こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は86話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
特技が一つもない冴えない侍女マリ。
いつもいじめられるばかりだった彼女に、ある日信じられないことが起きた。
「君のために最後にお祈りをしてあげよう、君の願いは何だい?」
死んでいった囚人を看病していたマリに訪れた奇跡。
「万能な人になりたいです」
その日からとても神秘的な夢を見始めることに。
完璧な侍女!最高の彫刻家!天才音楽家!
夢を通して夢の中の人物の能力を得て、何でも完璧な侍女マリの物語がいま始まる!
マリ:本作の主人公。クローヤン王国の元王女。身分を隠して侍女として働いている。本名は、モリナ・ド・ブランデン・ラ・クローヤン。
ラエル:皇太子。血の皇太子と呼ばれ恐れられている。
キエル:皇室親衛隊団長。キエルハーン・ド・セイトン。
オルン:公爵で宰相。ラエルとは昔からの親友。
ヨハネフ三世:西帝国の皇帝。
オスカー:第十皇子殿下。
アリエル:皇太子妃候補。シュレーアン家。
レイチェル:皇太子妃候補。イーストバーン家。
86話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 謎の男性
「はあ」
マリは宴会場の外の庭でため息をついた。
あの後、ダンスがどのように終わったのか分からない。
ダンスが終わるやいなや、彼女は逃げるように宴会場を出たのだ。
皇太子とキエル、その二人のことを考えるだけで胸が張り裂けそうで、到底宴会場の中に居られなかった。
『このまま君を攫ってしまうかもしれない。だから、私をあまり刺激しないで。これは警告だよ』
「はあ」
皇太子が自分に残した言葉を思い出し、マリは深くため息をつく。
一体どうすればいいのか分からない。
モリナ王女の彼女としては皇太子とキエルのどちらからの気持ちも受け入れられないのが・・・、とても辛かった。
「このまま逃げようかな・・・」
苦々しく思う。
もどかしくて、彼女は逃げることさえ考えた。
けれど、それも不可能だ。
女性の体一つで首都を離れるのも危険なことであり、何より皇太子もキエルも自分が逃走するのを見守っているはずがなかった。
マリは唇を噛んだ。
率直な気持ちとしては彼女もこんなに避けたくない。
もし自分が普通の生まれだったら、心を開いていただろう。
そして、二人のうち一人と愛を分かち合っていただろう。
(けれど、このように正体を隠したまま、彼らの心を受け入れることはできない。それは欺瞞よ)
だからといって正体を現すわけにはいかない。
(心を拒絶する方法はあるのかな?)
しかし、いくらマリでも浮かび上がる方法はなかった。
皇太子はこの帝国の支配者だ。
そして貴族爵位を受けたが、彼女は戦争捕虜。
今でもマリは公式には皇太子の個人所有。
だから、もし皇太子が今夜自分を望むなら、彼女には断る権限がなかった。
今このように待ってくれるだけでも皇太子はとても配慮してくれている。
だからといって真夜中に逃げることもできないので、どう考えても行き詰まった状況だ。
「いいや、きっと方法があるはず。何とか考えてみよう」
そう結論付けたマリが席を立つ。
何も解決されていない結論だったが、今の状況では特に下せる結論がなかった。
「もう帰らないと」
宴会場に戻ろうと思ったが、マリの足が止まってしまう。
戻ったら皇太子とキエルを見なければならない。
今日はそうしたくなかった。
「宿舎に帰ろう」
そう思った彼女は振り向いて足を運ぶが・・・。
「あっ!」
あまりにも深く考え込んでいたせいだろうか。
暗闇の中で人を確認できず、誰たとぶつかってしまった。
相手の胸に真っ直ぐ頭をぶつけた彼女は尻もちをついて急いで謝る。
「すみません!」
「あ、大丈夫です。そちらこそ転びましたが、お怪我はありませんか?」
どこかで聞いたような優しい話し方。
マリは不審に顔を上げた。
茶髪に黒目、親切な印象のすごい美男だ。
初めて見る人物のはずなのに、なぜか見慣れた感じがする。
(錯覚かな?)
一度でも見たら絶対忘れるはずがないイケメンだから、ただの勘違いのようだった。
首を傾げると、彼の白いスーツを見てビックリしてしまう。
「あ、服が!すみません!」
白いスーツが黄色く染まっていた。
男の手にグラスが持っていることから、自分とぶつかった時にこぼしたに違いない。
しかし、男は大丈夫そうに首を横に振った。
「大丈夫です。服は洗濯すればいいだけですから。それより怪我はしませんでしたか、レディー?」
彼は手を差し出して転んだマリを立たせる。
起き上がった彼女は自分の失礼を重ねて謝った。
「すみません。宮に話して新しい服を・・・」
「いいえ、大丈夫です。どうせ屋敷に帰ろうと思っていたので」
男は微笑んで話す。
優しそうに見える笑いだ。
「そして会いたかったレディーに出会えたので、こんな服くらいは捨てても構いません」
その言葉にマリは怪訝な表情を浮かべる。
「それはどういう意味ですか?会いたかったレディーとは?」
「フォン・ヒルデルン。あなたに会いたかったのです」
「え?どうして私を?」
男はしばらく黙ってマリを眺めた。
深く黒い瞳に彼女が分からない感じを受けた瞬間、彼は軽く笑いながら言った。
「他でもなく、私はあなたのファンですから」
「それは一体?」
「今日の演奏を聴いてファンになりました」
「あ・・・」
マリは彼の言っていることに気づく。
今日の演奏開始時に彼女が演奏したピアノ協奏。
それのことを話しているのだ。
男は嬉しそうに話す。
「ただでさえ宴会場で会話をしてみたかったのですが、機会がなくて寂しかったです。それで、このように偶然お会いできてとても嬉しいです」
「あ・・・、はい」
マリはぎこちない表情を浮かべた。
「今日また演奏する予定はないのですか?」
「あ・・・、ありません。今日はこれで帰ろうと思います」
その言葉に男は残念そうな顔をした。
「宿舎に帰る途中だったのですか?」
「はい」
「帰り道を、私がエスコートしても?」
マリは驚いて首を横に振る。
「いいえ、大丈夫です。そんな迷惑をかけるようなことは。どうせ近くですので」
「残念です。もう少し話をしたかったのですが」
マリは再びぎこちなく笑う。
彼が誰なのかも分からないのに、どうしてエスコートを受けることができるだろうか。
(何だか不便だな)
マリは心の中で考える。
人の良さそうな印象だが、理由もなく不便な気持ちになった。
自分の正体を明かすことができないマリの心情が辛いです・・・。
逃げることも隠れることもできない状況で、突然謎の男性との接触。
相手の正体は分かりませんが、何だか胡散臭いですね。