こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

369話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 龍との交渉
理由はわからないが、それは希望の兆しだった。
ナディアもまた興味を引かれたようだが、使者の表情は硬いままだった。
「ただし、条件があるそうです。」
「条件とは?」
「交渉人を指定してきました。」
ナディアは話を続けるよう促すような視線を向けた。
使者は少し間を置いてから口を開いた。
「……リリーという名前の女性でないと応じない、と。」
リリー?
思いもよらない名前に驚かされたナディア。
彼は私を見つめた後、セイブルに視線を移し、セイブルが口を開いた。
「王妃の正式な名前はアビゲイルです。リリーは愛称に過ぎませんので該当しないはずです。まさかアビゲイルを送るつもりではないでしょう?」
まるで私が交渉人に指定されることを懸念しているかのような口調だ。
ナディアは微かに微笑を浮かべた。
「そうだろうね。リリーという名前だけでは駄目なのか?」
「名前以外の外見的特徴も指定されてきました。」
使者はそう言いながら家族宛ての手紙を渡した。
ナディアが手紙を読み進めるにつれ、その表情は険しくなった。
「黒い髪、短髪、紫の瞳、東方の外見……」
一つ一つの特徴を読むたびに壁に追い詰められるような感覚だった。
ナディアの視線が震えるように落ち込み、彼女は弱々しく固まった。
「……そして黒い魔力を所持している。」
黒い魔力。
龍は明確に私を指名していた。
使者は何も言えず、口をつぐんだ。
「さらに今日を過ぎると交渉には応じないと言っています。したがって、もし交渉に応じるのであれば、すぐに出発しなければなりません。」
・
・
・
月明かりが夜の海に照らされていた。
その光はまるで、海の上に延びた道のように見えた。
竜の住処は、海底に近い洞窟。
満月の夜で比較的明るいにもかかわらず、洞窟の入口は薄暗く、内部が容易に見えなかった。
そして、その洞窟の入口にはリリーが立っていた。
彼女はどこか戸惑いがちだった。
着替えもまともにできず、食事の準備すら終わらせる間もなくここに来た彼女は、まだ完全に状況を把握している様子ではなかった。
その時、不意に声が聞こえた。
「お母様、大丈夫ですか?」
リリーは驚いて視線を向け、手にしていた籠をぎゅっと握りしめた。
娘が彼女の手を握っていることに今さら気づいたのだ。
彼女は安心したように微笑みを浮かべた。
「ええ、大丈夫よ。」
彼女は曖昧に笑ったが、その笑みはどこか影を帯びていた。
彼らは困惑した様子でうつむいていた。
その感情は全員が共有しているようだった。
「いよいよ交渉するというのに、私たちは何の準備もできていないとはどういうことなのか?」
ナディアが険しい口調で話した。
彼女の言葉通り、時間的猶予が全くなく、どうすればいいのかわからなかった。
「なぜアビゲイルを指名する必要があるの?理解できない。」
リリーもまた、その指名に対して最も疑問を感じていた。
どうして竜が自分を選んだのか?
しかしリリーはナディアをなだめるように、穏やかな声で言葉を紡いだ。
「それでも、これまで交渉に応じなかったことを思えば、むしろ好機と言えるでしょう。」
「うん……でも……。」
ナディアはか細い声で答えながら、セイブルの方をちらりと見た。
彼女の顔には、まるで罪悪感に押しつぶされそうな表情が浮かんでいた。
この場で一番冷静さを保っているように見えたのは、ただ一人である。
セイブリアンだ。
彼もまた正式な場ではないため、日中に購入した服を着ていた。
その姿はまるで東方の護衛武士のようだった。
彼は微かに眉をひそめながらリリーの前に立ちはだかった。
「リリー、無理をする必要はありません。あなたをこんな危険な場所に一人で行かせるなんて……。代わりに私が行きます。」
リリーが交渉に応じると答えたとき、セイブリアンは誰よりも強く反対した。
ほかでもない、竜の住処だ。
そんな場所に妻を行かせるなんて、到底容認できるはずがなかった。
「私がリリーに化けて行きます。そのようにさせてください、リリー。」
「さっきも言いましたが、そのような策略が通じるとは思いません。そして……。」
リリーは落ち着いた、しっかりとした口調で答えた。
苛立つセイブリアンとは対照的に、彼女は穏やかな態度を保っていた。
「それほど危険ではないと思います。それに……この機会を逃したら、中立地帯で大きな問題が生じてしまいますよ。一人で入るわけでもないんですし。」
竜は護衛兵を連れて行くことを許可してくれた。
しかし、それでもセイブリアンの心は容易に晴れることはなかった。
「お母様、大丈夫ですか?ベリテと一緒に行く方がいい気がするんですけど……。」
「そうね。護衛兵よりも私の方がマシだ。」
ブランシュとベリテもまた、心配でいっぱいの表情を浮かべていた。
その顔を見ると、リリーは逆に落ち着きを取り戻した。
「二人ともありがとう。でも、竜は魔力を持つ者を護衛として連れて行くことは許していないのです。」
グンヒルドがその知らせにどれほど腹を立てただろうか。
おそらく、そういった事態を予測して設定された条件だったのだろう。
やむなく洞窟の中に入ろうと試みたものの、魔力に反応する結界が設けられているようで、グンヒルドはすぐに跳ね返されてしまった。
「交渉がうまくいけば、人間にも、人魚にも、妖精にも良いことですよ!」
「リリー、それでも私はあなたが心配です。」
彼の声は震えていた。
視線とともに彼はリリーの髪を撫でながら話した。
「人間も、人魚も、妖精も考えないでください。何よりもあなたが大切です。」
「人間のために、人魚のために、妖精のために」と彼が続けた。
だが、リリーと比べればすべての大義名分など薄い紙のように思えた。
リリーは彼の青い瞳に吸い込まれるような気がした。
その色は悲しみを纏いながらも、美しい輝きを放っていた。
リリーは彼を抱きしめたい衝動を堪える。
代わりに短くキスをしてから、後ろに下がった。
「私は皇帝の母であり、帝国の王妃です。恐れて逃げることなどできません。」
彼女は毅然とした声で、自身がセイブリアンであり、ブランシュやベリテの名を持つ者であると宣言した。
「イベルが住むこの世界を守るために。」
それゆえ、この交渉を諦めることはできなかった。
セイブリアンは、彼女に敵わないことを自覚していた。
そのため、より苛立ちを抑えられず、不安を完全には払拭できなかったが、リリーは微笑みを浮かべた。
「そして、私は二つの魔力を持つ魔法使いです。だからそんなに心配しないでください、セイブル。」
彼女は素早く護衛兵たちを後退させた。
セイブリアンが彼女を引き止める前に。
「さあ、行きましょう。」







