こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

232話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 共同作業④
一方、クローアン王国でも和睦の機運が高まっていた。
本来、クローアン王国は自身を脅かしてきた帝国を警戒していた。
しかし今回の救助事件で協力したことが、和解ムードを後押ししている。
また、ラエルは今回の事件を契機として、最大限の和平ムードを形成するために動いていた。
「その行列は何ですか?」
「それ?帝国軍の行列みたいだね。」
城壁で警備をしていた王国軍は、混乱することなく近づいてくる大規模な行列を見て、疑問の表情を浮かべた。
それが確かに帝国軍の行列であることは明白だったが、戦闘員はおらず、行列には物資だけがあった。
その詳細が間もなく明らかになった。
「陛下からですか?」
「はい、殿下。皇帝陛下が今回の雪崩災害での王国の協力に感謝し、贈り物として送られたものです。」
行列を率いてきた騎士が簡潔に説明した。
マリは驚いた目でその行列を見つめた。
中には肉や酒、寒さを凌ぐための暖かい衣服がびっしりと詰まっていた。
「感謝をお伝えください。」
マリはラエルの意図を察し、丁寧に頭を下げた。
この贈り物を通じて、両国間の緊張を和らげたいという思いが込められていた。
しかし、行列を率いてきた騎士は戻る前にマリに丁寧な挨拶をし、思わぬ温かい言葉を残していった。
「殿下、個人的に感謝の意を申し上げます。」
「何ですか?」
「私はアルピエン山出身です。殿下のおかげで、私の家族は全員助かることができました。このような言葉でこの大きな恩恵に報いることはできませんが、心から……感謝いたします。」
彼の真心が込められた言葉に、マリの胸は温かくなり、微笑みを浮かべた。
厳しい寒さが漂う日ではあったが、その場には優しい暖かさが流れた。
ラエルはこの機会を逃さず行動に移した。
正式に両国の和親を議題にしたのだ。
しかし、帝国の首脳陣の中では反対意見の方が多かった。
「殿下、それはできません。クローアン王国を懐柔することは、帝国の安寧のために非常に重要なことです。」
「その通りです。伝染病の事件や雪崩災害の際に助けていただいたことは大変感謝しておりますが、それと戦争は別の問題です。」
和親に反対する大臣たちは声を上げた。
ラエルは静かに彼らの話を聞いていた。
「本当にクローアン王国を占領することが帝国にとって有益なことなのか?確かに、将来的に西方帝国との争いを考慮すれば、クローアン地方を我々の領土にするのは望ましい。しかし、その過程で発生する我々帝国の被害はどうするのか?」
「現在のクロ0アン王国軍は混乱状態に近い雑兵集団です。我々帝国軍であれば、大きな被害を出さずに占領することが可能です。」
「本当にそうなのか?」
大臣たちはその言葉に疑念を抱く表情を見せた。
「情報によれば、伝染病と暴雪で軍隊が遅れている間に、モリナ女王は大規模に弓兵を養成しているそうだ。」
その発言に、大臣たちは驚いた表情を浮かべた。
「弓兵のことを言っているのですか?」
「もちろん、まだ熟練度は十分ではないだろう。それでも、何の被害もなく勝利できると断言することはできない。」
皇帝の言葉に、大臣たちは思案に沈んだ。
短期間で弓兵を養成することが可能な軍事力を疑問視し始めた。
しかし、モリナ女王が育成している弓兵たちは、まだ熟練度が十分でないようだ。
『だが、大量の弓兵を相手にすると被害を免れることは難しいだろう。』
弓は、騎士たちの鎧さえも無力化する破壊力を持つ武器であり、威力さえ伴えば石壁さえ突破できる可能性がある。
どれほど未熟であっても、その脅威を無視することはできない。
「もし戦闘が思うように進まなければ、我々は大きな損害を被るリスクを回避できない。西方諸国はもちろん、東方の交易国にも牽制されなければならない我々の軍の立場として、そのような被害は到底許容できないものだ。」
会議に参加していた大臣や将軍たちはお互いの顔を見合わせた。
容易に決断を下すことができない複雑な問題だった。
「陛下のおっしゃる通り、大きな損害を被るような事態になれば、それは非常に厄介な問題です。」
「しかし、まだ十分な訓練を受けていない未熟な弓兵たちであれば、大きな脅威にはならない可能性の方が高いです。このままクローアン地方で足踏みしているだけでは、あまりにも惜しいです。」
「その通りです。時間が経てば、クローアン王国が往年の勢いを取り戻し、ますます占領が困難になるでしょう。」
推進派の者たちは声を上げて戦争を主張した。
「クローアンがいつか西帝国と手を組むようなことになれば、それこそ大問題です。無理にでも今占領しなければなりません。」
その時、討議の内容を聞いていたラエルが口を開いた。
「クローアン王国が西帝国と手を組むようなことは起こらないだろう。」
ラエルは一瞬大臣たちを静かに見回した後に言った。
「私とモリナ女王が国婚を結ぶ予定だからだ。クローアン王国と我が東帝国は血で結ばれる真の同盟国となるだろう。」
「……!」
ラエルの口から国婚の話が出ると、大臣たちは言葉を失った。
その時、きっぱりとした声が響いた。
「陛下、ひとつだけ申し上げてもよろしいでしょうか?」
「どうかな?」
ラエルはその人影を見つめた。
その人物は厳しい顔つきの中年男性で、彼をじっと見ていた。
代表的な推進派の一人である第1軍団長、メイル侯爵だった。
「言ってみるがいい、侯爵。」
「国婚がクローアン王国を征服するよりも帝国に利益をもたらす点があるのでしょうか?」
「……!」
大胆かつ挑戦的なその発言に、室内の空気は緊張感を帯びた。
大臣たちは息をのむようにしてメイル侯爵を見つめた。
「もちろん、陛下がモリナ女王を寵愛し、ご心配なさるお気持ちは理解しています。しかし、帝国としては、征服に比べ国婚で得られる利益はあまりにも少ないように思えます。」
侯爵の発言には一理あった。
だが、ラエルは静かに頷きつつも毅然と彼に応じた。
「侯爵、その意見は一理ある。確実な同盟を築くよりも帝国に服従させる方が良いという考えも理解できる。しかし、私は同盟を結ぶことで、帝国が一つ大きな利益を得られると考えている。」
「それは何でしょうか?」
「モリナ女王だ。」
理解しがたい表情を浮かべる人々に向け、ラエルは静かに口を開いた。
「聖杯盗難事件。」
「……?」
「東方教国との外交紛争、砂糖収支の再配分、違法薬物の根絶、偽造紙幣の摘発……」
ラエルの声が続くにつれて、人々の表情は次第に柔らかく変わっていった。
その数々の業績は、すべてマリナが帝国で成し遂げた功績である。
「話が多すぎてすべてを説明するのも難しい。だが、わずか1年という短い時間の中で、彼女が帝国のためにこれだけのことを成し遂げた。その彼女が、もし帝国の皇后となったらどうなると思う?」
「……」
大臣たちは言葉を失った。
戦争に関する意見は異なっていたが、すべての意見が共通して認めていたのは、彼女の善良な心と誰も真似できない優れた能力だった。
「もしモリナ女王が帝国の皇后となれば、クローアン王国と帝国は互いに協力し、公正な発展を成し遂げることができるのは明らかだ。」
ラエルは全員を見渡し、力強い声で語った。
「そしてその利益は、王国を占領することに比べて決して劣るものではないはずだ。君たちもそう思わないか?」







