こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

373話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 龍との交渉⑤
『逆鱗の場所を知っている。しかし、それをどう使うべきか……。』
逆鱗は龍の胸の中心にあり、人間の力では到達できない場所に位置していた。
そのため、ユンは自分の視線が胸部を向いていることを理解していたが、それを警戒している様子は見られなかった。
しかし、彼には一つ、気にかけているものがあった。
リリーがそこにいた。
紫色の魔力が瞬時に周囲を包み込み始めた。
直前に崩れた岩の破片が甲高い音を立てながら形を変え、ユンに向かってまるで階段のように向かってきた。
セイブリアンは即座にその動きに反応したが、ユンはその動きに当惑していた。
『二人は何も話し合っていないはずなのに?』
二人は何の合図も出していなかった。
この状況が偶然によるものだとは思えず、事前に何らかの計画を立てていたわけでもなさそうだった。
それでも、まるで一つの魂が二つの体に宿っているように、彼らは連動して動いていた。
何も言わずともお互いを理解し合っているようだった。
リリーが作った階段をセイブリアンが軽やかに駆け上がり、頂上の衣のようなものがはためいた。
ユンは避ける間もなく剣が逆鱗に突き刺さった。
ガキン、と音を立てて逆鱗が砕け散る感覚が手先に伝わり、ユンの悲鳴が洞窟中にこだました。
そして龍は消えた。
洞窟を埋め尽くしていたその巨体がどこへ行ったのか気になり、リリーが周囲を見渡していると、視線が床に落ちた。
そこには人間の姿へと変わったユンが倒れていた。
まだ死んではいないようだ。
しかし、それがすべてだった。
逃げる力もなく、魔力も完全に失われていた。
彼は生まれたばかりの吸血鬼よりも弱い存在だった。
ユンは震えながらセイブリアンを見上げていたが、セイブリアンは無表情で彼を見下ろしていた。
「リリー、どうする?」
もし殺すなら今が絶好の機会だ。
龍を殺す機会がまた訪れるとは限らなかった。
しかし、リリーは迷っていた。
本当に殺す以外に方法はないのか?
「本当に、この魔力のない者があなたを守れると信じているのですか?」
その時、ユンが力を振り絞り叫んだ。
疲れ切った様子にもかかわらず、その瞳には切実な想いが宿っていた。
「見た目は違えど、この人間とあなたは別の種族だ。他の種族と共に生きられると信じているのか?」
ユンのその切迫した視線に込められた感情を、リリーは読み取ることができた。
彼女は目をそらさずに口を開いた。
「信じます。」
それは揺るぎない声。
リリーはセイブリアンの手をしっかりと握った。
「世界が私を裏切っても、私はこの人を信じます。」
互いに異なる部分があったとしても、それが別れの理由になるはずはなかった。
セイブリアンも彼女の手をしっかりと握り返した。
「そして、世界は変わりつつあります。もはや黒い魔力を持っていても迫害されることはありません。」
「笑わせる。そんなことがどれだけ続くと思う?あなたのような反逆者と同じような人間が、他にもいると思うか?」
「ここにいる。」
いつの間にか、洞窟の中に数人の人々が入ってきていた。
突然の訪問者だった。
ユンは目を見開き、驚愕していた。
「……人魚の王か。」
ナディア、カリン、そしてグンヒルドも一緒にいた。
人魚の王は鋭い視線でユンを見下ろした。
「君はさっき、異なる種族が一緒に暮らすことは不可能だと言ったな。」
ユンは沈黙で同意した。
ナディアは彼の手を自分の方に引き寄せながら言葉を続けた。
「こちらはカリン・ストーク。人間で、私の伴侶だ。」
その言葉にユンの目には驚きが浮かんだ。
カリンもまた驚いたように顔が赤くなったが、何も言わなかった。
「そして、娘も生まれた。人間の皇帝はこの事実を受け入れた。」
ユンは静かに話を聞いていた。
時間が経つにつれ、驚きは消え、疑いの表情が浮かんだ。
「それはすべて一時的なことだ。結局、また状況が乱れ、戦争が起きて破壊されるだろう。私は数百年それを見てきた。君たちがどんなに努力しても、何も変わらない。」
「何の意味もないと言うのですか?」
その言葉にカリンが勢いよく前に出た。
彼女はゆっくりとユンの前まで歩み寄った。
「まるで私の父みたいなことを言っていますね。できないとか、変わらないとか、何も変わるわけがないとか。まあ、私も人魚と結婚するなんて思ってもみませんでしたけど。」
そして、その「父」は今、牢獄のように押し黙っていた。
カリンは腕を組み、ユンをじっと見据えた。
「では、見届けてください。」
「……どういう意味だ?」
「あなたは長く生きているんでしょう?では、見届けてくださいよ。どちらが正しいかを。」
その言葉にユンは薄く笑う。
まるで興味深い提案だというように。
「百年を生きる種族の主張を聞くことになるとは……。」
「百年で足りなければ二百年、それでも足りなければ三百年見届けてください!私が死んだら、私の子供が、そしてその次の世代が証明してみせるわ。」
その鋭い声にユンは困惑した表情を浮かべた。
ナディアもまた、「私の妻だ」と言わんばかりの顔つきでユンを鋭く見つめていた。
「私は私が正しいと思うわ。賭けてみる? 私が正しいのか、あなたが正しいのか。」
カリンの挑発に、ユンはゆっくりと体を起こし、静かに笑い始めた。
その笑い声は次第に低く響き、洞窟内に不気味に広がっていった。
「この時代の人間たちは、実に図太いな。」
彼はカリンを見つめ直した後、リリーに視線を向け、まるで風のような微笑みを浮かべて言った。
「いいだろう。見届けてやるさ。私の寿命が尽きるその時まで。」
・
・
・
遠くにある小さな島で、数人の作業員が集まっている様子が見えた。
忙しそうに石材を運び、壇の土台になる部分を積み上げていた。
天気は穏やかで澄んでいた。
ふぅ。風景があまりにも美しく、離れるのが惜しい景色だ。
私はナディアに目を向けた。
「次回もまた来たいです。そのときは壇が完成しているでしょうか?」
「もちろんさ。」
その微笑みを見て、次回の訪問が待ち遠しくなる。
この別れの寂しさを紛らわせるには十分だった。
ほかの人々もまた、別れの準備をしながらどこか感傷的な雰囲気を漂わせていた。
カリンが少し控えめな表情で近づいてきた。
「王妃様。今回お帰りになったら、またいつ会えるのでしょうか……。」
「カリン、大丈夫ですよ。冬もありますし、何かあればまた来ますから。」
私はカリンを軽く抱きしめた後、背中を軽くたたいてあげた。
その光景を見ていたナディアが、少しおどけた口調で言った。
「もしかして、すぐにまた会えるんじゃない?」
「え?何かあるの?」
「私とカリンの結婚式のときにね。」
「結婚ですって?ついにカリンが承諾したの!?」
しかし、結婚相手であるカリン自身は、まったく納得していない様子だった。
彼女は困惑した顔で言った。
「結婚って、何ですか?私はそんなの承諾した覚えはありません。」
「この前、ユンの前で言ったじゃない!私も人魚と結婚するなんて思ってもみなかったって。」
ああ、確かに。カリンがそんなことを言っていたのを思い出した。
カリンも遅れてその発言を思い出したのか、慌てて体を反転させた。
「そ、それはただの冗談ですよ!とにかく私は結婚なんてしませんから!」
「カリン、ひどい!」
「やるべきことがあるので、これで失礼します!」
カリンはそそくさとその場を後にした。
私は苦笑いしながらその様子を見送った。
私だけでなく、他の人たちもそれぞれ別れの挨拶を交わすのに忙しそうだった。







