こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は95話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
特技が一つもない冴えない侍女マリ。
いつもいじめられるばかりだった彼女に、ある日信じられないことが起きた。
「君のために最後にお祈りをしてあげよう、君の願いは何だい?」
死んでいった囚人を看病していたマリに訪れた奇跡。
「万能な人になりたいです」
その日からとても神秘的な夢を見始めることに。
完璧な侍女!最高の彫刻家!天才音楽家!
夢を通して夢の中の人物の能力を得て、何でも完璧な侍女マリの物語がいま始まる!
マリ:本作の主人公。クローヤン王国の元王女。身分を隠して侍女として働いている。本名は、モリナ・ド・ブランデン・ラ・クローヤン。
ラエル:皇太子。血の皇太子と呼ばれ恐れられている。
キエル:皇室親衛隊団長。キエルハーン・ド・セイトン。
オルン:公爵で宰相。ラエルとは昔からの親友。
ヨハネフ三世:西帝国の皇帝。
オスカー:第十皇子殿下。
アリエル:皇太子妃候補。シュレーアン家。
レイチェル:皇太子妃候補。イーストバーン家。
95話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最後の日
その後、マリは静かに立ち去る計画を立てた。
思ったより難しいことはない。
麻薬密売調査のため港に行ってイタリア所属の船を確認し、イタリア半島に戻る際に乗船することを船長と密かに約束した。
皇太子とキエルハーン、周りの人には当然何の気配も見せないようにして。
できるだけ普段と変わらないように努力した。
(そう、こうやって旅立つんだ)
マリは心の中で呟く。
心が痛む。
すぐ良くなると思っていたのとは違って、ずっと痛かった。
しかし、亀裂を砂で覆うようにマリは自分の心を押さえつける。
(これが皆のために最も正しい選択なのだから)
彼女は繰り返し心の中で呟いた。
そうして時が流れ、出港の日が近づいてきた。
船は首都近くのユフテ川下流で夜遅く出発するから、今日さえ経てばすべて終わりだ。
「マリ」
「はい、殿下?」
「最近、何か心配事でもあるのかな?ずっと顔色が良くない」
その言葉にマリはぎこちない表情を浮かべる。
できるだけ平気なふりをしようとしたが、やはり皇太子の目は騙せなかった。
「何でもありません、殿下」
「ふむ。働きすぎかな?少し休んだ方がいい。大事な仕事は終わったから、もう帰ってゆっくり休んでくれ」
いつもと同じ配慮。
この配慮も今日が最後だと思うと、マリは訳もなく泣きそうになる。
彼女は躊躇いながら口を開けた。
「殿下、一つだけお願いしてもよろしいですか?」
「あなたの頼みなら何でも」
皇太子は躊躇わずうなずく。
「今晩、私が食事をご馳走してもよろしいですか?」
彼は怪訝な顔をする。
彼女が突然なぜそうするのか疑問に思ったのだ。
マリは理由を誤魔化すことに。
「特別な理由はありません。ただ色々と感謝しているので・・・」
「嫌だ」
「え?」
意外な拒絶だった。
彼が断ると思っていなかったマリは慌てる。
ラエルは眉をひそめて言った。
「ただでさえ疲れて見えるのに食事?むしろ私がシェフに言って、あなたの体を守る料理を作るように言っておく」
「いや、今日は私が・・・」
あまりにも皇太子らしい返事だ。
それでも最終日だから、食事でもてなしたかったのだ。
「マリ、こっちに近づけ」
「・・・」
「早く」
マリは躊躇いながら少しだけ一歩進む。
皇太子は眉をひそめた。
「もう少し前へ」
何だか猛獣の前に進む草食動物のような感じがする。
「マリ」
ため息をついたラエルは彼女の頭を優しく撫でた。
頭に触れる彼の手にビックリしたが、マリは避けない。
「私は食事よりも君の明るい表情が欲しい。そんなに疲れて暗い顔でありながら食事はできない。今日はゆっくり休んで、明日は明るい表情を見せてほしいな」
彼の普段の冷たい性格とは全く違う暖かい声。
ひたすらマリにだけ見せる優しさだった。
支えてくれる手が柔らかいと感じる。
なんだか心が安らかになった。
「じゃあ、戻って休むように」
「・・・はい、殿下」
結局、マリは皇太子に最後の食事をもてなす計画を失敗し、執務室から退いた。
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マリが退出した後、皇太子が指で鉄仮面を叩く。
「何かおかしいな」
「何がでしょうか?」
アルモンドが尋ねる。
「マリだ。何かおかしくないか?」
「少しそうでしたね。ですが、別に理由はないのでは?」
特に悩みのないアルモンドの答えに、ラエルはため息をつく。
繊細さとは縁のない彼に何を期待したのだろうか。
(きっと何かあったはずだ。一体なんだ?)
ラエルは深刻な表情で悩んだ。
「アルモンド。今夜は外遊に出かけなければならない」
「外遊とは暗行のことですか?」
「ああ」
「どういう理由で?」
アルモンドは不審そうな表情で尋ねたが、ラエルは特に答えなかった。
いよいよ待望の時。
皇居の明かりが消えた夜遅く、マリはベッドから起き上がった。
「・・・」
あらかじめ準備を終えていたマリは着替えて宿舎を出ようとする。
その瞬間、ラエルが誕生日プレゼントとして贈ってくれたネックレスが目についた。
置き去りにしようかと悩んだ末、手を伸ばして取り揃える。
「最後なんだ」
マリは皇太子が滞在する獅子宮を見て複雑な顔をする。
しかし、すぐに固い表情で振り向いた。
そして皇居の入り口に足を運ぶ。
しばらく歩き、キエルが滞在する宮が現れると、彼女はしばらく悩んだ。
(最後にキエルさんに少し会おうか?)
しかし、すぐ首を横に振る。
突然この時間に会おうと言えば、不審に思われるのは間違いないだろう。
(後で手紙を送ろう)
そう考えてマリは皇居の城門に到着した。
「フォン・ヒルデルン卿、こんな時間にどうされたのですか?」
入口を守る近衛隊が不審そうな表情で尋ねる。
マリは出来るだけ平気な顔で言った。
「しばらく港の方に行ってこようと思います」
「ああ、そうなのですね。分かりました」
皇太子の信任を受けるマリなので、近衛隊はこれといった疑いもなく頷く。
「遅い時間ですから、気をつけてください」
「はい、お疲れ様です」
そうしてマリは脱出の第1関門である皇居の城門を問題もなく抜け出した。
(あとは時間に合わせて船に乗船すれば終わり)
心の中で呟いたマリは、あらかじめ予約しておいた馬車に乗って港に向かった。
ラエルがひたすらに優しい・・・!
彼もマリの異変に気づいて暗行をしますが、二人が遭遇することはあるのでしょうか?