継母だけど娘が可愛すぎる【１８３話】ネタバレ

「殿下も疲れたのなら早く寝ましょうか？」

「ええ、そうですね」

アビゲールは本当に疲れて見えた。

その落ち込んだ肩を見て、セイブリアンはふと彼女を抱きしめたくなる。

昨夜感じたこととは少し違う気持ちで。

前回、ブランシュとアビゲールを抱きしめたとき、彼は言葉では言い表せない安堵感を覚えた。

抱擁が慰めになることを彼はその時初めて知ったのだ。

セイブリアンは自分が受けた慰めをアビゲールに返したかった。

「ビビ、抱きしめてもいいですか？」

私の温もりがあなたの慰めになればいい。

その願いだけだった。

アビゲールが布団を引き上げて彼の方を向く。

「まだ風邪が治っていませんか？」

「いいえ、寒いからではありません。ただ・・・」

あなたを抱きしめてあげたくて。

あなたを慰めたくて。

その言葉が出てこない。

アビゲールはしばらく悩んだ後、そっと微笑む。

その笑顔がいつもと違って、セイブリアンは胸がひんやりした。

「えーと、殿下、誤解しないで聞いてください。私たち、ちょっと距離を置くのはどうでしょうか？」

「どういうことでしょうか？」

「私たち、最近あまりにも近くで寝ているようですから。少し距離を置いて寝たいのです」

アビゲールがはつらつとした声で話す。

先ほどの鬱陶しさは少しも感じられず、かえって違和感があった。

「すみません。私のせいで不便だったのですね」

「いいえ、そうじゃないのですが・・・。私自身が信じられないからです！寝ている間にいびきをかいているかもしれないじゃないですか？」

アビゲールは少し茶目っ気のある口調で喋る。

実際、それは言い訳に過ぎない。

本当の理由はケインの言葉のため。

彼の言ったことの大部分は聞く価値がなかったが、太ったという言葉が気になったのだ。

今も痩せているが、憑依したばかりの時に比べると肉付きは良くなった。

しかし、これまでその事実に不満を持ったことはない。

なぜなら、あの時より体が健康になったから。

ユリがアビゲールの体に初めて憑依した時、小さな病気にかかっても長い間苦しんだりした。

時々貧血で倒れ、まともに活動もできなかった。

これまで極端に少ない食事をしてきたのだから、ある意味当然のことだ。

痩せ過ぎたり片手で収まりそうな腰は、美しいというよりは不健康にしか見えなかった。

このまま生きていたら再び死にそうになる。

そのためユリは食事量を増やし、運動を並行した。

その後、体は再び健康になったのだ。

肉付きはしたが、他人の視線で見た時、アビゲールの体は依然として細い分類に入っている。

しかし、彼女は不安だった。

前より太ったのは事実なのだから。

実際、他の人たちもケインのように思っていながら、心の中で真心を飲み込んでいるのかもしれない。

セイブリアンもそう考えているのかもしれない。

彼女は怖くなった。

セイブリアンの評価が、そして自分の体が怖かった。

彼に抱きしめられるのも怖かった。

けれど、その事実を言うことはできない。

アビゲールは全ての恐怖を飲み込んだまま、何も気にしていないように笑う。

「いつの間にか殿下に厳しいことをしたくないのです。ただそれだけですから」

厳しいこと。

セイブリアンはその言葉を噛み締めていた。

アビゲールが言う「厳しいこと」が何なのか分からないが・・・。

「大丈夫です」

「え？」

「厳しいことをしても大丈夫です」

アビゲールなら何をされても平気だ。

アビゲールならいつでも彼女の意思を尊重してあげたい。

その言葉に彼女の顔がポッと赤くなる。

当惑しているのが感じられた。

「殿下！そのようなことを無闇に言ってはいけません！私が何をするか知っていて＿＿＿！」

「何をするつもりですか？」

皮肉ることも、探ることもない。

セイブリアンは本当に純粋に彼女は言う「厳しいこと」というのが気になったのだ。

アビゲールの口がパッと開く。

彼女は何も言えないまま、顔色だけが絶えず変わっていた。

セイブリアンはその表情を見るのが少し面白かった。

しかし、面白いことはすぐに終わる。

混乱に陥っていたアビゲールは拳をぎゅっと握り締め、キッパリと話した。

「とにかく！私が厳しいことをしたくないのです！だから距離を置きましょう！」

「・・・どうやって距離を置いてほしいのですか？まさか、一人部屋？」

どうか一人部屋ではないこと彼は祈る。

幸いにもアビゲールは首を横に振った。

「各部屋ではなく、ただお互いの空間を大事にしてみようと思います。私が全部準備しておきました。じゃじゃん！」

彼女は切り札を出す人のように枕の下から何かを取り出す。

それは長いリボンのひも。