こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

108話ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 集結③
「ベラトリクス!」
私は結界に向かって進みながら叫んだ。
カイルが来るなとでも言うかのように眉をひそめたが、私は立ち止まらなかった。
『一緒にやってみよう。』
そしてカイルに向かって、口の動きで自分の意図を伝えた。
彼の眉がピクリと動いたのが見えた。
【偽りの神ベラトリクスが消滅に近づいている状態です。】
私は結界に手を伸ばした。
すると、結界が大きく波打った。
「うっ……」
全力で力を注いだものの、神の直接的な力に対抗するのは容易ではなかった。
「くそっ。」
波動のせいで押し戻されたカイルが再び剣をしっかりと握った。
そして、私に下がれというように手振りをした後、少し緩んだ結界に無数の剣気を放った。
それらは結界に小さな穴を開けたが、すぐにまた遮られた。
ある神がカミーラを通じて顕現しようとして召喚を試み、怒りを爆発させたのだ。
そして私はすべての神々の選択を受けたとはいえ、人間の体には限界があった。
[神々があなたの安否を心配しています。]
[正義の神ヘトゥスが、本当に計画通りに進めるつもりなのかと問うています。]
私は喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
過程がどんなに困難でも、正しい道を行くのが最善だ。
チャエン-!
休む暇もなく剣の斬撃が結界を叩いた。
ソードマスターのあの攻撃なら、突破も可能だろう。
私は焼き払うことができる。
しかし、神の力は聖体とは比較にならないほど強大だった。
『まず近づかないと……!』
神聖力をありったけかき集めて結界に放ってみようかとも考えた。
だが、もしそうすれば危険のリスクが高まる。
カミーラに近づく前に、力尽きて倒れるかもしれない。
結界というのは予想外の難関であり、私はそのことで悩んでいた。
「……」
後ろから足音が聞こえた。
『誰?』
聖騎士や普通の人間では近づけないほど、気運は強く、風も荒れていた。
だがその足音は、まるで何の妨害も受けないかのように、普通の歩幅でのどかに響いていた。
私の横を通り過ぎてから、私はようやく彼が誰なのか気づいた。
「カッシュ……?」
黒い髪が風になびいていた。
[知識の神ヘセドが驚いて動きを止めます。]
[慈愛の神オーマンが驚いて涙を流します。]
[破壊の神シエルがうなっていたのをやめます。]
[正義の神ヘトゥスが涙を浮かべます。]
神々の反応は尋常ではなかった。
カッシュは私を振り返らなかった。
『カッシュ……じゃない?』
間違いなく彼の姿だったが、なぜか脳裏をかすめる思いだった。
カッシュはゆったりと、優雅な足取りで結界まで近づいていった。
その結界には、いまだにカイルが剣気を放っていたが、攻撃はほとんど効いていないようだった。
カッシュはゆっくりと手を上げて、結界に触れた。
その瞬間、突如として激しい暴風が巻き起こった。
前はよく見えなかったが、カッシュの瞳が強く輝いたのを一瞬見た気がした。
そして大きな爆発音が響いた。
「くっ……」
「うっ。」
強烈な反動に押され、カイルが後ろにぐらりとよろけた。
レイハスがかろうじて私の肩を掴み、ふらつく私を支えてくれた。
しばらくして、結界に遮られていた前方が開いているのが見えた。
カッシュは黙って立っていた。
そして彼がゆっくりとこちらを振り返る。
『あなたは誰?』
人間にできることではない。
一瞬、頭の中をよぎった考えがあった。
『まさか……今のカッシュの体の中に別の誰かが……?』
私ははっきりとカッシュを見つめ、拳をぎゅっと握った。
彼が薄く微笑んでいるのが見えた。
しかし、今もっとも重要なのは目前の事態だ。
さっき風に飛ばされたキュがすぐに駆け寄ってきて、私の膝と体を伝って肩に乗った。
私は戸惑わずに前方へと走り出した。
そしてカイルとレイハスに叫んだ。
「私を止めてください!」
無謀な行動にカイルは目をしかめたが、それでも間一髪で私の体を押しのけた。
カミーラの体の周囲から、数多くの魔物たちがうごめきながら現れ始めた。
シュイッ!
カイルの剣気が魔物たちを切り裂き、レイハスの神聖な剣が魔物たちを払った。
私の首には、リタがくれたペンダントが揺れていた。
「カミーラ!」
カミーラは鮮やかな緑色の瞳で私を見つめていた。
そして彼女が黒い気運に満ちた手を引く瞬間、私はキュに向かって叫んだ。
「お願い、キュ!」
「キュウウッ!」
肩の上でスパークが弾ける音がし、その方向へ向かってキュがカミーラに飛んでいった。
パン!
轟音とともに爆発のような強烈な電撃が再びカミーラの体を打ちつけた。
「クッ……!」
カミーラの眉がピクリと持ち上がった。
『成功だ!』
ほんのわずかな時間でも十分だった。
カミーラに接近するために。
私は彼女の首を両手で締め上げるように掴んだ。
電気が走って私の体もビリビリと痺れたが、それでも彼女の首を絶対に離すことはできなかった。
目の前にはカミーラの凶悪な緑の目が私を見つめていた。
「聖女様!」
「アリエル!」
レイハスとカイルの声が後ろから聞こえた。
私の首を掴んだカミーラが口元を吊り上げた。
私はカミーラを見ながら言った。
「私の目を見て。」
するとカミーラは、まるで魔女のようなかすれた声で言った。
「すぐに燃え尽きるような目をなぜ見るの?」
カミーラの緑色の瞳、その奥深くが暗い穴のようにゆらめいているのを見て、私は微笑んだ。
「あなたに言ったんじゃない。」
「なに?」
喉元から強力な黒魔法が発動された。
そしてその瞬間、チャットウィンドウが開かれた。
[死の神カイロスがあなたに感応を使用します。]
[芸術の神モンドがあなたに感応を使用します。]
[愛の神オディセイがあなたに感応を使用します。]
[知識の神ヘセドがあなたに感応を使用します。]
[破壊の神シエルがあなたに感応を使用します。]
[正義の神ヘトゥスがあなたに感応を使用します。]
【慈愛の神オーマンがあなたに感応を使います。】
【あなたは偽りの神ベラトリクスと対話を試みます。】
あたたかい風が吹き込む庭園のテーブル。
ライム色の髪をなびかせる輝かしい存在は椅子に座り、一杯の茶を飲んでいた。
色とりどりの花が咲き誇る庭園を眺めながら、彼女が手をそっと伸ばすと、風が吹いて花びらがそこかしこへと舞い散った。
花の香りと踊る花びらを眺めながら、彼女は唇にほのかな微笑みを浮かべた。
『でも……』
お茶を一口すすると、彼女は茶碗を置いて、ふっとため息をついた。
『今、私はここで何をしているの?』
よく思い出せなかった。
なぜここにいるのか、誰を待っているのかも分からなかった。
『誰かが私を呼んだ?』
どこかで自分の名前を切なげに呼ぶ声を何度か聞いたような気もした。
なんとなく状況が少しおかしいと感じた彼女は、後ろを振り返った。
しかし背後には、ぼんやりとした鉄板のようなものしか見えなかった。
ため息をついてもう一度前を見たときだった。
「……!」
彼女の目の前に誰かが座っていた。
黒いドレスを着た若い女性は、緑色の髪をしていた。
「……人間?」
ベラトリクスは眉をひそめ、鋭く言った。
「人間が軽々しく私の前にいるとはどういうことだ?」
人間は神を直接対峙することはできなかった。
死の宮殿にいる人間たちは霊体のみであり、例外とされている。
たとえ死んだ人間だとしても、神の許可なしに神の前に立つということ自体が無礼なのだ。
緑の髪に褐色の目をしたその女性は二十代前半ほどに見えた。
彼女は悲しげな瞳でベラトリクスをじっと見つめていた。
首には透明なペンダントがかかっていて……。
「……え?」
私のすぐ近くで黙って座っていた彼女を観察していたベラトリクスは、眉をひそめた。
人間の女性の背後から、何か親しみがあって懐かしい感じがした。
『まさか他の神々の加護を受けているアリエルの後継者?いや、その後継者とは顔が違うけど?』
しばらくして、ベラトリクスの前で彼女に黙って向き合っていたリタが、重く口を開いた。
「……初めまして、お母さま。」
その瞬間、女性の首にかかった首飾りから、大気を震わせるほどの衝撃が伝わってきた。
ベラトリクスは眉をひそめながら尋ねた。
「あなたは誰……?あなたが私をここへ連れてきたの?」
トク、トク、トク、トク。
「いいえ。私は母がいる場所に来たんです。」
「……何だと?」
時計の秒針の音が聞こえた。
静寂を切り裂くような音だった。
「あなたがカミーラだと思っているその女性が、本当はそうではないということをお伝えしに来ました。私はずっと、母が偽りの幕に囚われたままにならないよう、どうかその幕を破って抜け出してくれるよう、切に願っていました。」
与えられた時間が長くないと分かっているからこそ、本題から入ったリタの言葉に、ベラトリクスは眉をひそめた。
「人間の嘘はあまりにも軽薄で冷たいな。もう感情すら感じなくなったのか。」
かつて人間を愛したこともあった。
そして人間のように家庭を築こうとした。
今思えば、滑稽でしかないことだ。
それでも、まったくの無駄ではなかった。
愛おしい魂、カミーラをその人間との結びつきから得ることができたのだから。
そしてベラトリクスはカミーラのためにすべてを捧げる覚悟だった。
今では永遠の時をこれ以上生き続けることにも疲れた。
愛しい後継者に栄光ある力と新たな命を授けて去ることができるなら、それはどれほど素晴らしいことかと思っていた。
「お母さま。まさかカミーラが偽物で、あなたが“カミーラ”だなんて陳腐な言葉で“偽りの神”である私を騙せると思って来たのか?」
その言葉にリタは喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
「私は覚えています。」
ベラトリクスは鼻で笑った。
「父であるイジャルが母を裏切り、ひどく苦しんでいたあの震え。そしてイジャルを操っていた、すべての元凶——レイド……」
一瞬、怒りで目を見開いたベラトリクスの動きが止まった。
「くだらない話をもっと聞かせてくれるつもりだったが、やめておこう。」
イジャル——どれほど久しぶりに聞く名前か。
「レイド、その邪悪な神があなたを欺いたあの瞬間を……」
「それ以上口を開かない方がいい。お前などどうせ人間界の使い走りに過ぎないのだ。」
この場のことなど、何も知らずにただ思うままに行動しているに違いない。
ベラトリクスの周囲には強い風が吹き荒れ、リタの長い髪が風になびいた。
ベラトリクスはリタを見下ろしながら、ギリッと歯を食いしばった。
「神の怒りを買った魂は、サレリウムでも安らかに眠ることはできないでしょう。」
「お母さま……。」
だが、リタは悲しみをたたえた瞳で怯まず、静かに言葉を続けた。
「すべての神が、お母さまを救いたいと願っています。」
そしてその瞬間、リタの目に青い光が走った。
それはベラトリクスの風が止んだ、静寂の一瞬だった。
「皆さんが母を大切に思っていることが伝わってきます。どうか、私たちの声に耳を傾けてください。」
突如として放たれた光に、ベラトリクスは目を細めた。
一定の間隔で響いていた時計の秒針の音が、急に早くなり始めた。
そして再び前方を見たその時……どこかで聞いたことのある声が聞こえた。
そこには、黒青い姿の影が見えた。
その影のそばには光の球体があったが、影から漂う暗い気配のせいか、光は徐々に消えていった。
「愚かなベラトリクスよ。人間との間に生まれた魂の器を支配者として作り変えるという話を信じているとは。なんと浅はかで純粋な神なのだ。」
声は続いた。
「本当に神と呼ぶにはあまりにもつまらない存在ね。世界の支配者なら……このくらいでなきゃ。」
ぼんやりとした形の魂と似た大きさの黒い魂が、徐々に形を取り始め、幼い少女の姿となった。
輝く金髪は黒い気運を吸収しながらなびき、緑色の瞳の中心には深い闇が宿っていた。
ベラトリクスの瞳が揺れた。
レイド……あの声はレイドだった。
彼は強く美しい神であり、ベラトリクスは彼を信じ、疑うことはなかった。
カミーラを守るために魔王と対峙し、神格を奪われたのは惜しいことだったが、レイドがいない分、自分がより一層カミーラを守らねばと考えていた。
それにしても、あの者は一体何を言っているのだろうか。
「真実と偽りを判断できるでしょう?私の記憶が本当に偽物かどうか、どうかお母さん自身で判断してください!」
リタの言葉は、ベラトリクスの急所を突いた。
球体から放たれていた鮮やかな光が、一瞬パッと点滅した。
「違う……違う……!」
ベラトリクスには分かっていた。
目の前の少女から出てきた記憶が、真実であることを。
そのとき、彼女の前に一筋の光の輝きが走った。
「あなたたち……」
ベラトリクスの眉が震え動いた。
神のように荘厳でありながら、神々だけが聞くことのできる言語でささやく光の存在を見たベラトリクスは喉を鳴らした。
「そんなはずがない!そんなはずがあるものか!」
レイドの声は静かに、しかし鋭く続いた。
「この死んだ魂に似た気運を吹き込めば、ベラトリクスは想像すらできまい。自分の本当の娘の魂がすでに消滅したということを。」
かすかに光っていた魂の形は、今や完全に光を失い、抜け殻のような状態になっていた。
「その娘は、私の意図どおりに誠実にお前に仕え、お前を加護し、祝福してくれればいい。そうすれば、私が用意したとおりに人間たちはお前に従い、お前に魅了されるだろう。ベラトリクスに見つからないようにな。心配するな。私の権能が、お前の偽りを消し去ってやろう。」
それは永遠の神、レイドだった。
永遠の権能はベラトリクスを欺くには十分すぎるほどに強力で、その影響範囲も広大だった。
闇の手が少女の金髪を撫でながら言った。
「カミーラと名乗ったか。あの邪悪な魂の名……。今度はお前がその名を継ぐ番だ、カミーラ。」
レイドが創り出した少女は、暗い瞳で微笑んだ。
「私はお前の背後に立ち、お前は世界を支配して私の足元にすべてを跪かせるのだ。」
少女が口を開いて、答えた。
「はい、お父さま。」









