こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は145話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
特技が一つもない冴えない侍女マリ。
いつもいじめられるばかりだった彼女に、ある日信じられないことが起きた。
「君のために最後にお祈りをしてあげよう、君の願いは何だい?」
死んでいった囚人を看病していたマリに訪れた奇跡。
「万能な人になりたいです」
その日からとても神秘的な夢を見始めることに。
完璧な侍女!最高の彫刻家!天才音楽家!
夢を通して夢の中の人物の能力を得て、何でも完璧な侍女マリの物語がいま始まる!
マリ:本作の主人公。クローヤン王国の元王女。身分を隠して侍女として働いている。本名は、モリナ・ド・ブランデン・ラ・クローヤン。
ラエル:皇太子。血の皇太子と呼ばれ恐れられている。
キエル:皇室親衛隊団長。キエルハーン・ド・セイトン。
オルン:公爵で宰相。ラエルとは昔からの親友。
ヨハネフ三世:西帝国の皇帝。
オスカー:第十皇子殿下。
アリエル:皇太子妃候補。シュレーアン家。
レイチェル:皇太子妃候補。イーストバーン家。
145話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 疫病⑦
「そんな・・・! 」
その瞬間だった!
突然、水差しが割れる音が間こえてきて、彼らは会話をしている途中、ぎょっと首をかしげる。
そこにはまるで死体のように顔色が悪くなったマリがぼんやりと立っていた。
彼女は自分が水差しを落としたことさえ気づいていない。
「すみません」
「ヒルデルン卿?」
「いいえ、殿下がそうなるはずがありません」
彼女は揺れる瞳で話した。
「すぐに起きると思います。あの、お伝えしますから」
いつも落ち着いていた彼女がこんなに動揺する姿を初めて見たオルンは口をつぐんだ。
ゴードン男爵はうなずいた。
「子爵様のおっしゃる通りです。この年寄りも、殿下がすぐに病気を払いのけると信じています」
しかし、彼らの望みとは違って、皇太子の状態は日に日に悪化する。
熱は下がる気配がなく、今は起きている時間より意識を失っている時間がはるかに長かった。
「そんな、殿下・・・」
オルンは横になっている皇太子を見て呆然とした顔をする。
まさかこんなことが起こるとは想像もできなかった。
他の誰でもない皇太子が伝染病のために生死の境をさまようとは。
「もうすぐトルン2世陛下も崩御するはずだが、これをどうするというのか?」
オルンは皇太子の個人的な親友の立場だけで•なく、帝国の経営を担う宰相としても心配した。
極秘ではあったが、現在、体調が悪いのは皇太子だけではない。
現皇帝のトルン2世の状態も極めて良くなかった。
「トルン2世の死は、とっくに待っていたことだが。皇太子殿下まで一度に生死の境をさまようとは。どうすればいいんだ?」
現在の帝国は皇太子のみ統治下に統合されている。
皇太子のいない帝国は想像もできなかった。
彼が死んだ瞬間、帝国は大きな混乱に陥るだろう。
一方、マリはオルンと違って政治的な問題は考えられなかった。
ただ、青ざめた顔色をして横になっている彼の姿が目に入るだけで、何も考えられなかった。
「殿下」
先日、疫学者としての能力を得たため、今の皇太子がとんな状態なのか知ることができた。
(これは敗血症だよ)
敗血症。
菌が全身をさまよいながら体を害する状態で、死亡率が50%を超える危険な状況だ。
(彼が死ぬかもしれない?)
マリはぼんやりと考えた。
以前は彼を恐れて逃げる時はそんな想像をしたことがあった。
不慮のことで皇太子に問題が生じたりすると自分は自由になるのではないか。
しかし、いざそのようなことが起こると、目の前が真っ暗になる。
他の考えは何も浮かはず、ただ胸が痛くて頭がぼうっとした。
その時、沈重な表情をしていたゴードン男爵が口を開いた。
「このままではいけません。あれを使いましょう」
「何かいい方法があるのか?」
「ヒ素を使わなければなりません」
「・・・!」
その話にオルンとマリの顔がこわばった。
ヒ素がどんな薬品なのか知っているためだ。
「ヒ素・・・、薬というより、毒に近い薬品ではないか?」
「そうですね。実際に毒でも使いますよ」
「そんな毒を殿下に投薬すると?」
ゴードンは限りなく重い顔でうなずいた。
「今のところ、ヒ素以外に他の方法はありません。ヒ素の毒性を殿下が勝ち抜くことを祈るしかありません」
ヒ素。
全身を壊す化学物質で、主に毒として多く使用する。
しかし、同時に体内の有害な細菌などを一緒に殺すのに、この時代の唯一の抗生物質だった。
したがって、このように感染症が最悪に悪化した場合、窮余の策としてヒ素を使用したりもした。
しかし、問題は浸透した細菌だけでなく、体にも致命的な損傷を与えるという点だ。
(ダ、ダメ。ただでさえ体が弱くなった状態なのに耐えられないだろう)
マリの顔が真っ青になった。
そしてその考えは、オルンも同じ。
彼は首を横に振った。
「私は同意できない。ヒ素なんて、危険すぎる」
「しかし、現在、ヒ素以外の方法は・・・」
ついに、オルンが我慢できずにかっと声を上げる。
「方法を見つけ出せ!それが医者の君の役目ではないか!ヒ素だなんて!馬鹿なことを言うな!」
「・・・」
オルンが声を荒げると、その場のみんなが驚く。
プライベートでは陽気で、公的な仕事では落ち着いた彼が声を上げるのは初めてだった。
オルンは、残酷に歪んだ顔を手のひらで包んだ。
「怒ってすまないね。とにかく殿下にヒ素はだめだ。他の方法を見つけ出そう」
「・・・はい。分かりました、閣下」
間もなく夜が更けた。
医者に怒ったオルンは、皇太子が横になっている寝室のすぐ隣の執務室で苦しい顔をしていた。
しかし、みんな知っている。
時間を引き伸ばしにしたからといって、ない方法が生まれないということを。
マリは皇太子の部屋で彼を看病しながら考えた。
(手遅れになる前にヒ素を使わなければならないかもしれない)
彼女は心の中で呟く。
(もっと状態が悪化すれば、最初からヒ素を使ってみる機会もなくなるかも知れないから)
彼女は揺れる瞳で皇太子を見つめた。
ヒ素の話まで聞くと、彼の状態が危篤だということが実感される。
良くなると一生懸命信じていたが、そうではなかった。
このままでは皇太子は本当に死ぬかもしれない。
「彼が・・・、死ぬ・」
マリはぼんやりと呟いた。
到底想像がつかない。
いや、彼が死ぬ状況を思い出した瞬間、胸が裂けるように痛くなってきて、考えを続けることができなかった。
「あ・・・」
一瞬、彼と過ごした時間が思い出される。
正直、切ない時間はあまり長くなかった。
最初は彼を恐れて逃げただけで、獅子宮に来た時も彼を避けただけだから。
しかし、彼の真の本音に向き合った瞬間から、多くのことが変わった。
『ありがとう、こうやって生まれてくれて。私と会ってくれて』
自分の誕生日に彼が言ってくれた言葉。
『もし何か悪いことでもしたらとうするつもりだ!』
『私はあなたを大事にしているので、もしあなたに困った事情があったら、他の人ではなく私に話してほしい』
『マリー、あなたは他の誰でもない私のものだ』
その他に彼が自分に言った言葉が思い浮かんだ。
彼女は彼についてあまりにも多くのことを思い出し、何も考えられなかった。
そしてその時、マリの目から涙が流れる。
「・・・っ」
急いで涙を拭いたが、涙は止まらなかった。
果てしなく流れ落ちる。
胸が崩れ落ちるようだった。
その瞬間、マリは気づく、皇太子への自分の気持ちを。
「私はバカだよ、本当に」
ただ揺れているだけだと思っていたが、そうではなかった。
自分はもう彼なしでは生きていけなくなった。
彼のいない世界は想像すらできなかった。
あまりにも遅い悟り。
「お願い、お願い、起きてください。お願い・・・」
マリはやっと心に気づいた自分を恨んで彼を抱きしめた。
このまま彼を見送るわけにはいかない。
マリは窓越しに見える大聖堂を眺めながら祈った。
「お願い・・・、お願いします。どうか彼を助けてください。いっそ代わりに私の命を持って行ってください。」
マリは彼の胸に涙を流しながら後悔する。
なぜ今になって心を悟ったのだろうか?
とっくに気付いていたらこんなに逃げるばかりではなかったはずなのに。
どうにかして彼と一緒にしようともっと努力したのに。
あまりにも後悔した。
ラエルの胸に抱かれて涙を流していたマリはうっかり眠っていたが、夢を見た。
まさに彼女に能力を与える夢を。
ついにマリが夢を!
皇太子を救う能力を得ることはできるのでしょうか?