家族ごっこはもうやめます【１３２話】ネタバレ

その時、突然ナビアが頭をさっと持ち上げた。

「クリードはとどこ？」

思う存分泣いた後、徐々に理性が戻り、クリードが思い浮かんだのだ。

クリードは彼らの後ろに立っている間にぎこちなく立っていた。

その姿に胸が張り裂ける。

さらに、彼はアレスの影響圏から抜け出そうともがいて、あちこちで怪我をしていた。

「怪我したの？なんで言わなかったの！」

ナビアはラルクを置き去りにして、すぐにクリードのところへ走った。

父親が嬉しいのは嬉しいことであり、クリードが怪我をしたのは別の問題だ。

そのため、ラルクの懐はあっという間に空っぽになる。

「・・・」

さっきまでの切ない父娘再会は夢だったのか・・・？

娘に会いたい時は、境界で一睡もせずに万神殿から侵してきた異界のものを殴り殺した。

もう娘と仲良く生きていけると信じて疑わなかったが、そうではないようだ。

ラルクの目が一気に細長くなり、クリードを見る。

「たかがちょっとひっかかれたレベルなのに、なんで・・・」

声は意地悪に満ちていた。

そのブツブツはナビアの耳には聞こえなかったが。

ナビアは自分のせいでこんなに怪我をしたクリードを見て心が痛かった。

「百月」

白く柔らかな気運は待っていたかのようにクリードを抱いた。

ナビアは、このような時にはペクウォルがなぜか人を差別しているという感じを消すことができなかった。

「いや、気のせいじゃないと思う。確かに百月はクリードが好きだ」

・・・まさか私がクリードを他の人と違う考えでそうしたの？

そう思うとなんとなくまた恥ずかしくなった。

クリードは百月の力で傷一つなく綺麗になりつつある。

しかし、表情は暗かった。

「ごめんね、お姉さん・・・私が強かったらこんなことはなかったのに」

彼は歯を食いしばってこぶしを握りしめる。

とうとう血が流れた。

「あなたは私にすまないことをしたことがないよ、クリード。私があなたにすまないよ・・・ちょっと待って、手はまたどうしたの？今すぐ力を抜いて？」

ナビアはすぐに怒った表情で彼の両手をつかんだ。

百月がすぐ傷を癒す。

「あなたがこうするのは私に申し訳ないことよ。分かった、クリード？」

クリードは暗い表情でうなずいた。

もし尻尾があったら、きっと下に垂れ下がっていただろう。

いずれにせよ、彼にはナビアの言葉が法だ。

「ごめんなさい」

「またこんなふうに自ら怪我したら怒るからね」

「・・・」

ラルクは完全にひねくれた表情で彼らを見た。

「ちっ」

彼らは自分の前で恋愛をしているのか？

彼は口元をびくびくさせながら彼らのところに行った。

こんなものは適時に邪魔をしてあげないと。

「大きくなったね、ちびっ子」

クリードはやっとラルクを見る。

向かい合わせに背がほぼ同じだ。

鋭くて不良に見えるラルクとは違って、線が流麗で剛直に見えるクリードは、漂う雰囲気から違っていた。

一つ妙に似ている部分もある。

そのためか、ラルクがあまりにも童顔なので、年の差が少しある兄のように見えるほどだ。

「・・・戻ってきたのですね？」

クリードがおずおずとおじぎをすると、ラルクは笑みを浮かべた。

ナビアであれクリードであれ、２人とも年をとって体だけが大きくなり、まだ赤ちゃんのように小さく見えた。

まあ、自分の目にはこの子たちが一生こうやって見えるじゃないかな？

「よし」

そして娘をさらったクリードが少し気に入らないが、それなりに食べさせて寝かせて、自分の手で育てたやつだった。

そうだよ。

自分はクリードの保護者だった。

「こっちにおいで」

その言葉にクリードの目が少し大きくなる。

ラルクが片腕を広げ、特有のぐらぐらした態度でこっちに来いと言う理由が感じられた。

抱きしめようとしているのだ。

その事実に気づいたクリードがぎこちなく近づくと、ラルクがにっこりと笑って胸に抱きしめた。

小生意気に年を取ったからといって、男らしくきれいに着飾った髪もたくさん乱れてしまった。

「お疲れ様」

「・・・」

荒いが愛情が感じられる手だ。

大人にこのような愛情を受けることに慣れていないクリードの両頬がすぐに赤くなる。

何だか、この不良な公爵様から、どうしてナビアという真っ直ぐな娘が生まれることができたのか、分かる気がした。

ラルクには子供っぽいところがたくさんあったが，彼は確かに大人だった。

それも巨大な山のように揺らぐことなく強靭な大人。

それで自分が幼い頃から彼に憧れていたのだろう。

その光景を見ていたナビアは胸がいっぱいになる。

家族が皆集まったという事実に喜びを持て余すことができず、彼らに駆けつけ、2人を一度に抱きしめた。

「みんな戻ってきて嬉しいです」

そうして彼らだけの暖かい時間が少しの間そんな時だった。

「うっ！うっ！」

ラルクの措置で口まで塞がれ、床に捕縛されたアレスとダイアナのために、再び現実を自覚する。

事態を収拾することが優先だった。

「さあ、とりあえず片付けからしよう」

ナビアはうなずいて、床で黄金色の布で縛られたかのような形のアレスとダイアナを眺める。

「彼らはこのままにしておいてもいいですか、お父さん？」

「うん。よほどの神様じゃないと、あれは解けないよ。それに、あいつの中にいる神様は私よりずっと下なんだ」

「それならよかったです。全部簡単に事を解決することができそうですね」

皇帝は確かに死んだ。

最後があまりにもみすぼらしいが、本人がまいておいたものをそのまま収めたという気がした。

皇帝を殺したのはダイアナとアレスで、彼らは1000人の人間も殺した。

（それがいくら外部の神に惑わされて犯したことであっても容認できない）

ナビアはラルクが言ったことを思い出した。

（彼らは心の混沌を読んでやってくる。最も切実に望んで本当に自分たちを利用しようとする人間を捜し出したという話だ）

幸いなことにダイアナが自分の兄を信頼せず、このことに加担させなかったということだ。

したがって、ルチア公爵家が支払う代価は相対的に軽かった。

（だとしても反逆者で殺人者である皇后の実家だから糾弾を避けて通れないだろう）

これでルチア家は過去の古いイメージを捨て、新しい顔を前面に出して変化しなければならないだろう。

例えば、サラ・ルチアという新しい政治家の誕生のような。

「宴会場に行きましょう」

そこに貴族たちが皆集まっていたのだから、どんな事故が起きてもしっかり起きているだろう。