乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する【１３４話】ネタバレ

「・・・」

セドリックは低い声で笑う。

しかしその笑い声はなぜかダリアにするように優しいのではなく、思ったより陰険に聞こえた。

「ルウェイン、お父さんは寛大だが、私はそうではない。君は生意気すぎるよ」

「いいですよ。爵位を降りたら、ダービー海域はお母さんが管理し直さないといけませんね」

このままでは喧嘩になりそうだ。

ダリアは机の外に身を起こした。

セドリックは彼女を見て無理やりな笑みを浮かべる。

「私を待っていたんですか、ブルーポート公爵様？」

ルウェインもいつ文句を言ったのかと言わんばかりに素直に答えた。

「はい、ダリア・ペステローズさん」

「私と話があるとしても、こんなに待つ必要はないじゃないですか」

「すみません」

ルウェインが頭を下げる。

非の打ちどころのない綺麗な礼法だ。

「こんな時だけ・・・」

見ると、セドリックも呆れた表情をしている。

ダリアはセドリックの手を握ったとき、2人を引き離すために2人の間に割り込んで、後ろに手を伸ばした。

あっという間に彼は静かになる。

彼は捕まったダリアの手をいじった。

「ルウェイン・ブルーポート公爵、私と話したいなら時間を作ってあげます。私も公爵様にお話があるので。しかし、セドリック皇子殿下は私の大切な方です。謝ってほしいです」

「すみません、皇子殿下。私が無礼でした」

「・・・ああ」

セドリックはダリアの手をじっと見つめながらうなずく。

もはやルウェインから関心が消えたようだ。

ルウェインのような山のような固い人がダリアの言う通りにすぐ反応すると、彼女も少し気分が良くなる。

ルウェインヘの話もあったし。

ダリアはセドリックをいい言葉で送り返し、ルウェインと二人きりで書斎に残った。

ルウェインは彼女を見下ろす。

彼女も挑戦的に彼を見つめた。

ダリアはこれまでルウェインがあらゆる人々に言った言葉と行動を通じて、大体彼の存在を把握した。

信じられなかったけど、たぶん彼は・・・。

（回帰者だと思う）

預言者という言い訳は皇帝さえ信じなかった話だが、ダリアは信じた。

正確には予言者というより、果てしなく同じ時間帯をさまよう回帰者。

＜ウロボロスの迷宮＞をプレイした後にこの世界に落ちたため、ダリアは外部の介入なしに原作から外れるということがどれほどとんでもないことなのか分かった。

なんとなく、原作の最後に「最初からやり直せる」ということを強調した時からおかしかった。

ブルーポート家に時間を戻す能力が伝わるという伝説はダリアも聞いている。

彼が時間を取り戻したとすれば、なぜ一人だけで原作のすべての規則を破って自分の思い通りにするのか、全て理解できた。

（それも一度ではなく、数十、数百回回帰したかもしれない）

だからアセラスが条約を破棄することも知って、わざわざアルトス公爵にも偽の情報を与えたのだろう。

ダリアに変に執着するのは、おそらく彼女が唯一回帰前にいなかった存在だから。

ダリアは自分の推理力に満足していた。

これ以上ルウェインが何を言っても驚かないはず。

「ダリア・ペステローズさん」

「はい、どうぞ」

たぶん、彼はどうやって走れない回帰の中に一度も現れなかった自分が、突然現れたのか聞くのだろう！

しかし、答える内容はなかった。

だって、ダリアもなんで自分がここに落ちたのか分からないから。

しかしルウェインが見せた反応は、ダリアが繰り広げた無数の予想とは全く違った。

ダリアを見下ろす彼の目頭が徐々に赤くなる。

「うん？」

ダリアが固まった。

ちょっと誤解であってほしいと思ったが、ルウェインの目元がますます赤く燃え上がり、やがて、その大きな体と似合わない美しい目尻の先に涙が溜まり始める。

ダリアは呆れて口を開いた。

「な、なんで泣くんですか？」

ルウェインはダリアの肩に手を置く。

そして言った。

「大変驚いたことでしょう。ゲームの中の世界に落ちて」

「・・・」

一瞬、ダリアは驚いて気絶しそうになった。

（あ、違う。ここで、あ、あわててはいけない・・・）

ダリアは精一杯気を引き締めて、最大限声が震えないように注意しながら言葉を吐いた。

「ど、ど、どういうことですか？な・・・何を？」

「・・・」

「は、はは。チェスみたいなことをおっしゃってるみたい」

どうやってでもこの事態をもみ消してみようと、ダリアは慌てて言い訳をしようとしてみた。

しかし、ルウェインはそのような機会を与えない。

彼は大人が子供のように拳で涙を拭いながら言った。

「『ウロボロスの迷宮』」

この世界で、その名を、それも原作の男性主人公の口から聞くことになるとは思わなかった。

ダリアは信じられない状況にぼんやりと彼を見る。

ルウェインはまだ涙声でダリアを見ていた。

「あなたがなぜこの世界に落ちたのか、考えたことはありますか？」

「どうしてそれが分かるのですか？」

ダリアはbpんやりと彼を見て言った。

この程度になると、認めずにすることがなかった。

ルウェインは世界の秘密を知っている。

「私がダリアさんをここに呼んだからです」

「・・・どうしたんですか？」

「あなたがこの世界を救えると思って」

「・・・」

「すみません。でも、あなたも二度目の人生は悪くなかったと思います」

ルウェインは震える声で言った。

ダリアは湖のように静かなルウェインの青い目を覗く。

このような状況に美しいという気がするというのが不思議だった。

「日記帳に書いてあるお話・・・覚えてますか？私が書いたんだけど」

大昔、ダリアが見た文句が再び彼女の目の前に再生されるようだった。

［あなたが触れる席ごとに救いがあるはずです。そのカで多くの人々を救うことを願います］

頭がくらくらする。

ルウェインはダリアのぐらぐらする肩をつかんだ。

相変らず目頭が赤くなったが、涙は少し沈んだままだった。

「あなたが本当に必要でした。そして今になって思います。あなたを呼んだのは本当によくやったと」

「・・・」

「もっと詳しい話を聞きたいなら、別日にブルーポート公爵邸に来てください。これ以上長くいると、皇子殿下が私を疑うでしょう」

ダリアは唇をかんだ。

混乱したが、一つだけは聞いてみなければならなかった。

「あの・・・一つだけお聞きします」

「はい、そうしてください」

「セドリック様がなぜ何度も同じ運命を迎えるのかご存知ですか？」

「・・・」

ルウェインはダリアをしばらく見下ろす。

そして首を横に振った。

「知りません。しかし、今回は違うはずです。すべてが」

「・・・」

「ダリアちゃんがいるから」