こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は61話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
61話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 鉱山へ②
鉱山に到着するとすぐに鉱夫たちがいる丘の下に降りた。
まだ本格的にダイヤ採取を始めた鉱山ではないので、働く鉱夫は2人だけ。
2人とも代々テルシアのために働いた家門の出身なので、信じて鉱山を任せることができた。
「お嬢さん、いらっしゃいましたか?」
「お久しぶりです。もうダイヤがあれほど積もりました」
鉱夫は満面の笑みを浮かべ、隅に置かれた4本の袋を指差す。
エスターが最後にダイヤ原石を持っていったのが3週間前だから、3週間積もった原石の量だった。
「毎度ありがとう」
「どういたしまして。私たちは仕事をしているだけですから」
鉱夫たちは額からタオルで汗を拭いながら再び仕事を始めた。
力強いつるはしの音が山の中にりんりんと響き渡った。
「鉱山は初めてだ」
皇子だったノアだが、鉱山に直接入ってきたのは今回が初めてだ。
彼は不思議そうにきょろきょろしていて、何かを見つけて腰をかがめる。
袋に入れてこぼしたダイヤが床に突き刺さっていた。
ノアはそれを手に取り、太陽の光に照らしてみる。
玲瑠たる輝きをぼんやりと見て、はっと息をのんだ。
「エスター、もしかしてここはダイヤの鉱山なの?」
「うん、そうだよ」
エスターは「それを言わなかったのか?」という表情で大したことないように答えた。
「わあ、テルシアが鉱物が豊富な地域だという話は聞いていたが、ダイヤ鉱山まであるとは知らなかった」
ノアは帝国の皇子として純粋に感心していた。
ダイヤなら宝石の中では一番最上級だ。
皇室が所有するダイヤ鉱山もいくつも存在していない。
「すごい、本当に」
ダイヤ鉱山があるという事実に驚き、それを平気で娘に与えることができる財力にまた驚いた。
「・・・?」
エスターは呆然としているノアを置き去りにして管理室に向かう。
そこにはつるはしと安全帽がいくつかあって対比されていた。
エスターが安全帽を取って頭にかぶっていると、後から入ってきたノアがぼんやりと眺めた。
「なんでそれを使うの?」
「ダイヤを取ろうと思って」
「君が直接?」
「うん。土地を掘ってお金を稼ぐのがそれとなく面白くて」
エスターはにっこり笑ってつるはしを持ってまた外に出た。
もちろん成人が使う大きさのツルハシではなく、エスターも気軽に持てるように作ったツルハシだ。
「怪我したらどうするの」
ノアはそのようなエスターが心配でどうしようもなく、まずつるはし一つを持ってついて行った。
鉱夫たちが働いている丘の下に戻ると、一生懸命シャベルを打っているドロシーの姿が。
「あれ見て。すごく頑張ってるよね?」
ドロシーだけでなく、真向かいでビクターも歯を食いしばって地面を掘っている。
互いに競争でもするように牽制する姿が見えたが、2人とも神に取りつかれたような身振りだった。
「なんでそこまでやるの?」
「私がここで直接掘ったものは持って行ってもいいと言ったんだ」
それ以来、ドロシーは鉱山に来るたびに1秒も休まずにダイヤ掘りに熱を上げている。
ビクターは最初はあまり興味を示さなかった。
そうするうちに自分も一度やってみるとつるはしを持って、結局ダイヤを掘った量でドロシーに負けたのだ。
その日以来、自尊心を回復すると言って来るたびにああしている。
「これから私も始めてみようか」
エスターが腕をまくり上げると、ノアも持ってきたツルハシを持ち上げて見せた。
「私も一緒にやる」
「やったことはある?」
「いや、一度もないんだけど。これは難しいと思う?」
ノアは「こんなことは大したことではない」と言って、派手に仕事を始めた。
しかし、思ったほど土がよく掘られなかった。
「力を入れてるんだよね?」
「え?うん。なんでこれがダメなんだろう」
慌てたノアが腕にもっと強く力を入れてみたが、いくらつるはしを使っても土ぼこりが飛ぶだけだ。
つるはしがまともに地面に食い込むこともできないのを見て、エスターは笑いをぐっとこらえなければならなかった。
「あなた、本当に下手ね」
苦労したことがないような綺麗な顔を見て大事に育ってきたと考える。
「私がするのをよく見て」
エスターはノアを横に押して直接つるはしを持って出た。
力はノアほど強くはないが、代わりに技術が良くて一度つるはしを刺す度に地面がぶくぶくと掘っていく。
つるはしを使うのが上手なエスターを見て、ノアが舌を巻いた。
「どうしてこんなに上手なの?」
「険しいことは私の専門だから」
神殿でいつも洗濯と雑用を引き受けていたため、大変なことには慣れている。
「そうだ、適当に掘ったら原石が傷むかもしれない。だから、あまり力でやるんじゃなくて、こうやって気をつけて」
エスターが朝幕ほどの手をあちこち動かして、あちこちに傷一つなくきれいな原石を掘り出した。
小さな体格でどうしてあんな力と技術が出てくるのか。
ぽっかりと開いたノアの唇がびくびくした。
「私、あのビクターというあなたの護衛騎士の気持ち、分かる気がする」
ノアはエスターより自分がつるはしをもっと扱えないと、負けらられないと言って意志を燃やした。
地面を掘れば掘るほど、濃い土の匂いが鼻に流れ込んでくる。
それがそれとなく好きで鼻をくんくん鳴らした。
「大変じゃない?」
「うん。でみ思ったより面白いね」
汗を流して働く楽しさを初めて感じるノアだった。
久しぶりに生きているということが全身で体感された。
仕事をして汗を流すこと。
単純だが、聖域に横たわりながら長い間忘れていた感覚。
「また助けてもらってしまった。助けてあげようと思ったのに」
ノアはこみ上げてくる感情を感じながら、つるはしを地面に打ち込んだ。
「何だって?聞こえなかった」
前で熱心に動いていたエスターがノアの独り言に後ろを振り返る。
「何でもない」
ノアは首を横に振りながらつるはしについている土をエスターの靴の上に注いだ。
すでに土で絡まって汚れた靴なので特に目立たないが、エスターが頬を膨らませる。
「何しているの?」
「ただ、あなたと遊びたくて」
ノアはまた土をすくってエスターの靴の上に注いだ。
エスターの足は土の山に埋もれていた。
「もう、つるはし押収よ!」
エスターはノアをなすりつけながら前に足を伸ばした。
でも土が思ったより多かった場所ので重心を失う。
体が傾くと、ノアが急いでエスターを捕まえた。
エスターは「今だ」と言って、両手でノアの頬をさっと掃く。
「え?」
ノアが顔を急いで後ろに出したが、すでにエスターが埋められた泥が真っ黒に頬に残っていた。
「こんなつもりなの?」
「ごめん。拭いてあげるね」
エスターはすまないふりをしてノアの頬に再び手を上げた。
しかし、拭く代わりに土をよく塗っている。
「あなた、顔に・・・ププ、ごめんね。私が埋めたんだけど・・・あはは」
その姿を見ていたエスターが大きく笑い始める。
ずっとむずむずしていたが、吹き出した笑いは簡単には止まらなかった。
エスターがここまで声を出して笑うのは初めてだった。
清涼な笑い声はノアだけでなく、ドロシーとビクターの動きまでも全て止める。
「お嬢さん?」
一瞬、皆言葉を失ってエスターを見た。
清い笑いにとりつかれた人々のように目を離すことができなかった。
(こんな風に笑うこともできるんだ)
特にノアは心臓が止まるような衝撃を受けた。
このような表情のエスターは夢でも見たことがなかったから。
掘った分だけ自分のものにしていいなんて、ドロシーも必死になりますよね。
エスターの笑顔をドフィンたちにも見てほしいです。