こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
今回は68話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
68話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 特別な日②
ノアが去り、強い日差しを浴びた太陽が昇り始めた。
このような日はシーツを洗濯するのが常で、ロザリーと侍女たちは部屋を片付けた後、シーツを丁寧に洗い干した。
クラリスもシーツを干してみた。
しかし、何度も上手くできず、大きな洗濯物の入った桶を持って外へ出るしかなかった。
「子どもの足に汚れがついているのは良くないからね。」
ロザリーはクラリスの足についた汚れを見逃さず、念入りに洗ってあげた。
その後、昼食をとり、家庭教師と勉強を始める。
授業が終わったのは午後4時ごろの穏やかな時間帯だ。
クラリスはこの時間をいつも居間でのんびりと過ごしている。
公爵夫妻や事務官たちは業務に、使用人たちは夕食の準備で忙しい時間帯だったので、少し静かな時間が流れていた。
そうだとしても、今日は何か特別なことがあったのか、公爵夫人がクラリスを訪ねてきた。
それもカジュアルな服装で、パンツとシャツを身につけた軽装で。
彼女はクラリスにも簡素な服装をさせ、一緒に庭園へ向かった。
「夫人、私がお手伝いできることはありますか?」
クラリスが見上げながら尋ねると、公爵夫人は笑顔で顎を指さした。
「そうね、でもこれからとても真剣な授業をするわよ。」
「授業ですか?夫人が教えてくださるのですか?」
「ええ、準備はいい?」
クラリスは両手を固く握りしめ、「はい!」と大きな声で返事をした。
「いいわ、ついてきて。」
彼女はクラリスを連れて歩き出した。
新たに洗濯された真っ白なシーツが日差しを浴び、そよそよと吹く風に揺れている。
なぜか心が温かくなるような光景だった。
公爵夫人は大きく、見分けがつかないほどの木の前に立っていた。
「クラリス、この木に登れますか?」
「えっ!?」
クラリスは驚いて一歩後ずさりした。
貴族がそんなことをするなんて、到底考えられないという戸惑いを抱きながら。
「子どもには多様な視野を楽しむ権利があります。視点が変わるだけでも学べることがたくさんあるんですよ。」
「私の部屋も高いところにありますよ、夫人。いつも庭を見下ろしながら幸せな時間を過ごしているんです。」
「そうでしょうね。でも、自分の力で登ることも、きっと良い経験になるわ。」
クラリスは屋敷の階段を毎回自分の力で上がっているので、公爵夫人が言うことはすでに実践していると思った。
それでも、少しだけ興味をそそられた。
なんとなく楽しそうにも思えたからだ。
「一度やってみたいです!」
「では、私がお手本を見せましょう。」
ブリエルは長い腕と足を使って器用に木を登り、高い場所まで上がっていった。
それが簡単そうに見えたため、クラリスもすぐに挑戦してみたが、思ったほど簡単ではなかった。
「とても難しいです。」
彼女は最近半年間、庭での活動を通じて体を動かすことにある程度慣れてきたとはいえ、木登りは簡単ではなかった。
木の幹にしっかりしがみつきながらも、勇気を振り絞って片足を持ち上げて登ろうとしたが、地面からほとんど離れることができない。
少女は何度も落ちそうになりながら、挑戦を繰り返した。
「難しいのは確かですね。でも、学んでおけば意外に役立つかもしれませんよ。私も最近まで活用していましたから。」
「夫人が木に登っているところは見たことがありませんけど?」
「えっと、私は木の代わりに・・・うーん。」
「えっ!?」
返事が正しく聞こえたのか?クラリスは耳を疑いながら後ずさり、顔を赤らめたまま凍りついた両手を振り回していた。
「い、いえ、違います!あ、どうしても苦労して登らなきゃならないのが木登りの楽しさなんですよ!」
ブリエルはそう言いながら木に張り付いたクラリスの腰をそっと押し上げた。
「この出っ張っている場所を足場にして登ればいいんです!」
クラリスは彼女の言うとおりにしたかった。
しかし、木にしがみついている手と足を動かすのがどうにも怖かった。
それほど高くない場所でさえ、恐る恐る繰り返し落ちかけることが数十回もあった。
それでも広い視界に慣れてきた頃、クラリスは少しずつではあるが確実に木を登るようになった。
公爵夫人の見守る中で、慎重に進むその姿は真剣そのものだった。
木は傾いたり揺れたりすることなく、クラリスの冒険を安全に受け止めてくれている。
そして、太陽が空を斜めに傾け、西側の家に差し掛かるころ、クラリスは目標としていた高さに到達することができた。
両足がしっかりした枝に安全に立ったと確信すると、クラリスはずっとしがみついていた木をゆっくりと手放し、軽く両手を上げた。
そうして公爵家の庭園を見渡したとき、感謝の気持ちとともに秋の香りを含んだ風が吹き抜けていった。
「涼しい・・・」
木に登る間に少し汗ばんだ肌に、この爽やかな風が心地よかった。
「クラリス、大丈夫?」
すぐ下からブリエルの声が聞こえた。
彼女は、もしクラリスがバランスを崩して落ちそうになったら助けられるよう、両手を広げて構えていた。
「私・・・」
答えようとしたクラリスは、それ以上言葉を続けられなかった。
ブリエルが何を感じさせようとしているのかが、やっと分かりかけたのだ。
クラリスは、公爵家の庭園でいつも何かを見上げたり、2階から庭を見下ろしたりしていたが、それだけでは視点が限られていた。
しかし、こうして木に登ると、庭園で育つ植物たちと同じ目線になることができる。
いつも同じ場所から見ていた向日葵も、正面からその丸い顔を眺めるのはなぜか新鮮だった。
いつも見慣れていると思っていた景色も、高さが変わるだけで違って見える。
この違いはとても楽しいものだった。
「楽しいです!」
嬉しそうに笑顔を見せたクラリスは、自分でも気づかないうちに声を少し張り上げて叫んでしまった。
誰かが手を振ったのに気づくと、遠くにいた庭師がそっと手を振ってくれた。
クラリスも片手を振り返す。
いつの間にか木の上で落ちるかもしれない恐怖心は消え去っていた。
「・・・おめでとう。」
そしてすぐ下から聞こえてきた小さな声に、クラリスは顔を下に向けた。
視線が合うと、ブリエルは少し照れくさそうな笑顔を浮かべて再び言った。
「おめでとう、クラリス。」
その瞬間、クラリスは再び言葉を失った。
(今日は・・・お祝いの言葉を聞いてはいけない日なのに。)
彼女はこの場所に来るとき、シェリデン公爵と約束していたのだ。
誕生日パーティーはしないと。
それに、誕生日を祝う言葉も禁止だということを。
その規則自体はそれほど厳しいものではなかった。
実際、クラリスはこれまで一度も誕生日を祝ったことがなかったのだ。
しかし、ここで好きな人がそっと祝ってくれたのだろうか?
クラリスは、自分を助けてくれた公爵の恩にも感謝しており、誕生日にほんの少しの特別な意味があってもいいと思い始めていた。
今朝、ノアに「必ず抱きしめてほしい」と頼んだのも、そんな気持ちからだった。
それだけで十分だと考えていたが、ノアが「今日は楽しく過ごしてほしい」と願う祝福までプレゼントとしてくれるとは思わなかった。
けれども、ブリエルからの祝福までは受け取れない。
クラリスは、自分でも知らず知らずのうちに喜び始めた心を無理やり抑え込んだ。
「・・・わ、私は心からの祝福を受けるわけにはいきません、公爵夫人。」
「それでも、私はお祝いしたいの。」
「でも、私は公爵様と約束したんです。」
「では、こうしましょう。」
ブリエルはニコッと笑った。