継母だけど娘が可愛すぎる【１５７話】ネタバレ

先ほどのことで私の心の中には二つの感情が両立していた。

一つはレイブンが可哀想だという感情、そしてもう一つは彼を遠ざけたちという感情。

兄弟で仲良く過ごせたらという願いがある一方、セーブルとレイブンが離れてほしいという気持ちもあった。

あれほど不気味な目つきを持った人を近くに置いていてもいいのかと思ったが、彼が今まで見せてくれた好意のために判断するのが難しい。

セーブルは沈黙を守っている。

彼はしばらく言葉を整理して口を開いた。

「信頼できないからです」

「信頼ですか？」

セーブルは少し気まずい表情を浮かべたまま話し続ける。

「レイブン卿は私が即位して以来、一度も私の障害になったことがありません。子供を生んでブランシュの王位継承権を脅かしたこともありません」

「権力に欲がなさそうですよね」

それならば、なぜレイブンを遠ざけるのだろうか？

セーブルが私の頭の中でも読んだように口を開く。

「しかし彼は決して宮殿を去りません」

「え？」

「彼に与えられた領地と年金があるので、その地に行って過ごしても不便はないでしょう。むしろそっちの方が楽かもしれません。しかし、彼は依然としてここにいます。望むなら去っても構わないと言いましたが断られました」

それを聞いて、私は少し面食らった。

そうだね、何かおかしい。

さっきレイブンは宮殿に連れてこられたのは嬉しくないと言っていた。

それにもかかわらず、どうして彼は宮殿で過ごしているのだろう？

「特に怪しい気配を見せたことはないが、その事が気にかかっています。物証がないので一応注視している状況です」

聞いてみると私も何となく気まずくなった。

レイブンの言葉と言動が一致しないところがある。

宮殿が嫌いで、代替材として生きるのが嫌いで、セーブルが強引に捕まえているわけでもない。

私なら王宮を離れて暮らすだろう。

いったい彼は何を考えているのだろうか。

頭が複雑になっていると、セーブルが私を見つめているのが感じられた。

「ところでレイブン卿に関心が高いのですね。服に関してアドバイスもするなんて」

セーブルがそれとなく言い出した言葉に気がつく。

彼は何だか不満そうな表情だった。

「いいえ、違います！私も少し困っていたところでした。次からは、むやみにプレゼントを貰わないようにします」

「・・・」

「そして生地を見ていたら殿下の事が思い浮かびました！ついでに殿下の服を新しく作ろうと思っています」

私はセーブルの機嫌をとるために訳もなく服を言い訳にした。

新しい服という言葉にセイブリアンの目が大きくなる。

「私の服ですか？」

「はい。毎回同じ服を着ていたら飽きるんじゃないかと思って」

今日も彼は私が作ってあげたルダンコートを着ていた。

もっと早く作ってあげればよかったな。

遅ればせながら申し訳ない気持ちに。

「あなたが作ってくださるのなら、ありがたくいただきます」

幸いにもセーブルは私の提案がかなり気に入った様子だった。

先ほどの不穏な気配は消えている。

紳士服を作ることを考えると、私も気分がよくなった。

「いいですね。じゃあ、今回は殿下の好みで作ってみます。殿下はどんな色が好きですか？お好みの飾りや模様など教えていただければ、作りやすいと思いますので」

「色・・・、そうですね。特にそういう好みはなくて」

優柔不断なのは兄弟で本当に似ているのね。

セーブルはしばらく悩んだ後、じっと私の顔を見つめながら口を開いた。

「あなたは？」

「え？何がですか？」

「あなたはどんな色が好きなのか聞きたいのです」

え？私？

なんでそんな事が気になるのかな？

セーブルが手を組んでテーブルに乗せた後、言葉を続けた。

「あなたはその方面に詳しいので、似た色でも好き嫌いがあるでしょう。例えば・・・」

彼は私をじっと眺めている。

雲が立ち込めているせいか、彼の瞳は灰色を少し混ぜた青色を帯びていた。

「レイブンとセーブルの中では、どちらが好きなのですか？」

「・・・はい？」

今何かを聴き間違えたのかな？

レイブンとセイブリアンの中でどっちが好きかって？

急な直球に目が眩んだ。

いや、しっかりしろ！

セーブルは色を聞いているんだよ！

訳もなく勘違いしてはダメ！

「い、色ですよね？」

「ええ」

色のことを聞いていると私は自己暗示をかけたが、いざ私の頭に浮かぶのはレイブンとセーブルの顔だった。

神よ、なぜ私のこんな試練を与えるのでしょうか。

私はどうしても答えられなかった。

どちらかを選ぶことができないからではない。

色であれ人であれ、答えはセーブルだ。

しかし、セーブルが好きだと言うのは恥ずかしかった。

まるで神妙な愛の告白のように思えてしまって。

セーブルは厚かましい顔で私を見つめるだけだ。

彼が執拗に問い詰めてくる。

「それで、どっちが好きなのですか？」

「私は・・・、だから・・・」

この世界でも地球温暖化が進行中なのかな？

どうしてこんなに暑いんだろう？

いやいや、これは私の自意識過剰だ。

会話相手が目の前にいるから視線を感じるのは当然のことだった。

セーブルは何の意味もなく聞いたのに、自分一人で恥ずかしがるのはおかしいでしょう。

ううん、でも何て答えればいいの？

セーブルって答えればいいのかな？

でも、なんか恥ずかしいな。

だからといってレイブンが好きだと言うことはないし・・・！

「私は・・・」

ここはクールにセーブルが好きだといえばいいんだよ！

「私は黒より赤が好きです！」