こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は163話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
163話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 生と死が交差する戦争
負傷者が集まった医院は完全に修羅場だった。
「ああっ!」
「私の足!私の足が!」
「しっかりしろ!目を開けろ!」
負傷者たちが悲鳴を上げ、医師たちはあえぎながら治療をしていたが、力不足だった。
「はあ。どうしてまたこんなことが?」
誰かが空を見上げながらため息をつく。
これでも生きがいがあるのかと思ったが、またこのような事故が起きたのだ。
「これは全部帝国の奴らのせいだ!」
「そうだ!みんなあいつらのせいで呪いがかかったに違いない!」
人々は声を荒げた。
今回発生ある事故と帝国は全く関係がなかったが、誰でも恨む対象が必要だったのだ。
ところがその瞬間、帝国を罵っていた人々が口をつぐんだ。
医院のドアが開かれ、騎士たちの護衛を受ける少女が入ってきたのだった。
「帝国近衛騎士?それなら、あの少女は・・・?」
人々は目を見開く。
近衛騎士の護衛を受ける少女はたった一人しかいなかった。
帝国の予備皇后であり、新任総督のヒルデルン子爵だった。
「こちらには何のご用ですか?」
王国民は警戒心に満ちた表情で彼女を見る。
様々な努力をしたが、反感を解消するにはまだカ不足だった。
「負傷者の様子を見に来ました」
「どうしてですか?」
硬い表情の医者が尋ねる。
「みんな具合が悪いのです。申し訳ありませんが、患者さんの状態が落ち着いてからまた来られた方がいいと思います」
医師も反感が深い様子だった。
特に医者はマリが負傷者たちを見に来たのが見せかけのショーだと思って、より一層拒否感を表わしている。
「特に気にするようなことはしません。ただ見ているだけだから・・・」
「だめです。部外者が訪問するだけでも患者の安定に悪い影響を及ぼします」
マリは困った顔をする。
予想より反応が強すぎた。
(私も何とかして役に立ちたいのだけど・・・)
その瞬間だった。
重症患者を集めておいた部屋から看病人が飛び出してきて、急いで叫んだ。
「アンス先生、大変です!ハンス君とメリルさんの状態が!」
「・・・!」
「もうすぐ死亡しそうです!早く来て診てください!」
「アンス」と呼ばれた医師は、青ざめた顔で集中治療室に駆け込んだ。
マリも彼の後を追う。
(二人とも心停止寸前の状態だ!)
マリは一目で患者の状態を調べる。
それはアンスも同じなのか、首を横に振りながら保護者たちに話した。
「心の準備をしなければならないようです」
「ああ!先生!どうか!どうか私たちの子供たちを助けてください!」
臨終を控えた患者たちは、今や10代半ばから後半にかけて見える少年、少女だった。
兄妹だったのか、親たちが絶叫してアンスにしがみつく。
アンスは苦しそうな表情で首を横に振った。
「申し訳ありません。今のところ、これ以上は方法が・・・」
死刑宣告に他ならないその言葉に両親たちの顔が絶望に覆われる瞬間、思いもよらない声が彼らに聞こえた。
「いや、生かせます」
「・・・」
皆が目を裂くように大きく見開いて首をかしげる。
そこには小さな少女、マリが固い表情で立っていた。
「どういう意味ですか、閣下?すでに臨終直前の患者たちです」
「いいえ。状態が重いですが、まだ諦めるのは早いです。彼らは生かせます」
アンスは眉をひそめる。
彼が判断するには、すでに手を打つことができる状態ではなかった。
「いったい何を言っているのか・・・。もしからかおうとしているのならやめてください。死を控えた彼らです」
「嘲弄しようとしているのではありません」
マリはアンスの目をまっすぐ見た。.
「私は彼らを助けたいからです」
「・・・」
アンスの目つきが揺れる。
少女の目つきは、患者のための気持ちで燃え上がる医師の目つきだったからだ。
(どうしてだろう?)
彼が混乱しているとき、マリは両親に言った。
「新任総督として赴任したマリ・フォン・ヒルデルンです」
その言葉に両親は、苦境の中でもひざまずいた。
総督なら彼らのような平民よりはるかに高い貴族。
マリはかがんで彼らと目を見合わせた。
「私はあの患者たちを助けたいです。私を信じて、お子さんたちを任せていただけませんか?」
「・・・」
親たちは唾をごくりと飲み込んだ。
本来なら話にもならないことだった。
初めて見る、それも彼らが憎悪する帝国の総督に子供たちの命を任せる?
しかし、マリの切実な瞳が心を揺さぶる。
彼らは本能的に感じることができた、マリの心が偽りのない真心であることを。
その時、アンス医師が言った。
「私たちがあなたをどうやって信頼できますか?」
「もし私があなたたちに嘘をつくなら」
マリは短く答えた。
「後で私に石を投げても大丈夫です」
ついに、アンスの両親はうなずいた。
「わかりました、閣下。お願いします」
彼らは哀願するように言った。
「閣下を信じるから、お願いします!どうか私たちの子供たちを助けてください!」
マリはうなずいて患者に近づく。
最初はハンスからだった。
(脈がすごく速くて弱い。典型的なショック症状だ。一方、血圧は低くても経静脈が拡大したことから、心臓に問題が生じたのは明らか)
マリは夢で見た外科医になって考える。
動脈の脈を感じ、結膜の青白度を確認するなど、速いスピードで診察した結果、診断名が出た。
(これは心嚢圧電!)
心嚢圧電(Cardiactamponnade)。
外傷患者のうち、血が心臓の近くに上がって心臓を押さえつける状態を意味する。
できるだけ早く処置しなければ死亡に至る症状だ。
「穴のあいた針をください」
「え?急に?」
アンス医師は理解できないという表情で針を持ってきた。
後に続くマリの行動を見て、びっくりして叫んだ。
「今何をしようとしているんですか!?心臓に針を刺そうとするなんて!」
「危険なことではありません。心臓の近くに溜まった血を抜こうとしているのです」
今彼女がしようとしている処置は心臓の周りの血を抜く心嚢穿刺だ。
でも胸に針を刺すなんて!
アンスの立場では決して容認できない行為だった。
彼が声を上げて反対しようとした瞬間、低い声がアンスを捕まえる。
「彼女を信じろ」
冷ややかな印象の美男子、ウィンター伯爵だった。
「・・・」
「私は彼女が失敗するのを一度も見たことがない。私の名前をかけるから彼女を信じてみろ」
その声に込められた威圧感にアンスは口を閉じて、マリはありがとうという目つきを送った後、すぐ処置に入る。
大きな針を心臓に向けて突き刺したのだ。
まるで剣で胸を剌すように、迷いのない手に皆の胸がドキっとした。
「あ、ああ・・・!」
アンスは痙攣するように手を震わせる。
その場で落ち着いているのは、ひたすらマリ一人だけ。
(正確な位置に。できるだけ気をつけて)
マリはさらに心臓に針を押し込んだ。
心嚢穿刺のカギは精密さにある。
少しでも深いと心臓の壁が貫通して死亡する可能性があり、浅いと治療効果がない。
極度の精密な手さばきが必要な術技だった。
マリはゆっくりと、ゆっくりと針を突き剌していく。
ますます心臓に向かって入り込んでいく針の姿に、見守る人たちがくらっとする時だった。
どっ!
針の間から開いた穴から血がぽたぽたと流れ出た。
成功したのだ!
「これは?一体?」
アンス医師はどもりながら尋ねる。
マリはいつの間にか額にできた汗をぬぐいながら言った。
「心臓の周りに上がってきた死血を抜いてあげるのです。幸いにも成功したので、すぐに良くなるでしょう」
彼女の言う通り、患者の脈はすぐに好転し始めた。
心臓を押さえつけていた血が消えると、まともにポンプできるようになったおかげだ。
「ありがとうございます!本当にありがとうございます、閣下!」
死にそうになった息子を助けてくれたマリに、両親は腰をかがめて感謝の挨拶をした。
アンスは信じられないという表情だ。
「え、どうやって?」
マリは、今度は2番目の患者メリルを診た。
(まだ終わってない。この少女も助け出さないと)
混乱が収まらない表情でアンスは言った。
「お腹の深いところから出血がひどいです。到底手を打つことができる状況では・・・」
その説明を聞いたマリは、黙ってメリルを診察する。
脈を取って大まかな血圧を把握し、まぶたの下を見て貧血の状態を確認し、お腹を綿密に見て出血の原因を推測した。
「左腹部を痛めてそちらから血が出たようだが、これはとても・・・」
アンスは首を横に振る。
今や彼の声には彼女を不信する色はなかった。
しかし、不信と信頼を離れ、この患者を治療することは、彼の常識では不可能だった。
しかし。
「手術を準備してください」
「閣下?」
アンスはもう一度目を見開く。
今日何回目の驚くべきことか分からない彼だった。
「もちろん閣下もすごい医学知識を持っているように見えますが、この少女を治療することは不可能です」
「不可能ではありません」
マリは短く話した。
「可能です。もちろん少ない確率ではあるが,可能性があれは最善をつくしてみなければならないでしょうか?」
「・・・」
アンスは唇をかんだ。
彼女の言うことを聞くと、分からない熱さが胸からこみ上げてきた。
そうだ。
可能性さえあれば、とりあえず最善を尽くしてみなければならない。
それがヒポクラテスの末裔である医師の義務だから。
「分かりました。手術の準備をします」
そうして応急手術が始まる。
手術台の前に立ったマリは、基本的な形の手術刀を持った。
麻酔は微弱を利用する。
用意された道具と薬剤はひどい水準だったが、仕方なかった。
劣悪な環境でも最善を尽くさなければならない。
「オープンします」
手術刀で腹壁を割った瞬間、お腹の中に埋まっていた血が飛び上がった。
「そこ、血を拭いてください!この部位を強く圧迫して、出血部位を止血しなければならないので視野を確保してください!」
腹腔内の状態を見たマリが、急いで叫んだ。
助手をしているアンスは歯を食いしばって彼女の指示に従う。
そうして生と死が交差する戦争が始まった。
さっそく夢の能力が活躍しました!
手術は無事に成功するのでしょうか?