こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
今回は59話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
59話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 目覚めのリンゴパイ
エドワードはルイーゼとアイレンを見て回り、昼食まで終えた後、城に戻った。
黒魔法の解答を見つけたという知らせに応接室に向かったロレインは、ソファーに並んで座った2人を意味深長な目で見ていたが、すぐにため息をつく。
「とてもくっついて離れるつもりが少しもないように見えますね。出征中なのに自覚があるのか」
「出征中だから、私の恋人を守るためには、もっと離れてはいけないのではないでしょうか。それよりも黒魔法の解除法が気になると思ったんですけれども」
「とにかく何も言わせないんですね」
ロレインが不満そうな口調で答えると、エドワードはうつろな顔で笑う。
彼のそばでじっくり考えていたルイーゼが口を開いた。
「ところでエドワード。マクシオンに本当にそれが通じるでしょうか?」
「通じるでしょう」
「見たところ、ルイーゼ、あなたも原因がわかったようだね」
ルイーゼはうなずいた。
「黒魔法にかかった人々の共通点は、大きな『喪失感』を感じたということでした」
「喪失感?」
「はい。一人は平凡な家庭の母親だったのですが、旅に出た娘が帰ってくるやいなや目を覚ましたと言いました。その前まで娘さんをとても恋しく思っていた方でした」
「それ一つでは足りないんじゃない?」
「当然、それで終わりではありません。その次は、ある男性が大事にしていた植木鉢が枯れて翌日眠りに落ち、数日後に奥さんが同じ植物の植木鉢を持ってきて目が覚めたと言います。いくつかの事例がもっとありますが、ほとんど同じような状況でした。カッセルもやはり私が家門の秘術を知っているという話をした瞬間、目が覚めたじゃないですか。その秘術を失ったという喪失感で眠っていたのではないかと思います」
「なるほど。そういうことなら私が気づかなかったことも理解できるね。私は彼らの身体的な条件や環境のような外的な要因に力を入れたから。病気だと思っていただけで、症状を見て書類だけ調べては絶対に分からない内容だった。ところでそれをたった今朝どうして分かったの?」
「エドワードと他の団員の方々が朝早くから動いて分かったと聞きました。騎士団にはエイブンという黒魔法をよく知っている人もいるんですよ」
「そうだったんだ。じゃあ、もうみんなを起こすことができるね。本当にありがたい」
ロレインは明るい顔で答えた。
「・・・感謝すべき人は私ではありません。私は何もしなかったんですよ」
ルイーゼの視線がエドワードに向けられると、彼は口を開いた。
「魔法を解く方法は喪失感を解消することと関連があるはずです。逆に喪失感を解消できない人なら一生起きられないかもしれません。原因が死別であったり、代替できない物の紛失であれば、それに対する解答も別に探す必要があると思われます」
「ええ、ありがとうございます」
ロレインは胸に手を当てて、エドワードに感謝の意を表した。
彼らを見ていたルイーゼがふと深刻な表情で話す。
「でも、私が理解できないのは、マクシオンが眠りについた理由です。マクシオンはその間に誰かを失ったり愛着を持った物を失わなかったじゃないですか。いつもと同じだったのに」
「マクシオンの考えは違うかもしれません。だからそれが必要なのです」
「それですって?」
ロレインの質問にルイーゼは目を瞬かせながら答えた。
「アップルパイです」
ロレインは理解できないという顔でエドワードを見るが、彼はただ笑っていた。
キッチンを借りたルイーゼは、使用人が買ってきた食パンとリンゴジャム、熟したリンゴとシナモンパウダーを確認しては感謝の挨拶をした。
「久しぶりに作ってみるね」
リンゴパイについての話が出たのは、エドワードとルイーゼが昼食をする時だった。
「今日のデザートはリンゴパイです」
従業員が二人の前に小さなパイを一切れずつ置く。
「マクシオンはリンゴパイが大好きなんだけど。ご存知ですか?」
「はい。りんごは火が通っていなくてもいいので、食感が身につくほど軽く焼いて、シナモンをたくさんかけたものを好むと聞いています」
「まだそうやって食べるんだ。それはおそらく私の影響です」
「ルイーゼちゃんですか?」
エドワードの質問にルイーゼは困惑した顔でうなずいた。
「私ができるのは、残った食パンとジャムで作るアップルパイだけでした。それでも食パンの中にリンゴジャムと細かく刻んだリンゴ、シナモンを和えたものを入れて表面にバターを塗ってオーブンで焼くのが全てでしたが。毎回リンゴは火が通っておらず、シナモンを入れすぎて変な食べ物になって出てきました。それでも私ができることの中で唯一食べられるものなので、記念日や謝ることがあれば、マクシオンに作ってあげました」
ルイーゼは恥ずかしそうに笑いながら、フォークで小さく切ったパイを口に入れる。
「あの頃は、マクシオンの助けをたくさん受けたんです。両親がいない時はあの子がほとんど実の兄と違いませんでした。今はこうして自分の役割をしてますが、あの時はあれこれ下手なことが本当に多くてそうだったんです。事故もたくさん起きる方でした。木に乗ったり森を歩き回りながら足首をくじくこともよくありました」
「そうだったんですか」
「ええ、あの時は本当に楽しかった」
その時代を思い出すルイーゼの顔に綺麗な笑みが浮かんだ。
そんな彼女を見つめていたエドワードが静かに口を開いた。
「・・・気になりますね」
「え?」
「ルイーゼさんの子供時代です。その時を共有できない点が残念です。そのりんごパイの味も・・・ちょっと待って」
エドワードの口角は浅く曲がった。
「そのアップルパイ、作り直してもらえますか?」
「え?それは難しくないですが、どうしてですか?」
「それなら、マクシオンを起こせるかもしれません」
・・・そうして作り始めたが、ルイーゼは依然として疑わしかった。
いくら頬を叩いて胸ぐらを掴んで振っても目が覚めなかったのに、たかがこんなことでマキシオンを起こすことができると?
いずれにせよ原因が不明な今、ルイーゼにできることはリンゴパイを作ってマクシオンを起こす方法しかなかった。
ルイーゼは以前にした通り、誠心誠意りんごパイを作った。
簡単な食べ物なので料理はすぐ終わる。
作り終わったアップルパイを持って彼女が向かったところは、マクシオンが眠っている部屋だった。
エドワードはドアの前の窓際に立っていた。
窓から午後遅くのゆったりとした日差しが染み込み、彼の赤い瞳が透明に輝いた。
いつ見ても素敵だという言葉が誰よりもよく似合うハンサムな男だ。
その姿をぼんやりと眺めていたルイーゼがばっと気を引き締めて口を開いた。
「エドワード。ここで待っていましたね。一緒に入るつもりですか?」
「たぶん、私は邪魔になるだけです。ここにいるので、マクシオンが目覚めたら呼んでください」
「エドワードが邪魔になることはなさそうですが・・・分かりました。そうします」
ルイーゼは微笑んで、皿の上にあった唯一布で包んだアップルパイを手に取り、エドワードに渡した。
「では、これを食べながら待ってください。エドワードが気になると言ってもう一つ作りました」
「・・・これがあのりんごパイみたいですね。ありがとうございます」
「じゃあ、私は先に入っています」
「はい」
ルイーゼは決然とした顔でドアを開けて中に入った。
閉じたドアを眺めながら、エドワードがパイを包んだ白い布を解いた。
食パンで大まかに作って、ねじれたリンゴパイが、ほかほかと彼の手の上に置かれる。
彼は嬉しそうな顔で一口かじった。
「・・・」
鼻がひやりとするほど押し寄せるシナモンの香りにエドワードは、マキシオンが彼女に料理をさせない理由を一気に理解する。
シャキシャキとしたリンゴの食感は、さすがにルイーゼが言った通り、完全に火が通っていないのでさわやかだった。
エドワードは微笑みながらもうーロリンゴパイをかじる。
黒魔法を解除する方法を見つけた二人。
マキシオン襲った「喪失感」とは?
本当にリンゴパイで彼は目覚めるのでしょうか?