こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

120話ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- カイルIF
[運命の神の権能により、4つの分岐点が新たに設けられます。]
[1. レイハス ルート]
[2. カイル ルート] ◀️
[3. ディエゴ ルート]
[4. ダガルサル ルート]
[すべての分岐点は、運命の神がそれぞれの分岐点を新設した時点から始まります。]
[各分岐点は独立した次元の出来事であり、現在、あるいは他の分岐点に影響を及ぼすことはありません。]
“私が望むのはただ一つ。私の命の保障です。”
“私が天を敵に回さない限り、その者を殺さないことです。”
カイルは目を開けた。
窓の外から朝の日差しが差し込んでいた。
どれほど久しぶりだろうか、あの日の夢を見たのは。
警戒心に満ちた瞳で自分を見つめていた青い瞳の彼女。
アリエル――口にすればするほどほろ苦さを感じさせる名だった。
かつてはただ、自分の計算の中にある「偽物の聖女」にすぎないと思っていた彼女が、今や帝国民が列をなして崇める高貴な聖女となっていた。
「殿下にとって私は、いつだってただの駒にすぎないのでしょう?結婚するほど好きなわけでもないじゃないですか。」
それを否定することはできなかった。
確かに最初はそうだったのだから。
だが、カイル自身も自分の気持ちに気づくまで時間はかからなかった。
皇妃を相手取った時、狩猟祭で、アレスで――冷徹に押し殺してきた自分の心が少しずつ膨らんでいき、もはや抑えきれないほどの欲望へと変わっていったのだ。
それでもカイルは、自分の感情だけを理由に彼女へ婚姻を迫ることはできなかった。
大切なものだからこそ守らなければならないということを、父と母を見て学んできたのだ。
結局、執着していた。
だがその執着は、アリエルと他の男たちについての噂を耳にするたびに、一方へと力が傾いていった。
“殿下、キャス・ロイド侯爵と聖女様の密会の噂が広まっています。このままでは本当に奪われてしまうかもしれません!”
セインの言葉に胸がドクンと音を立てた。
カイルは一瞬止まっていた足を再び踏み出した。
退くことができるだろうか?いや、できない。
もし他の男がアリエルを自分のものにしようとするなら……考えるだけで殺意が燃え上がってきた。
“ふざけるな。”
アリエルは忙しい。
皇太子であるカイル自身よりも。
カミーラが消滅し〈虚偽の神〉が〈運命の神〉となったあの日から、彼女はさらに忙しくなった。
噂では、繁華街に店を構えたとも言われている。
通りを歩けば、外部の攻撃を防ぐ効果があるという補給型の聖石を配布しており、騎士たちの間でも人気が高いらしい。
(騎士たちが彼女にちょっかいを出すことはないだろう。そんなことをすれば、全員叩き斬ってやる。)
すでに一度、対策を講じたことはあったが、それでも不安は消えなかった。
帝国の皇太子らしくないと思いながらも、彼の赤い瞳は鋭く光る。
やがて彼は演武場へと足を運んだ。
(そういえば、もうすぐ建国祭か。)
皇宮では建国祭の催しがあった。
モンスターを闘技場に放ち、騎士たちがそれを狩る武闘会は大きな見ものだった。
カイルも騎士たちと共にその武闘会に参加し訓練のために一通り練習をさせていた。
そしてその日、アリエルが皇宮に来る。
どれほど久しぶりの再会だろうか。
宮殿を出た瞬間、明るい光がまばゆく彼の前を照らした。
『アリエルに会えるのか。』
彼の目は戦いを前にした獅子のように鋭く光っていた。
自称・恋愛の達人であるセインが言っていたことを思い返しながらも、カイルは耳を傾けていた。
“女性たちはもともと強い雄ライオンに惹かれるものです。だから一度捕まえたら、後ろに回って強く壁を築くのです。我が祖父のさらに祖父の時代から伝わる『最新恋愛秘法』に記されたことなので、信じても構いません。噂によれば、スキャンダルメーカーとして名高いキャス・ロイド侯爵もこの本で恋愛を……”
カイルは、壁に背を預けているアリエルの隣で、強く壁を叩きながら自分の気持ちを告白するシチュエーションを思い浮かべた。
ソードマスターの力を込めれば、壁は大きく凹み、亀裂が走るだろう。
――けれど返事はどうするのだ?
壁を叩くという行為が「好き」という気持ちを表す非言語的な行動であることは明らかだった。
だとすれば、それに応える返事も同じように似た行動であるはずだ。
彼の頭の中では、カイルの告白に頬を赤らめたアリエルが幸せそうに自分の手を上げて、壁をドンッと叩く光景が浮かんでいた。
そして、その瞬間に壁が崩れ落ちる様まで想像されていた。
アレスの湖で見たあの記憶を頼りに、アリエルの拳は明らかに自分の拳より強かった。
剣を取れば勝敗は変わるだろうが、それはさておき。
カイルは一瞬足を止め、口元をかすかに緩めた。
「心臓が高鳴っているな。」
彼の耳の先が少し赤く染まっていた。
「さあ、これはサービスだ。」
久々に会うノアに、ノアが自分の店で買ったものよりもずっと質のいい防御用の聖石が嵌め込まれたガントレットを差し出した。
「聖女様!そんなことをなさったら、私はもう来ませんからね!」
「武闘会で私にかっこいいところを見せたいって言ったじゃないですか。」
まもなく建国祭があった。
そして皇宮の騎士ノアが、武闘会の第一幕に参加すると聞いた。
三幕で構成される武闘会は、皇宮騎士たちの実力を披露し、士気を高めるための催しであり、帝国民たちから非常に人気のある行事だった。
第一幕に登場するモンスターは大半が弱いものばかりだったが、それでもまだ幼いノアのことが心配なのは仕方のないことだった。
だからこそ今、無理やり高級のガントレットを持たせているのだ。
「聖女様……このご恩を、あとでどうやって返せばいいんですか……。」
[慈愛の神オーマンは、いつか返済の日が来るだろうとしながら、ノアが成年になるまであと何年残っているかを計算します。]
[正義の神ヘトゥスは揺れる瞳でオーマンを見つめます。]
「大丈夫だから。あまり気にせずに、ちゃんと使って返して。」
返してくれてもいい、という言葉にノアは恐縮しながら物を受け取った。
そして深く頭を下げて挨拶をした。
「それじゃあ必ずお返しします。」
「そうね。今回の武闘会、楽しみにしている。」
私の言葉に、ノアは引き締まった表情で頭を下げた。
「かっこいい姿をお見せします。」
私はくすっと笑いながら、彼の頭を撫でてやった。
「そう。でも、無理はしないでね。」
初めて会ったときはまだ子ども同然だったノアの体つきは、今ではすっかり少年らしくなっていた。
そして盗賊ギルドにいたころは少し自信なさげだった歩き方も、今では騎士のように堂々としている。
日ごとに成長していくノアの姿を見るのは嬉しかった。
自分の子ではないけれど、まるで子どもを育ててきたような、そんな誇らしい気持ちだった。
やがてノアがガントレットを受け取り出発し、私は残った聖石を整理した。
[知識の神 ヘセドがあなたを祝福します。]
「治癒に役立つ聖石はこっちに並べて……防御用は効能ごとに説明を貼らないといけないな。」
最初はペット用品店を開こうとしたが、この地の人々は一部の貴族を除いて真剣に動物を飼う者がほとんどおらず、事業を断念した。
そして選んだのが、聖石を扱う店だった。
商品はロイド商団に卸していたが、口コミが広がるにつれて騎士や兵士たちの間でも徐々に人気を集めるようになった。
「終わった。」
かなり日が暮れてからようやく整理が終わった。
「もう戻らないと。」
私は週に二日ほど、この店に通っている。
他の祠堂は庭園として使われていたので、聖女の仕事と両立させることができた。
扉を出ると、ドウェインが立っていた。
「おや、営業はもう終わりましたか?」
私は彼を見て目を細めて尋ねた。
「レイハス様が、また監視しろと送り込んだの?」
[芸術の神モンドが静かに微笑みます。]
「い、いえ。聖石を買いに来ただけで……。」
しどろもどろに言葉を繋ぐドウェインの姿に、思わず笑みがこぼれた。
どうやら本当に聖石を買いに来たらしい。
「どんな用途ですか。」
「体力増進用はありますか?」
私は客に笑いかけた。
「つまり……罵声を浴びても堂々として、殴られても長時間耐えられて、身体に傷一つ残らない……」
「どうしてです?誰かにいじめられているんですか?」
[破壊の神シエルが静かにしろと言わんばかりにうなります。]
「ええっと……建国祭の行事に行ったとき、またうっかり誰かとぶつかってしまわないか怖くて……。ところで、このうなり声、私だけに聞こえてます?」
好奇心いっぱいの私の目を見たドウェインは、怖いとでも思ったのか、肩をすくめて頭をかいた。
「えっと……ちょっと待ってください。体力増進に加えて、疲労回復の効果もあるはずですよ。評判を聞く限りでは。」
彼を見た私は、再び店の中に入り、箱を探り始めた。
そういう用途なら、新しく入ってきたものがある。
それを手に取って外に出ようとしたとき、私は横にあった聖石をもう一つついでに掴んだ。
「さあ、これです。」
外に出てドウェインに赤い聖石を差し出すと、彼は口元に笑みを浮かべて受け取ろうとした。
「ちょっと。代金を払ってもらわないと。」
「は、はいっ。」
タダでくれるのではないかと少し期待していたのか、ドウェインは口を尖らせた。
「本来は50フランですが、知人割引で30%引きにして、35フランにしますよ。」
「えっ?元はこんなに高いんですか?」
「このくらいならむしろ安い方ですよ。ほとんど利益も残らないんです。」
[知識の神ヘセドが、そんなに安く売って何が残るのかと小声でつぶやきながら、帳簿をめくります。]
「……わかりました。」
ドウェインは財布を取り出して、35フランを私に差し出した。
お金を受け取った私はもう一つの聖石も彼に手渡した。
これでは残りが少なくなってしまうけれど、一緒に過ごした日々もあるから特別に渡す贈り物だった。
「これはサービスです。」
ドウェインはぎこちない顔で、かぼちゃ色の聖石を受け取った。
「こ、この黄色い聖石は……どんな効能が?」
「美容です。」
少なくとも三十五歳ほどに見える老け顔をした、実際の年齢は二十代のドウェイン。
自分では岩のように堅実だと思い込んでいるようだが、彼が女性と一緒にいるのを私は一度も見たことがなかった。
「ああ、ここでもっと若く見えたら、騎士団長の威厳が……」
[慈愛の神オーマンは、世の中で最も無駄な心配だと言いながら、ドウェインの心配を宥めます。]
「余計なこと言わずに、大事に持ち歩いてください。」
私は彼の手に本来50フランのかぼちゃ石の宝石をしっかり握らせ、強い眼差しを送った。
「大丈夫です。私が参加します。」
建国祭に行くと言い出したレイハスを止めて、私は王宮へ向かう馬車に乗った。
デイジーが選んでくれた銀色のドレスは美しく揺らめき、片側にまとめた髪は上品に飾られている。
ノアの武闘会も見に行かなくてはならなかったが、久しぶりに会いたい顔ももう一つあった。
「聖女様〜!気をつけて行ってきてくださいね〜!」
朝、私から美容の聖石を贈られたデイジーが、力いっぱい手を振っていた。
「きゅううう〜。」
デイジーの肩に乗っているキュウも、同じように短い腕を振っていた。
「聖女様、美容石って、けっこう効果あるみたいです。もしかしたら私の勘違いかもしれませんけど……。」
神殿を出てしばらく行ったころ、窓の外からドウェインの声が聞こえた。
「今日はやけに、娘さんたちがずっと僕を見てくるんですよね……。」
[芸術の神モンドが肩をすくめます。]
「効果があるのは確かですが、後に続けた言葉はただの詭弁です。」
きっぱりと言い切った私は窓を閉めた。
「そんな……冷たすぎるんじゃありませんか。」
ドウェインの不満げな声が聞こえ、思わず笑みがこぼれた。
美容石で完全に隠すには限界があったが、ドウェインはシワをあまりにも正直に受け入れていた。
それでも今からでもきちんと手入れするようにと。
今日はいつもより王宮への道のりが長く感じられた。
私は背もたれに身を預け、しばし目を閉じた。
「眠いな。」
そして私も知らないうちにうとうと眠ってしまい、目を開けたとき、ちょうど馬車の扉が開く音がした。
重たいまぶたを上げて視線を向けると、燃えるような赤い瞳と赤い髪が目に入った。
大柄な体にぴったり合う黒い祭服、その背に翻る赤いマント。
そして腰に差した長い剣――そのすべてが一気に意識を覚醒させた。
カイルが白い手袋をはめたまま手を差し伸べてきた。
「疲れた旅の途中で眠ってしまったのだな。」
「つい、眠ってしまいました。少し揺れが心地よくて。」
私は微笑んで足を動かし、彼の手を取って馬車から降りた。
だがまだ寝ぼけていたのか、足をもつれさせてしまった。
「きゃっ。」
しかし幸いにも倒れはしなかった。
彼の広い胸が私を抱きとめて支えてくれたからだ。
[破壊の神シエルがしっぽを揺らしながら頬を赤らめます。]
[慈愛の神オーマンが彼の胸の広さを測ってみます。]
[愛の神オディセイがその堅実さを称賛します。]
爽やかな香りが彼の体から漂い、私の鼻先をくすぐった。
間近に迫った彼の顔が視界いっぱいに入り込んでくる。
濃密な視線がしばらくの間、私に注がれていた。
[芸術の神モンドは、彼の顔立ちは認めるが、赤い髪と瞳はどうにも好みではないと首を振ります。]
[死の神カイロスは、彼の強靭さとセクシーな雰囲気が怪しげな栄光にふさわしいと足をバタバタさせています。]
ドキドキと胸が高鳴り、頬に熱が上るのを感じた私は、慌てて体を起こした。
「すみません……。」
けれど彼は気にする様子もなく、私の手を取ってしっかりと立たせてくれた。
「大丈夫だ。」
その声には、どこか楽しげな響きがあった。









