
「何よりも、爵位が別の人に渡ってしまうと、お嬢様を探すための予算を確保するのが難しくなるでしょうね……。」
【逆境こそが我々親衛隊を強くする!】
宝石は独り決意を固め、ロザリーは小さく頷いた。
クラリスは息をついた。
「私、随分長い間引き止めてしまったのね。早く奥様のところへ行って。お待ちかねよ。」
「ええ、わかりました。でも、奥様はどこにいらっしゃるんですか?」
「書庫にいらっしゃるようね。」
「それなら、びっくりさせに行かないと。」
「まあ、それは困るわ。」
「えっ?」
奥様は驚くことが好きなはずなのに、急に駄目だなんて……?
クラリスは疑問に思ったが、ロザリーは何も答えてくれなかった。
ただ、「早く行きなさい。」という催促だけが繰り返された。
クラリスは屋敷の1階にある書庫へ向かった。
だが、本棚の奥にいるのか、奥様の姿はすぐには見つからなかった。
「どこにいらっしゃるの……?」
クラリスは辺りを見回しながら、奥様を探した。
【我らは探検隊! 書架の間でクラリスを追跡中。一緒に探す宝物は何かな?】
「もう、今は公爵夫人を探しているのよ。」
クラリスはひたすら「探検」を主張するブローチが少し重く感じた。
【……今日はクラリスを見つけないの?】
しかし、落胆した声を聞くと、なんとなく気の毒に思えて慰めるように言葉をかけた。
「うん、でもできるだけあなたを手伝う……。」
そう言ったところで。
「クラリス。」
遠くの窓辺から彼女を呼ぶ声が聞こえた。
それは、シェリデン公爵夫人だった。
本を読んでいた夫人が顔を上げ、クラリスを呼んだ声に、クラリスはすぐに彼女の方へと歩き出した。
彼女に伝えたいことがたくさんあった。
首都で起こったことはもちろん、先ほど奇妙なエビントンと遭遇したことも話したかった。
『そして何よりも。』
グレジェカイア出身だった侯爵夫人についても。
「外出は楽しかったですか?」
十歩ほどの距離が残っているとき、ブリエルが先に質問を投げかけた。
クラリスは嬉しそうに笑いながら、「はい!」と答えようとした。
本当にそうしようとしたが……。
【クラリス様!やっぱりクラリス様は真の探検隊長!我々が探検隊を見つけました!叫びます、いえい!】
手に持っていたブローチが突然興奮して叫び出し、その拍子に思わず手から滑り落ちてしまった。
『いきなり何の騒ぎなの……?』
慌てて手を下ろして見ようとしたが、その間も宝石の楽しげな外出は続いていた。
【クラリス様、すごく大きくなったね?お肉たくさん食べた?よかったね、よかったね!】
「いや……」
クラリスは、目の前にブリエルがいることすら忘れそうになりながら、「夫人はクラリス様ではないよ」と伝えようとした。
「いやいや、一体何があったんですか?!クラリス、何があったんですか?」
「……あ、いや!」
クラリスは、急に騒ぎ出した宝石のブローチを手に取り、無意識に後ろへ押しやりながら慌てて否定した。








