公爵邸の囚われ王女様

公爵邸の囚われ王女様【79話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【公爵邸の囚われ王女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

79話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 首都院へ②

果樹園に寄ってリンゴの木の件を伝えた後、クラリスと公爵夫妻はゴルバルを経由して首都へ向かった。

今回クラリスが行くことになった首都院の規律は非常に厳格だ。

そこでは、指定された無地の服以外の着用が禁じられており、流行を目的とした物品の持ち込みも制限されている。

それはまったく歓迎されるものではなかった。

しかし、クラリスは彼らが多くのものを制限することで、むしろ幸運だと思った。

もし何かを持って行けるのであれば、公爵夫妻が手配してくれた「脱ぎ捨てた衣服」を持って行くべきだったのだから。

幼い頃はそれを単に「保温性が良い粗末な服」と思っていたが、今ではそれがどれほど貴重で高価なものか理解している。

もちろん、彼らはもっと良いものを渡せなかったことに対し、気の毒そうにしていたのだが。

それだけではなかった。

公爵夫妻は、クラリスが不死鳥の羽毛を使って作った枕を持って行けないことにも無念を感じているようだ。

「首都院の枕にそこまで良い機能があるとは思えないけれど。」

その枕に対する未練を捨てられなかったのか、首都院へ向かう馬車の中でマキシミリアンは何度もそのことについて不満を述べた。

「首都院は首都のすぐ近くだから、それほど遠くはない。」

「そんなことはありません。私はセリデンの子どもですから。」

クラリスは冷静に彼女を説得した。

それでも公爵夫人の心配は続いた。

「クラリス、一人で寝て起きることができるかしら?時間通りにしないといけないでしょう。」

「朝の時間には鐘が鳴って時間を知らせてくれるそうです。私は扉をしっかり閉めて眠るので、大丈夫ですよ。心配しないでください。」

「それでも急ぐようなことがあれば・・・」

「簡単なことは自分でできますよ。洗濯物は首都院で定期的にしてくれるそうです。」

冷静に返事をしたものの、公爵夫人の表情にはまだ不安が残っていた。

「優しい人が多いといいけれど・・・競争心が原因でお互いをいじめたりしないでしょうね?」

「まさか。もしかすると、同じ目標を持った友達を作ることができるかもしれませんよ。」

クラリスは少し顔を赤らめた。

実際のところ、彼女は新しい親友を作ることができるかどうか分からないという事実に、少しだけ胸がときめいていた。(もっともクエンティンは、そのようなことが起こるわけがないと考えていたが。)

「それならいいですね。友達ができたらきっと頼りになりますから。」

クラリスは公爵夫妻が自分を心配している姿を見るのが嬉しかった。

なぜなら、彼らがクラリスを気遣っているように、クラリスもまた首都で冬を過ごさねばならない公爵夫妻のことを気にかけていたからだ。

なんだかお互いに同じ気持ちを分かち合っているように感じられて・・・。

「お二人とも忙しいと言って食事を抜かないでくださいね。毎週末お伺いしますので、その間どう過ごされたか必ず教えてくださいね。」

「もし雪がたくさん降って道が滑りやすくなったときは、無理して来なくてもいいですよ。わかりましたね?」

公爵夫人はそう言いつつも、しばらく手帳を取り出してクラリスが首都で過ごしている間に何度週末があるのか数えていた。

その様子がなんだか愛おしくて、クラリスは思わずくすくす笑ってしまった。

首都学院は、ハイデン王国の第三城壁から馬車で30分ほど離れた場所に位置していた。

それは早い冬のことで、収穫が終わった後の寂しげな広大な畑の向こうに、赤い煉瓦の建物がぽつりと建っていた。

その入口で公爵夫妻と別れたクラリスは、気恥ずかしそうに指定された制服を改めて確認する。

ここで学ぶ受験生たちは、指定された制服である灰色のチュニックに、首元までボタンが閉じられる青いブラウス、そして首都学院の紋章が刻まれたケープを着用することが義務付けられていた。

この簡素な服装は、おそらく首都学院の厳粛な雰囲気に受験生たちが自然と順応するための工夫なのだろう。

クラリスは両脇に置かれたトランクを一生懸命持ち上げた。

持ち物は多くなかったはずなのに、トランクが思ったよりも重かった。

彼女の荷物はかなり重いトランクだった。

本や書類がぎっしり詰まっているようだ。

「グレゼカイアさんですか?」

「案内」というバッジをつけた男性がクラリスの前に近づいてきた。

「あ、はい!こんにちは。」

「あなたを案内するようにと首都司から依頼を受けました。エイビント・ベルビルです。受験生代表です。」

どうやら彼はこの場所の司祭ではなく、クラリスと同じように勉強のためにここにやってきた受験生のようだった。

彼も灰色の男性用指定制服を着用している。

「勉強でお忙しいのに、ありがとうございます。」

クラリスは微笑みながら一旦トランクを床に置いた。

「私はクラリス・レーネ・グレゼカイアです。こうして首都学院に来られるなんて本当に嬉しいです!」

彼女は片手を差し出し、握手を求めた。

こんな風に親切を見せてくれる人なら、良い友達になれるかもしれないと期待していた。

「いいえ。」

しかし、返ってきた答えは冷たいものだった。

それだけではなく、彼はクラリスが差し出した手を見もしないふりをして視線をそらしてしまった。

「あ・・・」

クラリスは困惑した気持ちのまま、差し出した手を引っ込めた。

エイビントは彼女の鞄を乱暴に引っ張り上げた。

「これ、どこかの遊び場から来たわけでもないのに・・・。荷物を運ぶ手伝いをしてくれる人はいないんですか?」

その声の調子からして、何かを文句のように言いたいのかもしれない。

あるいは、ただ心に思ったことを口に出すタイプなのだろうか?

いずれにせよ、クラリスは彼と争いたいとは思わなかったので、無言で自分の鞄を彼に差し出して持たせた。

彼は無表情のまま、クラリスの荷物を軽く持ち上げる。

「案内人なんて必要ありません。一人でも十分できますよ。」

「まあ、当然そうですよね。わざわざ自慢することでもないですしね?」

そう言いながら、彼は無造作に鞄を手に取り、中から鍵を取り出して振った。

「ついてきてください。」

彼は慣れた足取りで首都院の内部へと向かう。

そこは大きな四角い建物で、その中心には庭園があり、周囲には丸い中庭が取り囲んでいた。

このような構造の建物を見るのは初めてだったため、クラリスはついつい中央の庭園に目を奪われてしまった。

『綺麗だな。荷物を置いたら、一度見て回らなきゃ。』

そう考えながら二階の階段を上ると、同じ制服を着た受験生たちが何人か見えた。

庭園を見下ろせるベンチに座り、ひとり静かに本を読んでいる姿もある。

本を読んでいる人や、誰かと会話を交わしている人もいた。

ここにいる人々は、おそらくクラリスよりもずっと前からこの場所で試験の準備をしていたに違いない。

『こんなにも多くの人が、みんな同じ目標を持っているなんて。』

クラリスの胸は、なぜか高鳴った。

しかし、それも一瞬のこと。

クラリスは、自分に向けられる視線の中に、何かしらの緊張感が含まれていることに気づいた。

勘違いではなかった。

肩や背中が動揺するほど強く感じられたからだ。

「・・・」

不安になりながら周囲を見渡していたクラリスの視線は、ふと新しい床材へと向かう。

『いったい・・・なぜ?』

もしかして、彼女が位の高い立場にいるのが、何か問題なのだろうか?

「念のため言っておきますが、私たちは真剣です。」

前を進んでいたアビントンが警告を発した。

クラリスはようやく荷物を手に取った。

「はい?」

「城壁を越える道はこれ以外にはないということです。」

「・・・」

「あなたなら、ここで一生を平穏に過ごせるでしょうから、食べるものに困る心配はありませんよ。」

彼は回廊を通り抜ける間に一旦足を止め、クラリスを振り返った。

「この試験に挑むのは、ただの暇つぶしか自己満足のようなものです。違いますか?」

クラリスは荷物を抱えたまま、ただその相手を見上げるだけだった。

公務の試験を暇つぶしだと思ったことは一度もなかった。

だが、それが自己満足の手段に過ぎないという現実には、彼女も反論できなかった。

何にせよ・・・その試験を「未来」だと考える人々にとっては、クラリスが敵であることには変わりなかった。

「ここにあまり長く留まらないほうがいい。雰囲気に流されてしまうからね。」

彼の警告を受けて、クラリスは握りしめたバッグにさらに力を込める。

その時だった。

「落ち着いてください、お嬢さん。」

「おい、君が先だろ。」

左右から同時に現れたノアとバレンタインがクラリスのバッグを一つずつ取り上げた。

「・・・?!」

クラリスは驚いて目を見開き、慌てて左右を見回した。

右側にはいつものように猫の仮面をつけたノアが立っており、反対側には険しい顔をしたバレンタインがいた。

つまり、決して顔を合わせるはずがないと思われていた二人が、まさか同じタイミングで現れたということだった。

 



 

 

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