悪役なのに愛されすぎています

悪役なのに愛されすぎています【124話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役なのに愛されすぎています】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

124話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 長年の疑惑

皇帝はロレッタを公爵邸の執務室まで送り届けた。

扉の前でふたりは向かい合い、「これは秘密ですよ」と小指を絡めあう。

その光景を目にした侍従や貴族たちは、あまりの親しげな様子に目を疑い、思わず息を呑んだほどだった。

別れ際、ロレッタが軽く会釈すると、皇帝はその背を見送りながらゆっくりと廊下を歩き出した。

『――クリステンソンから逃げ出した娘は、地方の貴族屋敷を転々としていたらしい。』

あのとき、その報せを耳にした瞬間から、皇帝の胸の奥に小さな疑念が芽生えはじめていた。

サムエルが助けを求めた貴族の中に、裏切り者がいるなんて――当時の彼は微塵も疑っていなかった。

『……本当に、そうだったのだろうか』

ふと足を止めると、目の前には記録書庫が広がっていた。

『ここは……』

皇帝が書庫に足を踏み入れることなど滅多にない。

すぐに引き返そうとしたものの、ある考えが頭をよぎり、彼はその場に留まった。

『この書庫のどこかに、あの年の記録が残っているはずだ……』

思い返されたのは、涙ながらに赦しを請い、口々に秘密や弁解、嘆願を訴えた捕らえられた者たちの姿だった。

そのとき、彼は耳を塞ぎ、ただ一言――「全員、死刑に」と命じてしまったのだ。

あのときの彼は、そうでもしなければ耐えられなかった。

愛する弟を、これ以上自分の手で汚したくなかったから――。

サムエルが再び反乱を企てる――そんな日が、また訪れるのではないか。

その恐れは、皇帝の胸に長く居座っていた。

地位を奪われることが怖かったのではない。

本当の恐怖は――もし再び何かの理由で、自らの手でサミュエルの命を奪わねばならぬ瞬間が来ることだった。

あれほど愛していた弟を、自分の手で。

『……もし、あの出来事がすべて誤解だったとしたら。』

サミュエルが本当に反乱に関わっていなかったとしたら?

確かな証拠はなかった。

だが、彼が関わっていたという証拠もまた存在しなかった。

『本当に、サミュエルは……何も知らなかったのか?』

その可能性を思うだけで、胸の奥が凍りつくような恐怖に襲われる。

あの時、自らの命令で多くの者たちが処刑された。

その数は、指折ることもできないほどだった。

――もし、すべてが誤解だったとしたら?

「……ふう。」

重く息を吐いた皇帝の瞳には、長い年月を経てもなお消えない影が宿っていた。

突然、胸の奥が締めつけられるような感覚に襲われ、彼は思わず心臓の辺りを押さえ、その場に膝をついた。

後ろを歩いていた侍従が慌てて駆け寄り、彼の体を支える。

「陛下!ご無事ですか、陛下!」

取り乱す侍従の声を背に、皇帝はゆっくりと顔を上げ、震える声でつぶやいた。

「……調査を……調査をしなければ」

「すぐに医官を呼びます!どうかお部屋でお休みを!」

「医官じゃない……。必要なのは、鋭い目を持った騎士だ。俺が……確かめなければならないことがある」

あの年には、数え切れないほどの死があった。

長い年月の中で多くの証拠が失われているだろう。

だからこそ、まずは最近の死から手がかりを探るべきだ――そう判断したのだ。

皇帝は深く息を吸い込んだ。

「陛下、本当にご無事ですか?」

「……数年前、処刑されたある女がいた。その……クリステンソン家の、あの若い娘か。」

皇帝は低く呟いた。

「――彼女の行動を調べる必要がありそうだな。」

「……!」

侍従は驚きを隠せなかった。

また誰かが犠牲になるのでは――そんな不安が脳裏をよぎる。

だが、皇帝の目に宿る光は、かつての冷酷さとは違っていた。

短い沈黙ののち、侍従はすぐに表情を整え、深く頭を下げて応じた。

「ただちに調査団を編成いたします。」

「……ああ。徹底的に調べろ。どんな些細なことでも見逃すな。」

皇帝は拳を握りしめ、己の心の奥を静かに見つめていた。

――自分は、いったい何を望んでいるのか。

もし真実が彼の想像と違っていたら?

その答えを受け入れられるのか?

答えは、どこにもなかった。

それでも皇帝は、長く閉ざしてきた扉をついに開く決意を固めていた。

長年の疑念――それを終わらせるために。

 



 

クロードとイサヤは何の問題もなく、アーガストが滞在している邸宅へと到着した。

幸い、少年もその両親も元気そうに過ごしていた。

クロードはアーガストがこれまで学んできた内容を確認してやり、次に来るまでの課題も丁寧に出していった。

一方のイサヤも、少年に身体の使い方を教えたり、庭で一緒に時間を過ごしたりと、何かと構いたがっていた――が、あまりにしつこくしてしまい、最終的にアーガストをぐったりと疲れさせてしまった。

イサヤはその場で両親からお叱りを受けたが、それでも少年の信頼を勝ち取ることには成功したようだ。

滞在中、アーガストは次第に二人に心を開き、特にクロードにはすっかり懐いていった。

そして、彼らが邸宅を去る頃には――

「……あの、えっと。」

いつものように夕食のあと、穏やかなティータイムの席で――オーガストは珍しく緊張した面持ちで、そっと口を開いた。

「なにか頼みごとでもあるのか?」

「えっ……どうしてわかったんですか?」

「うちの末の弟も、頼みごとがあるときはまさに今のお前みたいな顔をするんだ。」

クロードはくすりと笑い、オーガストの隣へと椅子を寄せた。

「さあ、言ってみろ。なにを頼みたい?」

「ふ、ふたつ……お願いがあるんです、クロード兄さん。」

「ふたつ?よし、聞こう。」

「まずひとつめは……これです。」

少年は背中に隠していた厚手の茶封筒を差し出した。

「これを……お父さまに、渡していただけませんか?」

その言葉にクロードの眉がかすかに動く。

“お父さま”――その響きに、どこか胸の奥がざらついた。

(父に、息子からの手紙か……)

彼はゆっくりと封筒を受け取り、手の中でその重みを確かめた。

アーガストもまた、サムエル公爵へ送るための手紙をぎっしりと書き上げていた。

クロードはそれを受け取り、にやりと口元を緩めた。

「もちろんだ。そして……二つ目の頼みは?」

「それは……」

今度はなかなか言い出せない様子で、少年はしばらく口ごもっていた。

クロードは背後に控えていた乳母に軽く視線を送り、席を外すよう促した。

乳母は静かに部屋を出ていき、残された少年はぎゅっと両手を握りしめる。

「……僕も、もう他人のことに首を突っ込んではいけないって、ちゃんと分かってます」

アーガストは父親やクロードからいろいろと話を聞き、自分の立場についても理解し始めていた。

もっとも、皇帝と自分が血のつながった一族だという話には、どこか現実味が湧かず、実感が伴っていない様子だったが――

「でも……あの、アレット村に……」

オーガストは、少しだけ声を潜めて言った。

「アレント村に住む友達を、助けてあげてほしいんです。兄さんならきっと……」

「アレント村?王都の外れにあるベルホールのことか?」

少年はおそるおそるうなずいた。

「そ、そうです。おばあさまには友達を作っちゃいけないって言われてるんですけど……ミンディは時々、こっそり王都の方まで出てくるんです。僕、家を見せたこともないし、帽子を深くかぶって一緒に遊ぶだけで……」

「ミンディ?」

「はい。アレント村に住んでる女の子です。お話がとっても上手で、面白い話をたくさんしてくれるんです。でも、おばあさまには内緒ですよ。心配されちゃうから。」

クロードはその説明を聞きながら、微笑を浮かべつつも、内心の警戒を緩めなかった。

(……子どもが友達を作るくらい、微笑ましいことだ。けれど、“誰かが意図的に近づいている”としたら?)

オーガストの素性を探るために、誰かが少年に接触している可能性――クロードはその思いを胸に、慎重に頷いた。

「まずは、ミンディという子について少し聞かせてくれないか?疑っているわけじゃない。ただ、君がどんな友達と仲良くなったのか気になってね」

その問いに、アーガストの顔がぱっと明るくなった。

「はい!」

いつもより弾む声と、自信に満ちた表情。よほどその友人が好きなのだろう。

「ミンディのご両親は旅館をやっていて、いろんな旅人と会うんですって。王都に来るたびに、旅の話をたくさん聞かせてくれるんです!」

「なるほど、面白い子のようだね」

「はい!でも、僕はミンディが話してくれる昔話の方がもっと好きです。村の子たちみんなで一緒に勉強しているそうなんですよ」

「先生が子どもたちを教えているのか」

「昔はそうだったみたいですけど、今は新しい先生が来たんです。去年の冬からだって。ミンディ、その先生のことをすごく尊敬していて……“聡明な人なんだよ”ってよく言ってました!」

少年は席を立ち、机の引き出しから丁寧に折りたたまれた紙片を取り出して戻ってきた。

「これ、ミンディが描いた“先生”の肖像画なんです。見せたくて……持ってきました。」

クロードは紙を受け取り、静かに広げた。

「……なかなか個性的な絵だね。印象的だ。」

「無理に褒めなくても大丈夫ですよ。僕も最初、『君の好きな“この怪物みたいな先生”って誰?』って聞いたら、ミンディが真っ赤になって怒っちゃって……」

少年は頬をかきながら、苦笑した。

確かにその絵は、技術的にはお世辞にも上手いとは言えなかった。

頭が大きく、身体は細く描かれており、どこか歪なバランスをしている。

それでも、子どもなりに真剣に描いた痕跡があった。

クロードはその努力を思い、優しく少年に言った。

「……でもね、人を“怪物”なんて呼んじゃいけないよ。まして、友達の絵を見てそんなことを言うのはなおさらだ。」

オーガストは少しだけしゅんとし、けれどすぐに「はい」とうなずいた。

そのやりとりを眺めながら、クロードの胸の奥には微かな違和感が生まれていた。

――“先生”。ミンディが描いたその人物は、誰なのだろう。

「……そうですね。ミンディには、またちゃんと謝っておきます」

「それがいい。それと、薬のことについても教えてくれないか?」

アガストはミンディの絵をそっと引き出しの奥にしまい、席に戻った。

「実は……ミンディと最後に会ったのは、かなり前なんです。兄さんが来てから会えなかったっていうのもあるんですけど、それ以前から、ミンディは約束の場所に来なくなってて……」

「なるほど」

「あとで、約束の場所に手紙が残されてたんです。村の人たちみんながひどい風邪にかかって、外出の許可が下りなかったって……」

「今は黄色い花が咲く春だ。ちょうどいい季節だな」

暖かさと、時折肌寒さが交互に訪れる今の気候は、風邪が流行りやすい時期でもあった。

「ミンディはいつも言ってたんです。『村には薬がなくて――』って」

「地方ではよくあることだな。」

クロードは、薬草再培養の研究を進めているジェレミアの顔を思い浮かべた。

王都の外を思えば、薬が届かないのも当然のことだ。

オーガストは少し言いづらそうに言葉を続けた。

「この屋敷には薬がたくさんあるじゃないですか。でも、ここにあるのは僕のものじゃないから……勝手に持ち出すことはできなくて。だから、兄さんにお願いしようと思って。」

「なるほど、それで“頼み”というわけか。」

クロードは少年の真剣な目を見つめ、しばし黙り込んだ。

「……もしかして、ミンディが風邪でも引いたのか?」

「はい。何日も会えなくて……心配なんです。僕が確かめに行けたらいいのに、おばあさまが外出を許してくれなくて。」

クロードは小さくため息をついたあと、ゆっくりと頷いた。

「わかった。薬は十分ある。いくつか包んで、村の神殿に届けよう。」

「ほんとですか?!本当に?」

少年がぱっと顔を明るくすると、クロードは苦笑しながら言った。

「もちろんだ。……ただし、これは内緒だぞ。」

オーガストは嬉しそうにうなずき、その瞳がきらきらと輝いた。

「そうだ、あった!クロード兄さん、これ!」

「分かってるよ。ミンディにも熱心に手紙を書いたんだろう?預かっておくよ、届けてあげるから」

アーガストは嬉しそうに、今度は一束になるくらいの手紙を持ってきた。

「本当に……!手紙好きなところは、サミュエル公とそっくりだな」

クロードはおかしそうに笑い、アーガストが差し出した新しい手紙の束を受け取った。

 



 

 

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