こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は71話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
71話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 皇帝との謁見
パーティーが終わった後、エスターは展示会場に掛けられていた絵の中から「家族」という絵を取り外し、居間の一角に飾った。
絵を飾ってからというもの、最近では一日一度は必ず居間に集まり、その絵を見ながら会話を交わすのが日課となる。
今日も例外なく、夕食を終えた後に居間に集まった。
エスターが好きなデザートプレートが並べられたテーブルを囲みながら、軽い会話が始まった。
「ジュディ、次のアカデミー訓練は1週間後だって?」
「はい。そろそろ準備を整えようと思っています。」
「体に気を付けて、たくさん学んでおいで。」
ドフィンの落ち着いた声がジュディからデニスへと向けられた。
「最近、図書館から出てこないって聞いたけど?」
「新しい勉強をしていて楽しいんです。時間が過ぎるのも忘れるくらいで・・・気をつけますね。」
「そうか。でも、座りっぱなしはよくないぞ。運動もしっかりやらないと。」
以前のテレシアなら、こんな会話ができるなんて想像もできなかった。
しかし、エスターが来てからドフィンも大きく変わった。
一人一人の子どもたちに関心を寄せ、丁寧に声をかけている。
「王宮の行事があるから、都に行かなきゃならないかな。」
ドフィンがそう言いながらも、ブルーベリーケーキをつまむエスターを優しく見守りながら話した。
彼が皇宮へ行くことはよくあることだったので、双子たちは特に驚いた反応を見せなかった。
「また行くんですね?」
「わっ! 今回限定版で出たという木彫りの刻印を買ってきてください!」
しかし、エスターの反応は少し違った。
ケーキを大きく口に運んでいたフォークが止まり、彼女は躊躇いがちに尋ねた。
「お父さん、私も行ってもいいですか?」
普段は何かを求めることが少ないエスターが、一緒に行きたいと願い出たことに、ドフィンの目は驚きの色を帯びた。
「皇宮に?」
「はい。一度行ってみたいんです。」
ちょうど、ドロレスとの対話の後、皇宮へ行ける機会を探していたエスターにとって、ドフィンが先に行く話題を持ち出したのは絶好の機会だった。
皇宮を訪れたいというエスターの控えめな願望が、今、現実に近づこうとしていた。
ドフィンは驚きのあまり息を飲んだ。
エスターの年齢なら十分に可能だと考えた。
神殿での生活しか知らない彼女にはなおさらだ。
「いいだろう。一緒に行こう。」
ドフィンは快く承諾した。
ちょうどエスターを皇帝に一度紹介しなければならないと考えていたからだ。
「何それ!じゃあ私も行きたい!」
「お前はアカデミーに行かなきゃならないだろ。」
「ちぇ・・・私もエスターと一緒に旅行したいのに。」
エスターとドフィンの二人だけで皇宮に行くという話にジュディが悔しそうに割り込んできた。
しかし、アカデミーの訓練に参加する予定があるジュディは、時間の都合上、一緒に行くことはできなかった。
「旅行じゃなくて仕事のために行くんだよ。すぐに帰ってくるし、お前は訓練をしっかりやれ。」
デニスが途中でジュディの口をふさぎ、隣にあったタルトをエスターの皿の上にそっと乗せながら言った。
普段、エスターが好きなデザートであっても手をつけない場所に置かれていたためだ。
デニスは今もエスターに対して細やかな気遣いを忘れなかった。
「エスター、よかったね。お父さんと楽しんできてね。僕は皇宮には何度も行ったことがあるから、特に感動はないけど。」
エスターはそんなデニスに感謝しながら、軽く微笑んだ。
「来週はきっとすごく寂しくなるだろうね。」
そうして、気がつけば次の週にはデニスが一人で家に残ることになっていた。
以前は一人で過ごす時間を好んでいたデニスだったが、今では家族と過ごす時間がないと物足りなさを感じるようになっていた。
「お父さん、早く帰ってきてくださいね。」
その瞬間、ドフィンの表情がほころんだ。
これほどまでに家を空けることを惜しむようになるとは、以前では考えられなかった。
「早く帰ってきてください」という言葉を聞いたのは初めてだった。
心がチクッとするような不思議な気持ちを感じながら、ドフィンは微笑んだ。
「分かった。すぐに戻ってくるよ。」
一週間後。
ドフィンとエスターは一緒に馬車に乗り、皇宮へ向かった。
一日を超えて続く旅路だったが、途中で食事をとりながら休憩を挟んだため、全く疲れることはなかった。
最後に都に入るための橋を渡ったとき、エスターは窓の外を見て驚きの声を上げる。
「わあ、川の水がとても深いですね。」
「ここは川の中心部だからね。この川から流れ出た水は帝国中のいろんな場所へと広がっていくんだよ。」
エスターは興味津々で川の水を眺め続けていた。
「ここには干ばつがないみたいですね?」
最近通りかかった川はほとんどが干上がっていた。
しかし、ここだけは水があふれ、まるで別の世界のようだった。
「あれでも昔に比べたら少し干上がったんだ。皇宮が管理しているから、あの程度で済んでいるだけさ。」
「そんなことができるんですか?」
「できるさ。お金を惜しみなく注ぎ込めば可能だ。」
ドフィンの冷静な視線もエスターに続いて窓の外を眺めた。
「洪水の時期に備えて水をせき止めているんだ。洪水が来れば、少しずつ放流するようになっている。」
エスターは、聖女の力ではなくとも洪水をそのように管理できるという事実に少し驚いた。
「すごい・・・でも、なぜ都だけなんですか?他の地域も助けてあげればいいのに。」
ドフィンは若い年齢にもかかわらず、こんな考えをするエスターに感心し、彼女の頭を軽く撫でた。
「もちろん、それができたらいいんだけど、神殿との関係があるからそうはいかないんだ。」
細かな説明をしてもエスターには理解しづらいと思ったドフィンは、それ以上は話さなかった。
しかしエスターはすぐにドフィンの言葉の意味を理解する。
神殿の目を気にして、皇宮では自由に行動できないということだった。
(被害を受ける人々には誰も気を配らないんだね。)
解決できるはずの問題なのに、目を背ける皇宮も、自分たちの利益を優先して洪水を見て見ぬふりする神殿も同じだった。
それでも最悪なのはやはり神殿だった。
聖女という名の下で利益ばかりを追い求める神殿の腐敗ぶりには怒りを覚えた。
エスターが黙って悔しそうにしている間、馬車は聖門の検問所を通過した。
ドフィンの馬車だけで身分が確実であるため、特に確認されることなく城内にすぐ入ることができた。
「とても早いですね。」
瞬く間に城の正門を通り、中心部まで進んだのを見て、エスターは思わず口を開いた。
城内に入った後、少し緊張していたエスターは、窓のカーテンを閉め、静かに座り直した。
ドフィンは突然静かになったエスターをちらっと見て笑った。
緊張しているのを察し、くすくすと笑い声を上げた。
「震えてるのか?」
「少しだけです。陛下に会うと思うと、怖いです。」
エスターは心臓がドキドキと速く鼓動するのを感じ、両手を胸の前で組んだまま固まった。
皇宮に行くと決まったときから、皇帝に会わなければならないと聞いて、どれほど驚いたことか。
いくらドフィンと一緒に住んでいるとはいえ、帝国を治める皇帝に会うということを考えると、エスターの体は緊張でこわばった。
「怖がる必要はないよ。これは私の息子であるお前を紹介するための場なんだ。」
「はい、お父さん。」
エスターの心の中の緊張は変わらなかったが、ドフィンを安心させるために無理に明るく微笑んだ。
「ところで、ちょっと聞いてみたいことがある。」
「何ですか?」
ドフィンは少し落ち着いた目つきでエスターに向かって尋ねた。
「ノア殿下とはかなり親しいようだな。」
「え、ノア皇太子ですか?まぁ、少しずつ仲良くなっています。」
突然ノアの名前が出たことで、エスターの目が一瞬揺れ動いた。
エスターは何となく恥ずかしくなり、視線をそらしながら目をパチパチと瞬かせた。
「それだけなのか?前回は二人で広場にも行ったって聞いたけど。」
ドフィンの目が鋭くなった。
彼はすでにエスターとノアが一緒にダイヤモンドを選んでいたことを侍従たちから聞いて知っていた。
「あれは偶然会っただけで・・・別に大したことじゃありません。」
ドフィンはエスターが視線をそらすのを見て、二人の間には何かあると直感した。
さらに追及しようと拳を握りしめたその瞬間、馬車が急に止まり、会話が途切れた。
「わぁ、もう着きましたね!」
エスターはその場の雰囲気を変えようと急いで馬車のドアを開ける。
外に出ると、豪華で壮大な皇宮が目の前に広がっていた。
中央神殿に続き大宮殿で過ごしてきたため、普段の建物には驚かないエスターだったが、皇宮の精緻な建築物には思わず心を奪われた。