こんにちは、ちゃむです。
「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

170話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最後の計画③
セドリックは奇妙な感覚に襲われた。
彼が知る既存の世界と隔離されるような感覚。
重力のように足をしっかりと支えていた感覚が消え、心臓だけが元の位置よりも浮いているように感じた。
そうか、この世界にはもう本当に二人きりなのだ。
アセラスが顎を上げ、彼を見つめた。
「やあ、アセラス。」
「……セドリック・ベレッセロナ……ミケリオ。」
「フルネームだなんて、大げさだな。今やお前の唯一の友人なんだから、少しは優しくしてくれよ?」
セドリックは軽く笑いながら、アセラスに近づき、その顎を指でトンッと弾いた。
この嫌な雰囲気を壊して、ダリアの名前を口にしたかった。
しかし、アセラスの表情を見た瞬間、わざと挑発するような言葉が先に出た。
「どうした? お前が待っていたのは、俺じゃなくて別の人間だったのか?」
セドリックはくすっと笑った。
「状況もわからず、愚かで、そんなに手酷く打ちのめされたのなら、そろそろ諦め時だって気づくべきじゃないか?」
彼が軽く距離を取ると、アセラスの体から神聖力の刃が形成された。
それは鋭くセドリックの体を切り裂いて通り過ぎた。
同時に、毒のような強烈な神聖力がアセラスの全身に爆発した。
ついに、彼の暴走が始まったのだ。
神聖力がこの狭い異空間全体を激しく揺さぶった。
床の破片が宙に舞い、まるで小さな隕石のように漂う。
もしセドリックが先ほどの緑色の物質を吸収していなかったら、この瞬間、彼はすでに爆発するか、生きていても暴走に巻き込まれていたに違いない。
セドリックは虚空を見つめながら深く息を吐いた。
苛立ちが募る。
だが、あの緑色の物質がなんなのかわからないおかげで、狂わずに済んだことを幸運と思うべきなのか?
とはいえ、魔法を行使することで大量の魔力を消耗していた。
頭痛が止まらない。
ルウェインが世界に干渉し始めたことで、徐々に記憶が戻り始めた。
その繰り返される人生について考えると、彼はますます疲労を感じた。
彼は疲れていた。
休みたかった。
そして、ダリアに会いたかった。とても。
『愛するダリア。』
彼がとても愛するダリア。
今、アセラスとこんなふうに向き合っている時間さえも、惜しく感じた。
一時間。
首都が炎の大地に変わるのを防ぐためには、この一時間の間、セドリックは暴走するアセラスの神聖力を最大限吸収しなければならなかった。
ベオルドがこの異空間を解除し、ダリアがアセラスを浄化するまでの、ほんのわずかな時間を稼ぐために。
「……異空間分離魔法か。頭を使ったな。笑い話にもならない自己犠牲精神か?お前はどうせ死ぬ。俺と一緒にここでな。」
くだらない言葉だった。
セドリックは彼を見つめ、ゆっくりと口を閉じた。
アセラスは燃えるような瞳で彼を睨みつけたが、セドリックが爆発する気配がないことに少し驚いた表情を見せた。
そして、しばらくの沈黙の後——真実を悟った彼は、乾いた笑いを漏らした。
「アハ、そういうことか。俺がダリア・ペステローズを守るために自分の神聖力で何かを作ってやったってわけか。」
セドリックは皮肉げに笑った。
そして、周囲に広がるアセラスの神聖力の隙間を縫いながら、彼のもとへと歩み寄った。
アセラスの髪を掴み、無造作に振り払った。
さらに、もつれた彼の襟元を掴んだ。
アセラスは鋭い声を上げ、彼を睨みつけた。
セドリックは微笑しながら、ゆっくりと言った。
「結局、順番は守られるものだな。」
「……」
「もうすることもないし、お前を適当に殴りながら時間でも潰すか?」
セドリックは躊躇うことなく、虚空に魔力でいくつかの刃を作り出した。
そして、それをアセラスの心臓に向かって迷いなく突き刺した。
瞬く間に刃がアセラスの身体を貫いた。
しかし、血の一滴も流れなかった。
アセラスは自分の体に刺さった刃を自らの手で引き抜いた。
その瞬間、傷がみるみる塞がっていった。
アセラスは静かに床に崩れ落ちた。
カラン、と音が響いた。
狭い空間に大きく反響する音。
アセラスは微笑んだ。
この状況が妙に滑稽に思えたようだった。
「どうせ俺はもう終わりだ。こんなものに何の意味がある?」
「どうせ終わるなら、いっそ一人で死んだほうが楽だったかもな。」
アセラスとセドリックは互いに見つめ合った。
誰が先に動くこともなく、静寂と警戒の入り混じった視線が交差する。
セドリックは目を細め、穏やかに微笑んだ。
「正直、嬉しいよ。お前が頑丈で、何をしても死なないってことが。」
「……」
「でも、それって苦しみを感じないって意味じゃないよな?」
セドリックの背後に、再びいくつかの剣が現れた。
その瞬間、彼はまるで哀れな存在のように見えた。
「今こそお前の罪の代償を払う時だ、アセラス。」
一瞬、アセラスの表情が青ざめた。
少し後、アセラスは何十本もの剣に貫かれたままその場に縛り付けられていた。
セドリックは感情のないまま剣を振った。
瞬く間に、アセラスの体から傷が全て消えた。
彼は口元の血を拭い、依然として冷ややかに言葉を続けた。
「ダリア・ペステローズはなぜお前を選んだのか?」
「……」
「彼女はお前がこんな人間だと知っていたのか?」
‘知っていたはずだ。’
セドリックは考えた。
彼女はすべてを知った上で彼を受け入れた。
だが、アセラスに親切にそれを説明してやる義理などない。
代わりに、彼は皮肉な微笑を浮かべた。
「賢明な選択だったな。少なくとも、お前を選ばなかったことだけは。」
「無駄に優しい女だ。情が深いだけにすぐ冷める。お前が死んでも、彼女はすぐに忘れて何事もなかったように生きていくだろう。別の人と結婚して、子供を産むだろう。」
アセラスがその言葉に怒りを燃やす理由を、彼には理解できなかった。
それなら、アセラスは自分が死んだ後も、ダリアがずっと自分だけを思い続けて生きるべきだと考えているのか?
ダリアはダリアの人生を生きていく。
彼は彼女の人生に一瞬、関わっただけの人間に過ぎない。
許しを請うこともしなかったが、彼は一方的に恋に落ち、一方的に彼女の人生に介入することを決めた。
彼は自分がダリアにどんな意味を残すかなど気にしなかった。
どんな痛みも残したくなかった。
できることなら早く自分を忘れて、別の誰かを愛してほしいと願った。
彼にとっては彼女が全てだったが、彼女にとって彼は、ただ人生の一つの出来事に過ぎることを望んだ。
痛いほどに愛していた。
もう何を言っても意味がなかった。
その瞬間、異空間の端がパサッと音を立てた。
セドリックの口元に微笑みが広がった。
やはり、ダリアは一度も嘘をついたことがなかった。
その祝福のおかげで、喜びとともに心が透き通っていくようだった。
「ベオルド様、下がってください。結界を再構成します。」
ルウェインのきっぱりとした声。
そして、眩い光がセドリックの視界へと降り注いだ。








