残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【73話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

73話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • ごっこ遊び

マルコ・ユルミエル。

大陸一の感情士は、驚きで目を丸くした。

「えっ、えっ?」

青い混沌の座から、まばゆい光があふれ出して――それは、あまりにもまばゆいほどに神秘的な光だった。

しかしその神秘さは、やがて不吉さを伴って現れた。

じりじりと――

青魂石にひびが入り始めたのだ。

「だ、だめだ!!!」

あれが壊れたら天文学的な金額を弁償しなければならない。

家門が揺らぐに違いない。

「こ、これは一体……!」

結局、青魂石は砕け散った。

「はぁ……」

これをデイルサ侍従長にどう報告すればいいのか。

彼は深い絶望を味わった。

誰かが耳元で風船を弾いたような音がして、彼は神経をとがらせた。

「誰だ、風船を弾いたのは!」

だが、部屋の中には誰もいなかった。

ポン!

「ん?」

青い混沌の石が砕け散った場所に、小さな魔法陣がひとつ生まれていた。

ポン!

そこから何かが飛び出してきた。

「きらっ……え?」

それは宝石のようにきらめくものだった。

しかも、その大きさはかなりのものだった。

「まさか、あれは……?」

ポン!ポン!ポン!

宝石が次々と溢れ出した。

ポン!ポン!ポン!ポン!ポン!

ダイヤモンドの泉が爆発したのだ。

「だ、だ、ダイヤモンドだ!!!」

ポン!ポン!ポン!

ダイヤモンドが途切れることなく積み上がっていった。

「ほ、本物のダイヤモンドじゃないか?」

マルコは一時、混乱した。

 



 

「アルペア王宮までは私がお送りいたしましょう。」

私は危うく門番のおじさんに向かって「お父様?」と呼びかけそうになった。

しかし、感じ取れる雰囲気は明らかに父上なのに、なぜか「お父様」と呼んではいけない気がしたのだ。

どう見ても父親なのに、父親じゃないふりをしているのを見ると、「みんなお父さんだと知っているのに、知らないふりをする世界観」みたいに感じた。

私はよく分からなかったけれど、大人には何か重要な理由があるのだろう!

だから私は素直な子どもらしく、その事情を理解することにした。

「本当ですか?門番様が連れて行ってくださるんですか?」

「はい。馬車を待たせてあります。」

その時、なつかしい声が聞こえてきた。

「門番は門番の役目を果たさねばならぬ。門番の務めは門を守ることだ、門番よ。」

「ビアトン先生!」

「遅れてすみません。本当なら私が迎えに来るべきでしたのに。」

ビアトン卿はもう一度、門番のおじさんに視線を向けた。

「門番がどうして護衛までしようとしている?姫様の護衛は私がすべきことであり、私がやるべきことだ。だから心配するな、門番。」

ビアトン卿が片膝をつき、私に腕を差し伸べてきた。

それはまるで磁石のN極のようだった。

私はS極だった。

自然の摂理に逆らえず、我慢できなかった。

知らず知らずのうちに引き寄せられ、その腕の中に飛び込んでしまった。

『安心。』

気づかぬうちに自分が大きく緊張していたのだろう。

ビアトン卿の胸に抱かれると、全身の緊張が解けて深い安堵感が押し寄せた。

そのとき、門番のおじさんの声が聞こえた。

「お嬢様をそのように軽々しく抱きかかえるとは、いかがなものですか?」

父はどうやら“門番キャラ”という設定にかなり忠実なようだ。

ビアトン卿も、明らかにその“設定”に合わせてくれているようだった。

やっぱり、私の知らない何か事情があるに違いない。

お父さんの機嫌を良くするためにも、私も合わせなきゃね?

「私は嬉しいです。ビアトン卿は私をとても大事にしてくださる先生なんです。」

「皇族の体に触れるのは、礼儀に反するのではありませんか?」

「でも、ビアトン卿は帝国の首席補佐官であり、私にとっては第二のお父さんのような存在です。」

いつも温かくて、優しくて、頼れる人。

ビアトン卿はいつも感謝している大切な人だった。

門番の役をしている“お父さん”がさらに口を開いた。

「姫様は抱きしめられるのが、そんなにお好きなのですか?」

「好きです!」

「どうなのだ?ビアトン卿がそんなに気に入ったのか?」

お父様はビアトン卿を大切に思っているから、私もビアトン卿が好きだと言えば、きっともっと安心して喜んでくれるよね?

その気持ちを確かめるために、わざと試しているのかな?

うん、たぶんそうだ。

私はぱっと笑顔を見せて答えた。

「はい!大好きです!とても!」

こう言えばお父様も安心して喜んでくれるよね?

ところが今のお父様は作り笑顔を浮かべていた。

『本当は気分を害したくなくて、わざと笑顔を作っているんだ!』

本当に気分が悪いわけじゃない。

心がすごく落ち着いた。

お父さんは、少し不機嫌そうな声で言った。

「ビアトン卿に抱かれるのが、そんなに幸せですか?」

「はい!とってもとっても!」

「どうしてです?」

お父さんと“ごっこ遊び”をしているみたいで、すごく楽しかった。

私の幼い心は、この状況をまるでおままごとのように感じていた。

お父さんとの思い出を作っているみたいで、心臓がドキドキして、胸がいっぱいになった。

「だって、私は抱っこされるのが好きなんです。」

「……」

「本当は秘密なんですけど、門番のおじさんにだけは特別に教えてるんですよ。」

私は抱きしめられることがとても好きだった。

もっと正確に言うなら、「保護者」の腕の中にいるのが好きだった。

保護者の庇護のもとにいた記憶がなく、前世では経験できなかったから、余計にそう感じるのだろう。

「皇女殿下は七歳です。子供のように甘えて抱かれる年齢はもう過ぎたのではありませんか?」

「門番、口を挟んで驚かせると舌を切ってしまうぞ……いや、深い交流を交わす友になってくれ。」

「……何と言った?」

「タメ口を使うな、門番。」

ビアトン卿は言葉のたびに「門番」をつけて強調し続けた。

ビアトン卿もこのおままごと遊びにかなり真剣だったのは間違いない。

お二人はこの状況に本当に忠実だった。

ビアトン先生がまた言った。

「なぜお前は幸運だと思っているのだ、門番よ?」

え?また何を言ってるんだろう。

「もう成人していてもいい年齢なのに、まだ幼い子どもではないという事実に、なぜ喜んでいるのだ?答えろ、門番!どうしてそれが嬉しいのだ、門番!お前の心の広さは大したものだな、門番!門番のくせに!」

考えてみれば、確かにそうだ。

私はお父さんとビアトン卿の“ごっこ劇(?)”に最後まで付き合ってあげた。

「なんと無礼な!門番!」

まるでおままごとをしているみたいで楽しかった。

ビアトン卿も楽しんでいるように見えた。

「姫様は私だけを抱きしめるのだ、門番!お前は抱けないぞ、門番!」

「あはは!」

私も思わずまた笑ってしまった。

「この方はとても愛らしい方だ、門番!こんなに可愛くて愛らしい皇女殿下を見たことがあるか、門番!」

あまりにも大げさで大仰に褒められたので、私は恥ずかしくなり、照れて隠れたくなった。

ビアトン卿の胸元に顔をうずめて隠した。

ひゅっ!

何か風が起こった。

『何だ?』

ビアトン卿の腰が後ろに反り返った。

うわぁ。

不思議。まるでアクロバットしているみたい。

「あはは!」

私はまた笑った。

あの、ほら、お母さんやお父さんが子供を高く抱き上げて――まるで上下に揺さぶられる遊びをしているような感覚だった。

「無礼だぞ、門番!姫様の父親である私に剣を向けるとは……ん?どこへ行った?」

お父さんは消えていた。

なぜ“門番ごっこ”をしていたのか、結局理由は分からなかった。

『まあ、みんなで楽しく過ごせたなら、それでいいか!』

 



 

ロンはどこかへ姿を消し、ビアトンは姫を抱いたまま、勝者のような微笑を浮かべていた。

いつの間にかイサベルは、ビアトンの腕の中で眠り込んでしまっていた。

正確に言えば、眠りというより“昏睡”に近い状態だった。

幼い身体と心には耐え難いほど多くの出来事を経験し、緊張が解けると仮面症にかかったかのように眠りに落ちたのだ。

北部大公ロベナはため息をついた。

「陛下とお前は、10年が経っても変わらぬな。」

「相変わらず美しい、という意味でしょう?」

「まだ生きていることが奇跡だ。」

壁にもたれて立っていた老神官(カデルリナ)が口を挟んだ。

「奇跡だなどと言わないでください。」

神官としての本分を取り戻したのか、彼女(?)は厳かな声を取り戻していた。

「どうして?」

「何か不愉快です。」

ただ、お前が竜だからといって、竜だ竜だと大声で言いふらすようなものだ。やれやれ。

ロベナは深いため息をついた。

もし放っておけば「実は私は黒炎竜なんだぞ!」と騒ぎ出しそうだったので、深く追及せず流すことにした。

ロベナがビアトンに歩み寄った。

イサベルを大事そうに抱いていたビアトンは、二歩ほど下がった。

「なぜ逃げる?」

「姫様に危害を加えるかと思って。」

「俺があの子に危害を加えるとでも?」

「まだ十四年も残っている子どもの、たった五年を奪っただけで、あんなに騒ぎ立てたじゃないか。」

「それは……」

ビアトンは老神官(カデルリナ)の方をちらりと見た。

ロベナがこんな計画を立てたのは、イサベルとアーロンがどう考えているかを確かめるためだった。

老神官は慌ただしく数珠を指で弾いて祈りを捧げていた。

『そうだな、私は悪い竜だ。』

北部大公ロベナへの負担など、どうせ大したことではない。

ここに何かひとつ加わったところで、別に悪くなることもなかった。

「うるさい、子を受け取れ。」

ロベナが首の後ろをつかんで持ち上げていたラーちゃんを、ひょいと放り投げた。

無造作に投げたように見えたが、実際は魔力で精密に制御していた。

ラーちゃんの体はビアトンの肩にどさりと落ちた。

ラーちゃんは圧倒的な力を持つロベナを相手にしても、まったく萎縮しなかった。

[完全着地。]

[私は負けていない。]

鋭い目つきでロベナをにらみつけた。

それはまるで「お前が私をよく投げ飛ばしたからではなく、私が美しく身を引いてやったのだ」と言わんばかりの視線だった。

その様子を見て、老神官は思わず笑みを漏らし、ビアトンの目は細められた。

「随分と上手くコントロールしてくださいますね?あなたはそんなに優しい方ではなかったでしょう?」

「……」

「人を噛んだから殺さなければならない、とか、下賤な存在はただの獣だと、容赦なく断じていたのはいつのことでしたか?」

アーロンの母であり、黒炎竜である現職の老神官は、数珠を繰りながら微笑んだ。

彼女は不思議な笑みを浮かべて問いかけた。

「北部大公様が、そんなに冷たく仰ったことがございましたか?」

「そ、その……」

ビアトンはくすくす笑った。

「師匠が慌てるところを初めて見るので、面白いですね。」

「弟子よ、お前はその事実を知っているか?」

「話題をそらそうとしているのは、私の思い違いでしょうか?」

なぜ急に話題を変えようとするのか、その理由は分からなかった。

ただ分かったのは、師であるロベナがあの老神官にかなり気を使っているという事実だけだった。

理由はどうでもよかった。

ロベナが老神官を苦手としているという事実だけが重要だった。

弱点など見つけられるはずもないロベナに、わずかとはいえ弱点を見出した――それが重要だった。

「イサベルに関することだ。」

「どうか弟子に貴重な教えをお授けください。」

ロベナは固く握っていた拳をようやく開いた。

怒りに震えるような熱い息を吐き出しているカデルリナを見れば、今は話題をそらすのが賢明だと分かったからだ。

「先日、あの外見だけの巨人に違和感を覚えたと言っていたな?お前はあそこで“ビルヘルム”というやつの臭いがすると言っていた。」

「はい、そう申しました。」

「そいつ本人が入り込んだわけではないだろうが、何かしら人為的なものが介入していたのは確かだと思う。」

普通の外見だけの巨人に比べ、その存在ははるかに強力で、魔法的な耐性も高かった。

それは、人為的な何かが合成されて作られた魔物だったのだ。

「巨人の死体から妙な術式を発見したんだ。」

「妙な術式ですか?」

言うべきかどうか、一瞬迷った。

知恵の竜ラビナは、人間界に過度に干渉することを好まない性分だからだ。

だが、その時ふと眠り込んでいたイサベルの小さな背中が目に入った。

彼女は心の中で自分に言い聞かせた。

『少しも可愛くない。』

可愛くない。可愛くない。可愛くない。

どんな夢を見ているのか、イサベルは突然「かき氷、もっと食べる」と寝言をつぶやいていた。

『……可愛いのも悪くないな。』

結局、口を開いた。

「そうだ。お前が見つけた肩の骸骨模様。あれは魔法術式が刻まれた紋様だった。だが、それが奇妙なほどイサベルを狙っているように見えるのだ。」

「え?」

「ビルヘルムというやつ、イサベルに会ったことがあるのか?」

ビアトンは過去の誘拐未遂事件の犯人がビルヘルムだと確信していた。

「ええ、多分。」

「もしかすると、あの外見だけの巨人がここに現れたのも、偶然の一致ではないかもしれんな。」

ビアトンの表情が真剣になった。

それはロベナですら滅多に見たことのない、ビアトンの真摯な姿だった。

「ここでイサベルが魔法をずいぶん使ったそうだな?」

「ええ。奉仕活動を熱心にしていましたから。」

「その匂いを嗅いだ気がする。」

「匂いを嗅いだって?」

「イサベルが標的だったような気がするんだ。イサベルに関しておかしな点、何か気づかなかった?」

言われてみれば、少しおかしい点があった。

『東西南北、四方から同時多発的に魔物が現れた。そして奴らの進軍方向はすべて……』

ただ城へ向かっているのだと思っていた。

だがロベナの言葉を聞いて考えてみると、すべて王宮の方角に集まっていたのだ。

つまり『イサベルがいた場所』であった。

『それからもう一つ。』

ビアトンが先に北の城壁に到着し、その後イサベルが現れた。

「皇女様が姿を現された途端、外門の巨人たちがさらに狂乱状態に陥ったのを覚えています。外門の巨人は本来、知性を持たないただの肉体兵器なのに……」

だから城壁でもある程度は防げたのだ。

城壁に向かって無謀に突進してくる存在だったから。

だが、その日は違った。

『時々、熱を受けるとああやって跳び上がり、周囲をかき乱すのです。』

ただ怒って暴れているだけかと思ったが、どうやらそうではなかったらしい。

むしろイサベルを狙った行動だったのかもしれない。

「皇女殿下が現れるや否や、やつが暴れ出したわけですね。偶然ではなかったかもしれません。」

「偶然ではないと断言できる。私の妹を賭けてもいい。」

「つまりビルヘルムが皇女殿下を狙われているかもしれないってことですよね?」

「そうかもしれない。」

その言葉を聞いた瞬間、ラーちゃんの頭上に“感じの表情”がいくつも浮かんだ。

赤い表情だった。

ものすごく怒っているという表情だった。

[イサベルを絶対守れ。]

彼はフンフンと鼻を鳴らした。

蜂の声である彼はアロンに関する記憶を全く持ってはいなかったが、それでも不器用で本能的に言った。

[お母さんに全部言え。]

[うちのママ最強。]

「妹を賭ける」――その言葉に反発しかけた老神官の顔からは力が抜け、代わりに苦笑が浮かんだ。

『やれやれ、母親が偉大だと言われる所以か』と、ぶつぶつつぶやきながら。

そして数日が過ぎた。

幾人かの王たちもまた、皇女の価値を確かめようとするかのように訪れた。

それは「皇女を支持せよ」という無言の合図でもあった。

その結論に至ったラヘルは、イサベルと議論を交わした末に、ナルモルを王宮に招いた。

やがてナルモルはアルフェア王城に到着した。

アルフェア王城に足を踏み入れたナルモルは、城内の様子に少し違和感を覚えた。

『ずいぶんと活気づいているな?』

ナルモルは貴族ではなかったので、このような待遇を受けたことがなかった。

「こちらへどうぞ、ナルモル卿。」

「だから、卿じゃないってば。ナルモルと呼んでください。」

「国王陛下のお客様ですから、礼を尽くすのが当然です。」

「でも本当に国王陛下の側近なのですか?」

「はい、その通りです。」

「そんなに身分の高い方が、なぜ私なんかを……」

「それはイサベル皇女殿下がナルモル卿を積極的に推薦されたからですよ。」

ナルモルはアルフェアの聖王ラヘラに会った。

「アルフェアの国王、すべての尊敬を受ける偉大なる聖王にお目にかかります。」

「歓迎する。」

ナルモルはラヘルラといくつかの話を交わした。

最初は少し緊張していたが、会話を続けるうちにだんだんと気が楽になっていった。

「ええ、実はユリモル製菓店の前で、私はまるで司祭長のように立っていたのです。」

「毎日貴族たちが徹夜で並んで待つと聞いていたが、本当だったのだな。」

「思った以上に数が多かったので、そこでそのままホテル業を始めてしまいました。あ、ちなみにこれは皇女殿下には秘密です。来年の誕生日の贈り物にするつもりですから。」

「誕生日の贈り物を1年前から準備していたのか?」

「はい。今年の誕生日には大したものをお渡しできなかったので、来年はぜひ良いものを差し上げたいと思いまして。」

その“良いもの”がホテルなのか?

ラヘルラはそれ以上問いたださず、ナルモルの話をただ聞いていたが、聞いているうちに妙に胸が温かくなった。

「そんな理不尽な暴利をむさぼるってことか?まともな精神を持った者なら絶対に宿泊なんてしないだろう。」

「もちろんです。」

緊張が解けたナルモルは、指先をカタカタと震わせた。

「代わりにユリモルホテルに宿泊すると、我々ユリモル製菓店の優先待機券を差し上げます。」

「それを食べるって?」

「幼い子供がデザート一つのために数百万ルデンを払って遠路はるばるやって来るくらいなんです。まあ、お金に執着しない方々ですから。」

彼らにとってお金とは、ただ欲しいものを手に入れるための些細な手段に過ぎない。

そこにどれだけ費用がかかろうが重要ではないのだ。

「その代わりに、それに見合ったサービスと礼儀を尽くさなければなりません。ユリモルホテルの侍従や侍女たちは、皇宮で教育を受けていますから。」

デイルサ侍従長の特別な配慮のもと、特に教育を受けた者たちは侍従や侍女として配属されていた。

王宮の侍従や侍女といえば、ほとんどが貴族出身だ。

「王宮で教育を受けた侍従や侍女?人件費がすごくかかるんじゃない?」

「平民出身だから大丈夫ですよ。」

「……え?」

聞けば聞くほど、ますます驚かされた。

「あの堅物で有名なデイルサ侍従長が、平民出身の者たちを直接訓練して育てたというのか?」

「はい?ちょっと怖いけど、そこまで堅物というほどでもありませんでしたけど?」

「そんなはずが!」

「イサベル皇女殿下のためだと言われたら、嫌な顔ひとつせずにやってくださいました……」

「……そういうことか。」

「もしかして侍従長様のお名前を間違えてご存じなのでは?」

「デイルサ。ビロティアン最強の剣隊を率いていた彼を、どうして私が取り違えるものか。」

「申し訳ありません。私は田舎者ですので、そのようなことはよく存じません。ただし、アレナ宮殿の侍従長であることは確かです。」

ラヘルラはしばらく口を閉じた。

アレナの侍従長デイルサをよく知っていたラヘルラは、自分の判断にますます確信を持った。

『やはりイサベルは、政治的に非常に特別な地位にある皇女に違いない。』

そのおかげで結論はさらに容易に導き出された。

ラヘルラはアルフェア王国内において、テイサベル移動関門の設置と利用を積極的に推進することにした。

「テイサベル移動関門の設置とそれに伴う流通供給は私どもが責任を持って行います。」

「資本金は?投資金がどのくらい必要なのだ?」

「各種の行政的支援だけお願いできれば十分です。金銭的な投資は受けません。」

「なに?王宮から支援が出るのか?」

「いえ。ユリモル製菓店とホテルからの収益で、その程度なら十分に賄えると思います。」

ナルモルは金銭的な投資を受けるつもりはなかった。

もし現在資本金が不足していれば話は別だったかもしれないが、そういうわけでもなかった。

『この甘美な蜜を分け合う気はない。私は巨万の富を築く。途方もないほどの大富豪になるのだ。』

彼は生まれ持った嗅覚で金の匂いを嗅ぎ取っていた。

そして他人と金を分け合うつもりはさらさらなかった。

「イサベル皇女があなたを推薦した理由がわかった。若いながらも包容力と胆力を備え、計画を実行する実行力も持ち合わせている。イサベル皇女は素晴らしい人材を得たのだな。」

「過分なお言葉です。」

ラヘルラの目が細められた。

『皇女は卓越した魔法の能力と高貴な心性を持っている。とても愛らしく、周囲を和ませる資質もある。だが、優れた人材を見抜く眼力までも持つには、まだあまりにも幼い。イサベルに対するこの揺るぎない忠誠心もまた、到底子どもが持ち得るものではない。』

ということは?

『結局、王宮で養われた者だ。生まれながらに王宮のために教育と訓練を受けてきたのだろう。だからこそ、あのデイルサでさえも自ら進んで助けに現れたのではないか?』

王宮で密かに育成された人材に違いない。

そのような人物をイサベルに付け、彼がついにはアルフェア王国へと派遣され、共に事業を進めることになったのだ。

卓越した理性の持ち主であり、聖王と称されるラヘルラは確信した。

『王宮の秘密のプロジェクトに関わることになったのは間違いない。』

 



 

 

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...
【公爵邸の囚われ王女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...
【家族ごっこはもうやめます】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介とな...
【乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。 ネタバ...
【できるメイド様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「できるメイド様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となっておりま...
【継母だけど娘が可愛すぎる】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介とな...
【あなたの主治医はもう辞めます!】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「あなたの主治医はもう辞めます!」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...
【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...
【夫の言うとおりに愛人を作った】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...