できるメイド様

できるメイド様【217話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「できるメイド様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【できるメイド様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「できるメイド様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となっておりま...

 




 

217話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 神の手②

「ジリッ。」

鋭利なメスの刃が右心室の壁面をかすめ、鮮血が勢いよく吹き出した。

「……!」

様子を見守っていたガルト男爵は蒼白になり、目を見開いた。

心臓を本当に切り開くなんて!

恐怖に震え、彼の心臓も爆発しそうだった。

「しっかりと押さえてください!きちんと支えないと!」

マリの叫びに、ガルト男爵は歯を食いしばった。

彼もまた、歯を食いしばることで自分を保とうとしていた。

心臓を開いてみると、腫瘍の形状が悪いことが分かった。

腫瘍は大きく、根が広がっていた。

『この腫瘍を完全に切除しなければ。』

問題は、腫瘍本体に触れるのではなく、根の部分だけを慎重に取り除く必要があることだった。

もし腫瘍を誤って引っ張ると、一部が剥がれ落ち、他の部位に飛び散る可能性がある。

血液が激しく脈動する中で、この巨大な腫瘍を動かさず、根だけを的確に取り除く作業は非常に危険で困難だった。

『最大限の注意を払わないと。』

マリは心臓が鼓動するたびに揺れる腫瘍に集中した。

腫瘍の根の部分をメスで取り除き始めた。

だが、腫瘍の根が心臓の奥深くにまで入り込んでおり、さらに困難を極めた。

マリは最大限に心臓壁を傷つけないよう慎重に進めながら、同時に腫瘍を引きずらないよう根を丁寧に切除していった。

『どうやってそんなことができるんだ?』

ガルト男爵の瞳孔は驚きで大きく開き、その場で釘付けになった。

目の前の光景は信じられないものだった。

専門医でも到底不可能な手さばき。

しかしその時、ヨハネフ3世の容態を監視していた他の医師が叫んだ。

「血が多量に流れています!脈が弱まっています!」

マリはその声に反応して唇を噛みしめた。

『もっと急がなければ!』

彼女はさらにスピードを上げた。

心臓を切開する手術は、まさに時間との戦いだった。

心臓が鼓動するたびに血液が噴き出し、ほんの一秒の遅れが致命的になる。

手術室は緊迫した空気に包まれ、誰もが息を飲んで彼女の動きを見守っていた。

その手さばきは、まるで魔法のような正確さと速さを備えていた。

そして最後に、決定的な瞬間が訪れた。

「タクッ!」(器具の音が響く)

腫瘍が根から心臓から取り除かれた。

『やった!』

だがその瞬間、新たな問題が発生した。

「陛下の脈が感じられません!」

ゴポゴポとポンプのように動いていた心臓の動きが停止していた。

マリの顔色が真っ青になった。

『心室細動だ!腫瘍を取り除いた衝撃で心臓内部の信号系統に問題が発生したのが原因だ!』

強い衝撃を受けると、心臓の動きを制御する信号系統に問題が生じることがある。

大きな腫瘍が無理に取り除かれたことで、その信号系統が乱れたのだ。

どうすれば……?

ヨハネフ3世が亡くなったと考えたガルト男爵が呆然と問いかけた。

マリはその瞬間、すぐに動き出した。

考える暇もなかった。

『心臓を圧迫して血液を循環させなければ!』

衝撃から復帰すれば、心臓の動きもすぐに回復するはずだ。

それまで血液を循環させ続ける必要があった。

彼女は両手で心臓を圧迫した。

これは直接心臓マッサージだった。

『お願い!』

そう思いながら胸がつぶれるかのような緊張の時間が流れる。

ドクン。

ヨハネフ3世の心臓が再び動き始めた。

「ああ。」

ガルト男爵は胸が締め付けられるような表情で一息ついた。

彼はヨハネフが本当に死んだのかと思っていた。

「まだ終わっていません。」

「はい、陛下。」

マリは険しい表情で心臓の内部を見つめた。

腫瘍が成長して心臓の内部、特に弁膜が損傷している状態だ。

あの弁膜を修復しなければ、ヨハネフ3世の状態は再び悪化するだろう。

『動きは戻ったけど、まだ弱い。そして出血量が多すぎる。』

今までも大変だったが、これからが本当の勝負だ。

時間との戦いだった。

出血性ショックで再び心停止が起こる前に、弁膜修復を終えなければならなかった。

「縫合糸をお願いします。」

マリは事前に準備しておいた縫合糸を手に取った。

心臓の弁膜は血液の流れを調整する役割を果たすが、腫瘍の影響で根元部分が拡張し、正常に機能していなかった。

拡張した部分を縫い縮め、弁膜のサイズを調整しなければならなかった。

再びマリの手が動き始めた。

夢の中で何度も繰り返したように、少しのズレもなく正確な手技が手術台の上で繰り広げられた。

彼女の一滴、一滴の汗が傷ついた部分を縫うたびに弁膜の機能が修復されていく。

「陛下の脈がまた弱まり始めています!」

しかし、問題は時間だった。

刻一刻と悪化するヨハネフ3世の状態に、マリは歯を食いしばった。

『お願い!もう少しだけ……!』

そうして胸が潰れるような時間が過ぎ去り、ついに弁膜の修復が完了した。

マリは少し安堵の表情を浮かべた。

マリは慎重に弁膜の動きを確認した。

もし修復が完全でなければ再度試みる必要があるが、それだけの時間は残されていなかった。

タク、タク。

静寂な手術室に弁膜が閉じる音が響いた。

幸いにも、弁膜はズレることなく正確に収まり、手術は成功した。

「お、終わったんですか?」

ガルト男爵は震える声で尋ねた。

マリは微笑んで彼を安心させるように言った。

「はい、これから仕上げに入ります。」

「おお、神よ!」

ガルト男爵は思わず歓声を上げた。

彼自身も信じられないような表情を浮かべた。

マリは再び手を動かし始めた。

切開された心臓を再び閉じる必要があった。

『内膜と外膜にズレが生じないように確実に。』

止まることなく動く心筋を縫合するのは容易ではない。

だが、マリは最後まで驚異的な集中力を維持しながら作業を続け、切開した箇所の縫合を終えた。

その後、全ての手術が終了し、マリはヨハネフ3世の状態を確認した。

「陛下の容態はいかがですか?」

状態を診ていた医師が明るい表情で答えた。

「脈はまだ弱いですが、安定しています!」

その言葉を聞いたマリは安堵の息をついた。

こうして、両帝国とクローヤン王国に大きな影響を与える手術が無事に終わった。

 



 

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