こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

96話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 村の異変⑤
エイヴンの言葉にエドワードは微笑んだ。
「五人とはな。俺の力が封じられていると知って、慎重に来たようだな。」
「警備をしていた隊員たちが気づいて、迎撃を始めました。」
「行ってくる。」
「カードはそのままにしておいてください!」
マクシオンとヘンドリックが続けて言った。
「手を出さず、じっと待つとしよう。」
「ハハ、信じてますよ!さて、本格的な夜の始まりですね。」
「ルイーゼ、お前は近くでエドワード様を守れ。」
「分かった。」
マクシオンとヘンドリックは外へと駆け出した。
近くの距離で剣と剣がぶつかる音が響いた。
「もう一人います。迎撃中の場所を避けて、別の部屋を通り、窓の方へ向かっています。」
エイヴンの言葉に、ルイーゼとエドワードの視線が窓へと向かった。
「気配を隠す技術は、この人物が一番優れているようですね。」
「一人で大丈夫ですか?」
「剣を交えるまでは判断しにくいですが、たぶん一人で対処できるでしょう。エイヴン、部屋の明かりをすべて消せますか?」
「……はい。」
「エリオットはエイヴンのそばにくっついて、じっと待機しています。」
「分かりました。」
エドワードはエイヴンのそばに立った。
瞬く間に、部屋の中は漆黒の闇に包まれる。
ルイーゼは静かに窓の方へ向かった。
全員が息を潜めて待っていると、窓がわずかに開き、その直後、全身を黒衣で包んだ人物が部屋の中へと忍び込んできた。
チャン!
ルイーゼが暗殺者と対峙した。
暗殺者が短刀を振りかざしたが、ルイーゼは素早く対応し、エドワードのもとへ行かせないように途中で阻んだ。
「エイヴン、きつくないか?」
「……殿を守る程度なら問題ありません。」
「失礼した。」
エドワードの口元が自然にほころんだ。
彼は顎を軽く動かし、エイヴンを見つめながら言葉を続けた。
「命が危険にさらされている状況で言う言葉じゃないと思うけど……。」
ヒュッ!
彼が言葉を終えるよりも先に、ルイーゼが誤って弾いた短刀がエドワードの顔のすぐ横の壁に突き刺さった。
「大丈夫ですか!?」
「かろうじて生き残りました。」
「ごめんなさい!」
エドワードが無事であることを確認したルイーゼは、再び暗殺者と対峙した。
エイヴンはエドワードを見上げながら言った。
「……お気をつけください。」
「そうするよ。さっきの言葉が無駄になるところだった。」
「避ける必要がないから避けなかっただけです。」
「もともと勘が鋭かった人が、7年の間にさらに鋭くなったな。」
エドワードが静かに笑った。
「……笑っている場合ではないと思いますが。」
「正直なところ、今はとても気分がいいんだ。」
「………」
「寝て起きたら、7年後の若者たちはずいぶんと成長していたし、世界はそれなりに平和になっているじゃないか。ルイーゼ嬢と一緒にいるのも悪くないし。」
「平和……」
エイヴンは激しくぶつかり合うルイーゼと暗殺者を見ながら、言葉を詰まらせた。
「まあ、この程度なら俺たちにとっては平和な日常だろう。」
「……殿下にとっては、そう感じられるのでしょうね。」
「その間、暗殺者もほとんど気配を感じさせなかったとか?」
「はい。」
「7年後の俺は、平和な日常の中でルイーゼ嬢と良い時間を過ごしていたんだな。」
「………」
「エイヴン、未来の俺はルイーゼ嬢を心に留めていたのか?」
「はい。異性として見ていたようです。」
「やっぱりな。」
「……今もそう見えますが。」
「それは正しいけど、少し複雑だ。」
エドワードの視線が再び暗殺者と対峙するルイーゼへと向かった。
「ルイーゼ嬢を心に留めていたのは、今の俺ではなく、7年後の俺じゃないか。」
「………」
「彼は今まで俺が欲しかったものをすべて手に入れていたんだな。仲間も、平和も、君たちも、ルイーゼ嬢も。」
「いずれにせよ、その方も殿下です。」
「理解しにくいかもしれないが、俺にとっては7年後の自分がまるで他人のように感じるんだ。それが俺自身の選択の結果だと言われても、俺にはその記憶がないんだから。」
「………」
「俺はそれが嫌なんだ。」
「私は好きですよ。」
「人気者だな。」
「……今の殿下もなかなか魅力的です。」
エドワードは再び顎を軽く動かし、エイヴンを見つめながら答えた。
二人の視線が交わった。
「そして、私の知る限りでは、7年後の殿下も今の殿下を嫌っておられます。」
「彼は相変わらず器が小さいようだな。」
「殿下はこの7年間ずっと自分を嫌ってこられたのではありませんか?」
「………」
エイヴンの視線が再びルイーゼへと向けられる。
戦いは終盤に差し掛かっていた。
暗殺者が浅い息を吐きながら体勢を立て直した。
「……無能な私は、殿下を完全にお守りすることができませんでした。どうか、我々の想いをお受け取りください。殿下が我々に未来を託したように、殿下もまた我々を通じて未来をご覧になってください。命を懸けて守られた未来こそが、殿下のものなのです。」
「………」
「だから私は、殿下が生きている限り、彼らは死んでいないと思います。」
長い時間をかけて導き出された結論であるかのように、エイヴンの視線には微塵の揺らぎもなかった。
一瞬の静寂の後、エドワードがゆっくりと口を開いた。
「7年後の俺にも同じことを言ったのか?」
「……いいえ。」
「じゃあ、これは完全に俺にとって初めて聞く言葉なんだな。」
「はい。」
エドワードの視線は、最後の一撃を加えようとしているルイーゼへと向かった。
ルイーゼの唇には、うっすらと微笑みが浮かんでいた。
「未来か……。」
エイヴンは席を立ち、懐から縄を取り出した。
ルイーゼが二人に向かって言った。
「終わりました。」
「……これで降参していただけますか。」
エイヴンはルイーゼのもとへ歩み寄り、縄を差し出した。
ルイーゼは暗殺者をしっかりと拘束し、手を払って立ち上がった。
「できるだけ静かに捕まえようとしたせいで、少し時間がかかってしまいました。カードゲームを台無しにしないよう気を使っていたので。」
「お疲れ様です。狭い空間で暗殺者と戦ったのに、ゲームには全く影響を与えませんでしたね。」
「うん!」
彼らの言葉を聞いていた暗殺者が突然目を見開き、拘束された状態で体をねじって暴れた。
「ダメ!」
ルイーゼが素早く動き、暗殺者の後頭部を叩いて気絶させようとしたが、一瞬遅かった。
カードの盤面は、すでに暗殺者の最後の足掻きによってめちゃくちゃにされていた。
バサッ。
「はは……エドワード様、ご無事ですか? 申し訳ありません。一人、取り逃がしました。」
マクシオンが荒い息をつきながら部屋の中へ入ってきた。
彼の視線は、意識を失い床に倒れた暗殺者へと向けられた。
「ルイーゼを殿下のそばに置いておいて正解だったようですね。」
その後、外で何かが素早く駆けてくる足音が聞こえた。
「ハハハ! 屋上の敵はすべて片付けてきました! さて、ゲームを続け……」
ヘンドリックの表情が笑ったまま固まった。
「こんなことが……あと一枚集めれば俺が勝てたのに。」
「俺も同じだ。これは悲劇的な状況だな。」
ルイーゼはめちゃくちゃになったゲーム盤を見て、静かにため息をついた。
「こうなると、誰が勝者か判断できなくなってしまいましたね。もし全員が1枚足りなかったなら、私はもともと負けるゲームだったので問題ありませんが、2枚持っていたら勝算があると考えて頑張ったのに。」
4枚のカードを集めなければならなかったマクシオンは、険しい表情の3人の間を通り抜け、静かに暗殺者を連れて部屋を出た。
「僭越ながら申し上げますと、最後のカードだけでも戻してプレイできていたら、私が勝っていたはずだ。」
「ターンが回ってきていれば、私が勝っていたかもしれません!」
「……殿下が引こうとしていた最後のカードが何だったのか、私には分かりません。このゲームの結果も。」
彼らの会話を聞いていたエイヴンが口を開いた。
「ゲームにも参加せず、目を閉じたまま席に座っていたのに、それをどうやって知ったんですか?」
ヘンドリックが疑問を投げかけると、エイヴンは冷静な声で答えた。
「私の結界の中で起こることは、すべて分かります。途中で積まれていたカードの順番までも……そんな魔法なので。」
「だからゲームに参加しなかったんですね。」
「……はい。」
ルイーゼの言葉に、エイヴンは喉を鳴らした。
「それで、最後のカードは何だったの?」
エドワードの質問に、エイヴンが口を開いた。
「殿下が引く予定だった最後のカードは……です。そして、ゲームの結果は……。」
「……そうだったのか。」
ルイーゼの返事と同時に、マクシオンが部屋に戻ってきた。
秩序を維持するため、エイヴンは自分の席へと戻り、再び集まった四人は新しいゲームを始めた。
・
・
・
前夜のカードゲーム「ドラゴンの遺恵」で最も多くの勝利を収めたのはエドワードだった。
その日のカードゲームのおかげで、ルイーゼは運よく今回の出張地に滞在する間、どの飲食店でも無料で食事を楽しめる食事無料券を手に入れることができた。
もともと出張では個人ごとに食事代を別途支給していたが、公平性のために一定の費用が設定されていた。
その費用はそのまま経費として扱われ、食事券を追加で手に入れる機会もあったため、なかなか良い条件だった。
ヘンドリックは二回勝って、二回分の食事権を獲得し、マクシオンは……。
「一度も勝てなかったな。相変わらずゲームが苦手なんだな。」
ルイーゼは一晩中眠らず、武器商店へ向かった。
夜通しエドワードのそばに付き添っていたため、今日は昼間に休むことができ、時間の余裕があった。
夜に再び彼を守るためには、剣だけ手に入れてすぐに寝床につかなくてはならなかった。
カラン。
「いらっしゃいませ! ああ、あのときのお嬢さん。刻印が完了しました!」
武器商がカウンターの近くを探ると、小さく頑丈な木箱を取り出した。
「恋人に渡すのですか?」
「ご夫婦かと思っていました。」
「最初はそう思ったのですが、男性の名前で刻印を注文していたので、まだ結婚していないのかもしれませんね。夫に武器を使うことを隠しているのでしょうか、それとも記念として贈る場合は、ためらってしまいますね。」
「……そうですか。」
「そういえば、お嬢さんは『銀の羽根騎士団』の団員なのですか?」
「いいえ。正確に言うと、団員ではありません。」
「なるほど。今回、団長である大公殿下が祝福を受けたと聞きましたが。」
「あっ、そうですね。そういえば、おじさんも受けようとしていましたよね?」
「あの日は酔っ払って酒を飲んで寝てしまったので、結局受けませんでした。でも、もう受けなくてもいいかなと思いまして。」
「どうして気が変わったのですか?」
「私はそんなことを気にする人間ではないのですが、今日はやけに色々なことが気にかかるんですよ。もしかすると、自分にはふさわしくないのではと思って……。」
「そんなことも、たまにはあるかもしれませんね。」
「絶対にそんな人ではありませんよ。とても賢くて几帳面な人ですから。妻は分単位でスケジュールを立てて、少しの乱れもなく生活する人です。私とは正反対なんですよ。」
「……そうですか。」
「とにかく、お持ちください。問題があればまたいらしてください。」
「はい、ありがとうございます。」
ルイーゼは箱を持って店の外へ出た。
彼女の表情は暗く沈んでいた。






