こんにちは、ちゃむです。
「あなたの主治医はもう辞めます!」を紹介させていただきます。
今回は111話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
111話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 戸惑い
「本当に行かないのか?みんなお前に会いたがっているのに・・・」
「はい、子爵様。」
フェレルマン子爵はしばらく私の館に滞在していたが、一人で馬車に乗り込み、去って行った。
彼は明らかにした真実を伝えるために、フェレルマン邸に向かうと言っていた。
私はぎこちなく彼を見送ると、ゆっくりと振り返る。
長いだけに感じられた夏。
狩猟大会から始まり、青年期を過ごし、建国祭では死にかけるところだった。
その間に親しい恋人ができ、思いもよらない家族が突然現れたりもした。
傘も持たずに外に出ると、長い夏の終わりを告げるかのように雨がしとしとと降り始める。
この雨が止めば、気温がさらに下がり、冷たい秋が押し寄せてくるだろう。
昨年、反乱軍が壊滅し、私はどうにかして命を拾った。
その戦いの季節。
ハエルドン皇太子の信託を受けた後、私はずっと疑心暗鬼の状態に陥っていた。
フェレルマン子爵が気にかけてくれても、私は妙に居心地が悪く、彼を遠ざけるような態度をとってしまった。
私がそうするたびに、彼はどうしていいか分からない様子で戻っていく。
「リチェ、何しているんだ?」
庭のベンチに座り、ぼんやりと花を眺めていたところ、頭上に大きな傘が差し出された。
彼はもう全快したと思っていたが、やりたいことが多すぎて、いつも忙しくしているようだった。
それでも、エルアンは以前のように冷たく当たることなく、無言で私の隣にいてくれる。
時折、子供のように甘えてくる様子が、幼少期を思い出させるせいか、私はどうしても気が動転してしまった。
計算された行動であることは明らかだったが、どこかぎこちなさが見え隠れしていたから。
「フェレルマン子爵は出かけるみたいだね。」
「はい、公爵邸に少し行ってくるそうです。」
私は傘の中で肩に手を置くエルアンの仕草を感じ取り、少しだけ微笑んだ。
「フェリクス卿とセイリンによろしくお伝えください。それから、シオニー様の墓にもお参りに行くと。」
「君はどうして行かないんだ?」
「まあ、ただ・・・。」
エルアンは、私の重い表情を見てしばらく沈黙していた。
初めて修正された文書を見た時、驚きのあまり「お父さん」と呼んだが、あれ以来フェレルマン子爵を「お父さん」と呼べなくなってしまった。
亡きシオニー様の姿が鮮明に心に刻まれてしまったからだった。
フェレルマン子爵が直接認めたシオニー様の死因は、魔力の逆流だった。
魔力が逆流する原因は2つしかない。
熟練した医者や助産師がいない状況で出産時に母と子の魔力が混ざり合った場合、または王宮にある「魔力の石」を使用した場合だ。
魔力の石は非常に危険なアイテムであり、皇帝または皇太子の承認がなければ持ち出しは厳しく禁止されている。
皇帝は在任中、どのような魔法アイテムも持ち出しを許可しないことで有名だった。
結局、シオニー様は私を産む際に亡くなった。
イザベル夫人がイシドール男爵に何をしたのかは分からないが、あの男は王宮の調査官にすべての事実を話すつもりだと言った。
ケインズ卿は直接、王宮の調査官たちに密かに潜入して調査を依頼し、彼らは翌日にはセルイヤーズ領に到着する予定だった。
イシドール男爵が全てを話せば、ハエルドン皇帝は即座に拘束され、事件の真相に関する公式調査が行われるだろう。
そうなれば、ハエルドン皇帝が「フェレルマン子爵の娘のためだけに進めていた計画」が失敗することになる。
「信託を受けて私を殺そうとしていた」という真実が明らかになり、すべてが露見するだろう。
逆説的に言えば、今の私のおかげでジェイド皇太子は監視塔で生き延びることができ、イシドール男爵は捕らえられ反逆の計画が未然に暴かれる結果となった。
どのみち、信託は全て露わになってしまったのだ。
すぐにでもハエルドン皇帝を無視できる状況ではなく、現実的に私たちが王宮の皇帝に何か手を下すことはできなかった。
ジェイド皇太子に事実を伝え、彼が適切な処罰を下すのを待つこと、それが私たちにできる唯一のことだ。
イシドール男爵が調査官に全てを話すまで待たなければならなかったため、直接報復することはできなかった。
つまり、私は今、正当な処罰と復讐のどちらでもない結果を目の前にして、何もできないまま立ち尽くしている。
「余計なことを考えなければ良かったのに。」
エルアンはハンカチを取り出し、水に濡らして私の顔を優しく拭きながら話した。
「君のせいじゃないさ、何も悪くない。」
私は気づかぬうちにエルアンの目を避けながら声を詰まらせる。
「私のせいで、シオニー様が・・・。」
フェレルマン侯爵家に入ると、シオニー様がどれほど愛されていたのかを知っていた。
医者や助産師がいない場合、魔力の逆流で命を落とすことはなかった。
出産中に魔力の逆流が原因で亡くなるケースは稀だ。
自分の殻に閉じこもって何かを投げ捨てようとしながら、抜け出せなかった私は、まともに向き合えずにいた。
家族を見つけたと言いながらも、純粋に喜べない理由がそこにある。
修正洞窟で私を産んで亡くなったシオニー様の姿を見た衝撃は、時間が経つにつれて薄れていった。
確かに「出産のせいでシオニー様が亡くなったのかもしれない」と考えることと、それを直接目の当たりにすることは大きく違っていた。
シオニー様が倒れる場面で、フェレルマン子爵が世界を失ったかのように茫然自失となる様子を目の当たりにしたため、それが一層重く感じられた。
その間、「もしかして、私が家族なのか?」という考えに心が揺さぶられたが、信託の内容を知ってからは、あまりにも大きな悲劇の主人公であるという思いが絶え間なく湧き上がった。
この悲劇がすべて私が原因の信託によるものなのだろうか・・・。
単に私を産んで亡くなっただけではなく、はるかに大きな存在に対する責任感が心に深く根付いていった。
申し訳ない気持ちから母と呼ぶこともできず、そのためフェレルマン侯爵に対しても、その後「お父さん」と呼ぶ言葉が喉に詰まり、うまく言えなかったのだ。
フェレルマン子爵は、絶対に急かさないと言いながら「少し時間が必要だろうから、気が楽になるまでしばらく待つ」と言った。
今朝も、フェレルマン子爵は一緒に侯爵邸に向かい、フェリックス侯爵やセイリン卿の事情を説明し、シオニー様の墓参りに行こうと提案した際、私は静かに拒否した。
フェレルマン侯爵邸に広がるラベリ島の庭園を思い出すと、その石畳の道を歩くこと自体が罪悪感に感じられた。
シオニー様を思い出すたびに、あの堂々とした態度を見せていたセイリン卿の顔すら、まともに見られないような気がした。
正直に言えば、フェレルマン家のすべての人々が待ち望んでいた子供が不幸にも私で、この一連の悲劇が起きたのではないかという思いが、心を重くしていた。
そんな考えをしていたせいかもしれない。
「もしかして、私がすべての不幸の原因なのでしょうか。他の子どもがシオニー様とフェレルマン子爵のもとに生まれていたなら、あの信託が持ち上がることもなかったかもしれないと思います。」
シオニー様とは何の関係もないエルアンにとっては、浮かんでくる悪い考えを振り払うことができた。