こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
今回は338話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
338話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 2年後
「服はどうですか?ぴったり合っていますか?」
「いいですね。とてもよく合っていて快適です!」
小さな試着室から聞こえてきた声が静かに響いていた。
鏡の前に立っているのは、50歳くらいに見える女性だった。
彼女はスカートの丈が足首までのドレスを着ている。
装飾もまたシンプルだ。
装飾と言えば金属で作られたブローチだけで、そのブローチがアクセントになっていた。
「スレヴィエン風の衣装は最近人気ですよね。お気に召しましたか?」
「ええ、気に入りました。同じような服はたくさんあるけれど、この店の服を一度着ると他の服は着られなくなるわ。」
彼女の落ち着いた声を聞きながら、私はデザイン画を描き続ける。
鉛筆の先が四角く動きながら線を描いていった。
静かに響く声に重なるように、主人の声が聞こえた。
「全てうちのデザイナーのおかげです。リリー、ちょっとこちらに来てくれますか?」
私は鉛筆を置いて席から立ち上がり、客の近くへと歩み寄った。
鏡の中に映る自分の姿をちらりと確認する。
黒髪に黒目、すらりとした体型の彼女が私に満面の笑みを向けた。
「リリー、この服も本当に気に入ったわ。」
「よかったです。どこか不便なところはありませんか?」
「完璧よ。動きやすいし、すごく快適。」
彼女の顔に満足感が溢れているのを見て、私も自然と微笑んだ。
客は主人に視線を戻して、冗談交じりに言った。
「リリーに給料をもっとあげてあげてよ。リリーがいなかったらお店は成り立たないわ。」
「もちろんです。もうすぐリリーがここで働き始めて2年になるので、給料を大幅に上げるつもりです。」
2年。もう2年目になるのか。
褒められた時の嬉しい気持ちはあっという間に消えていき、この場所で過ごした日々がパノラマのように頭の中を駆け巡った。
2年前のあの日。
ギデオンの執念に追われ、私はレイヴンを後にして、何も考えられないまま逃げ出した。
そして、この村にたどり着いた。そうして2年。
私はアビゲイルの姿を見つけることもできず、宮殿に戻ることも叶わなかった。
初めからこの場所で暮らすつもりはなかった。
ここに着いた時、私はすぐに宮殿へ戻ろうと決めていた。
宮殿から遠く離れた場所ではなかったが、持っているお金もない。
ただ、着ていたシュミーズが高級品だったことが幸運だった。
そのシュミーズを売って、粗末な服を買い、残りのお金で馬車に乗って宮殿へ向かった。
ただ一心に家族に会いたいという気持ちだけだった。
帰る勇気を振り絞ったものの、結局会うことはできなかった。
宮殿の前を守っている門番に出会ったとき、彼は私の話を聞いて鼻で笑った。
「お前が王妃だって?俺はお前みたいな顔の王妃なんて知らないぞ。」
門番は私のことを認識しなかった。
それもそのはず、私の見た目はすっかり変わり果てており、着ている服も農夫の妻のようにみすぼらしかった。
それでも諦めるわけにはいかなかった。
私は王妃しか知らない情報を語りながら、たった一度だけセーブルに会わせてほしいと懇願した。
しかし門番は私を狂人扱いし、追い返してしまった。
私の手元に残されたのはわずかなお金だけ。
仕事を探しているとき、運よく服飾店の主人に出会い、職を得ることができた。
主人は親切な人だった。
身元も明かさない私に良い住まいと働き場所を与えてくれ、私の実力を認めてくれた。
優れたデザイナーとして認められるまでに、それほど長い時間はかからなかったのは幸運だった。
ただし、「アビゲイル」という名前を使うことはできなかった。
リリー(Lily、白百合)という本名を使うことに。
生きるために必死に働き、いつの間にか2年が過ぎていた。
「もうすぐ建国記念日ですね? 今年は国王陛下が街で行進をされるとか。」
「何年も王座にお姿を見せていませんよね。どこもご病気でなければいいのですが。」
その言葉を聞いた瞬間、私の心は崩れるような音を立てて砕け散る気がした。
セーブルはもう廃位されたと思っていたが、彼の話を聞くたびに私は崩れてしまっていた。
正確な情報を聞くことはできなくても、セーブルの話はいつも風に乗って伝わってきた。
私が姿を消したことで、セーブルは全国に布告を出し、兵士たちを派遣した。
私のいるこの村にも兵士たちが訪れていた。
嬉しかった。
感謝の気持ちでいっぱいだった。
セーブルが私を探してくれていることに。
「もしかすると、戻ることができるかもしれない」という希望が胸に芽生えた。
兵士たちの元に向かい、自分がアビゲイルだと伝えようとした。
しかし、アビゲイルの肖像画が飾られているのを見た瞬間___。
あの美しい女性が自分だとは到底名乗れなかった。
今の自分はあまりにもみすぼらしく、肖像画の彼女とはまるで別人だったから。
結局、私は宮殿に戻ることができなかった。
兵士たちに自分がアビゲイルだと告げたとしても、何も変わらなかっただろう。
「リリー、もう一着お願いしてもいいかしら?」
お客様の声にハッとして我に返る。
私は慌てて微笑みながら、服の裾を整え始めた。
「はい。どのような服をお望みですか?」
「パンツスーツを試してみたいのだけれど、どうかしら?最近若い人たちがよく着ているらしいけど、少し冒険してみたい気分なの。」
「素敵ですね。村のご婦人方もみんな羨むと思いますよ。お客様にふさわしいものを作ります。」
私の控えめな称賛の言葉にお客様は豪快に笑った。
彼女は笑いの途中でため息をつくようにして言った。
「はあ、リリーって本当に性格も良くて実力もあるのに・・・外見がちょっと残念ね。」
私は返答の代わりに小さな微笑みを浮かべただけだった。
この外見はアビゲイルと比較するまでもない。
もし美しい外見をしていたら、セーブルに会いに行けたのだろうか?
私が何も答えないと、お客様は肩をすくめて小銭をテーブルに置き、気取った足取りで店を後にした。
その後、彼女と入れ替わるように雑貨商人が入ってきた。
がっしりとした体格の男性だった。
彼は低く響く声で言った。
「リリー!頼んでいた生地が届いたよ。海を越えて手に入れたんだ。」
「まあ、本当ですか?」
「そうだ。今回はアトランシアとの取引で手に入れたんだ。」
私は彼が持ってきた海を越えた布をそっと触れてみた。
温かく柔らかな感触で、まるで海の色を思わせる布だった。
以前ナディアが送ってくれたものと変わらない品質だという確信が持てる。
2年という歳月は長い時間で、その間に多くの変化が起こった。
中でも最大の変化は統一だった。
戦争は条約によって終結し、クロネンバーグ、モロカ、レタは公国として統一され、ネレゲンは王国ではなく帝国となった。
また、妖精や異種族との交流も始まった。
正確にどのような形で進展するのかは分からないが、少なくとも衣装文化には影響を与え始めていた。
教会界では異種族の衣装が広まり、その後に貴族や庶民がその流行を追い始めた。
それでも、海を越えた布を手に入れるのは難しいと聞いていた。
この布で何を作るべきだろう?
服のデザインを考えて微笑んでいると、商人が私をじっと見ているのに気づいた。
「リリー、それほど嬉しいのかい?」
「はい。とても嬉しいです。」
「でも、一生懸命働いてお金を貯めなきゃな。お金目当てにやってくる男が現れるかもしれないからさ。」
彼の言葉に、私は思わず苦笑した。
彼はいつも軽い冗談を飛ばしてくる人物で、私の顔を見ながらそんなことを言う人だった。
服飾店の主人が彼の横腹を軽くつついた。
「そんなことを言わないで!うちのリリーがどうだって?」
「いや、正直に言っただけだろう。」
「そんな調子で冗談を言い続けるなら、取引をやめさせるわよ。さあ、作業に戻りなさい、作業を。」
主人の厳しい声に、商人もさすがにおとなしくなった。
主人は商人をほとんど追い出すように見送った後、少し心配そうな目で私を見つめた。
私はただ笑った。
「そんなこと気にしないで、リリー。見た目が全てじゃないんだから。」
「はい、気にしてません。」
「それならよかった。では、ちょっと約束があって出かけてくるわ。」
「いってらっしゃい。」
彼女は何度か私の表情を気にするように見た後、部屋を出て行った。