こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は70話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
70話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- side ラビエンヌ
パーティーに行ってきた後、ブラオンズ公爵はラビエンヌにすぐに手紙を書いた。
エリシャという女性が言った言葉が気になったためだ。
「嘘かもしれないけど・・・」
しきりに気にかかってそのまま見過ごすことができなかった。
筆記体でなびかせた字が便箋の上に書かれていく。
「これをラビエンヌに迅速に伝えなければならない」
「分かりました」
使いはそのように手紙を持って神殿に行き、一週間後に公爵の手紙が神殿に到逹した。
ちょうど次代聖女授業を終えて出てきたラビエンヌは、使いが来たという話を聞いて訪ねた。
「どうしたの?」
「公爵様が手紙をお送りしました。すぐに確認するようにと」
待っていた使いの者がきれいに封蝋された手紙を渡す。
ラビエンヌは父親の手紙という言葉に喜んで封筒を開けた。
「どうしてこんなに急いで・・・?うん・・・?」
ゆっくりと手紙を読み上げていたラビエンヌの表情がますます硬くなる。
「・・・大公が養子縁組した子供が神殿から来たという話をしたよ。エスターという名前だけど、もしかして知ってる?探して調べてね」
貴族の令嬢たちがエリシャの言葉を信じなかったように、ラビエンヌの反応も大きく変わらなかった。
「大公様が神殿から子供を連れて行ったって?そんなはずが・・・」
「とんでもない」と鼻を鳴らした。
ドフィンと神殿の間を考えると、絶対にありえないことだ。
「エスターという名前も初めて聞いたし」
神殿にいる子供たちの名前を全て知っているわけではないが、少なくとも大公が養子縁組していたら貴族だったはず。
ラビエンヌが知っている神殿の貴族の中で、エスターという名前を持つ子供はただの一人も
いなかった。
「これで終わり?他にはないの?」
ラビエンヌは首をかしげて手紙をたたんでまとめた。
「はい。それを伝えて返事を入れなさいと言われました」
「お父さんには初めて聞く名前だと伝えて。一応もっと調べて連絡するとも言って」
「分かりました」
使いはその道に戻った。
ラビエンヌはセスピアがある聖女宮に歩きながら、エスターという名前をゆっくりと噛み締める。
もし、大公が神殿にいた子供を逹れて養子縁組にしたとすれば、噂になったはずだが、本当に初めて聞いた。
「噂だろう」
誰かがパーティーで関心を引こうと嘘をついた可能性が高かった。
それでも父親の公爵が気にかかるので、ひとまずは神官たちに調べることに。
ちょうどラビエンヌの向かい側から中堅神官のカイルが歩いてきていた。
「カイル神官様、お久しぶりですね」
ラビエンヌはわざと明るく笑ってカイルに知ったかぶりをする。
「ああ、ラビエンヌ様。最近、次代の聖女の授業でお忙しいと聞きました」
「忙しいって何ですか。私は授業を受けることができるんですもの」
軽い挨拶を交わしながらタイミングをうかがって、ラビエンヌがこっそりと本論を切り出した。
「ところで、もしかして。神殿にいた子供たちの中に大公家に養子縁組に行った子供がいますか?」
「え?そんなはずがありません」
カイルはとんでもないことを聞いたという表情で手を振る。
「やっぱりね?私がどこかで変な噂をちょっと聞いたので」
「そんなデマが流れるなんて、一応確認してみます。絶対に違いますが、何か分かったらお教えします」
「はい、お願いします」
カイルは「お願い」という言葉ににっこり笑う。
次の聖女になるラビエンヌとコネを作る機会だという考えからだった。
カイルと別れてすっきりした気持ちで歩いていたラビエンヌが急に立ち止まった。
「ちょっと待って。ドフィン大公なら・・・」
急に頭の中をよぎる場面。
すでに数ヵ月前のことだが、聖女候補生1人を大公が連れて行ったことを知っていた。
「あの子の名前は何だっけ?ダアナ?ダイ・・・、ダイナ!」
記憶をたどった末、やっと名前を思い出したラビエンヌが手を叩きながら大声を上げた。
「そうだよ。あの時、あの子を連れ出して連れて行ったんだけど。・・・違うよね?」
ふと思い浮かんだダイナと大公家を結びつけ、自分で考えてもあきれて笑った。
ラビエンヌの記憶の中で、エスターは得意なこと一つなく、大したことのない愚かな孤児だった。
いつも背に合わない薄汚い服を着て、やせ細っていた。
自分が一度ずつ知っているふりをしてあげると、何がそんなに良いのか全部出してくれるように笑う姿。
「なんであの子が思い浮かんだのか分からない」
ラビエンヌは自分で考えてもあきれて首を横に振った。
いくら考えてみても、大公がその子を養子にしたというのはとんでもないことだった。
「・・・でも行方は探してみようかな」
あまり大したことない子だけど、はっきりしておいた方がいいから。
思い出したついでにどうなったのか調べなければならないと思ったラビエンヌだった。
セスピア聖女の部屋の前に到着したラビエンヌが廊下に立っていたベルド神官と嬉しそうに挨拶を交わした。
「来ました」
「ああ、ラビエンヌ様。そうでなくてもお話したいことがあったんですが・・・」
今日に限ってベルドの表情が良くない。
それを見たラビエンヌの顔もゆっくりとこわばった。
「どうしたんですか?」
「セスピア聖女が目覚めています。最近めっきり頻繁に起きているのがちょっとおかしいので」
ここまで言って、ベルドはラビエンヌの顔色をうかがう。
「起きてるんですって・・・」
ラビエンヌは目を見開いて、堅く閉ざされた部屋のドアを睨んだ。
次代聖女に決定された後、ラビエンヌはセスピアに投薬していた薬の量を2倍に増やした。
しかし、どういうわけか、セスピアの状態はさらに悪くならず、むしろ顔色がますます良くなっている。
以前はラビエンヌが起こしてこそ少しずつ気がついたが、今のように知って起きている時間も増えた。
「耐性ができたのでしょうか?」
ラビエンヌは薬が入った小さなガラス瓶を疑わしく眺めた。
「そうだとしても、もう毒中毒になって回復することはできないのに・・・」
「薬を変えなければなりません」
ラビエンヌはもやもやして水の器に残った薬を全部注いだ。
いつものように薬は水に混ざると、すっきりと溶けて跡形もなく消える。
部屋のドアを開けて中に入ると、窓の外を眺めているセスピアの後ろ姿が見えた。
本当に目が覚めて動いているセスピアを見て、ラビエンヌが唇をかんだ。
「聖女様!どうしたんですか!起きていらっしゃるじゃないですか?」
「ああ、ラビエンヌが来たんだ。今日に限って調子がいいからね」
セスピアが振り向いて慈しみ深く笑ってラビエンヌを迎える。
「よかったです。いよいよ病気が回復するようですね」
「それならいいのだけど」
セスピアはニヤリと笑ってソファに腰を下ろした。
遅いが、このように動けること自体が奇跡だ。
「まずは薬を飲んでください、聖女様」
「いや、今日は飲まなくてもいいと思う。今のままがいいわ」
「はい?こんな時こそ、もっとしっかり食べて早く回復しないと!」
ラビエンヌがとんでもないと言って、スプーンをセスフィアの手に握らせた。
少しだが、セスピアとラビエンヌの視線が空中で交差し、雰囲気が冷たく変わる。
「じゃあ、後でちゃんと食べるわ」
「約時間がどれだけ重要なんですか。今召し上がってください、聖女様。ね?」
飲まないと言っても無理矢理薬をすすめるのだからラビエンヌを見てセスピアの目が冷たく沈んだ。
「なぜ?私が今必ず食べなければならない理由でもあるの?」
正気に戻った時のセスピアは、どんなに力を失っても聖女だった。
数え切れないほど経験したセスピアに耐えるには、ラビエンヌはまだ幼かった。
「あ・・・いいえ、そんなはずがありません。私はただ聖女様が回復されたことがとても嬉しくて・・・別に意味はなかったです」
ラビエンヌがぎこちなく笑って先に足を抜いた。
さらに疑われたら、事がこじれるだろうと思ったからだ。
セスピアはそんなラビエンヌを憎んでつばを飲み込んだ。
(心配しないで。もう私の体は薬では手がつけられないほど壊れている。薬を飲んでも飲まなくても時間の問題だよ)
実際、毒薬中毒になった体は、すでに取り返しのつかないほど最悪だった。
自分に毒薬を飲ませるという事実を知ってからは、薬を飲むふりをして吐いてしまった。
そのため、さらに悪くはなっていないが、これも耐えられる限界があった。
最大で2年ぐらいだろうか。
「ラビエンヌ、君が次代の聖女候補に選ばれてどんなに嬉しいことか」
セスピアは心からラビエンヌが次の聖女になることを願った。
そうしてこそエスターが神殿を崩すから。
(罰は受けないと)
自分は覚えてもいない数多くの人生で、このように何度も殺害されたことを考えると、怒りが込み上げてきた。
自分だけでなく、エスターの件も同じ。
記憶で見た恐ろしいことを思い出すと身震いした。
エスターが復讐に成功できるように、自分の人生を粘り強く続けて時間を稼いであげるつもりだった。
「必ず、次の聖女になって稗殿と運命を共にしてちょうだい」
「聖女様が私をここまで思ってくださるとは思いませんでした。とても嬉しいです」
セスピアの本音を知るはずのないラビエンヌは、感激の表情を浮かべて明るく笑う。
「私には君だけじゃないか」
セスピアも優しく微笑みながら、自分に寄りかかってくるラビエンヌのふさふさした髪の毛をゆっくり撫でた。
見た目はとても美しく見える光景だったが、二人の目つきは冷ややかだった。
「そうだ!啓示が降りてきたのはなかったんですか?前回の灰褐色の髪の毛以降は何の話もありませんでしたので」
「それは見間違いだと言ったじゃないか」
セスピアはできるだけ穏やかな声でラビエンヌを安心させた。
「まだないが、きっとあなたに対する啓示が間もなく降りてくるだろう」
「そうだといいですね」
ラビエンヌもそんなセスピアを見て警戒を少し和らげた。
(今の体調だと、2年が最大だよ)
セスピアは自分の体調を崩さないとしても、粘り強く耐えられる時間を2年程度と
見た。
もちろん、その間にラビエンヌが薬を変えたり、自分を殺害したりすると、期間はさらに短くなる可能性もある。
それでも我慢するつもりだった。
なんとかかわいそうなエスターに時間を稼いであげたかった。
「聖女様、薬は必ず飲まれますよね?」
「もちろん」
セスピアの瞳にはラビエンヌの弱い首筋をすぐにでも折りたいという衝動がこもっていた。
とうとうラビエンヌがエスターのことを思い出しました。
ダイナとエスターが同一人物と気付くのも時間の問題でしょう。
セスフィアにも頑張って生きてほしいです。