偽の聖女なのに神々が執着してきます

偽の聖女なのに神々が執着してきます【127話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【偽の聖女なのに神々が執着してきます】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...

 




 

127話ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • ディエゴIF④

「聖女様!お客様がお見えです!」

神殿に戻ってから一週間。

あの日の出来事を思い返し、ぼんやりしていた私は、外から聞こえてきたデイジーの声に我に返った。

そして、気づけばまた唇に触れたあの感触を思い出してしまい、慌てて頭を振った。

『どうしてこんなに思い出してしまうの。』

あの危険だった瞬間のことだ。

降り注ぐ瓦礫、その光に照らされたディエゴの鋭い眼差し、そして赤い唇。

それらが鮮やかに目に焼き付いて、繰り返し心に浮かんでしまう。

『しっかりしなきゃ。私は聖女で、ディエゴは魔王なんだから。……私、いつから悪い男が好みだったんだろう。』

だが、その考えはデイジーの次の言葉で吹き飛んだ。

「ディエゴ男爵様です。」

「え?」

「個人的な用件でお越しになったそうです。」

気を落ち着けた私は、慌てて姿見を確認し、乱れた髪を整えた。

「ふん、通して差し上げて。」

私はできる限り冷静で高慢な声でデイジーに告げた。

しばらくして扉が開き、ディエゴが入ってきた。

[正義の神ヘトゥスの口元がわずかに上がります。]

大柄で隙のない魔法使いの装い、雪のように白い髪とアメジストのように美しい瞳を持つ彼を前に、私は思わず緊張した。

しかし表には出さず、あくまで落ち着いたふりをして立ち上がった。

「八柱の神の加護を……。さて、どのようなご用件でしょうか?」

「気に入った。」

ディエゴの唇がわずかに上がり、低く落ち着いた声が響く。

その一言に、頬が一気に熱くなるのを感じた。

気に入ったって……どういう意味?

「いつも私を睨んでばかりいたあなたが、今日は言葉で歓迎してくれるとは。」

「歓迎だなんて……誰が……。」

「祝福をしに来たわけではありません。まあ、神々の祝福は形だけのものですが、考えてみると悪くはないかもしれませんね。」

[正義の神ヘトゥスがディエゴを祝福しようと試みますが、通じません。]

やはり食えない男だ。

私は両手を組み、腕を組んだ姿勢で彼に言った。

「ご用件をどうぞ、お聞かせください、魔王様。」

「おや、用件か。」

ディエゴの口元がにやりと上がった。

「デビアモンギルドが店を一つ買収しました。そしてしばらくの間、私がその店を経営してみようかと思っているのです。魔界はどうにも退屈でしてね。」

「……」

何を言っているのか理解できなかった。

だが、ふと嫌な予感が頭をよぎった。

「まさか……買い取ったという店って、私の建物の中にある店じゃないですよね?」

しかしディエゴは、私の推測を否定することはなかった。

「察しがいいですね。助かります。」

「はぁ……。」

聖女の所有する建物に黒魔法ギルドが店を構えるなんて――。

私は思わず声を荒げた。

「ダメです。絶対に、絶対に許しません!」

やっとの思いで貯めたお金で買った建物なのに。

悪い噂が立てば、財産の価値が下がってしまうじゃない。

[知識の神ヘセドは損失を憂慮して深刻な表情を浮かべ、早くディエゴを追い出せと促します。]

「契約書に記載された契約期間は5年であり、譲渡された場合も契約は維持され、一方が契約を破棄する場合は契約金の2倍を支払うことになっている。」

しかしディエゴは全く動じず、契約書の内容を読み上げた。

契約金はいくらだった?

「1万フランです。」

まるで私の表情を読んだかのように彼が答えた。

ならば一万フラン払って出ていけだなんて?

そんな理不尽なことがあっていいわけない!

「ここにありますよ。」

「毒舌を使えってことですか?」

「言わなくても分かる顔をしていましたので。」

――[知識の神 ヘセドが「詐欺師め!」と罵りながら雷撃を準備します。]

私は彼を睨みつけた。

「本当に、こんなやり方しかできないんですか?」

「まあまあ。そこまで大げさにする必要はないでしょう。」

彼はどこか余裕を漂わせた表情でそう答えた。

「私が贈ったものは最後まで責任を持つ方がいいと思って。」

その言葉に私は怪訝な表情を浮かべた。

「え?」

「地下室のことです。危険な物が多かったですね。さらには魔物までうろついていました。アベラの仲介は偽りでした。」

「え?」

目を大きく見開いた私に彼は続けた。

「まず、そうした粗悪品を売っていた盗賊ギルドを潰しました。魔物が流れ出しかねない魔界とつながる通路があるようでしたが見つからず、手下たちも処理に困って放置していたそうです。」

その言葉に私は愕然とした。

もし地下室があることを知らなかったら、突然魔物たちが飛び出してきて、私の店を襲ったらどうするのよ!

「次に魔物たちを処理しました。しかし、それが洞窟なのか通路なのかは突き止められず、魔物が溢れ出す現象も止められませんでした。」

「じゃあ、どうすればいいんですか!」

――[正義の神 ヘトゥスがディエゴの正義を称賛します。]

私の9万フランもする建物が、名所どころか魔の巣窟だったなんて……。

「心配はいりません。あなたの建物に潜む原因は、いずれ取り除かれるでしょう。」

その瞬間、彼はまるで悪を祓う勇敢な退魔師のように見えた。

まるで先ほど考えていたことを見透かされたように思えた。

私はさっきの思考を振り払い、杯を傾けた。

「そうですね。全く気がかりじゃないわけではないけれど……」

苦笑。いや、苦み走った笑みだった。

「ではお願いします。」

ディエゴは杯を静かに動かした。

だが内心では、魔王をこんな風に使ってしまっていいのだろうか?という疑問が頭をよぎった。

そのとき彼がふいに口を開いた。

「近いうちに一度、店にいらしてください。」

「え?」

「魔物の通路を探すのに、あなたの力量も役立ちそうです。」

その言葉に、私は少し顔をしかめた。

「二日に一度は、ちょっと……」

「なら仕方ないですね。あなたの建物の下から、魔物はずっと溢れ出すでしょう。」

「うぅ……」

――[慈愛の神オーマンが「仕方のないことだ」とあなたをなだめています。]

少し考え込んだあと、私は観念してため息をついた。

「どうしようもないですね。分かりました。」

 



 

ディエゴは口笛を吹きながら神殿を後にした。

すると、彼の影からケロが姿を現した。

「やはり魔王様は堂々としておられる。魔界で勝てる者などおりません。」

人間界に長く滞在していたせいか、それはお世辞のようには聞こえず、ディエゴは眉をひそめた。

だがケロは気にせず続けた。

「地下室の魔物……アリエル様が思っているような魔物ではないのでは?」

盗賊ギルドが困窮して地下室を闇市場に売り渡したのは事実。

だが、その理由は別にあった。

地下倉庫の場所がアリエルの建物の地下であることを知った魔族たちが、ここをホットスポットとして――鞭を振るう姿や、カミーラを退けた功績などが魔界に知れ渡り、アリエルは魔族たちの間でも有名人になっていた。

本人は知らなかったが。

アベラもその一人であり、そしてディエゴが最も忌み嫌う魔族といえば……

「魔王様。私たちはあの方に仕え、その方を喜ばせるために……。そしてその方が堕落すれば、魔界としても良いことではありませんか?」

「失せろ。」

「えっ?」

「失せろって言ったんだ、このクソ野郎ども。」

それはインキュバスたちだった。

大抵、魅惑的な容姿をしており――にやにやした口調を持って生まれた美男の魔族たちは、油断なくアリエルを誘惑する準備をしていた。

「ま……魔王様?我らが何か過ちでも?」

「ふざけるな。ただお前らがここにいるだけで不愉快だ、クズども!誰に手を出そうっていうんだ?」

ケロは地下室に響き渡った無慈悲な爆音と、インキュバスたちの泣き叫ぶ声を思い出していた。

同じインキュバスでありながら、彼らの哀れな運命はただ滅びを意味するに過ぎなかった。

地下室はあまりにも容易く掃討されていたのだ。

ほんの一日で。

だがディエゴが掌握したという噂を嗅ぎつけ、再び別の魔族たちが現れる可能性は十分にあった。

しかし、少なくともディエゴがアリエルに説明したほど複雑な話ではなかった。

「聖力が必要だと……。彼女に会うための口実を作ったのか。」

「それで次の計画は……接点を増やしてアリエル様を誘惑し、魔王妃にするつもりですか?」

「そんなわけがない。」

ディエゴの言葉にケロは意外だと思った。

てっきりそうだとばかり思っていたからだ。

とはいえ、人間の聖女が魔王妃だなんてあり得ない話ではある。

「ディエゴ・ベステテラが聖女の夫になる。」

だが、その言葉にケロは思わず息をのんだ。

「え……えええ?」

「これまでだって俺の代わりに十分やってきただろう。魔王の役目を。」

ケロは呆れながらも、ディエゴの本性をしばし忘れていた。

自分に魔王の大役を押し付けて、人間界で好き放題楽しんでいただけだったのだ。

ディエゴが魔王になった理由は、明らかにレトが彼にかけた禁制を破るためだった。

魔王という地位が欲しかったわけではない。

そして今度はまたケロに魔王の代役を押し付けようとしているようだ。

「魔王妃になるとすれば、聖女の立場は困難になるだろう。だから俺が一歩譲ってやるさ。まあ、婚姻はその前の段階を十分に楽しんでからの話になるだろうがな。長期的な計画はこうだ。」

ディエゴは自分勝手に壮大な計画を胸に抱いていた。

しばし立ち止まっていたケロは、再びディエゴの後を追いながら尋ねた。

「本当にアリエル様と結婚なさるおつもりですか?つまり……もう言い訳は終わりだということですね。」

まるで人間の思春期の少年のようだ、とケロは思った。

アリエルを好きだと認めるまでのディエゴの言葉は。

まあ、良いことではあるのだが、ケロとしては少し引っかかる。

ディエゴは歴代魔王の中でも異質な存在だった。

レトの予言のせいで以前は女を娶ることに制約があったとはいえ、予言が終わった後も享楽には一切関心を示さなかったのだ。

魔族の中で享楽に興味がない者は二種類しかいない。

禁欲主義者か、狂人か。

側近として見てきた限り、前者であることは間違いなかった。

そうだと言って狂人でもないが、その冷酷さと理性的な態度は常軌を逸していた。

しかし考えてみれば、冷酷で理性的であっても狂人でないとは限らない。

もともと冷酷な狂人のほうがさらに恐ろしいのだから。

「ケロ、魔王城に戻ったら一つ法を制定する。」

「法ですか?」

歴代の魔王たちは即位するやいなや多くの悪法を作って威勢を示したが、ディエゴはいまだ執拗で卑劣な法を一つも作っていなかった。

ディエゴの口元がわずかに吊り上がる。

「アリエルの地下室に巣食う卑しい奴らは、俺が直々に処断する。」

つまり……これがディエゴの最初の法なのだ。

『もしかすると、一人の女に狂う奴なのかもしれないな。』

そう心の中で思いながら、ケロは口を開いた。

「アベラのように……○○がなければいいのですが。」

「なら、手でも足でも切り落とせばいい。」

「承知しました、魔王様。」

ケロが姿を消すと、ディエゴは変化する街の空気を楽しみながら歩き始めた。

天気は良かった。

 



 

私の建物、そしてデビアモンギルドの閉ざされた扉。

店の中。

私はディエゴと二人きりだった。

「これも……必要な過程なのですか?」

近づいてくるディエゴを見ながら、私は震える眼差しで尋ねた。

[愛の神オディセイが、ため息をつきながら頬杖をつきます。]

「もちろんです。」

彼は私を壁際へと追い詰めるように腕を伸ばした。

私は壁に押されて背中がつき、彼の息遣いを間近に感じた。

「うぅ……」

彼の手が私の髪に差し込まれた。

喉の奥が熱くなるあの感触が、なんとも言えず惜しい。

しばらくして彼が唇を離したとき、むしろ名残惜しさすら覚えた。

「こうして聖力を分け与えると、魔物のゲートを探すのに役立つというのは禁じられた噂ではありますが……まあ、魔王の名声ですし、間違いではないのでしょう。」

私の言葉に、彼は琥珀色の瞳をわずかに不安げに揺らし、顎を引いた。

[慈愛の神オーマンがほくそ笑みます。]

――まったく、魔王がこんなに嘘が下手だなんて。

「まあ……確実な効果のために、もう一度やってみましょうか?さっきのは少し弱かった気もしますし。」

私の言葉に、彼は銀色の子犬のように欲望をきらめかせながら私を見つめた。

私は彼の頬に手を添え、背伸びして口づけをした。

彼が私を引き寄せ、再び深いキスを交わした。

――だから、私がディエゴの嘘を知ることになったのは、一か月前のことだった。

「魔王様のせいで気が狂いそうです。私に仕事を全部押しつけて、本当に魔族どもを〇して回るなんて……おかげで貴族たちの不満が一気に噴き出してますよ。それが正しいですか? いくら魔族とはいえ、再び増えるには百年以上かかるんです。はぁ……数を数えるだけでも気が狂いそうだ。だから酒を飲まないわけにはいきません。私は良心があるからやってるんですが、あなたにまつわる秘密を教えて差し上げましょうか?」

酔ったような足取りで現れたケロは、半ば呂律が回らない様子でディエゴの真実を暴き出した。

「つまり、あれはただの嘘だったということです。さっさと捨ててしまいなさい。人間の女たちは、嘘をつく男を嫌うものですからね。それに、いくら飄々とした顔をしていても、実際には792年間も女と関わったことのない堅物……」

「嘘というよりは……“計略”という方がふさわしい表現ではありませんか?」

「……は?」

「そうですよ、哀れなケロさん。ああ、それと今日の出来事は魔王様には内緒にして差し上げますよ。」

私の言葉に、ケロは目を揺らしながら大きく見開いた。

『つまり、私ともう一度でも会うために、あんな馬鹿げた嘘をついたってこと?』

どうにもおかしいと思っていた。

名ばかりとはいえ魔王なのに、地下室の魔物ひとつまともに狩れず、挙げ句の果てには私の助力まで必要だと縋りついてきたのだ。

『ならば、騙されたふりでもしてやろうか。』

まさか私を弄ぼうというの?

私はくすくすと笑った。

――そして再び、現在へ。

「やれやれ、魔物が入り込む入口を探さないといけませんね。こんなふうに二日に一度も襲ってくるのは面倒ですし。」

「簡単には終わりそうにありませんね。」

片方の口角を上げながら顎を撫でるその姿が、妙に可愛らしかった。

[慈愛の神オーマンは、今こそ痴話げんかと駆け引きで関係に新鮮さを加える時だと語ります。]

それにしても……792年も独身って、いったい何歳なんだろう?

でも、イケメンで可愛いなら歳なんてどうでもいいかも。

鍛えられた体にほどよく筋肉もついていて……792年の積み重ね、さすがだな。

「仕方ないですね。」

私は深いため息をついた。

彼は私が徐々に心を許していくことに安心しつつも、どこか不安を抱えているようだった。

魔王とこんな風に気楽に過ごしていていいのだろうか――そう思うこともあったが、最近は一日一日が楽しく感じられた。

やはり……私は彼を好きになりつつあるのかもしれない。

そんな考えを抱いた瞬間、彼が不意に私を抱き寄せ、再び唇に触れるようなキスを落とした。

「これも退治の一環なんですか?」

そう問いかけると、一瞬言葉を失った彼は私を見つめたまま答えた。

「これはただ……俺がしたいから。」

[正義の神ヘトゥスが自らの口をふさぎます。]

最近になって、こんな可愛い仕草まで見せるようになった。

あの柔らかな眼差しも、ずいぶんと私に向けられてきた気がする。

苦笑いしながら、私は彼の横をすり抜けざまに言った。

「悪い癖をつけないでくださいね。」

「癖になるとしたら?」

背後から響いた声は、いつもの軽口とは違い真剣そのものだった。

「アリエル……私は……」

どうして魔王が、こんなに可愛らしい銀の子犬みたいになってしまったのか。

いや、それも私への関心が募ったからに違いない。

店の戸口を出ながら、私は彼に返事の代わりに呟くように言った。

「明日、会いましょう。」

その瞬間、彼はゆっくりと目を細めた。

二日に一度と言わず、毎日でも構わないのではないか。

ただし、いつか彼を試すために、少しじらしてみるつもりだ。

 

<外伝3 終>

 



 

 

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